「泳げない子を海に突き落として,泳ぎを教える」

そんな研修所の教育方針の下,何をやったらよいのかも分からずに,

ただただ迷走し続けた,前期修習。



入寮したはいいけれど・・・
司法修習開始を目前に控え、今日は司法研修所に隣接する宿舎「いずみ寮」への入寮手続きがありました。

指示された部屋の中に入ると、壁もドアも天井も真っ白(「まるで病院のようだ」というのは、確かにうまい例えです)。で、部屋の中央にどっしりとダンボールが積んでありました。とにかく殺風景で気分がめいってしまうので、とりあえず荷物を出してカーペットを敷き、動物の写真を飾って、幾分ましになった感じです。

テレビや電話はすぐに使える状態になってよかったのですが、インターネット接続の設定は「0発信」や「トーンを待たずにダイヤルさせる」など、やや面倒。しかも、ショッキングなことに、Air−H”が使えない!! 既に使い放題コースを早まって年間契約してしまっていた自分は、言いようのない悔しさに襲われました。ベランダには電波が来てるんですが、まさか外にPC出してネットするわけにもいかないし・・・。泣く泣く3ヶ月間はダイヤルアップ接続することにしました。なお、寮ではADSLも使えません。

夜は、入所パーティーに備えて劇の練習です。近くの公園で夜遅くまでリハーサルが繰り返されました。細かいセリフの調整や、ネタの練り直しなど、その取り組む姿勢はまさに真剣そのもの。寒空の下でも、メンバーの熱気は冷めることを知らないという感じでした。この劇には、お笑いに対する関西人の執念が込められていると言っても過言ではないでしょう。明日は、メンバー一丸となって頑張ります。
Date: 2002/04/01



とにかく慌ただしい
修習開始初日。大講堂で、研修所長・事務局長の講話を聞きました。それほど重々しい雰囲気ではなく、冗談を織り交ぜて楽しく話されます。21世紀の法曹はいかにあるべきかといった内容で、大変わかりやすいものでした。

その後、各クラスの教室で、担当教官と修習生の自己紹介です。70人以上いるので、全員が終えるのに3時間以上かかります(汗)。顔と名前を一致させられるか心配・・・。その後、さらに事務局からの連絡事項伝達に2時間程度。ずっと座って聞いてるだけとはいえ、なまった体にはこたえます。

夜には、修習生が自主的に主催する入所パーティーがありました。このパーティーでは、関西出身合格者が劇をするのが伝統になっています。練習に練習を重ねた体当たりのギャグに、出席者からは大きな爆笑(失笑?)があがっていました。40分もの長時間にわたって劇を見てくださった出席者の方々、どうもありがとうございました。
Date: 2002/04/02



はんこに始まり、はんこに終わる
今日からいよいよ本格的に講義が始まりました。

朝、研修所に行くと、ロビーに名簿が並んでいます。これにはんこを押して、出席と認められることになります。また、夕方帰るときにも、はんこを押します。押し忘れると早退の扱いになるといいますから、うっかり忘れると大変です。

1講義の時間は、110分。前半50分・休み10分・後半50分で。大学のように90分ぶっとおしではなく、間に休み時間が入るというのが結構大きいなと感じました。ここで頭をリセットして(いや、リセットしたらあかん(苦笑)。リフレッシュと言うべきかな・・・)、続きの講義に望むと、集中力が落ちません。

今日は第一回ということで、民事裁判・刑事裁判・検察の先生の自己紹介、修習の進め方、訴訟法の理解の確認テストなどがありました。中でも、確認テストは、修習生として初めて実力が試される場面なので、修習生もかなり血眼になって「一夜漬け」をします(笑)。自分は、特に民事のほうの出来があまりよろしくなかったです。追試だけは避けたいところですが・・・。
Date: 2002/04/03



記録の山
今朝は、あやうく遅刻しそうになりました。修習生バッジを部屋に忘れたことに途中で気づいたんです。取りに帰ろうかどうか迷ったのですが、周囲には割とのんびり歩いてる修習生がたくさんいたので、まぁ間に合うだろうと思って取りに帰りました。で、戻ろうとすると、なんとその時点で登庁の3分前。猛ダッシュでかけこんでギリギリセーフでした。あとでよくよく考えてみると、研修所ではクラスによって登庁時間が違うので、周囲がのんびり歩いているからといって安心してはいけないのです。我ながら迂闊でした。

今日は、民事弁護・刑事弁護の講義、担当の先生との会食、避難訓練などがありました。会食では、あらためて修習生が自己紹介しました。修習開始当初は、とにかく自己紹介する機会がやたらと多いので、あらかじめ話すネタを用意しておかないと焦るはめに陥ります。講義では、しばしばビデオが使われるなど、わかりやすくする工夫がなされているなと思いました。

しかし・・・なんでこんなに時間がないんだろう・・・。大したことやってないのに。一人暮らしは初めてなので、どうでもいいところで時間を食ってしまい、なかなか勉強にとりかかれないという状況が続いています。
Date: 2002/04/04



長い一週間
今日が終わればやっと休める! ということで、講義を聞くのも熱が入りました。

本日の講義は、民事裁判2コマと刑事裁判1コマ。先日の確認テストについて、個々の成績は明かされないものの、教官は「予想以上に出来が悪かった」と呆れておられました。自分も決して良いほうではないので、反省しきり。徐々に生活に慣れてきたら、勉強に集中したいです。

民事裁判では、まず、請求原因事実・抗弁・再抗弁という攻撃防御の流れに沿った形で、要件事実論を教え込まれます。刑事裁判は、ビデオを見て手続きの流れと記録の見方に慣れるという感じでした。講義中は、教官・修習生どちらからも積極的に質問がなされ、大学の講義よりもわかりやすいです。

講義後は、ソフトボール大会の練習がありました。運動が苦手な自分は試合には参加しませんが・・・。クラスの中には、かなり上手な人がいるので感心します。自己紹介などを聞いていてもそうですが、修習生でも案外スポーツが得意な人が多いですね。サッカーやタッチフットなどを自主的にやろうという向きもあるようです。自分は・・・身長があるので、バスケットでも始めてみようかなぁ。
Date: 2002/04/05



幻想は崩れ去りぬ
「司法修習生になったら、合コンしまくって遊び倒すぞ!!」という幻想をお持ちの方。残念ながら、自分が見る限り、現在の研修所のカリキュラムにはそんな暇は絶対にありません。次から次へと与えられる課題の山、大量に指示される参考文献、そして数々のクラス行事・・・。よっぽど時間の使い方が上手な人でない限り、なかなか遊び倒す時間は作れないなという気がします。

民事裁判の課題としては、売買・消費貸借・所有権関係訴訟を素材にした要件事実論の研究問題が出されました。講義では全く触れていないものも多々あり、「できるわけないやろー!」という感じでして、結局、自分で本を調べて模索しつつ解かざるをえません。(ただ、実務に出れば、まさに学ぶべきことは自ら探して自ら主体的に学ばなければならないわけですから、研修所のこのような教育のあり方もある意味で当然なのかもしれません)

今日は、講義の後に、クラスの親睦を深めるための行事として、飲み会が実施されました。教官の方も積極的に参加して下さいます。お酒が苦手な自分は、ほんのわずかのビールを口にして、よろよろと二次会まで参加させてもらいました。クラスの人達のキャラクターも徐々に明らかになり始め、大変盛り上がった会でした。
Date: 2002/04/08



あごがはずれた・・・
のかと思って焦りました。朝起きたら、口が1cm以上開かないんですよ。あごの骨のあたりが痛くて。ごはん食べるのも一苦労。修習開始早々、あごをはずす奴も珍しいだろうなぁ・・・と思いつつ医者に行ったところ、「顎関節炎」とのことでした。薬で治るそうです。

さて、今日は、初めての起案日でした。「起案」という言葉は一般にはあまり耳慣れませんが、草案を作るという意味です。要は、書面を作るテストのようなものでして、今日は土地建物売買契約を素材にした訴状の作成が出題されました。書面の書き方については、それほど手取り足取り教えてもらえるわけではありません。まだ右も左もわからないような状態で、いきなり書面を作れと指示されます。(ただし、白表紙等の資料は参照可なので、一応それなりの形にはなります。内容面はともかく・・・)。しかも4時間ぶっ続けで行われるので、終わった後はフラフラ。ふと、去年の論文試験を思い出さずにはいられませんでした。
Date: 2002/04/10



人生経験を総動員せよ
今日の講義は、検察問題研究と刑裁記録演習討論。討論は、とある住居侵入窃盗事件を素材に、6人から7人のグループに分かれて討論した後、クラス全体でその結果を吟味しあうという形式で行われました。

素材となる事件の記録はあらかじめ配布されているのですが、それにしてもみんなよく記録を読み込んでます。一見なにげない事実や供述であっても、評価の仕方によっては犯罪事実を推認させる証拠(あるいはその逆)に変身するんですねー。無批判にただ記録を読んでるだけだった自分は、クラスの人の発言を聞いていて、「なるほど、そういう見方もできるのか!」と何度も感心させられました。それと同時に、事実認定というのは、教科書的な手順を覚えればマスターできるというものではなく、自分自身のこれまでの人生経験を総動員してはじめて真実を見つけられる、そういうもののような気がしました。
Date: 2002/04/11



ある修習生の食生活
また一週間が終わりました。生活に慣れてきたせいか、今週はそれほど長いとは感じなかったです。隣の席のクラスメイトから「これで前期修習の6分の1が終わったんだねー。」と言われて、そういえばそうだなとしみじみしてしまいました。やっぱり、なんだかんだ言って、修習生活はあっという間に終わってしまうんだろうなぁ、と・・・。

ところで、修習生の食生活はどういうものか、気になる方もいらっしゃるでしょう。自分の場合を例に挙げると、まず朝食はたいてい寮の売店でパンとジュースを買って、部屋で済ませます。昼食は、廊下で食堂製弁当が売ってるので、それを食べることが多いですね。弁当の大きさに応じて、500円と300円の二種類があります。

夕食は、人によって様々でしょう。自分は、自転車で10分くらいのところにある「ガスト」でよく食べてます。ドリンクバーをつけても1000円以内でおさまるので非常に経済的です。ちなみに、もう少し近くには、「とんでん」という和食レストランもあるのですが、ここは1300円前後かかるので、毎日使うには少しきついですね。

なお、食堂も朝・昼・夕と開いていますが、これは寮の中ではなく、研修所の建物のほうにあります。従って、少し歩かないといけないので、自分はそれほど使ってません。味のほうは、まぁそんなにまずくはないけど、これで510円はちょっと高すぎるかなという感じです。(かつて、「味噌汁と言う以上は、ちゃんと味噌を入れてくれ!」という苦情が来たこともあるそうです。実は、少し遅い時間に食堂へ行くと、その日の分の味噌が既に品切れになっていて、味噌抜きのすましが出てくるんですね。このように、研修所の食堂は、遅い時間になればなるほど具材のグレードが下がっていくので、注意が必要です(笑)。) とはいえ、最も身近な存在であることは確かです。
Date: 2002/04/12



撃沈・・・
今日は,朝から検察の起案。とある強盗致傷事件について起訴状を書き,被疑者の犯人性について検討するというものです。が,自分は見事に撃沈しました・・・。書かなくてよい特別法違反にまで触れてしまったがために,時間不足に陥り,肝心の強盗致傷についての犯人性の検討がおそろしく雑になるという,まさに本末転倒の展開。こないだの民弁の起案は割と時間的余裕があったので,少しなめてしまってたんですよねー。ちょうどいい契機だと思って,気合い入れ直します。

3限目は,東京地裁の現役裁判官を招いて,倒産事件についての講演が大講堂で行われました。5時間近くに及ぶ起案のせいでみんな既に疲れきっていたので,正直「助かったー♪」という感じでした(笑)。2年修習の頃はこういった講演もかなり数多く行われていたようですが,現在はびっしり授業と起案が詰まっており,大講堂での講演はめったにありません。また,外国法の講座や,エクセルの使い方,音楽能楽なども,すべて正規のカリキュラムからは外されました。(夕方6時以降の選択制の課外授業という形で実施されています)

前にも書きましたが,修習は思った以上にハード。指示された課題を締め切りまでにこなさなければならないので,朝の4時や5時まで記録とにらめっこしていることはざらです。いや,まぁ,締め切り直前になるまでさぼってる自分が悪いんですが・・・。
Date: 2002/04/16



ハイテク講義
先日行われた民弁の起案が返ってきました。ポイントとなるいくつかの点について,○・△・×といった記号が付され,最後に2行ほど総評が書かれています。これに基づいて,起案の解説講義が行われるわけです。解説講義では,主だったミスや間違いについて実名で指摘され,その説明を求められます。「誰々くん。キミは〜〜と書いてたけれども,あれはなぜですか?」という風に,全員の前で晒されるわけです(笑)。これはなかなか恐怖でして,迂闊なことが書けません。

2・3限目は,民事共通講義でした。これは,民事裁判と民事弁護のジョイント講義でして,教官が二人並んでそれぞれの立場から説明をするというものです。今日は,とある貸金返還請求事件を素材としたビデオを見て,それを基に手続の説明がなされました。このようなビデオ視聴の他,研修所の講義では,板書の代わりに一太郎のスライドショー機能やエクセルを使うことも多く,そのハイテクぶりに驚かされます。大学の授業よりはずっとわかりやすく,教育的配慮に富んでいますよ。
Date: 2002/04/17



疑問を持つことは難しい
今日は,昨日のビデオについてのクラス討論が行われ,それぞれの疑問点などをぶつけあいました。毎度のことながら,他の人の意見を聞くと,よくそんなことに気づいたなぁと感心させられます。「物事に対して疑問を持つ」って,意外と難しいんですよね・・・。今までの受験勉強では,ただひたすら与えられたものをマスターするという感じだったので,物事を批判的に見る眼が全然身についてないんだと思います。それを身につけられるかどうかが,自分の中で,前期修習の課題のひとつかなという気がしています。

ところで,寮の生活について気になる方もいると思うので,今日はこの点について少し紹介します。司法研修所いずみ寮は,7階建てのコンクリート打ちっ放し2棟で,定員は650人位。部屋は6畳くらいの広さで,机・ベランダ・クローゼット等収納・ユニットバスがついてます。テレビは持ち込み可ですが,NHKの受信料を払わなければなりません。他方,高熱を発する器具(コンロ・ストーブ等)は持ち込みが禁止されています。自炊はあきらめた方がいいでしょう。その他,共同の設備として,ランドリー・自販機・売店・クリーニング店などが寮内にあります。

外出は,基本的に自由です。ただし,セキュリティの観点から,帰ってきたときに身分証明書の呈示を求められます。周辺にはコンビニが1件あるだけなので,ファミレスや駅周辺に行くには寮の自転車を使うことになるでしょう。自転車は,講義直後など人が集中する時間を除けば,たいてい空いてます。駅前にはイトーヨーカドーがあり,たいていのものはここで調達することができます。

とりあえず表面的なところを,思いつくままに書いてみました。続きは,また今度ということで・・・。
Date: 2002/04/18



アウトかセーフか。それが問題だ。
今日は,毎年恒例のクラス対抗ソフトボール大会が行われました。こういった行事に対する取り組み方は,各クラスによって様々です。うちのクラスでは,全員でおそろいのユニフォームを着たり,応援団を結成してあらかじめ応援練習をしたり,応援用ボードを作ったりと,なかなか凝った取り組みがなされていました。

試合はトーナメント形式で行われます。出場するのは,一応11人(外野5人)ということになっていますが,選手交代でなるべく全員が参加できるような配慮がなされます。うちのクラスは,当初,「3回までに勝負を決める」と自信満々でしたが,しょっぱなから強豪クラスに当たってしまい,惜しくも敗れてしまいました(この強豪クラスは,そのまま優勝したようです)。もっとも,教官やクラスの人達の意外な面が見れたり,クラスが一丸となれたりで,有意義な行事だったと思います。

夕方からは,打ち上げが行われました。もちろん教官の方々も参加して下さいます。自分はお酒飲まないのでよくわかりませんが,人間関係を表面的なものから一歩前へ進めるのは,やはり飲みの場なのかなぁと思ったりもします。修習生になると,様々な名目で飲む機会が多いので,お酒の飲める方は積極的に参加したほうがいいのかもしれません。
Date: 2002/04/19



「知らない」は通用しない
「知らない」は通用しない
−という言葉を,研修所に入ってからよく耳にするようになりました。配られた本・資料に載っている以上は,当然にそれを読んでいるものとみなされるのであって,「知らない」では済まされない。事務局長の講話や教官の説明の中で,この言葉がちょくちょく登場します。自分のように,学生気分が抜けない修習生には耳が痛い話ですが・・・。

今日の民事裁判の起案は,とある建物収去土地明渡請求事件の記録を読んで,訴訟物や当事者の主張を整理するというものでした。何をどう書いたらいいかなんて,いちいち教えてくれません。起案の手引き(かなり分厚い)を読んできていることが当然の前提となっており,ここでも「知らない」は通用しないわけです。

3限目は刑事弁護の起案の講評でした。修習生が書いた保釈請求書を読んで,「こんな請求書じゃ,要件を充たしてたって保釈もらえないかもよ」と呆れておられました。とはいえ,保釈請求書の書き方について事前に詳細なレクチャーがあるわけではなく,ここでも修習生が自分で本を調べることが当然の前提になっています。

こうして見てくると,研修所は,「自分で調べ,自分で学ぶ」ことを教えようとしている気がしてきました。実務家として独り立ちするためには,それこそが一番大事なのかもしれません。
Date: 2002/04/22



事務所訪問
まだ前期だというのに,早くも周囲からは「○○事務所を訪問した」という話がちらほら出始めてきました。教室の後ろにある掲示板を見ると,事務所訪問の案内ビラがいくつも貼り付けてあります。その多くは,いわゆる渉外系の事務所です。中には前期のうちに内定が出るところもあるとかないとか。その他,弁護士教官の事務所にお邪魔する企画なども予定されているようです。(ちなみに,自分はまだ一つも訪問しておらず,かなり出遅れの感あり・・・。任官志望といえども,事務所訪問で色々ためになる話を聞くことは有意義だとは思うのですが,いかんせん時間が無いもので・・・。)

さて,今日の1・2限目は,刑事弁護の起案。とある傷害事件を素材として,またもや何を書いたらいいのか悩む問題が出題されました。まぁ,わからないのは毎回のことなので,それほど驚かなくなりましたが(苦笑)。刑事弁護という科目は,捉えどころがないというか,要件事実のように明確な指針がないので,どうも難しく感じてしまいます。

3限目は,刑事裁判の起案の返却と,問題研究の講評でした。いくつも刑事事件の記録を読んでると,どの事件がどういう話だったか,頭の中でごっちゃになってきますね。「あれ,この事件って,あの証拠なかったっけ?」ということもしばしば・・・。実務家の先生は100件以上も事件を持っておられたりするそうですが,本当に頭が下がります。
Date: 2002/04/23



3日連続起案・・・
今日は,民事弁護の日。まず,1限目では,借地借家関係の事案を用いて,答弁書一般の説明がなされました。そして,2・3限目は,これを前提に答弁書の起案をするというものでした。記録を読みながら,登場人物を整理し,起きた出来事をメモっていくプロセスにも,徐々に慣れてきた感じがします。もっとも,起案は時間との戦いでして,記録を読むのにあまり時間をかけすぎると,肝心の起案が書ききれなくなってしまいます。1分でも遅れると「時間外起案」の評価を受けてしまうため,締切時間直前になるとホッチキスの取り合いになります(起案は,ホッチキスで端をとめて提出するので)。

さて,寮の生活の紹介について,少し追加しておきます。こないだ書き忘れましたが,各部屋には小さな冷蔵庫が備え付けられています。飲み物や軽食程度なら,ここに入れておけばいいですね。あと,共用の電子レンジもあります。自炊しないのであれば,食べ物で不便を感じることはそうないでしょう。また,ふとんは業者による貸し出しがあり,週1回取り替えてもらえます。

寮の部屋に持ってきておくと便利なものとしては,
・カーペットなど床に敷くもの(病室のように白い床なので,殺風景です)
・電子ポット(給湯室のお湯は,なんとなく信用できないので・・・(汗))
・パソコン・プリンター(自宅起案では,パソコンの使用が推奨されています)
・二股のモジュラージャック(一方は電話機に,他方はパソコンにつなぎます。これがないと,いちいちつなぎ替えるのは面倒ですし,また,90秒以上ジャックを外してると異常を察知した警備員が見に来ます(笑)←寮のHELP機能が作動してしまうそうです

逆に,持ってきてもあまり役に立たないものとしては,
・予備校のテキスト(研修所では,いわゆる「論点」はあまり扱わない)
・携帯電話(部屋にもよるが,電波の入りはおおむね悪い。ロビーでは圏外になる)
・テレビ(見る暇ありません)
・食器類(部屋には流し台がないので,洗いに行くのが面倒です)

といったところでしょうか。また気づいたことがあれば,ここで紹介します。
Date: 2002/04/24



修習生の実感
街が眠ろうとしている午前0時。その男は,雑踏から逃げ出すようにドアを開け,深々とシートに腰をかけた。窓の外に目をやると,テールライトがその顔を紅く映し出した。

「どちらまで?」

乾いた声で尋ねる声がする。

「司法研修所まで」

男はそうつぶやいた。何気ないその台詞の中には,秘めた慈愛性が込められているようだった。自分の人生でさえも脇役を演じている,そういうタイプだ。


・・・って,別に,ハードボイルドな書き方をする必要はないんですが(苦笑)。えっとですね,自分が修習生になったということを一番実感する瞬間って,タクシーでこのセリフを言う時なんですよ。実にくだらないんですが,反面,妙に快感だったりします。いや,だからどうしたって言われると困るんですが・・・。

まぁ,たまにはこういう馬鹿馬鹿しい日記もいいかなと(笑)。GWは目の前。あと一日,頑張ろう。
Date: 2002/04/25



いずみ菌
のどが痛い・・・。連休を前にして,どうも風邪を引いたみたいです。寮の集団生活では,いったん誰かが風邪を引くと,瞬く間にそのウイルスが蔓延します。(通称「いずみ菌」と呼ばれています) 自分の場合,やっぱり睡眠不足がたたったかなー。

今日の1限目は,弁護共通講義でした。地方で活躍される弁護士の先生を招いて,活動内容や実務の現状,弁護士過疎などについて話していただくという企画です。うちのクラスは,奈良弁護士会の先生でした。(奈良って「地方」なのか? と自分は少しひっかかりましたが・・・。まぁ,関東人からすれば,大阪以外の近畿1府4県は全て「地方」なのかもしれませんね・・・。)やはり実務では破産・相続・離婚の事件が圧倒的に多いとのことでした。その他,刑事弁護の割り当て方や,平均的な受任件数,実労時間,年収など,大変興味深い話をしてくださいました。

2・3限目は,民事裁判の起案の講評。返却された起案には,赤ペンで教官の心優しいコメント。・・・が,ホッとしたのもつかの間。講義で説明を聞いているうちに,書き落とした点があまりにも多いことに気づき,だんだん顔が青ざめてきました。いや,この調子でやってたら,絶対あかんなと。そろそろ講義終了後の勉強のペースをつかまないと・・・。今日も反省しきりなのでした。
Date: 2002/04/26



「君は前回の講義を欠席していたのか?」
パソコンがぶっ壊れました。ハードディスクからガリガリと音がして、OSすら立ち上がらないという、非常にまずい状況。もうかなり古いからなぁ・・・。ひとまず修理に出して、当分はザウルスをPCがわりに使おうと思ってます。(この日記もザウルスで書いてます。かなり時間かかりますが・・・)

さて、今日は検察・刑弁の起案が返却され、その講評が行われました。自分はいずれもかなり厳しい評価を食らってます。特に刑弁の起案には、赤ペンで「君は前回の講義を欠席していたのか?」「全くわかってない」と、この上なく不名誉なコメントが書かれていました。これは完全に勘違いした起案を書いてしまっていたので、弁解の余地はありません。自分は基本的に頭悪いので、ちょっと気を抜くとこのように奈落の底まで落ちてしまいます。やっぱり人以上に勉強しなければ・・・。

Date: 2002/04/30



事実認定は「才能」か
今日は、1限目から3限目までずっと刑事弁護の即日起案でした。時間にすると、なんと6時間50分!(昼食は、この時間の範囲内で自由にとることができます) 内容は、とある覚醒剤取締法違反事件を素材として、弁論要旨を作成せよというものです。

司法試験の論文と、研修所の起案の最も大きな違いは、事実認定の有無です。つまり、司法試験の論文は、事実が既に確定していることを前提として、いかなる法解釈・法適用をなすべきかを論じます。これに対し、研修所の起案は、そもそも事実はどうであったのかという点を、証拠によって認定する必要があるのです。

この事実認定が、なかなか一筋縄ではいきません。検察官や弁護人もバカじゃないですから、それなりにもっともらしい理由をつけて証拠を提出してくるんです。その中で、この証拠は信用できない、あの証拠は証拠価値が高い、だから真実はこうだと、そう簡単に判断できるものではありません。事実認定は「才能」だと言われたりもしてるようですが、確かに「本や白表紙を読んだからといって、直ちにできるようになるものではない」という意味では、一種の「才能」なのかもしれません。少なくとも現在の自分の起案には、「才能」の片鱗も見えませんが・・・。
Date: 2002/05/01



知覚・記憶・表現叙述
昨日の刑弁に引き続き、今日も容赦なく刑裁の即日起案でした。内容は、とある殺人事件の訴訟記録(100ページ弱)を読んだうえで、判決主文・理由・事実認定上の問題点を書けというものです。

なぜ起案がうまく書けないのか・・・その原因を自分なりに考えているのですが、やっぱり記録の読み方が下手なのかなという気がしてます。膨大な量の訴訟記録を読んでいくと、最初のほうで読んだことを忘れちゃうんですね。それで、供述に矛盾点やおかしな点があっても気づかずに読み飛ばしてしまうし、また心証も非常にとりにくくなると。

ちなみに、研修所の訴訟記録は、マーカー等で書き込みをすることが認められていません。そのため、付箋を貼ったりメモをとりながら記録を読むことになるわけですが、このへんも要領がつかめていないため、大量に付箋を貼りすぎたり、余計なことをメモしすぎたりで、かえってわかりにくいだけになってしまいます。

さらに、起案のスタイルも全く確立できていないため、記録から読み取ったことを的確に起案上に表現できないというのもあります。

要するに、知覚・記憶・表現叙述の過程すべてに問題があるという感じでして(苦笑)、どっから手をつけたらいいのやら・・・。ひとまず明日からは待ちに待った連休なので、体と頭をゆっくり休めて、前に進む方法を考えることにします。
Date: 2002/05/02



ディベート、そして事務所訪問
この日記は、「修習生活を紹介する」というコンセプト上、平日しか更新していません。今日は連休明けで久々の更新です。

今日の講義は、連休前にあった刑弁起案と刑裁起案についての討論および講評でした。討論は、グループ対抗のディベート形式で行われます。時間を分刻みに区切って行われるため、非常にスピーディ。それでも発言者どうしのやりとりはいずれもそれなりに説得力を持っていて、ほんと頭の回転の速い人が多いなぁと驚きました。

討論の終わりに、教官から修習生に耳の痛い一言。「まぁ、今議論されてたようなことを、きちんと起案に書けてるかどうかはまた別なんだよねぇ。」・・・いや、ごもっともです。

夜は、修習始まって以来、はじめて弁護士事務所の訪問に参加しました。といっても、民弁教官の事務所を見せていただくという企画なので、それほど堅苦しいものではありません。5分ほど事務所の中を見せてもらい、あとはイソ弁の先生を交えて飲み会へと流れて行くのでした(イソ弁というのは、いそうろう弁護士の略です。独立の事務所を構えない勤務弁護士をこう呼びます)。飲みの場では、教官とイソ弁の先生から様々な体験談を聞かせてもらうことができ、しかも先生のおごりだったりするので、非常に有意義です(笑)。
Date: 2002/05/07



竜頭蛇尾・・・
昨晩の疲れもまだとれてないというのに、今日は検察の即日起案でした。とある私文書偽造・同行使・詐欺事件を素材として、処分表と求刑表を作り、問題点の指摘をするというものです。

求刑表では、「懲役〇〇年」といった具合に、自分が妥当と考える刑を記入します。これが案外悩むんですね。罪数処理や刑の加重減軽や没収など、司法試験では手薄なところですし。また、どのあたりが妥当な刑なのかという量刑感覚も身についてないですからね。数をこなすことの大事さを感じます。

自分は、始めこそ快調に書き出したものの、いつのまにか時間が足りなくなって(「ちょっと足りない」どころじゃありません。書きたいことの半分も書けるか書けないか程度です)、結局、竜頭蛇尾な起案になってしまいました。付箋とメモの使い方はそれなりに工夫していろいろと試してるのですが、まだ使いこなせてません。我ながら進歩がない・・・。こんなんで実務修習についていけるんかなぁという気にさせられます。
Date: 2002/05/08



その一瞬を逃すな
ここまでの修習からすると、週のはじめ(月・火・水)が起案で、週の終わり(木・金)が講義や講評のことが多いです。週末はかなり疲労がたまってくるので、そのへんに配慮してあえて起案を外してくれている・・・のかどうかは不明ですが。とにかく、今日もその例に漏れず、検察起案の討論と民弁起案の講評が行われました。

いい起案を書けるかどうかは、情況証拠をいかに丁寧に拾えるかにかかってるという感じがします。あとで解説を聞くと、「あー、それも一瞬頭をよぎったんだけどなぁ・・・。」ということがよくあります。でも、その一瞬のひらめきを逃さずにメモって起案に反映できるか、そこが大事だと思うんですよね。記録を漫然と読んでるか、争点にメリハリをつけて読んでるかの違いもそこで出てくるんじゃないかなと思ったりしてます。・・・もっとも、言うは易し、行うは難しですが。

講義後は、ゴルフ部(クラス内での自主的な集まりです)の活動に参加させてもらいました。ゴルフクラブを握ったのは生まれて初めてです。あれって、簡単そうに見えても、いざやってみると全然前に飛ばないもんなんですねぇ(笑)。打ち方を色々教えていただいたんですが、体はなかなか思った通りに動きません。でも、なかなか奥が深そうなので、時間とってまた練習してみようかなと思いました。
Date: 2002/05/09



これからの法曹に必要なもの
今週もあっと言う間に終わってしまいました。今日の講義は、民弁演習・民裁講義・検察講演です。

民弁演習は、離婚の法律相談を受けたものと仮定し、妻側の立場と夫側の立場に分かれて、具体的な要求内容および裁判離婚の可否を検討するというものでした。公平な財産分与とはどのようなものか、真に子供の利益になる生活環境とはどのようなものかなど、離婚訴訟には非常に難しい問題が色々あって、考えさせられます。・・・いや、まぁ、そもそも結婚の経験すらないのに、離婚うんぬんを考えるところにかなり無理はあるのですが(苦笑)。

さて、今日のアフター5は、東京地裁を見学し現職の裁判官からお話をうかがうという企画に参加してきました。準備室や法廷を見学したほか、事件簿のデータベースやテレビ電話会議システムも実際に使わせてもらうなど、めったにできない経験をさせていただきました。そして、そのまま裁判官の方々を交えて、やはり飲み会へと流れていきます。お話の中で、「法曹が権威的にふんぞり返っていられる時代は終わった」「これからの法曹に最も必要なのは、人から話を聞き出す能力や人を説得する能力、すなわちコミュニケーション能力だ。それが無ければ、いくら要件事実論を知っていても意味が無い。」と熱く語っておられたのがとても印象的でした。
Date: 2002/05/10



睡眠不足のそのワケは・・・
今日は,民裁起案と国際人権の講義でした。起案の前日は,いつも朝の4時か4時半ころまで本を読んでいるので,肝心の起案の時に睡眠不足で頭が働かないという,実に本末転倒な状態が続いています。

朝まで本を読んでるということで,「あいつはよく勉強している」とか思われがちですが,それは全くの誤解でして・・・。単に勉強を始めるのが遅いだけなんですね。日付けが変わる頃にようやくエンジンがかかりだすという(苦笑)。研修所の朝はわりと遅いので(9時55分登庁),それでもなんとかやっていけてます。

さて,先日は民弁教官の事務所訪問に参加してきましたが,今日はそれに続いて刑弁教官の事務所訪問に参加してきました。高い壁で個別に仕切られたデスクがあり,それぞれの机にパソコンと大量の記録が置かれ,応接室には法律書となぜか絵画が置かれているというスタイルは,おおむねどこの事務所でも同じ感じですね。で,ひとしきり見学した後は,貸切の屋形船で親睦を深めたのでした。修習生にとっては,むしろ後者の方がメインだという話もありますが(笑)。とにかく,教官の方は非常によく修習生の面倒を見てくださるので,こちらもそれになんとか応えなきゃなぁと思いました。
Date: 2002/05/13



自宅起案か即日起案か
今日は、民弁の自宅起案日。登庁する必要がないので、ずっと寮で過ごしました。

自宅起案は、即日起案に比べると一見ラクそうにも思えますが、実は即日起案よりもはるかにキツイです。なぜなら、即日起案は時間が限られているぶん、ある程度妥協というか、あきらめがつくんですよ。もうしゃーないなと。・・・ところが、自宅起案では大量に時間があるため、かえってあれこれと考え込んでしまい、色々と書き直してるうちに結局徹夜に近い状態になってしまうんです。

今回もまたその例に漏れず、結局、寝たのは日が昇り始めた午前5時ころなのでした。
Date: 2002/05/14



お食事中の方は読まないで下さい
昨晩の自宅起案のため、ほとんど寝ずに起床・・・。脳が半分ほどしか働いてないような状態で講義に参加したため、1限目の刑裁起案講評で当てられて、「間接証拠とは直接証拠を推認させる証拠です」などと意味不明なことを口走って、失笑を買ってしまいました。

さて、今日の講義後は、東京地裁の訪問企画に参加してきました。前回の民事部に引き続き、今回は刑事部です。今日伺った部は租税関連の事件(脱税など)を扱っている部なのですが、その他にとある強盗殺人事件の記録も見せてもらえることになりました。こわいもの見たさで、おそるおそる開けたその記録の中にあったのは・・・・・・

それは、死体の写真でした。様々な角度から、様々な大きさで撮った、いくつもの死体の写真。さらにページをめくっていくと、やがてその体内や臓器の様子も写し出されていました。ご当人には大変申し訳ないのですが、見ていてあまり気持ちのよいものとは言えません。人の姿形をしていながらもはや人ではない、その異様とも言える写真群を前にして、修習生一同、その場で凍りつきました。

その後、座談会という形で、修習生からの素朴な質問に丁寧に答えていただき、貴重なお話も聞くことができたので、色々な意味での「経験」ができた一日でした。
Date: 2002/05/15



いずみ菌、猛威をふるう
風邪が一向によくならず、むしろ日に日に悪くなってきていることから、今日はついに講義を欠席してしまいました。今日行われている講義は、刑弁起案講評、全科共通討論、一般講演のはずです。

寮で風邪を引いた場合、寮に備え付けの風邪薬を飲むか、研修所内診療所でみてもらってお薬を処方してもらうことになります。いずれも無料で利用することができるので、大変ありがたいです。ただ、診療所は週2回、14時から16時までしか開いておらず、少し不便かなぁという感じもしますが・・・。幸い、今日はその診療日だったので、診察を受けてお薬をもらってきました。

夜になって、クラスメイトが配布物やノートを持ってきてくれたり、レジュメの内容をメールしてくれたのは大変嬉しかったです。研修所同期の大切さをひしひしと感じました。
Date: 2002/05/16



「ハウス」は禁句
近時の「法曹は世間知らずだ」という批判に応えてか、研修所のカリキュラムには施設見学(小学校でやる社会見学のようなもの)が組み込まれています。

うちのクラスは、積水化学の研究所を見学しに行きました。観光バスに乗って、こちらはすっかり遠足気分なわけですが、バスの中ではセクシャルハラスメント問題のビデオが放映されるなど、やはりあくまで修習の一環なのでした。

今回見学したのは、主に住宅の開発研究施設です(テレビでよく見る積水「ハウス」とはまた別会社だそうです。ちゃんと積水「化学」と呼ばないと怒られるので、注意が必要です(苦笑))。防音・防火・耐震といった基本的事項の実験施設、身体の不自由な方のために浴槽の高さや洗面台の形状を研究する施設、太陽光発電の実験施設など、説明を織り混ぜて見せていただきました。・・・まぁ、どんな経験が将来役に立つかわかんないですから、これもまたひとつの経験かなと思ってます。

見学の後は、クラス内の自主的企画として、鬼怒川温泉に行ってきました。こちらは任意参加ですが、クラスの親睦を深めようということで、教官を含む多くの方が参加します。自分は風邪が治りきらないのですぐに寝ましたが、中には朝まで飲んでた人もいるようでして・・・。しばし起案のことも忘れてのんびりした時を過ごせたのでした。
Date: 2002/05/17



追いつけるか?
早いもので,前期修習も折り返し地点。今日から,前の座席と後ろの座席が入れ替わって,心機一転のスタートです。

1限目の刑裁問題研究では,とある業務上過失致死事件(交通事故)を素材として,注意義務違反の捉え方などを学びました。この種の事件は,証拠が薄く,供述も変遷することが多いうえ,どの行為を過失と捉えるべきかも明確でないため,実務上最も難しい部類の事件のひとつだそうです。講義を聴いていて,実務というのは,学説のよいところは取り入れつつも,あくまで生の事件に根ざした考えをしているなぁという感じがしました。

3限目の検察起案講評では,先日書いた起案がなんと「成績付き」で返ってきました。実にシビアです。自分は,これまでにも数々の不名誉なコメントを頂きましたが,今回はさすがに焦るというか,かなりこたえました。もちろん,講評を聞く中で,起案の書き方や考え方を教わって,なるほどーとは思うわけですが,こんな調子ではたして他の優秀な人達に追いつけるんやろうか・・・と。つまり,

 自分の現在の実力を点数化した数値をA0,
 優秀な人達の現在の実力を点数化した数値をB0(ただしB0>A0),
 1回あたりの講義で伸びる力をPとすると,

 今回の講義終了時における自分の実力:A1=A0+P
 今回の講義終了時における優秀な人の実力:B1=B0+P

 次回の講義終了時における自分の実力:A2=A0+2×P
 次回の講義終了時における優秀な人の実力:B2=B0+2×P

 N回目の講義終了時における自分の実力:An=A0+N×P
 N回目の講義終了時における優秀な人の実力:Bn=B0+N×P

といった具合に,いずれも公差Pの等差数列となって,結局いつまでたっても差は埋まらないんじゃないかと・・・。

まぁ,悲観的になってても仕方ないので,とりあえず風邪を完全に治してから,真剣に反省して勉強のやり方を再度見直してみようと思ったのでした。
Date: 2002/05/20



強気の刑裁,弱気の検察
昨日はひさびさに日記をすっぽかしてしまいました。その理由は言わずもがな,刑弁の自宅起案で一日中苦しんでいたわけで・・・。複雑な計算を伴う,実に面倒な事件でした。さすが,あえて即日ではなく自宅としているだけのことはあります。

そして,今日は刑裁の即日起案でした。迷信ですが,修習生の間では,「強気の刑裁,弱気の検察」という言い伝えがあります。これは「刑裁起案では,起訴された罪で有罪とする方向で積極的に認定をした方がよい。他方,検察起案では,やや慎重になって,一段階軽い罪で起訴した方がよい」という意味だそうです。この真偽のほどは不明ですが,いずれにせよ,無罪になるような案件はめったに出てこないですね。

ちなみに,前期修習での刑裁の起案はなんと今日が最後。は・・・早すぎる・・・。怒濤のごとく毎日が過ぎていきます。いまだ素人気分の抜けきらない修習生の脳裏に,「これまでの講義の集大成と思って取り組むように」という教官の言葉がずっしりと重くのしかかるのでした。
Date: 2002/05/22



代物弁済は要物契約か
タイトルの質問について,賢明な受験生諸君なら迷わず「YES」と答えることでしょう。しかし,今日の講義で聞いたところによると,研修所の民裁教官室ではこれを諾成契約とする教官が多数なのだそうです。その理由についてはあまり明確にされませんでしたが(というか,単に聞き落としただけですけど),所有権移転の効果については合意のみで生じるという判例理論をより整合的に説明しうることが,大きな理由のひとつだと思われます。実務における判例の重要性,影響力の大きさが,こういったあたりでも垣間見れるわけですね。

さて,今日の講義は,民裁起案講評と刑裁起案講評だったのですが,さらに課外選択授業としてExcel初級コースを受けてきました。研修所にはOA教室も完備されており,今日はここにNECのインストラクターを招いて講義が行われました。近時,裁判実務のOA化が進み,これからはコンピューターが使えないと実務でやっていけないと言われています。・・・かくいう自分も,ホームページ以外に関しては全くのド素人。今日もsum関数やオートフィルのあまりの賢さに一人感動してしまい,部屋に戻ってから,用もないのにExcelをつけたり消したりして遊んでいたのでした(←お馬鹿)。
Date: 2002/05/23



研修所で何を学ぶか−その1
5月もまもなく終わり。今日は少し趣向を変えて,研修所で学ぶ各科目がどのようなものか,簡単に紹介したいと思います。

まず,民事系科目として,民事裁判と民事弁護があります。もちろん,講義をする教官は現役の裁判官・弁護士ですので,ご自身の体験談などを随所で聞かせてもらえます。たまに,両者のジョイント講義として民事共通というのもありまして,この時は2人の教官が並んで講義をされることになります。

民事裁判では,主に「要件事実論」というのを学びます。受験勉強でも,94条2項類推適用の要件だとか,履行遅滞に基づく損害賠償請求の要件だとかを覚えたりしますよね。あれとよく似てるんですが,あれに立証責任という観点を加味した上で,請求原因・抗弁・再抗弁という形に整理したものをイメージしてもらえればよいかと思います。

たとえば,履行遅滞に基づく損害賠償請求の要件として,通常,
 ?履行が可能であること
 ?履行期を徒過していること
 ?債務者の帰責事由に基づくこと
 ?遅滞が違法であること
 ?損害の発生
 ?因果関係
の6つを,受験では覚えますよね。しかし,受験生のみなさんもご存じの通り,?や?については,債権者(原告)ではなく債務者(被告)が立証責任を負うわけでしょう。そこで,要件事実論においては,履行遅滞に基づく損害賠償請求の請求原因事実に?や?を含めず,むしろこれらを抗弁事実として位置づけるわけです。民事裁判では,このような主張の整理の仕方と,それを判決で摘示する際の記載方法を学ぶことになります。

他方,民事弁護では,要件事実論の理解を前提とした上で,訴状や答弁書の記載の仕方を学びます。民裁と異なり,「裁判所に事実をわかってもらう」という点に重きが置かれるため,背景的事情の記載などもする必要があります。また,素人である依頼者の話を,法律的な主張に再構成するという作業も必要になってきますね。起案の素材としても,生の法律相談の会話がそのまま出題されたりします。

スペースの関係上,刑事系科目については次回ということで・・・。
Date: 2002/05/24



第二の家族
おそらく,今週が前期修習のヤマ場でしょう。なんと起案が3本もあるんです。今日は,その1本目として,民裁の即日起案がありました。実は,前日,いずみ寮内で「譲受債権訴訟が出るらしい」という噂が出回っていたのですが,いざフタを開けてみると,全くノーマークだった登記関係訴訟が出題されてしまい,修習生は一斉に青ざめました(苦笑)。ちなみに,今回から白表紙の参照も不可となったため,実力の差がモロに出てしまうものと思われます。こわっ・・・。

夕方からは,高松で一緒に実務修習をするメンバーで集まって,寮の談話室で飲み会をやりました。通常は,入所パーティーで初顔あわせをするのですが,自分は劇に出演していたため,今日が初顔あわせになります。大阪や東京などと違い,高松修習は人数が2ケタにも満たないため,非常にアットホームな雰囲気。「第二の家族になろう!」という言葉がとても印象的でした。
Date: 2002/05/27



研修所で何を学ぶか−その2
前回に引き続き,今日は刑事系科目についてご紹介します。

刑事系科目としては,刑事裁判・検察・刑事弁護の3つがあります。教官は,もちろん現役の裁判官・検察官・弁護士。なんとなく,民事系に比べると,全体として少し厳しめかなという印象を受けます。刑罰という重大な人権侵害と密接に関わるわけですからね・・・。

まず,刑事裁判は,供述調書や実況見分調書,証人尋問調書といった訴訟記録を読んで争点を見つけ出し,証拠の構造(証拠の枠組み)を把握したうえで,それに沿って争点についての判断を下す,というプロセスを学びます。これがなかなか一筋縄ではいきません。記録の量が膨大ですし,また供述内容も人によってバラバラで,「一体どれを信じたらいいんだー?!」ってこともしばしばです。あと,判決主文を書くに当たっての量刑,未決勾留日数の算入,没収などについても,具体的事例を通じて学ぶことになります。

次に,検察は,やはり膨大な量の捜査記録を読んで,被疑者が本当に真犯人なのか(犯人性),また当該行為が犯罪にあたるのか(構成要件該当性)を検討し,最終的に起訴するなら起訴状,不起訴なら不起訴裁定書を書く,というプロセスを学びます。実際に起案を書くにあたっては,刑事裁判の考え方との違いがわかりにくく,初めの頃は結構悩みますね。また,検察は時間との戦いでして,スピードが非常に重要です。法定の身柄拘束期間内に仕事を終わらせる必要があるわけですから,当然といえば当然ですが・・・。

最後に,刑事弁護は,刑事裁判と同様,膨大な量の訴訟記録を読んだ上で,検察官側の証拠の不備・矛盾点を探し出し,基本的には無罪の弁論要旨を書きます。起案では,いかにも有罪っぽい事件や,被告人が明らかに嘘をついてるっぽい事件が出題されるため,とっかかりがつかめず,「こんな奴を一体どうやって無罪にするんだ?!」と困ってしまうこともあります。ただ,弁護科目は,書式・形式面が割と自由なので,その意味では書きやすい面もあるかもしれません。

・・・民事系・刑事系の各科目は,それぞれ違った難しさがあります。正直,実務は,たった3ヶ月で身に付けられるほど甘くはないです。それでも,修習生はみな,法曹としての礎になるであろう「何か」をつかむため,今日もペンを走らせるのです。
Date: 2002/05/29



ヤラセなしです。
今日は一日中検察起案でした。内容は,強盗で送致されてきた共犯事件の捜査記録を読んで,起訴不起訴の決定をするというものです。自分は,前回の検察起案の出来が誠によろしくなかったので,昨日,検察の補講を受けてきたんですよ。そのかいあってか,幾分は起案もマシになったような気がします。

ところで,先日,日本テレビの電波少年という番組を久々に見ました。なんか,構成作家を目指す人達が1つ屋根の下で集団生活を送り,テスト漬けにされてしごかれ,徐々に勝ち残っていくみたいなコーナーをやってたんですが・・・。それを見て自分はふと思ったんですよ。これって,まさに司法修習じゃないかと(笑)。周辺に何もない環境のいずみ寮で集団生活を送り,7時間ぶっとおしの起案を毎週いくつも書き,その生活の様子を日記という形で発信する,まさに一切ヤラセなしの「リアル電波少年」じゃないかと,こう思ったわけです。なんで今まで誰も気づかなかったんやろう(笑)。

なにはともあれ,今日の起案が終了したことで,前期の大きなヤマは越えました。あと1ヶ月,頑張ろう。
Date: 2002/05/30



夢の中へ・・・?
今日の講義は,全て選択制講座でした。具体的には,
1限目−破産法or国際公法or刑事政策
2限目−司法精神医学or日米刑事司法or外国人弁護or当番弁護or科学捜査
3限目−行政法or労働法
の中から,それぞれひとつずつ選択して受講するというものです。自分は,破産法・当番弁護・行政法を選択しました。ただ,これらの講義は,学者の先生(大学教授)を招いて行われるため,やや難解・・・。連日の起案で疲れきっている修習生は,ここぞとばかりに夢の世界へと吸い込まれていくのでした。

休み時間には,56期アルバムの写真撮影も行われました。なんと,プロのカメラマンが一人一人を撮影してくれます。指示に従って右を向いたり左を向いたり,なにやら本格的で驚きました。そういえば,クラスにはアルバム委員という人達もいて,イベントがあるごとに数多くの写真を撮ってくれています。おそらく,イベントへの参加率がアルバムでの登場率に正比例することでしょう。とすると,自分はそれほど載ってないかもしれませんが・・・でも,買います(笑)。
Date: 2002/05/31



人が嫌がる仕事を引き受けるということ
暑い・・・。研修所の教室は,あまりクーラーがきいていないので,ほとんどの人が上着を脱いで講義を受けています。そんな中行われた今日の講義は,民裁判例研究討論,検察起案討論,選択講座(破産法)でした。

民裁討論は,グループごとに分かれて話し合って意見をまとめた上で,代表者がそれを発表するという形で行われました。こういう形の場合,話し合うところまでは順調に進むのですが,誰が代表者になるのかを決める段階になるとついつい互いに押しつけあってしまうんですね。今日も,案の定,誰も代表者をやりたがらないのでなかなか決まりませんでした。・・・が,時間まぎわになって,検察官志望のKさん(仮名)が代表者を買って出たのです。

そのとき,自分は背筋に冷たいものを感じました。「今日は準備不足なんで・・・」と逃げていた自分が,とても小さく,とても情けなく,とても自分勝手に思えました。人が嫌がる仕事を引き受けられるかどうかは,まさにその人のこれまでの生き方を反映するような気がします。そして,それを引き受けられることが,思いやりある法曹になるための資質でもあるような気がしてなりませんでした。自分のためではなく,人のために働ける,そんな法曹になるための・・・。

受験時代の生活と修習時代の生活との大きな違いのひとつは,色々な意味で尊敬できる人に数多く出会えること,そして自分もその人に近づくために変わろうと思えること。じゃないかな。なんて。
Date: 2002/06/03



修習生,吠える
今日の講義は,民弁起案講評,刑弁演習講評,民事共通講演の3つです。3限目の民事共通講演は,東京地裁の執行部で働いておられる現役の裁判官を講師に招いて,民事執行法の基本的な制度の説明が行われました。大講堂に1000人が集まって講演を聴く光景はなかなか圧巻ですが,他方で,修習生と講師との間に一定の距離が生まれてしまうことは否めません。大人数になればなるほど,この距離は広がってしまい,講義の効果・インパクトが薄れやすくなるわけで,安易な合格者の増員には少し危惧を感じたりもします。(もっとも,自分が受験生であれば,当然増員してしかるべきだと考えるでしょうが・・・。)

そして,今日はご存じの通り,ワールドカップ・日本vsベルギーの試合の日です。いずみ寮でも,ロビーや談話室などにクラスごとで修習生が集結し,テレビに釘付けで一致団結して日本を応援しました。その熱狂ぶりたるや凄まじいです。自分も応援に参加してきましたが,ゴールシーンのたびに,トルシエばりのオーバーアクションとハイテンションで吠えまくるこの集団は,おそらく誰がどう見ても法曹の卵には見えないことでしょう(笑)。明日が丸一日刑弁の即日起案であるということは決して誰も口にすることなく,ただひたすら勝ち点1の余韻に酔いしれたのでした。
Date: 2002/06/04



課題,起案,課題,起案・・・
昨日もちょこっと書きましたが,今日は7時間ぶっとおしの刑弁即日起案でした。前期の刑弁起案は,これで終わりです。内容は,殺人未遂として起訴された被告人が殺意の有無を争っている事案について,弁論要旨を作成せよというものです。被告人側に有利な証拠が薄いため,書きにくい問題でした。さすがラストだけある,という感じです。

6月は,起案がおよそ週1ペースになっています。もっとも,そのぶん課題がたっぷりと出されているので,「楽になった」という感じはしません。今現在でも,民事執行の設例研究(民弁),情状についての設例研究(刑弁),交通事故の処理の研究(民弁),争点整理手続のロールプレイングの準備(民裁),模擬裁判の準備(検察)という5つの課題が出ています。修習生が遊ばないよう,ちゃんと工夫されているわけですね(苦笑)。

そうそう,今日は択一試験の合格発表日でした。無事合格された方,これから2ヶ月は死ぬ気で勉強してください。今やらないと,一生後悔することになります。択一試験というのは,今年受かったからといって,来年受かる保証はどこにもないのですから・・・。ネットも当分やめることをお勧めします。他方,残念ながら結果を出せなかった方,落ち込むよりも次につなげることを考えましょう。自分の弱点は,自分が一番わかってるはずです。この時期に気を抜かずに勉強できた人が,来年の試験で大きなアドバンテージを持つことができるということを肝に銘じて下さい。
Date: 2002/06/05



集団生活の困った点
うーん,またも寝不足・・・。今日の講義は,民事選択講座(知的財産法),民弁講義,刑裁討論でした。知財法は,先日の「ゲームソフト中古販売事件」や「ときメモ事件」など新聞をにぎわせる著名な事件も多いし,またITが大きくかかわってくるので,なかなか面白そうだなという感じを受けました。技術が日進月歩で発展していけば,それに応じて知財法もアップトゥデートなものになっていくわけで,そういう分野を扱うのは非常にやりがいがありそうだなと。理論的にも,民法の不法行為の要件事実を応用するような形で説明が行われ,とてもわかりやすかったです。

ところで,いつもここで紹介する研修所の時間割というのは,全てのクラスで共通です。つまり,民裁の時間であれば,全14クラスが一斉に民裁の講義を受けています。そして,同じ範囲について,同じ宿題が出されるわけです。・・・そうすると,どういうことが起こるか。たとえば,ある本で調べものをする必要があるとき,売店にあるその本は「アッ」という間に売り切れてしまいます。図書館にある本も一瞬にして誰かが借りていきます。要するに,修習生の需要が集中してしまい,供給が間に合わないんですね。どうしようもないときは,仕方なく池袋のジュンク堂まで30分弱かけて本を探しにいくこともあります。集団生活は,楽しい反面,こういう不便な側面があることもまた事実です。

さて,明日は宿題がいっぱいあるので,今から頑張らないと・・・。朝までに終わるんやろうか・・・(ーー;?
Date: 2002/06/06



サッカーは勝利,起案はイエローカード
昨日は,日本サッカーにとって歴史的な日になりましたね。いずみ寮では,前回と同様,談話室やロビーに修習生が集まって日本代表を応援しました。課題・起案・クラス内企画と立て続けだったので,みんな少々お疲れモードでしたが,それでも得点が入った時の盛り上がりはすごかったです。日本の勝利が決まったときに,ヒートアップするあまり脱いでしまう人がいたのには少々引きましたが(苦笑)。

そして,一夜明けて,今日の講義は民裁起案の講評と民共選択講座(倒産実務)でした。民裁起案は,白表紙参照不可ということもあって,みんなそれほど出来はよくなかった様子です。自分も言わずもがな・・・。返却された自分の起案には,労をねぎらいつつも,「これからも勉強していきましょう」と意味深なコメント。で,講義を聴くと,やっぱり大事な点が抜けまくっていて,またもや反省させられるのでした(何度目の反省だか・・・)。もっとも,実務修習を経るとかなり実力が伸びるらしいので,今はそれだけが頼みの綱だったりします。
Date: 2002/06/10



「もっと面白い意見を言って下さい」
今日はなんと討論3連発。民裁・民弁・刑事共通のクラス討論が行われました。研修所のカリキュラムには,討論の時間がかなり多く設けられています。ここでの討論は,特定の絶対的な答えを目指すという感じではありません。むしろ,なるべく様々な意見を修習生に言わせて,それらを対比して考えさせるという流れで進められます。(修習生が,あまりにも教科書的な答えばかりをしていると,「もっと面白い意見を言って下さい」と指導が入ることも・・・) 教官いわく,「これからの法律家は,議論のできる人でなければならない。頑固すぎるのもよくないし,かといって自分の意見が無いのもよくない。」とのこと。

いくつか刑事系の討論をしていて,ひとつ気づいたこと。それは,自分の量刑が,他の人に比べてかなり厳しいらしいということです。たとえば,グループのみんなが「これは執行猶予ですね」と言っているのに,自分一人は「こんな奴,実刑にせなあかんでしょ」とか言ってたりするんですね(苦笑)。実務的には,一般に考えられているよりも軽い刑が科されることが多いようなので,もし今の自分の量刑感覚で実務に出たら,間違いなく「あいつは鬼だ」と後ろ指を指されることでしょう(汗)。
Date: 2002/06/11



世界一・・・?
4月はじめ,大講堂で行われた研修所の入所式で,所長は「ここにある設備は,法律家養成機関としては世界一です。ですから,ここで学ぶみなさんも世界一の法曹を目指して下さい」とおっしゃっていました。なるほど,阪神大震災級の地震でもビクともしない堅牢性を持ち,後ろの壁が自動的にググッとへこんで中から巨大テレビモニターが出てくる等のハイテク設備も備えているという,確かに相当な費用を投入して作られていることがわかります。

今日の1限目の検察特別講演は,その大講堂で,検察特捜部の仕事を紹介するビデオを見ることになっていました。ところが,いざ始まってみると,映像は映し出されるのに,なぜか音声が出ず・・・。職員の方が集まって必死にビデオをいじっていましたが,結局なおらず,ビデオ放映は中止になりました。世界一の設備をうたってるのに,「音が出ません」って・・・悲しすぎ(涙)。

2限目・3限目は,民事共通講義で,争点整理手続のやり方を具体的事例に則して学びました。来週は,それぞれが原告代理人・被告代理人・裁判所の立場に立って,争点整理のロールプレイングをすることになっているので,今日はその事前講義的な意味あいがあったのでしょう。自分は,原告サイドの代表者をやることになっているので,珍しく(?)積極的にメンバーに呼びかけて合議をやったりしています。でも,相手方の反論をあらかじめ予想して,それに対する再反論を考えておくというのは,やってみると非常に難しいですね。色々意見を出し合っているのですが,どうもまだ「これ!」っていう決め手を欠く感じです。さて,どうなることやら・・・。
Date: 2002/06/12



ヴェトナムからの熱い風
久々の即日起案。民弁の起案はこれが最後になります。内容は,とある保証債務履行請求事件について,被告側の立場から最終準備書面を作成せよというものでした。準備書面は,訴状や答弁書に比べて自由度が高く,その反面,何をどういう構成で書くべきかというところで頭を悩ませることになります。・・・もっとも,これまでの日記で紹介してきたように,研修所の教育は基本的に「トライ・アンド・エラー」(試行錯誤を繰り返す中で身につけていく)なので,その場で一生懸命考えることそれ自体に意味があるのだと思ってます。

起案終了後は,公判演習(模擬裁判)の打ち合わせをして,そのままヴェトナム料理を食べに行ってきました。お米を使った料理が中心で,春巻き・ビーフン・チャーハン・うどんなどをヴェトナム風味でおいしくいただきました。ここの店の店長さんは,大学時代に日本へ留学に来て,日本語を勉強するかたわら,民法などの法学(もちろん日本語ですよ)の講義を受けていたとのこと。日本で事業を興そうという熱い思いが,当時の並々ならぬ彼の努力を支えたことは想像に難くなく,これから新しい世界へ飛び込もうとしている修習生としては妙に感銘を受けてしまったのでした。
Date: 2002/06/13



修習生の心を和ませる隠れた存在
雨の金曜日。今日の講義は,検察起案講評と民弁起案討論でした。韓国では,ワールドカップの応援のために休みになった会社もあるそうですが,研修所はさすがにそうはいきません。それでも,終盤はやはりロビーに群がって,日本の決勝進出の瞬間を見届けました。

ところで,研修所には,なぜか数匹のノラ猫が居ついてます。栄養が足りないせいか,とてもやせ細っていて,見かねた修習生がたまにえさをあげたりしているようですが・・・。司法修習は4月〜7月,8月〜10月にしかないわけで,一体どうやって冬を過ごしているのかはよくわかりません。それでも彼らは,右も左もわからない修習生が法律実務家へと成長していく姿を,じっと見守っています。楽しいこと,つらいこと,色々ある修習生活を和ませてくれている隠れた存在なのです。それなのに,あんなに痩せ細ってるのは実にかわいそう。寮長,あの猫を寮で飼いましょう。




Date: 2002/06/14



記憶の上書き
今日は前期修習最後の給料日でした。朝,登庁すると,自分の机の上に給料明細が置かれているんですね。司法修習生の給料は,20万8300円と定められています(司法修習生の給与に関する規則第1条)。これに諸手当がついて,そこから税金を差し引くと,手取りは20万弱ぐらいです。まぁ生活はやっていけますが,高価な本を買う必要があったり,クラス内の諸経費を徴収されたりと大きな出費もあるので,結構ぎりぎりの生活だったりします。

講義は,刑裁問題研究と刑弁特別講義(少年法)がありました。刑裁問題研究のほうは,証拠等関係カードを使って,証拠手続法と証拠実体法の解説が行われました。これは,今週末にある公判演習(模擬裁判)の事前講義的な意味合いも持っていたようです。このあたり,研修所のカリキュラムは全くムダがありません。1つ1つの講義・演習がそれぞれ有機的に結びつきあっているんですね。(たとえば,民裁で消費貸借の要件事実を学ぶと,それを前提として次の民弁で消費貸借の訴状を書いたり。また,刑裁・刑弁で交通事故の業務上過失致死罪の認定を学ぶと,それを前提として次の民弁で交通事故の損害賠償請求について演習があったり・・・という具合です。)

反面,このようなカリキュラムが,修習生サイドの混乱を招いていることも否定できません。つまり,5科目を並行していっぺんに学ぶため,それぞれの科目で学んだこと同士が頭でごちゃごちゃになってしまう場合があるんです。教官も,「君たちの刑裁の記憶は,その後の検察の講義で上書きされてしまっとる」と呆れておられました。司法試験の受験勉強のように,はじめの1ヶ月はずっと民裁,次の1ヶ月はずっと刑裁,みたいな感じにすれば,こういった混乱はなくなるのかもしれません。ただ,そうすると今度は,さきほど述べたような科目間の有機的つながりが失われてしまうので,なかなか難しいところではあります。まぁ,実務修習では3ヶ月間集中して1つの職種を見るので,前期修習中はこの程度の到達度でもいいのかもしれません。(いいのか?)
Date: 2002/06/17



青い戦士たちに暖かい拍手を送ろう
今日の1・2限目は,争点整理手続のロールプレイング,ついに本番でした。争点整理を的確に行うためには,当事者側の十分な準備が不可欠です。それにもかかわらず,これまで不十分な準備しかしてこなかった我がグループは,直前になって焦るはめに・・・。同じグループの方に電話をかけ,当日の朝4時ごろまでかけて必死にレジュメを作りました。

争点整理は,まず原告の側から請求原因事実,被告の側から抗弁事実をそれぞれ主張し,次にそれぞれの事実を推認させる間接事実を主張し,最後にその具体的立証方法を提案します。そして,その中で,裁判所の指揮を受けながら,実質的に最も争いとなる部分だけを絞り込んでいくわけです。まさに全員参加の白熱した議論が展開され,中心的争点は1つに絞り込まれました。

さらに,争点が明確になった段階で,和解交渉も行います。はじめは,原告・被告ともかなり自分勝手な和解案を出すわけですが(苦笑),裁判所の側から心証をちらつかされることで徐々にお互い歩み寄っていきます。なんとか穏当な結論に至ることができ,自分もようやく肩の荷が下りました。代表者がこんなにプレッシャーだったとは・・・。遅い時間までレジュメ作成を手伝ってくれた方,本当にありがとうございました。

さて,今日はワールドカップ決勝トーナメントの日本・トルコ戦でしたね。3時半キックオフだったので,うちのクラスは少しでも早く講義を終えてもらうべく,「クラス全員が青い服・青いネクタイで登庁しよう」という非常にユニークな提案がなされました。この提案に多くの方が賛同してくださり,教室の半分くらいはブルーに染まってました(笑)。教官にも情熱が伝わったのか,講義は20分早く終了し,後半戦をクラスみんなで応援することができました。

試合の結果は残念でしたが,でもまた4年後のドイツがあるじゃないかっ!! ひとまず予選突破の悲願を果たしてくれた青い戦士たちに,今は暖かい拍手を送りたいです。4年後には,社会に通用する法律実務家となって,世界に通用するサッカーチームに拍手を送れることを夢見て・・・。
Date: 2002/06/18



早くも勘が鈍る
今日の1・2限目は,民裁の即日起案。内容は,とある貸金返還請求事件について,貸し付けの事実が認められるかどうかを検討せよというものでした。これで,前期修習における起案は,全ての科目が終了です。6月に入ってからめっきり起案の数が減ったため,かなり起案の勘が鈍っているらしい・・・。ラストにふさわしくない,実に薄っぺらな起案を書いてしまったのでした。

3限目は,いよいよ明日に迫った公判演習(模擬裁判)の事前合議でした。自分は,被告人質問における裁判長役をやることになったため,今晩は夜を徹して記録や刑訴規則とにらめっこしなければなりません。・・・こんな日記を書いている暇があったら早く勉強しろと,天の声が聞こえてきそうなので,今日はこのへんで(汗)。
Date: 2002/06/19



心の余裕
前期修習における刑事系科目の集大成,公判演習(模擬裁判)が行われました。とある傷害共犯事件を素材として,冒頭手続から判決言渡しまで全て修習生が行うというものです。修習生は,あらかじめ被告人役・弁護人役・検察官役・裁判官役・証人役・廷吏役に分かれた上で,与えられた訴訟記録(の一部)に基づいて各自準備をして臨みます。

午前中は,法廷教室を使って行われました。裁判官役の人はきちんと黒い法服を着て法壇に立ち,被告人役もいかにも留置所から出てきたような格好で登場します。証人尋問では弁護人役と検察官役の激しいせめぎあいが繰り広げられました。もう,本当にみんなそれぞれの役になりきっています。傍聴席では,刑裁・検察・刑弁の教官がじっと訴訟の成り行きをチェックしており,ややこわばった空気の中で手続は進んでいきました。

午後からは,いつもの教室を法廷風に改造して,証人尋問のつづきから判決言渡しまでの手続が行われました。自分は,昨日も書いたとおり,被告人質問における裁判官役だったのですが,見事に珍プレーを連発。弁護人が2人いたのをすっかり忘れていて片方の意見しか聞かないまま証拠採用したり,検察官からの異議に対して「検察官,ご意見を」と尋ねたり・・・。はじめは苦笑いしてた教官も,だんだん表情が硬くなっていくのがわかりました。明日の講評がおそろしすぎます。教官,今日のは見なかったことにしてください(汗)。

帰り道で,ふと感じたこと。自分には,なんか心の余裕が無いなぁって・・・。いつからこうなっちゃったんだろう。きっと今に始まったことじゃなく,修習がスタートした4月からずっとだった。あるいは,受験時代の頃からそうだったのかもしれない。「もうあとがない,あとがない」っていう思いを,ずっと心の片隅に持って生きてきた気がする。このままじゃ,きっと,何をやってもうまくいかない。
Date: 2002/06/20



3年ぶりの復活
暗い話題ばかりだと周囲に心配をかけてしまうので,今日は明るい話題をひとつ。

今日は,3年ぶりにあのイベントが帰ってきました。修習生が自主的に企画・実施する,文化祭と体育祭の複合イベント「紫陽祭(あじさい)」です。これは,53期までは「いずみ祭」という名前で,一般の方も自由に来場できる形をとって毎年伝統的に行われていたそうです。その後,修習期間が1年半に短縮され講義に専念する必要が高くなったこと,また一部の修習生の行き過ぎた行動が目についたことなどから,研修所施設の利用許可が下りなくなったのですが,今年は修習生サイドの熱意が伝わったのか,「紫陽祭」として復活を遂げました(ただし,一般の方の入場は不可です)。

具体的には,寮内企画として「タロット占い」「オーバー50の会(50歳以上の修習生により結成されたグループ)による座談会」「料理の鉄人」「麻雀大会」などが実施されました。また,スポーツ企画として「ドッジボール大会」「綱引き」「クラス対抗リレー」なども予定されていましたが,こちらは雨のため中止ないし一部変更になったようです。さらに,夕方からは,近くのライブハウスで修習生によるライブも行われました。自分もいくつか見学させてもらい,どの企画も非常に面白かったのですが,中でも「オーバー50の会」は,官僚や地方行政,民間企業などで豊富な経験を持つ諸先輩方から貴重なお話を聞くことができ,社会における法律家の役割の大きさと法律家に対する期待の大きさをひしひしと感じました。

ところで,自分は,当初なぜかクラス対抗リレーにも参加することになっていました。そこで,どうせ出るなら目立ってやろうと思い立ち,昨日,サッカー日本代表のユニフォームを上下揃いで買ってきてたんですね。ところが,あいにくの雨のため,予定されていたリレーは行われず・・・。その結果,17000円もしたユニフォームは,一度も袖を通されることなく,マイルームのオブジェと化したのでした(苦笑)。
Date: 2002/06/22



昔なつかしの・・・
朝,登庁すると,いつも教室の前には山のような配布物が置かれています。講義が1コマ終われば,いつのまにかホワイトボードはきれいに消してあります。マーカーやマイクの電池は,いつも補充されています。・・・これらは,自動的にそうなるはずはないのであって,きちんと「クラス連絡委員」という人達がお仕事をしてくれているのです。修習生は全員,週替わりでこの連絡委員を担当することになっています。そう,これは昔なつかし小学校時代の「日直」そのものですね。自分は今週が担当になっているため,かなり早く起きて眠い目をこすりながら登庁したのでした。

さて,今日の講義は全て選択制講座。中でも,2限目の消費者破産はなかなか聞きごたえがありました。一昔前は「トイチ(10日で1割の利息)」が高利貸の代名詞でしたが,最近では「トヨン(10日で4割)」「トゴ(10日で5割)」といった信じられない業者もいるそうです。不況のせいで,貸し手側がますます強くなってるんですね。あと,取立ての様子を録音したカセットテープも聞かせてもらえました。あれはすさまじい・・・。ほとんどチンピラに近いですよ。いわゆるヤミ金融のみならず,普通にCMを流してるような消費者金融もああいう取立てをしているのは驚きでした。まさに,「ニコニコ貸して,ガツガツ取り立てる」という感じです。

3限目は,犯罪被害者支援と弁護士についてでした。講師の先生は,もともと検事をやっていた頃は捜査至上主義だったそうですが,弁護士になってみてはじめて被害者の心情とか傷の深さを知ったのだそうです。講義中,手元にある紙をクシャクシャと丸めて「これが,犯罪の被害です」と言った後,それを広げて「これが,なんとか立ち直った被害者(または遺族)なんです」と話されました。いくら頑張って伸ばそうとしても,しわは消えることなくずっと残り続ける・・・。その例え話は,教科書的記述なんかよりもはるかにダイレクトに,はるかにリアリティをもって,強く自分の心に印象づけられたのでした。

Date: 2002/06/24



「もっぺん前期修習をやり直した方がいいんじゃないの?」
今朝は,クラス連絡委員であるにもかかわらず,さっそく寝坊・・・。教室へ行ったときは,もう既に仕事が片づいていました。仕事のペアを組んだ方,どうもすみません(汗)。そういえば,うちのクラスは,全クラス中で遅刻者数がダントツトップなのだそうです。いや,まぁ,全く自慢にならないんですけど(苦笑)。

講義のほうは,今まで書いた起案がいくつか返ってきました。もうすぐ実務修習ということで,修習生を励ますために比較的優しいコメントをしてくださることが多いのですが・・・今日の刑弁は違いました。クラス全体の出来が相当悪かったらしく,「こんなのは全く起案の体をなしていない」「54期・55期はもっと良く出来てた」「もっぺん前期修習をやり直した方がいいんじゃないの?」と激辛コメント連発で,修習生をメッタ斬り。浮わつきかけた気持ちに強烈な喝を入れられたのでした。

前期修習もまもなく終わりということで,希望者のみを対象に,民裁教官による個人面談も行われています。自分も,今日おそるおそる面談を受け,前期修習の成績や今後の勉強,実務修習でやっておくべきこと等についてアドヴァイスを頂きました。教官いわく,高松はなかなか修習が厳しく,タフさが必要とのこと。・・・覚悟を決めて行ってきます。
Date: 2002/06/25



あの日の風景
いずみ寮に,3ヶ月前のあの風景が再び戻ってきました。修習生が入寮・出寮する時期になると,床と壁一面にダンボールが貼り付けられ,ロビーの椅子も全て取り払われて,修習生の引っ越し荷物の箱が山積みにされるんですね。・・・4月1日,不安と期待で胸踊らせながら寮に足を踏み入れた,あの日と同じ風景です。それを見たとき,あぁ自分はいよいよここでの生活と本当にお別れなんだなという実感が急にこみ上げてきました。

今日の講義は,選択制講座(和解交渉論)と民裁でした。民裁の講義はこれが最後ということで,実務修習に就くにあたっての留意点なども話されました。具体的には,
・受け身にならず積極的に取り組み,指導官とよく議論すること
・訴訟記録は事前にしっかり読んでおくこと
・訴訟記録の取り扱いには十分注意し,決してなくしたりしないこと
・書記官や速記官との人間関係も大事にすること
・秘密は絶対に保持すること
などなど・・・。教官のその言葉の中には,修習生を各地へ手放すことに対する不安と,修習生が実務で鍛え上げられて帰ってくることに対する期待,そしてとにかく精一杯頑張れよと励ます親心(?)がこもっているようでした。そう,もうやるっきゃないんです。
Date: 2002/06/26



眠いときには指をかめ!
研修所の講義も,いよいよ明日で終わり。よって,来週からはもうここにいないわけですが,なんかやっぱり未だに信じられません。歩き慣れた道,見慣れた風景,通い慣れた教室,話し慣れたクラスメイト・・・今日もまた,いつもどおりの時間がそこには流れていたからです。

今日の講義は,検察,刑裁,一般講演(日本経済)です。検察と刑裁では,いずれも実務修習での心構えや注意点などが話されました。昨日の民裁と重なるところもあるので,ここでは印象に残ったものだけを一部紹介すると,
・自分の志望と異なる職種の修習は,またとない機会なので,特に真剣に取り組むこと
・「人」を知り,「組織」を知ること
・悩みを一人でかかえこまないこと
・要領よくやろうと思わず,愚直に取り組むこと
・ストーカーのごとく指導官にへばりつき,実務家の本当の姿を見ること
・法廷での居眠りは厳禁。眠くなったら,顔の前で両手を組み,親指をおもいっきりかむこと
などなど,その他,実に細かい点にまでわたって詳細なアドヴァイスをいただきました。また,実務修習中に,教官が様子を見に来て下さることもあるそうです。

さて,講義後は,今年で退任される検察・刑弁教官の送別会が行われました。研修所の教官には一定の任期があり(たとえば,弁護科目は3年間),そのため平成14年の前期と平成15年の後期とでは教官が交代する場合があるんですね。そこで,両教官との別れを特に惜しんで,別途飲み会が用意されたわけです。両教官が「これでもう縁が切れるというわけではなく,今後も法曹の先輩として気軽に相談してほしい」とおっしゃっていたのはとてもありがたく,印象的でした。・・・ちなみに,この時,自分は飲み過ぎのため心神耗弱ないし心神喪失状態にあったという説もありますが,もし証拠写真を持っている方は直ちにOtomoまで申し出て下さい。罪証隠滅を図りに行きますので(笑)。
Date: 2002/06/27


72人の旅立ち−それぞれの決意を胸に
ついにこの日が来ました。前期修習最後の日。自分は,なぜか1時間以上も早く研修所に登庁し,誰もいない教室でぼんやりと感慨にふけっていました。「思い出」と呼ぶにはあまりにもあっけなく過ぎてしまった,そんな3ヶ月を思い起こしながら・・・。

さて,今日は,刑弁・民弁の講義と修了式がありました。刑弁・民弁では,最近の司法の不祥事を意識してか,弁護士倫理についての説明がなされました。国選弁護人が被告人の父からケーキを受け取ることは許されるか,交通費を受け取ることはどうか,車に乗せてもらうことはどうか,などなど。その他,これまでの科目と同様,実務修習における留意点の説明も受けました。弁護修習では,弁護士の法律業務を見ることはもちろんですが,それ以外にも色々な社会勉強をすることが大事なのだそうです。弁護士の扱う事件は極めて多岐にわたるため,より広い知見が必要ということなのでしょう。

3限目は,大講堂で研修所所長の講話を聞いた後,各クラスで教官との懇親会です。ここでは,修習生が一人ずつ今後の決意を語りました。「前期で満足に勉強できなかった分,実務修習に積極的に取り組みたい」「後期には,生まれ変わって帰ってきたい」「クラスメイトに刺激を与えられるように経験を積んできたい」など,誰もが前期修習の不勉強を実務修習で挽回すべく気合い十分。72人72様の決意表明に,教官方はじっと耳を傾けておられました。

夜には,教官方を招いて前期修習の打ち上げが実施されました。1年間離ればなれになってしまう教官・クラスメイトと酒を飲み交わす最後の機会ということで,大いに盛り上がりました。しかも,ビンゴゲームではなぜか自分は1位になってしまったり。景品は宝くじ100枚。もしこれが当たってたら,後期修習でクラス全員からタカられまくること間違いなしでしょう(苦笑)。自分は翌日の荷造りがあったので,教官と固い握手を交わし一次会だけで帰りました。

今,前期修習を改めて振り返ってみると,とにかく悩み続けた3ヶ月だったなという感じがします。自分は自分なりに勉強していたけれど,なかなか思うようにいかなくて,でも周りにはそれをいとも簡単にやってのけてしまう人もいて,そのギャップに苦しんでいました。きっと,自分は,要領よく雑な勉強だけで乗り切ろうとしていたのだと思います。人の一生を左右しかねない仕事に携わるという意識が,そこには欠けていました。・・・「愚直になれ」という教官の言葉が,自分の前期修習の最大の問題点を言い当ててるような気がしました。

未来の法曹達は,それぞれの決意を胸に,いよいよ生の事件と戦う現場に旅立ちます。
Date: 2002/06/28



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