口述再現・民事系

【午後の組】

【事案の要旨】

   A ――――― B―――――Y
  賃貸人       賃借人      転借人
   |
   |
   |
   |
   X
  相続人

@AがBに土地を賃貸。Bは建物1を建築。
ABがYに土地の西側部分を転貸。Yは建物2を建築。
BAが死亡し,Xが相続。
CXは,Yに対して解除を主張し,土地の明け渡しを請求。
※Yは,Xから転貸の承諾を得た旨,反論している。

Otomo

「180番です。よろしくお願いします。」

主査

「はい。じゃあ,そちらに座って下さい。」

Otomo

(裁判官バッジをつけた主査なので,民裁ベースかな? 優しそうでよかった。)

主査

「それでは,私の方からお尋ねします。リラックスして答えて下さいね。・・・まず,本件訴訟における訴訟物は何になりますか?」

Otomo

「はい。所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権,1個です。」

主査

「なるほど。それじゃ,請求の趣旨はどのように書くことになるんでしょうかね?」

Otomo

(理由は聞かないのか?)「はい。えーと・・・。被告は・・・。被告は,別紙物件目録記載の建物を収去して,同目録記載の土地を原告に明け渡せ,といったような・・・。」

主査

「うーん,別紙物件目録記載っていうのが,何を指してるのかよくわかんないんだけどね(笑)。」

Otomo

「あっ,はい,そうですよね。えー,問題文でいうところの建物2の収去と,その建物が建っている土地の西側部分の明渡しです。」

主査

「うん。それじゃ,請求原因は飛ばして,抗弁についてお聞きします。本件で,被告側から構成できる抗弁としてはどのようなものがありますか?」

Otomo

「はい。えー,まず1つ目としては,Bとの賃貸借契約に基づく賃借権を理由に,占有権原の抗弁を主張することが考えられます。」

主査

「うーんと,それは,1個の抗弁ですか? それとも,2個の抗弁ですか?

Otomo

(っていうことは,2個作れるのか?)「はぁ・・・。1個・・・だと思った・・・んですが・・・。」

主査

「1個・・・。そうですか。それで,他にも抗弁があるのかな?」

Otomo

「はい。2つ目として,Yの占有開始から10年が経過しているので,Xに対抗しうる賃借権を時効取得したとの抗弁も考えられると思います。」

主査

(何かメモしつつ)「時効? この問題文の被告の主張だけから,時効取得の抗弁を構成できますか?」

Otomo

「あっ! ・・・いえ,援用の意思表示がありませんので,構成できないと思います。」(しまった)

主査

「うん。援用の主張を追加する必要があると,そういうことですね。・・・じゃ,さっきの占有権原の話に戻るんだけれども,この要件事実を言ってもらえるかな?」

Otomo

「はい。まず,@AB間の土地西側部分賃貸借契約,Aこれに基づく本件土地の引渡しです。それから,BBY間の土地西側部分賃貸借契約,Cこれに基づく引渡しがあります。・・・えーと,それから,Xは相続人ですので,DA死亡,EXはAの子である,ということも必要と考えます。」

主査

「ん? AB間も西側部分? どうして?」

Otomo

「はい。本件で明渡しの対象となるのは,Yが占有する西側部分だけですから,要件事実として必要最小限の摘示をするにあたっては西側部分だけで足りるかと・・・。」

主査

「でもね,賃貸借契約の賃料は,土地の全体について定められたものだよね。」

Otomo

(そうかそうか)「あっ,はい。そうです。とすると,AB間については,本件土地全体の賃貸借契約を摘示することになると思います。」

主査

「うん。えーと,それから,あなたが今おっしゃった要件事実の中には,賃貸人の承諾が入ってなかったわけですけれども,この承諾はどんな位置づけになるんですか?」

Otomo

(そこがよくわからない)「はい。今述べた占有権原の抗弁に対してXが解除の再抗弁を出した場合に,これに対する再々抗弁としてYが承諾を主張すべきことになります。」

主査

「ほぉ。そうすると,解除という話が出てきて初めて承諾が現れるわけですか。無断転貸も,解除されない限り,それ自体として賃貸人に対抗しうる正当な占有権原となるわけですか?」

Otomo

(受験時代の知識だ)「あっ。いえ,解除されるされないにかかわらず,賃貸人には対抗できないとの条文があったと思います。」

主査

「そうだよね。とすると?」

Otomo

「はい。解除の後に初めて承諾が出てくるというのはおかしいと思います。」

主査

「うん。先ほどの抗弁事実のところで,承諾も摘示しておく必要があると,こういうことになるわけですかね。」

Otomo

「はい,そうですそうです。」(我ながら調子のいい奴・・・(笑))

主査

「それでは,先ほどの話なんですけれども,他にも占有権原の抗弁として構成する方法はありませんか?」

Otomo

(げげっ,またその話かよ!)「はぁ・・・他に・・・ですか・・・。」(全くわからん)

主査

「無断転貸というのは,承諾がなき以上,常に対抗できないものなんですか?」

Otomo

(!)「いえ! 賃貸人との関係で,転貸に背信性が認められない場合には,承諾がなくても対抗することができます。」

主査

「そうだよね。とすると,抗弁はどうなりますか?」

Otomo

「はい。承諾の代わりに,非背信性の評価根拠事実を主張することによって,別個の占有権原の抗弁が構成できると思います。」

主査

「うん。じゃあ,本問では,具体的にどんな事実が挙げられますか?」

Otomo

「はい。えーと,まずYはBが取締役を務める有限会社であることです。それから,建物1でも2でも洋菓子を扱う業務が行われており,用法の点でそれほど違わないことも挙げられると思います。」

主査

「他には?」

Otomo

「えー・・・。建物2の敷地面積は,建物1のそれよりもかなり狭いので,それほど賃貸人に不利益が生じるわけではないこと,なども挙げられるような・・・。もごもご。」

主査

「うーん,建物の敷地面積はあまり関係ないんじゃないかな? 土地の転貸についての背信性が問題なわけでしょ。」

Otomo

「あっ,はい,そうですね。建物というよりも,転貸した土地の面積が,B使用部分の半分以下にすぎないことを挙げればよいと考えます。」

主査

「はい。それでは,話を変えましてね。この訴訟が始まって,弁論準備手続が始まったばかりの段階で,Bが重篤な病気にかかって入院してしまったんです。もしあなたがYの代理人だったら,どうしますか?」

Otomo

(いきなり証拠保全いっちゃうのかなぁ?と思いつつ)「はい。すぐにBの入院先に赴いて,自ら事情を聴取し,供述録取書として書面化します。」

主査

「うーん・・・。まぁ,そういう方法もあるとは思いますけどね。でも,もしその後,Bがしゃべれない状態になったらどうします。反対尋問もできなくなるし,それだけだと証明力は極めて弱い証拠になっちゃいますよね。他の手続はありませんか?」

Otomo

「はい。そうすると,証拠保全が考えられます。」

主査

「うん,証拠保全ね。具体的には,何をするのかな?」

Otomo

「尋問です。」

主査

「尋問ね。はい。それじゃ,最後の質問なんだけれども,本件事案において,Xの代理人として保全手続をとるとすれば,どのような手続をとりますか?」

Otomo

「はい。建物についての処分禁止の仮処分です。」

主査

「そうですね。他にはどうですか? 処分禁止の仮処分さえかけておけば,もう心配なしですか?」

Otomo

「いや・・・心配は心配なんですが・・・。そうですね,もし誰かに占有を移してしまうようなおそれがあれば,占有移転禁止の仮処分も考えられるかと思います。」(と,白表紙に書いてあったような気が・・・うろ覚え)

主査

「うん,そういう場合は,占有移転禁止も一応検討してよいだろうと,そういうことですかね。はい。それじゃ,終わりました。お疲れさま。」

Otomo

「ありがとうございました。」

 

<感想>

 要件事実については,具体的な日付・賃料・賃貸期間といった数字まで答える必要がありました(上記再現では,細かい数字は省いてます)。問題文をメモする段階で,自分なりに時系列を作っておかないと,なかなか大変でしょう。 また, 立証活動・保全については,結局,手続の選択を問うだけで終わりました。あまり白表紙の細かい部分まで暗記することは要求されていないのかもしれません。各手続の特色をまずは押さえることが先決だと思われます。