「おまえら,日本一忙しい検察修習にしてやるからな」

指導検事のその言葉に,偽りはなかった。

灼熱の高松を舞台に繰り広げられた,怒濤の検察修習。



「自分の家族が被害に遭うたと思てみぃ」
今日からいよいよ高松での実務修習がスタートです。修習生は,4月から7月まで和光市の司法研修所で前期修習を受けたあと,全国各地に散って1年間の実務修習を受けるんですね。自分は高松修習なのですが,ぎりぎりまで京都の実家にいたため,昨日は荷物の搬入でてんやわんやでした。しかも,まだほとんど荷物も開けてないし・・・。まともな生活を送るまでには,しばらくかかりそうです。

実務修習初日の今日は,開始式から始まりました。この式には,地裁所長,民事刑事部長,地検検事正,弁護士会会長,事務局長など,偉い方々がたくさん出席されます。それにもかかわらず,自分は初日から修習生バッジを忘れるという失態・・・。これは非常に格好悪かったです。そして,式の後は,隣の会議室に入って懇談会が行われました。こちらはややくだけた感じで,自己紹介などをします。高松における法曹三者のトップを前にして自分の志望職種を言うのは,結構勇気がいりますね(苦笑)。

懇談会が終わると,休む間もなく,次は挨拶回りです。地裁・高裁・簡裁・家裁・地検・高検・弁護士会のそれぞれで,いくつもの部屋を回り,「第56期司法修習生,総勢8名です。これから1年間,よろしくお願いします。」と一礼するわけです。何度も何度も,数え切れないほど多くの人達に対してこの挨拶をします。これが「組織」なんだな,という感じがしました。その後,再び検察庁に戻ってきて,検察官・検察事務官の方々と,自己紹介をかねた昼食をとります。

・・・以上のような長い前置きがあって,午後からいよいよ検察庁での修習が始まりました(高松では,7月から9月までが検察,10月から12月までが弁護,1月から6月までが裁判です。) 検察修習で一体何をするのかというと,ずばり,検察官がやってることと同じことをやります。すなわち,警察から送致されてきた事件の配転を受け,その捜査記録を精読した上で捜査方針を決定し,自ら被疑者や参考人を取り調べて,最終的に起訴不起訴の判断を下し,上司の決裁を受けます。今日は,指導係検事からこのような説明を受けた後,さっそく各修習生に事件が配転されました。自分は,とある暴行事件を担当します。指導係検事は大変情熱的な方で,これまでの捜査経験を熱く話して下さいます。「検事は,自分の家族が被害に遭うたと思って,事件に取り組まなあかん」というお話に,自分は胸を打たれたのでした。
Date: 2002/07/03



本場の味
今日から,ノートPCを持参して検察庁に登庁です。検察修習においては,記録検討メモや証拠等関係カードなどあらゆる書面をパソコンで打ち出すため,持ち歩き可能なノートPCが必須なんですね。ついでに言えば,書式は全て一太郎ファイルをフロッピーでやりとりするので,FDDと一太郎も必須です。さらに,LANでPCをつなぐことまでできるのですから,もう実務は完全にコンピュータライゼーションされていると言ってよいでしょう。

さて,今日は事件処理がメインでした。なんか,まだ昨日配転された事件も処理してないのに,早くも次の事件が配転されてきた(汗)。大急ぎで昨日の記録を検討し,夕方になって指導係検事の決裁を受けに行ったところ,「なんでこの事案で不起訴にするんかなぁ。検審(検察審査会)で不起訴不相当が出たらどうすんの?」「再犯の可能性ないんか?」といった具合で,あっさりやり直しを命じられました・・・。もっとも,こちらの意見・考えはよく聞いてくださり,どこがまずいかを具体的に指摘してくださるので,大変勉強になります。また,他の検事や副検事,事務官の方にも色々疑問点をぶつけて,十分納得した上で決裁を受けにこいとの助言もいただきました。検察庁での人間関係はいかに重要かがよくわかります。

ところで,今日のお昼休みは,修習生全員と指導係検事で一緒にうどんを食べにいきました。具材となる天ぷらを自分で選びとっていき,最後に好きなうどんをオーダーするという「セルフ形式」のうどん屋です。こういう店があるのは,さすがうどんの本場・高松。ちなみに,この近辺だけで700件ものうどん屋が軒を並べているそうです。地元の人は,それぞれお気に入りのうどん屋があり,決してその自説を曲げないのだとか。自分も,そのうち,こだわりの一店を見つけることになるのかもしれません(苦笑)。
Date: 2002/07/04



体育会系?
今日は,午前中が講義で,午後から事件処理のつづき。記録庫に行って過去の事件を色々調べてるうちに時間が過ぎてしまい,結局1件も処理できませんでした。うぅ,自分は一体何をやってるんだぁぁぁぁ・・・・。でも,最初は1件1件を丁寧にやっていって,慣れてきたら徐々にスピードアップできたらいいなと思ってます。長時間にわたる調べ物につきあって下さった検察事務官の方,どうもありがとうございました。

夕方からは,おとといに引き続き,修習生の歓迎飲み会に参加してきました。検察修習はとにかく飲み会が多いです。よく「検察官は体育会系である」と言われますが,これは確かに当たってる一面もあります。修習生の歓迎会だけで,7月3日・5日・6日・9日と4回も飲み会をやってもらえるんですね(苦笑)。もっとも,酒を強要するような雰囲気は一切なく,「自分は飲まないんです」と言えばソフトドリンクを注いで下さるし,「そろそろ帰ります」と言えば無理に引き留めたりせずに「お疲れさま」と笑顔で送り出して下さいます。そのため,純粋文化系人間の自分もそれほど居心地の悪さは感じません。

また,事件処理において,それぞれの検事は上司(刑事部長,検事正など)に決裁を求める必要があります。こういった上命下服的な仕組みは,体育会系と言えなくもありません。ただ,実際には,当該事件について最もよく知っているのは担当検事自身であり,最終的には検事の意見で処理されることが多いと聞きます。とすれば,この制度の存在を体育会系的と捉えるべきではなく,むしろ処理の適正を担保しているにすぎないという方が実態に沿う感じがします。
Date: 2002/07/05



「ここ,高検だよ」
実務修習最初の週末は,荷物の整理と必要な物の買い揃えに追われてました。高松近辺で買い物ができるところとしては,西日本一長いアーケードの他,三越・サティ・OPAなどがあります。自分は,55期の先輩から自転車を引き継いだので,それに乗って周辺をいろいろと回ってみました。最近,土地勘を身につけるのは結構大事だなぁって思うんですよ。事件記録を読むにしても,知ってる地名の方が具体的なイメージを持って読めますしね。また,参考人を検察庁に呼び出すときに,その住所と検察庁の位置関係がわかると話がスムーズに進んだりします。そんなわけで,いつも地図は手放せません。

さて,今日もいつものように事件処理のつづきです。最初に受理した暴行事件について,事前決裁を受けに行きました。事前決裁は,まず指導係検事のところで自分の考えを説明し,そこでOKが出ると,さらに上司の刑事部長のところへ行くことになります。自分は,今日は前回指摘された点を修正して,指導係検事の決裁を受けることができました!・・・ところが,この後がマズかった。なんと,高松地方検察庁(地検)ではなく,間違えて高松高等検察庁(高検)の刑事部長のところへ行ってしまったんです(大汗)。この2つは同じ建物の中にあるので,ついうっかり間違えてしまったんですね・・・。自分が「決裁を頂きに来ました」と言うと,「ここ,高検だよ」という返事が返ってきました。あまりの恥ずかしさに,一礼して逃げ帰ってきたのは言うまでもありません。

刑事部長からも事前決裁を受けると,次は参考人と被疑者に直接電話をかけて,検察庁に呼び出します。電話とはいえ,生の当事者と1対1で話をするわけで,これまた緊張・・・。ただ,取調官は相手からなめられたら終わりなので,自信無さげなそぶりは禁物です。そのへんがまた非常に難しい。結局,丁寧語とベテラン口調と関西弁が入り交じった,訳のわからない話し方で(苦笑),なんとか来週に事情聴取の約束をとりつけることができました。本当に大変なのは,これからだぁ。
Date: 2002/07/08



猫の手も借りたい
展開が非常に早い高松修習。今日は,早くも数人の修習生が取調べに入っていました。なかなかこっちの思うようにはしゃべってくれないようで,傍目に見ていても大変そう・・・。自分よりも年上の(場合によっては,自分の親よりも年上の)相手の口を割らせようというのですから,なかなか一筋縄ではいきません。変に気を遣ってオブラートに包んだ聴き方をするよりも,自信を持って事実を突きつけることが大事なようです。

他の人が取調べをしている中,自分は,1件目の暴行事件の尋問事項書を作成し,2件目の下着どろ事件の記録検討をしていました。すると,そこへ指導係検事がやって来て,「これも,キミにやってもらうから」。・・・なんと,もう3件目の事件の配転を受けてしまいました。しかも,今度は身柄事件(被疑者が身柄拘束されている事件のこと。期間が法定されているため,超特急で事件処理しなければならない)。うー,まだ在宅事件すら1件も処理できてないのに,こんなにじゃんじゃん配転を受けていいんだろうか・・・? それぞれ,人の人生がかかってるからなぁ。かなり不安。猫の手も借りたいです。

午後は,指導係検事が訴訟追行している医療過誤事件を傍聴し,続いてまたまた修習生の歓迎飲み会です。この1週間で立て続けに飲み会が続いているため,飲み会が苦手な自分はかなりふらふらになってきました。飲みたくないものは飲みたくないんだと,はっきり断る勇気を持たなければならないと痛感する今日この頃であります。

そうそう。昨日から,こっそりと新コーナーを始めました。ただ,司法修習とは全く関係がないので,あえてリンクは貼りません。ご覧になりたい方は,下のアドレスへどうぞ。
http://cgi.www5a.biglobe.ne.jp/~k-otomo/cgi-bin3/sb_diary.cgi?
Date: 2002/07/09



25歳にして老いのつらさを知る
世の中には,本当に飲み込みの早い人っているんですよね。何人かの修習生は今日も取調べをやっていましたし,中にはもう不起訴裁定書を書いて事件を処理し終えた人もいるようです。自分は,昨日配転された身柄事件(窃盗)を最優先でやらないといけないため,今日も記録読みでした。大急ぎで記録検討メモと事件のチャート図を作り,とりあえず捜査方針の事前決裁だけを受けてきました。こちらも来週に被疑者取調べをすることになったので,来週の前半は取調べが目白押し。死ぬほど忙しくなりそうです。

捜査側からすれば,勾留10日間っていうのは非常に短く感じます。少なくとも,自分の事件処理のスピードでは,10日間じゃ全然足りません(苦笑)。10日間といっても,土・日の取調べは認められていないし,また勾留満期の3日前には処分を決定しなければなりませんから,実質的に取調べできるのは5日間くらいしかないわけですよ。しかも,取調べをするためには,あらかじめ記録を検討した上で尋問事項書を作成しなければならないし,取調べが終わったら供述調書を起案する必要があります。参考人と時間の都合がうまく合うとも限りません。そういう意味で,今の検察というのは,実に厳しい制限の中でやりくりしてるんだなぁという感じがします。

午後からは,社会修習として,日帰りで福祉施設の見学。ここでは,高齢者の生活の実体験というのをやってきました。腕や足におもりをつけ,すりガラスの眼鏡とヘッドフォンを装着することで,高齢者が一体どのような状態で生活しているのかを身をもって知るというものです。これはなかなか大変でして,いかに周囲の人の介護が必要かがよくわかりました。それと同時に,自分にとっては,健康な状態のまま早死にするのと,不自由な状態で生きながらえるのと,一体どっちが幸せなんかなぁ・・・と,ふと考え込んだりもしたのでした。
Date: 2002/07/10



日々の幸せのために尽くす人達
昨日から今日にかけて,知的障害者と高齢者を対象とする総合的介護施設に泊まりがけで研修に行ってきました。実務修習のカリキュラムには,このように社会の現状に触れて見聞を広めなさいという「社会修習」が数多く組み込まれています。

1日目は,知的障害者のかた(施設利用者)のお手伝いです。ひとしきり施設の説明を受けた後,公園の草むしりをやりました。照りつける太陽の下で,頑固な根っこと格闘するのはなかなかの苦行です。その後,畑に移動して菊の新芽摘みもやりました。自分はやり方が今ひとつわからず,かなりの菊をボキボキ折ってダメにしてしまったような気が・・・。いや,気のせいだ。気のせいにしとこう。

続いて,午後からは,バスに30分ほど揺られて農場に移動です。携帯電話も通じないという,びっくりするような山奥。ここでは,施設利用者の入浴の手伝いと,牛の乳搾りをやりました。乳搾りはかなり熟練が必要な模様です。自分がやっても,3ccくらいしか絞り出せませんでした(苦笑)。なんか,施設の方に迷惑ばっかりかけてるなー・・・。

一夜明けて,今度は老人ホームでのお手伝いです。具体的には,フロアーや部屋の掃除をしたり,おじいちゃんおばあちゃんの話し相手になったり,ご飯を食べさせてあげたりといった内容でした。高齢の方は,咀嚼能力・嚥下能力が弱いため,こちらも非常に神経を使います。万が一,のどにつまって窒息でもさせてしまったらどうしよう,とハラハラしながらご飯の介助をしていました。

2日間過ごしてみて,こういった施設の職員の方々が本当に献身的に頑張っていることがよくわかりました。食事や入浴の時などは,まさしく戦場のような忙しさになります。それでも,職員の方は笑顔を絶やさず,一人一人に声をかけ,たとえ話が通じなくても話し相手になって元気づけて,施設利用者の日々の幸せのために尽くしているのです。自分の知らないところで,こういう考えもつかないほどの努力をしている人達がいるということを目の当たりにし,自分は「無知」の罪深さをつくづく感じたのでした。
Date: 2002/07/11・12



2つのタイプ
今日から,また事件処理の日々が始まりました。午前中は記録の検討。午後からは,最初に配転された暴行事件の参考人取調べです。人生初めての取調べということで,そらもう,言いようのない緊張に襲われました。こんな緊張感は,昨年10月の口述試験以来です(苦笑)。

参考人が部屋に入ってきて席に着くと,まずは指導係検事が応対し,修習生に取調べをやらせる旨の同意を求めます。同意が得られると,あとは修習生がサシで取調べることになります。自分は,聴取すべき事項をあらかじめ準備し,おおよその取調べの流れも考えて行ったのですが,いざやってみると,全く思い通りに進みませんでした。こちらが聞いてもいないことを長々と話されたり,こちらが予想もしなかった返答が返ってきたり,こちらが後で尋ねようと思っていたことを先に言われてしまったり・・・。おろおろしてるうちに,どんどん時間は過ぎていきます。

聴取が終わると,今度はそこから供述調書を作成します。具体的には,聞いた話の内容を頭の中で整理して,それを口頭で検察事務官(役の修習生)に伝え,そのままワープロに打ってもらうんですね。これまた,めちゃくちゃ難しいんです。ちゃんとした文章をソラで作らないといけないわけですから・・・。自分が作成した供述調書は,指導係検事によってハチの巣にされてしまい,結局,検事がもう一度取調べなおして調書を作っておられました。取調べにかかった時間は,合計4時間。自分にとっては,実にほろ苦い取調べデビューとなったのでした。

ところで,人間には,2つのタイプがあると思うんですね。怒られて成長するタイプと,褒められて成長するタイプ。自分の場合は,間違いなく後者です。きつく叱られても,落ち込んでしまって,次また失敗するのをびびってしまうようになるだけなんですね。むしろ,ささいなことでも褒めてもらった方が,次はもっと頑張ろうという気になります。指導係検事も,そのへんの自分の性格はしっかりと見抜いているようでして,今日も頭ごなしに怒鳴りつけたりはされませんでした。まずいこと・やってはいけないことをきちんと指摘した上で,「おまえは頭は悪ぅないんや」と持ち上げて下さいます。さすが,今まで何百人もの被疑者と接してきただけあって,人の性格を的確に見抜いてるんだなぁと感心してしまいました。・・・うん,明日は,今日よりも前進しよう。
Date: 2002/07/15



仕事に追いまくられながら生きることは幸せか
忙しい。

非常に忙しい。。

過労の余り,胃に穴が開いて突然死してしまうのではないかと思うほど忙しい。。。。

実務修習での忙しさは,研修所での忙しさと量的にも質的にも全く異なります。実務修習が始まってからというもの,5時に帰れた試しはなく,大抵8時か9時に帰宅。人によっては,11時頃まで残業してる人もいます。また,その内容も,研修所と違って非常に責任が重いです。自分がすぐに調書を作れなければ,本当にその事件の捜査が停滞してしまうわけですし,身柄事件なら満期で釈放ということにもなりかねません。自分は,この2週間で,寿命が5年は縮んだと思います。

昨日から今日にかけて,取調べの合間に,勾留延長請求書を作りました。賢明な受験生の方ならご存じのとおり,勾留は原則として10日間で,「やむをえない事由」があるときに限りさらに10日間の延長が認められます。ところが,この「やむをえない事由」というのが,思ったよりも実に厳格。決裁を受けに行っても,「これで延長が出るかぁ?」と突き返される。直してまた行くと,また突き返される。何度も何度も,修習生室と刑事部長室を往復するんです。今朝になって,ようやく刑事部長と次席検事から決裁を受けることができました。

こういったところからもわかるように,検察実務を見てると,思いのほか(と言ったら失礼ですが)適正手続に対する意識が高いなぁと感じます。取調べについても,威圧的な取調べにならないよう様々な注意を受けてますしね。受験時代のイメージでは,「学説は人権重視,実務は捜査の必要性重視」という感じですが,実際に見てみると必ずしもそんなことはない気がします。
Date: 2002/07/17



笑われた取調官
今日は,暴行事件の被疑者取調べをやりました。被疑者取調べは,参考人取調べよりも緊張の度合いが高いです。参考人というのは,捜査機関に対して協力的であることが多いんですよ。他方,被疑者にしてみれば,捜査機関は敵ですからね。こちらとしても,質問の仕方などについて,あらかじめ作戦を練っておく必要があります。

検察で被疑者取調べを行うことの意味は,もちろん処分を決定したり,後の裁判で使うための証拠を手に入れるという点にあります。が,その他にもうひとつ。そう,被疑者を反省させないといけないのです。これが非常に難しい。ドラマのようにそううまくはいきません。自分も,今日の取調べで,なんとか反省させようとして,泣けるセリフ(?)を用意してたのですが,全く逆効果で,かえって被疑者に笑われてしまいました(汗)。そんなことやってるから,肝心の聞くべき項目をうっかり忘れてしまったりして,指導係検事からおしかりを受けるんですが・・・。結局,今日もまた,3時間くらいかかってどうにかこうにか調書作成までこぎつけたのでした。
Date: 2002/07/18



音楽は助けてくれる
待ちに待った週末。実務修習に入ってからというもの,一日が非常に長いです。これはおそらく,修習で経験する様々な出来事が新鮮で,あまりにも中身が濃いためでしょう。子供のころ,時の流れがゆったりとして感じられたのは,日々の発見がたくさんあったからだと思うんですね。それとどこか似た感じです。

今日は,とある窃盗の身柄事件について,参考人取調べをやりました。が,要領の悪い自分は,またもどんどん時間を浪費していき,今日はついに4時間30分もかけて取り調べてしまいました。自己ベスト更新です(汗)。参考人の方には,「すんません,ほんますんません。」と,ひたすら平謝りでした。幸い,今日の方は協力的で,にこやかに最後まで応じて下さいましたが・・・。もっとも,これだけ時間がかかってしまうと,ヘタしたら違法捜査とも言われかねないので,ほんとスピードアップが急務です。

なんか,実務修習始まって早々,壁にぶち当たってばっかりなので,家に帰って音楽を聴くことが増えました(現実逃避?)。音楽の嗜好も少し変わってきて,ロックとかよりは,比較的穏やかな感じの曲を好むようになってきてます。男性なら槇原敬之,女性なら岡本真夜とかの曲がいいですね。優しいメロディに疲れた背中を押されて,明日もまた頑張ろうという気持ちになる。そんなことの繰り返しで,今週もまた終わっていくのでした。
Date: 2002/07/19



There's always a way ! (道は必ずある)
今週に入って,窃盗事件の参考人を2人,暴行事件の参考人を1人,それぞれ取調べました。徐々にではありますが,人の話を聞いてそれを調書化するというプロセスが体に染み込みつつある気がします。今日は,聞くべきポイントがそれほど多くなかったこと,参考人があからさまに時間を気にしていたことから,大急ぎで聴取を済ませ,なんとか1時間半で全て終わらせました。これでもまだ長すぎるんですが・・・。指導検事による手直しも,少しずつ減ってきたような気がします。人間,もがいていれば,それなりになんとかなるもんですね。(もっとも,修習生に配転される事件は,徐々に難易度が上がっていく仕組みになっているらしいので,ここで油断は全くできません。)

午後1時から3時にかけては,法医学の講義を受けてきました。傷口や死体の状態を見て,凶器・死因・死亡推定時刻等を判断する手法について,概説的な説明がなされました。大きなスライド写真を使って,ひとつひとつ具体的に説明をしてくださるのですが,実に生々しく,あんまり気持ちのいいものではありません。ましてや,昼食後ですから,なおさら・・・(汗)。しかし,それにしても,死体から得られる情報がこんなに多いとは,驚きでした。死体からの無言のメッセージに日々耳を傾けておられる法医学者の方々には,本当に頭が下がります。

そうそう。論文試験を受験された方,どうもお疲れさまでした。ひとまずは試験のことを忘れて,やりたいことをやって下さい。一日中ゴロ寝するもよし,海外旅行に行くもよし,この修習生日記をはじめから読んで来年の自分を思い描くもよし(笑)。口述直前期は,論文以上に肉体的にも精神的にもハードですから,せめて7月いっぱいぐらい羽根を伸ばしましょう。自信のある人なんてほとんどいない訳ですから,くよくよしてたって仕方ないですよ♪
Date: 2002/07/23



「これ数分で読め」
「取調べ修習」というと,なんか,狭くて暗い個室の中で,犯人と1対1に向き合って,電気スタンドをピカーっと照らして怒鳴りつけたり,「カツ丼食うか?」と優しく言ってみたりする,そんなイメージを持ってる方がいるかもしれませんが・・・。それは,かなり違います(苦笑)。実際には,司法修習生室という大きな部屋に修習生全員のデスクがあるんですよ。で,普段はそこで記録とかを読んでて,取調べをやるときにはアコーディオンカーテンで仕切って即席の取調べ室を作るんです。それに,怒鳴りつけたりすると「威圧的取調べだ」と言われかねないし,ましてやカツ丼なんて頼んだら「便宜を図った」として大変な問題になります。あくまでスマートかつジェントル,そんな感じですね。あ,それから,修習生による取調べは2人ペアでやってます。1人が取調官の役,もう1人が事務官の役(メモとったり,ワープロ打ったり)を担当するわけです。

さて,今日の午前中は,ずっと事務官役をやってました。そして,昼すぎ頃になって,突然,ぶ厚い捜査記録を渡されて「もうすぐ被疑者が来るから,これ数分で読め。で,弁解録取をやれ。」といきなり指示を受けました。しかも,被疑事実は,こないだ新設されたばっかりの危険運転致傷罪。どひゃーと内心思いましたが,こうしていきなり仕事が降ってくるのはまぁいつものことなので・・・(苦笑)。被疑者にはそんな素振りも見せないようにしなければなりません。で,弁解録取が終わると,すぐに勾留請求書と接見禁止請求書の起案もやりました。こうやって,時間と課題に追いまくられながら,修習生は手続を体で覚え込んでいくわけです。
Date: 2002/07/24



事件の最前線で
今日は,社会修習として,香川県警の見学に行ってきました。従って,事件処理のほうは一休みです(もっとも,この一休みしてる間にも勾留満期は近づくわけでして・・・。あまり仕事に穴を開けるのはかえって精神衛生上よろしくないので,結局,社会修習が終わったあと検察庁に戻ってまた残業をすることがほとんどです。)

県警では,まず午前中,犯罪被害者に対するフォローがいかになされているかといった講義がなされました。昨今,「警察は何もしてくれない」というように,不作為に対する批判が極めて強いため,そのあたりに警察が非常にナーバスになっているのがよくわかります。具体的には,カウンセリング室の設置・カウンセラーの常駐・被害者心理に配慮した取調べ手法などが紹介されていました。取調べについては,検察でも被害者取調べが重要な意味を持つため,考えさせられるところが多かったです。

午後からは,通信管制室,交通管制室,鑑定,科捜研をそれぞれ見学させてもらいました。通信管制室というのは,110番通報を受け取って状況把握・現場への指示などを行う部署です。見学させてもらっているわずか30分ほどの間にも,交通事故など実に20件もの通報があり,事件の最前線にいる警察の方々の忙殺ぶりは察するに余りあります。あと,鑑定については,指紋やポリグラフ検査機を見せてもらいました。ポリグラフは,実際に修習生1名に装着させ,その効果のほどを試させてもらえます。ただ,時間がないため,ほんのちょっとしか使えなかったのが残念。もっと色々尋ねて,衝撃の事実を引っ張り出してやろうという修習生同士の目論見(笑)はあっさり崩れ去ったのでした。
Date: 2002/07/25



願いごと
自分は,高松で下宿を借りるために多額の借金をしてしまったので,今もその返済が残っており,欲しい物もあんまり買えなかったりします。そんなわけで,今日は少し趣向を変えて,自分が今欲しい物をここに書きまくって,ストレス解消してみます(笑)。

・夏用のスーツ
自分は,勤務時間中は上着をまず脱がないため,とにかく暑い・・・。一応,夏冬相用のスーツなんですが,やっぱり夏用のスーツの方がいいなぁ。(上着脱いだら?って声が聞こえてきそうですが(苦笑)。まぁそりゃそうなんですけど,これは自分なりの礼儀だと思ってこだわってたりするんです。)

・炊飯器
帰りが遅いと自炊は無理だろうなぁ・・・と思って用意してなかったのですが,これだけ生活が困窮してくると,さすがに外食を毎日続けるのはやばいと思い始めてきました。1食分だけ炊ける,小さな炊飯器ってあるのかなー。

・原付自転車
サティなどの大型店舗や,栗林公園などの観光名所は,少し離れた場所にあるんですよ。自転車でも行けないことはないですが,かなり汗だくになります。せっかく1年もここに住むんだから,原付で行動範囲を広げて,色々見てみたいなーと思ったりします。

・ゴルフセット
修習生になってから,ゴルフを始めました。まだ,3・4回打ちっぱなしに行った程度ですが,高松にいる間に,ホールを回れるくらいにはなりたいです。・・・が,打ちっぱなしで貸してくれるぽんこつクラブじゃ,飛ぶもんも真っ直ぐに飛ばない!(←クラブのせいにしてる) 毎回違うクラブじゃなかなかフォームも固まらないし,やっぱりマイクラブが欲しいなぁと思ったりするわけです。

・ポータブルMP3プレーヤー
音楽好きな自分は,持ってるCDを全てWMAファイルとしてハードディスクに保存し,PCとコンポを接続して音楽を聴いています。この方が,画面に歌詞を写し出せたり,編集がラクだったりと,色々便利なんですよ。MDにダビングして聞くことはほとんどありません。そんなわけで,パソコンのWMAファイルを外に持ち出して聞ける,MP3プレーヤーが欲しいなぁと常々思ってます。

・時間
こればっかりはどうすることもできませんが・・・。確かに土・日は休みなのですが,実際には,平日にできてない掃除・洗濯・買い物などバタバタしてるうちに終わってしまうという感じです。毎日少しずつ本や新聞を読んだり,ネットサーフィンできる,そんな時間のゆとりが欲しいですねー。

・・・うーん,宝くじでも当たんないかなー(苦笑)。
Date: 2002/07/26



ミニカー検分
今日も,いつものように事件処理の日々です。先日配転された交通事故の身柄事件について取調べをやりました。今回の事件は,自分が主任を担当することになったため,やはり思い入れが違います。事件の車によく似たミニカーを近所のおもちゃ屋で買ってきて,それを机の上でコロコロところがし,衝突した車が描く軌道を研究する,題して「ひとり実況見分」までやってしまうぐらいの気合いの入りようです(苦笑)。この状況を捜査報告書として提出したら,さぞ指導係検事に驚かれるやろうなぁ・・・。(当たり前だ)

そんな冗談はさておくとしても,法律実務家にとって「疑問」を持つことは極めて重要なことだと,修習生になってつくづく痛感しました。「なぜ,このような事件が起こったのか?」「なぜ,あの人とこの人で供述が食い違うのか?」「なぜ,何度も何度も同じ犯罪を繰り返すのか?」 法曹の仕事は,目の前の事件に対してこういった疑問を持つことから始まるといっても過言ではありません。この,自分で疑問を見つけ出すっていうのが,すごく難しいんです。事件の配転を受けて,捜査方針の事前決裁を受けにいくと,必ず「この事件の問題点は何?」と聞かれるんですが,自分はそもそも疑問を持てていないため,何を答えたらいいのかよくわからないんですよ。で,結局,検事から「この部分,不思議じゃない?」「こういう可能性も考えられるよね。」などと教示を受けています。それを聞くたびに,自分は,これこそが法律実務家にとって必要な思考なんだなと痛感させられるんです。

的確に疑問を持ち,的確にその答えを見つけ出す。それができるようになった時に,「修習生」は「法律実務家」になったと言えるのかもしれません。ミニカー検分は,自分なりに疑問を見つけ出そうとする,その第一歩(のつもり)なのです。
Date: 2002/07/29



「打てば響く」取調官になれ
事件処理が一向に進まない・・・。もう他の人は,起訴・不起訴の処分を決定して,起訴ならば起訴状,証拠等関係カード,冒頭陳述,論告などを起案しているというのに,自分はまだ1件も処分決定にすら至っていません。一体,毎日なにやってんだろうと,我ながら思いますね。検察庁に来てからというもの,自分は「遅い・荒い・ミス多い」という3拍子揃った捜査で,検察と警察の方々に日々迷惑をおかけしています。特に,ミスはもう数え切れないですよ,ほんと。こないだなんて,とある強制処分の現場に同行させてもらったんですが,自分はそこで見せてもらった本物の令状を,うっかりそのまま持ち帰ってしまったんですよ。現場では,令状どこいったんやーということで,そらもう大変なパニックになったそうです。その節は,本当にすみませんでした(汗)。

さて,今日は,身柄事件の被疑者取調べをやりました。・・・が,前科がいくつもあるような被疑者だったりすると,むこうも取調べには慣れてたりして,なかなか手強いことが多いです。こっちの思うような答えはなかなか返してくれません。都合の悪い部分は「覚えてません」「忘れました」などと,しっかり記憶が抜けてるんですね(苦笑)。自分,押しが弱いのかなー。でも,だからといって,あんまり強い姿勢で臨んでも,かえって相手も意地で貝になってしまうと思うんですよ。検事いわく,人に話をさせるこつは,「打てば響く」という姿勢で聞くことなのだそうです。でも,響くためには,それなりにこちら側の鐘も磨いておく必要があるわけで・・・。自分の鐘は,まだ打ってもなかなかいい音が鳴らないようです。
Date: 2002/07/30



「走って行ってこい!」
検察庁に来てからよく耳にする言葉が,「走って行ってこい!」です。とにかく時間に対する感覚がシビアなんですよ。たとえば勾留延長を求めるにしても,勾留満期の3日前には全て決裁を済ませておくように言われます。今日できることは,決して明日まわしにしない。そういった検察庁全体の姿勢が,この言葉になって現れていますね。そんなわけで,今日も自分は,勾留延長の決裁をもらいに刑事部長室・次席検事室へ走りました。これ,比喩じゃないですよ,ホントに走るんですから(苦笑)。・・・他に,「どんだけ時間かけとんねん!」「あと5分やぞ!」などと言われることも。時間にルーズな方は,要注意です。

昼過ぎに勾留延長決裁は無事受け終えたし,今日は取調べ予定も入ってないので,ようやく,今まで手つかずのままだった事件にもとりかかれるかなー♪・・・などと思っていたら,また新たに暴行事件を1件配転されてしまいました(汗)。もう間違いなく,自分の脳みそのキャパシティを越えてます。よくこれだけ毎日毎日事件が起こるなぁ・・・。しかも,送られてくる被疑者の多くは前科を有しているので,刑罰の実効性というのもなかなか難しいことがわかります。ほんと,突き詰めて考え出したらキリがなくって,気が遠くなりますよ。
Date: 2002/07/31



通天閣の見える部屋から
今日と明日は,「修習旅行」ということで大阪に来ています。これは,当然のことながら観光目的ではなく,様々な隣接分野の施設を見学して広い知見を身につけよという趣旨で実施されるものです。第一日目の今日は,茨木市の入国管理センター見学でした。

新大阪駅で昼食をとった後,環状線・JR京都線と乗り継いで茨木駅へ。そこからタクシーで10分ほど走ったところに,ドーム状の屋根を持った入管の建物がそびえていました。中に入ると,会議室のような所に通され,入国審査・在留審査・難民認定など入管行政の具体的内容について職員の方が説明して下さいます。1時間半ほどの説明が終わり,さぁいよいよ施設内を実際に見て回るのかと思いきや,「それでは,今日はこれで終わりです。どうも遠いところからお疲れさまでした。」・・・なんと,会議室の講義だけで終わってしまいました。まぁ,向こうは向こうで,見せられない事情があるのでしょう。それに,長旅で疲れていた修習生一行は,これ幸いと喜びこそすれ,文句を述べる人は誰もいませんでした(笑)。

一行は,そのままホテルに荷物だけ置いて,京橋の飲み屋へ直行です。自分はアルコールがだめなのでほとんど飲みませんが,それでも,関西出身の自分としては,やっとホームグラウンドに帰ってきたなぁという感慨と懐かしさでいっぱいです。ホテルの窓からかすかに見える通天閣のイルミネーションが,「おかえり」と信号を送っているようでした。
Date: 2002/08/01



四半世紀の差は善し悪し
昨日に引き続いて,修習旅行2日目。今日は大阪地方検察庁の見学です。はじめは,全員私服で西成区を歩いてホームレスの実情を見るという話もあったようですが,万一の事態を考慮して予定変更になったそうです。

大阪地検は,去年の11月に地上25階建ての新庁舎に移ったばかりということで,非常に設備が整っています。コンピュータ制御のセキュリティシステムを備えた巨大な記録保管庫・証拠保管庫,4ヶ国語対応であらゆるメディアが使用可能な大会議場,さらには屋上になんとヘリポートまであるんです。これには参りました。ヘリポートからは,大阪城・天保山・スカイビル・大阪ドームなどが見渡せ,展望台さながらの眺めの良さですよ。このようなハイテク設備といい,近未来的なビルのフォルムといい,なんか自分は高松地方検察庁と四半世紀(25年)ぐらいの差を感じてしまいました。

さらに,大阪地検の司法修習生室も見せてもらいました。ふと見ると,前期修習で同じクラスだった人とか,昔HPに来てくれてたタッキさんがいて,懐かしかったです(笑)。そこで色々話を聞いてると,修習の様子も高松とはずいぶん違うことがわかります。

大阪では,
・まだほとんど身柄事件を配転されていない。
・帰宅時間はたいてい5時(遅くても6時)。
・取調べは,まだ1〜2回しかやってない。
・指導係検事が3人もおり,しかも修習生とは部屋が別であるため,あまり密なつきあいも無い。
・連絡用電話機・プリンター・参照用文献などの設備が充実。

これに対して,高松では,
・主任・非主任を含め,スキあらば身柄事件がじゃんじゃん配転される。
・帰宅時間は8時〜9時(遅ければ10時)。
・取調べは,もう数え切れません。
・指導係検事は1人で,しかも同じ部屋でずっと全員を見ているため,各修習生の個性・適性をよく把握されており,かなり密なつきあいがある。
・電話機・プリンターはいつも誰かが使っており,たまに取り合いになる(笑)。

こうして見てみると,どちらが良いか一概には言えない気がしますね。たとえば,帰宅時間が早ければ,家に帰って検察演習問題を解いたり,弁護士事務所の訪問などができるわけですが,反面,大量に仕事を与えられてしごかれてるほうが力がついて後々役に立つようにも思えるわけです。四半世紀の差も善し悪し,といったところでしょうか。
Date: 2002/08/02



本を読もう
今日の修習は,取調べの立会いが1つあっただけ。あとは,記録を読んだり,起訴状の起案などをして過ごしました。たまにはこういう日があってもいいですね。・・・といっても,身柄事件の勾留満期が近づいてきてるので,嵐の前の静けさにすぎない感じもしますが。

ところで,最近あまり本を読んでいないので,これではいかんと思い,いくつか本を買って読みかけています。まずは,前記修習で検察教官が紹介されていた「検察の疲労」という本です。これは,どちらかというと東京地検特捜部の話がメインなので,検察修習で見る実務とはややズレているのですが,それでも,検察人員の不足,事実上の自白重視,事件の複雑化によるスジ読みの困難化(注:スジ読みとは,事件の見通しをたてること)など,検察制度一般に関わる話も多く,なかなか興味深いです。もっとも,やや古めの本なので,今検察庁にいる自分が読むと,当時よりも徐々に改善されつつあるなぁと感心するところも少なくないです。

それから,「被疑者の取調技術」という本です。これは,もう絶版に近い状態になっており,どこにも売っていないので,出版社の方に無理を言ってお願いしてコピーを送って頂きました。少しページをめくってみると,気迫,誠意,熱意,粘り,冷静,忍耐・・・など,思いのほか根性論的な話が多いです。やはり,取調べというのが人間対人間の真剣勝負である以上,こういった要素の比重が案外大きいのかもしれません。そのことは,自分が取調べをやっていても,うすうす感じてはいましたが。あっ,もちろん,取調べに際してのポイントの置き方や質問の仕方などについても,具体例を挙げつつ述べられていますよ。さすがに根性論オンリーで取調べはできないので(苦笑)。

あと,意外と盲点なんですが,讃岐の方言を紹介した本も買ってきました。取調べなどをしていると,方言が出てきてよくわからないことがあるんですね。たとえば,みなさん,「〜〜まい」って知ってます? これは「〜〜しなさい」っていう意味なんです。ご飯食べまい,と言ったら,ご飯を食べなさいっていうことなんですよ。最初,自分はてっきり,否定のことかと思いました。もうご飯なんか食べないぞ,みたいな(苦笑)。このへんのニュアンスを取り違えたら,時として大変なことにもなりかねませんからね。

検察と全く関係のない本を読む時間は,今のところ残念ながらありません。少しずつ仕事にも慣れてきたので,他の本を読む時間を見つけ出せたらいいなとは思ってます。
Date: 2002/08/06



国民の目
先日,指導係検事から,この日記の中で書いた内容が一部不適切である旨の指摘を受けたので,その部分を削除しました。まずかった理由については,検事から納得のいく説明を受けており,自分も了解しています。

念のため申し上げておきますと,自分はこの日記で,いわゆる「内部事情の暴露」や「修習制度批判」などをするつもりは,さらさらありません。単に,修習生活の様子を周囲の人や後輩の受験生達に見てもらって,少しでもその雰囲気を感じてもらえたらいいなと思っているだけです。そして,文章も決して適当に書いているわけではなく,常に関係者のプライバシーや機密事項に注意を払い,慎重に内容を選んで書いてきたつもりですし,それは今後も変わりません。

検事はおっしゃいました。「君たちは『まだ修習生だし』という気持ちでいるかもしれないが,国民の目は違う。検察庁にいる以上,国民は君たちのことを検事と同じように見ている。そのことをもっと意識せよ。」 全くその通りです。今後は,より一層,このことを肝に銘じてやっていきたいと思います。

Date: 2002/08/07



潮風に吹かれながらハンコに思いを馳せる
今日は,午後から社会修習として,海上保安庁の見学に行ってきました。海上保安庁は,海での事故や事件,海上交通整備などを総合的に扱っており,とりわけ不法入国や密輸などがあったときに検察と密接に関わってくるわけです。

まず,最初の1時間ほどは,庁内で職務内容の説明を受けました。部屋を暗くしてビデオが上映されはじめると,一人,また一人と夢の中へ・・・。日頃しごかれてへろへろになっている法曹の卵は,教室で早くも舟をこいでおりました。従って,内容はあまりよく覚えておりません。もっとも,案内パンフレットはもらってきているので,これを読み返せばおおよそのことはわかります(←って,全然意味ないやん)。

その後,実際に巡視艇に乗せてもらって,パトロールに同行です。巡視艇の中の設備や機械,レーダーも見せてもらいました。他のフェリー等よりもはるかに速い速度で,海を割って水しぶきを上げながら走る舟の,甲板に立って眺める瀬戸内海はなかなか壮観でしたよ。瀬戸大橋をバックに記念撮影までしてしまったのでした。

・・・しかし,そんな中でも,頭の中には一抹の不安が。そう。身柄事件の勾留満期が目前で,刑事部長と次席検事の決裁を受けなければならなかったのです。身柄事件の法定期間は揺るがないため,こっちとしてはなんとしてもハンコをもらわなければならないのです。そんなわけで,我々修習生は,午後4時に検察庁へ戻ってくると,青ざめながらすぐに刑事部長室へ直行しました。すると,今度は刑事部長室がごったがえしてしまって,なかなか入れない(汗)。この待ちぼうけの時間が結構長くて,そのぶん時間をロスってしまうので,できれば部長室の前に番号札か何か置いてほしいなぁなどと,この時ばかりは切に思いました。結局,何度か突き返されては戻っていくことを繰り返し,幸いにして,みんな無事決裁を通ったようです。

潮風とハンコ。実に両極端なコントラストの一日なのでした。
Date: 2002/08/08



人のハートをつかむのが法律家や!
今日,ついに,配転された事件のうち身柄1件を起訴まで持ち込むことができました。決裁や点検をしてもらいに行くと,「えらい難しい犯罪をやってるんやねぇ」と言われていた事件なだけに,感慨もひとしおです。この時期(8月半ば)にもなってまだ1件しか処理してないというのは,実はかなりのスローペースなのですが,それでもこの1件は,自分にとって,サッカーW杯日本代表が最初のベルギー戦で初めてあげた勝ち点1のような重みを感じられました。今回は,とにかく証拠を固めて処分を決定するので精一杯でしたが,次からは事件の背景や再犯防止など,色々な点に目を向けられたらと思います。

他の修習生も,今日でみんな身柄の起訴を済ませたようなので,夕方からみんなで打ち上げに行きました。こういった公共の場での飲み会では,具体的な事件の話などはもちろん一切しないのですが,検事のポリシー,価値観,法曹観を色々と聞くことができ,興味深いです。「法律家は,どこまでいっても人間を相手にする仕事やから,相手のハートをわしづかみにする技術を身につけていってほしい。この検察修習は,そういう意味で,必ず君らの糧になる。だから,大変やろうけど,食らいついてきてくれ。」 そういう風に言われると,こちらとしても,なんとか頑張ろうという気になるでしょ? こうして修習生の心もしっかりつかんでいるというわけですね(笑)。

さて,いよいよ明日からは,待ちに待った夏期自由研究日です。司法修習では,決して「夏休み」という呼び方はしません。旅行に行くことも,家でのんびり本を読むことも,あくまで「自由研究」なんですね。この1ヶ月間はとにかく後ろを振り返らずに走り続けてきたので,かなりくたくたです。ここらでゆっくりと自由研究を満喫して(笑),体を休めたいと思います。
Date: 2002/08/09



「初めてだし・・・」はもう通用しない
合計9日間の「自由研究」を経て,検察修習の後半がスタートしました。今日は取調べなどはなく,記録検討と次席検事の講話だけでしたが,これだけブランクが開くと,さすがになかなか頭と体がいうことをきかないです。いわゆる在宅事件(逮捕・勾留などの身柄拘束なしに捜査を進めている事件のこと。逃走や罪証隠滅のおそれが少ない場合は在宅にすることが多いです。)も,休み前にかなり積み残していたのですが,細かい事案の内容はすっかり頭から抜けてしまっていて,かなりやばいです。しかも,今日,昼休みが終わって部屋に戻ると,デスクの上に真新しい記録が置かれていました。よく見ると,「身柄」の文字・・・。がーーん。なんと,早くも次の身柄事件(傷害)がまわってきてしまいました。未処理在宅事件がまだ4つもあるのに,一体どうすんだああぁぁぁぁぁぁ(心の叫び)。

それにしても,検察庁に来て1ヶ月半が過ぎ,修習生室の雰囲気もだいぶ変わりました。7月当初はみんなおろおろしていたのですが,最近はみんな自分のやるべきことをきちんと把握し,当たり前のように捜査方針を立てて,当たり前のように警察や関係者の方と電話でやりとりをし,当たり前のように取調べをして,当たり前のように処分を決定しています。指導係検事が修習生に細々と説教をすることも少なくなってきました。修習生の側からすれば,「初めてだし・・・」という今までのような甘えはもう通用しない時期になってきている,そんな気がしますね。慣れてきたら慣れてきたで,新たな壁にぶちあたるように,司法修習という制度は本当に上手くできています。
Date: 2002/08/19



ひとりごと
実務修習に入ってからというもの,部屋でひとりごとをブツブツ言うことがずいぶん増えました。つい,次回の取調べのイメージトレーニングをやってしまうんですね。一人で鏡に向かって話しかけているその姿は不気味極まりないですが,本人はかなり真剣です(笑)。・・・今日も,在宅事件の参考人の取調べを一人やりましたが,入念なイメージトレーニングのおかげ(?)で,ほぼこちらが想定していた内容の供述を無事得ることができました。

今日は,取調べのほかに,「証拠分け」といわれる仕事もやりました。これは,起訴後第一回公判期日前の事件について,捜査段階で得た全ての証拠を再検討した上で,?公判で提出するものとしないものに振り分け,?提出するものは甲号証(物証,参考人供述調書等)と乙号証(自白調書等)に振り分けて,?さらに各号証内部での証拠の順番を決定するというものです。証拠というのは,とにかく出しまくればよいというものではなく,どうすれば最も裁判官にとってわかりやすく,最も心証を得やすいかという観点から,絞り込みをかける必要があるわけですね。これ,実際にやってみると,なかなか難しいです。なんか,考えていくと,どれもこれも必要な気がしてきて,はずすのがもったいない気分になってくるんです(笑)。で,検事のところへ持っていくと,「なんでこんなもんが要るんや」とか言われてバシバシ削られるわけですが・・・。その過程は,ひとつひとつの証拠が持つ価値と,迅速・効率的な訴訟追行を天秤にかけていくような感じでして,説明を受けるごとに「なるほどー」と感心したのでした。
Date: 2002/08/20



決裁の壁
昨晩は,取調べの疲れで,家に帰るとすぐに倒れ込むように寝てました・・・。おかげでたくさん睡眠をとって,今日は元気に修習です。もっとも,今日は取調べはなく,記録検討と冒頭陳述要旨の作成をやりました。冒頭陳述というのは,検察官が証拠調べの始めに,証拠により証明しようとする事実を明らかにするもののことでして,被告人の身上・経歴,犯行に至る経緯と犯行状況などを端的に記述します。高松地検では,主任立会制(捜査を担当した検事が,そのまま公判も担当する制度)をとっているため,修習生も,自分が捜査を担当した事件についてそのまま冒頭陳述を作成することになっているんですね。これはA4用紙3枚程度なので,すぐに書き上がるかなぁなどと甘く考えていたら,例によって部長の決裁でことごとく突き返され,気づいたらもう帰る時間になっていました(苦笑)。今日は,他の修習生もことごとく決裁の壁に阻まれていましたが,検事いわくは,「実務家になったら,もっと厳しい決裁官(=相手方当事者,相手方代理人等)と戦わなあかんのや。こんな身内の決裁官ぐらい説得できんでどうするんや。」とのこと。説得の技術を身につけさせようという配慮なのかもしれません。

ところで,よその修習地がどうなのかは知りませんが,高松では,そろそろ修習生にも否認事件(まだ自白がとれていない事件)が配転され始めています。これがなかなか精神的に重く乗しかかってくるんですね・・・。自分,いつも思うんですよ。もし,今自分が受け持っている修習生用の事件が実は全てフィクションだったら,どんなに気が楽だろうなぁって。被疑者や参考人も,実はすべて役者さんを雇って架空の人物を演じてもらっていて,ただそのことを修習生には隠しているだけじゃないかと(笑)。いやもちろんそんなはずはないわけで,逆に本物の生の事件だからこそやりがいを感じて真剣に取り組めるんですが,まぁたまにはそういう空想をして現実逃避したりもするわけです。
Date: 2002/08/22



ギャンブルも経験のうち?
今日は,懸案の否認事件に関する取調べをやりました。取調べにあたっては,どうやったら相手が本当のことを話してくれるか,色々と考えます。予想される弁解とそれに対する反論を準備することはもちろんですが,その他にも,口調は丁寧な方がよいか,タメ口の方がよいか。理詰めがよいか,単純なやりとりがよいか。目を見て話すのがよいか,ちらちらそらして話すのがよいか。上着とバッジは身に付けたままの方がよいか,はずした方がよいか。カッターシャツは白がいいか,青がいいか。・・・などなど,実にどうでもいいようなことまで,事前にあれこれと策をめぐらせるわけです。その効果のほどは,甚だ謎ですが(苦笑)。幸い,今日は,なんとか被疑者を割ることができました(「割る」というのは,検察用語で「自白させる」の意味です。口を割る,からきているのでしょう)。

もちろん,そううまくいくことばかりではありません。ときには,相手がへそを曲げてしゃべってくれなくなる場合だってあります。それで,仕方なく検事に交代すると,これが不思議とあっさりしゃべってくれたりするんですよ。そういう時は,自分の力の無さを改めて思い知るわけです。・・・ただ,指導係検事はおっしゃるんですよ。「修習生は,別にいい仕事をする必要なんかない。その代わり,成長していく必要があるんや。」 そのために今やるべきことは,記録検討や起案もそうですが,やっぱり取調べで一人一人の人間と真剣勝負をして色々な経験をすることなのかなぁという感じがします。

さて,午後からは,賭博事犯についての講義がありました。賭博の種類,道具,ルール,実際の検挙事例などについて一通りの説明を受けた後,なんと宿直室で実際にサイコロ賭博(サイ本引と言います)を実習しました。・・・あ,もちろん,ダミーの紙幣を使いますから,違法じゃないですよー。部屋に入ると,イカツイ風体の私服警察官が数人座っていました。一瞬,本当にその筋の人を連れてきたんじゃないかと思ってあせりましたが(失礼!)。部屋の中央には,白い布が大きく敷かれていて,そこにサイコロやら賭け札やら,一式が置いてあるわけです。まさに極道映画で見るようなシーンそのものです。で,いざ実習に入るわけですが,これが,不思議なほどに全く当たらない。ダミーの1万円札が,またたく間に消えていきます。これは恐い。恐すぎ。まぁ自分のやり方が悪いのかもしれませんが・・・。人間,まじめに働いてお金を稼がなあかんなぁと,改めて感じたのでした。
Date: 2002/08/23



訓戒
今日は,在宅事件の被疑者取調べを1件やりました。自分は,被疑者取調べの最後には必ず「訓戒」をたれることにしています。要するに,心から被疑者を反省させるような説教をするわけですね。(もっとも,取調べ室ではみんな反省しているフリをしますので,実際に反省してくれてるかどうかはかなり怪しいんですが・・・。) ちなみに,自分が具体的にどんな訓戒をたれてるのかというと,それはケースバイケースでして,事件の内容とも関係してくるのであまり具体的には書けないのですが,まぁおおよそ「もっと夢を持って生きようよ」とか「こういう時に我慢するのが,格好いい男なんだよ」とかいったニュアンスの話を,さも偉そうに語っとります。ただ,これもあんまり行き過ぎると,単に取調官の自己満足のための説教になりかねないので,あくまで被疑者の気持ちに即して話す必要があり,そう簡単ではありません。第一,自分は,そんな偉そうな説教をできるほど立派な人間じゃないですしね(苦笑)。

さて,引き続いて,午後からは記録検討,勾留延長請求書の決裁,不起訴裁定書の起案をやりました。不起訴裁定書は,起訴しない事件について,その理由を記載する書面です。わりとよくある犯罪なら,去年の修習生の起案ファイルが部屋に設置されているので,それを参考にしながら起案することができます。2ヶ月もやってるとさすがに,こういった捜査書類の起案にはだいぶ慣れてきました。もっとも,研修所でやる検察起案とはずいぶん趣が違いますので,果たして研修所に戻ったときにどの程度起案が書けるかは,甚だ不安が残りますが・・・。研修所から配布されてる検察演習問題はまだ1問も解いてないし・・・(汗)。小学生の夏休みの宿題のように,夏の終わりに大慌てで解くはめになりそうです。
Date: 2002/08/26



待ちぼうけ
事件処理(特に身柄事件の処理)にあたって一番きっついパターンは,捜査をしていくにつれ次々と余罪が明らかになる場合です。やるべきことがみるみるうちに増えていき,実質上は,身柄事件を2件,3件配転されたのとそう変わりません。現在,自分が担当する傷害事件もその例に漏れず余罪が明らかとなり,てんやわんやになってます。

そこで,改めて部長に捜査方針の決裁を受けに行ったところ,なぜか待合室で大渋滞・・・。そのまま2時間も待ちぼうけで,結局タイムアップとなり,決裁を受けることすらできませんでした。このあたりの決裁の仕組みは,少々不便というか,非効率かなぁという気もします。もっとこう,庁内LANを使って起案データのみを送信し,必要があれば内線電話で議論して,決裁が終わりしだいデータで返信されてくる,みたいな,そんな仕組みが出来れば理想的だと思うんですよ。もちろん,おそらくは予算の関係で,なかなかそうもいかないんでしょうが・・・。
Date: 2002/08/27



拝んで拝んで拝み倒せ!
もう今週も折り返し地点。今日は,非主任の身柄事件の取調べをやりました。高松修習では,身柄事件を二人ペアで担当し,一人が主任として被疑者の取調べ,もう一人が非主任として参考人の取調べを担当することになっています。非主任の事件は,責任が軽くてラクなんですが,その反面,主任ほど事件の内容を把握できていないため,参考人取調べの時に焦るはめに陥ります。今日の事件も,自分は非主任でして,ぶっつけ本番とまでは言いませんが,直前まで主任と慌ただしく尋問事項を詰めたりして,冷や冷やものの取調べをやってきました。もっとも,そういう時でもなんとか調書をとれるようになったのは,この2ヶ月での成長の証かもしれません(?)。

その後は,別事件の参考人数名に電話をかけて,出頭のお願いをしたぐらいですね。参考人取調べというのは,あくまで任意ですので,邪魔くさがって来てくれない人もいるんですよ。そこをなんとか,相手の機嫌を損ねないように拝んで拝んで拝み倒して,やっとこさ来てもらうわけです。今日は,さほど時間はかからなかったので,めずらしく夜の7時半ころには残業が終わり,家へ帰ることができました。明日・あさってに備えて,体力を蓄えます。

なお,この日記の番外編コーナーである「讃岐うどん食べ歩き記録」は,当分の間お休みさせて頂きます。理由は極めて単純で,お金がないからです(苦笑)。昼食代って,結構ばかにならないんですよねー。今後しばらくは,昼休みに家へ戻ってご飯を作ろうかと考えたりしてます。修習生の暮らしぶりというのは実に人それぞれでして,車を買ったり毎日飲んだりと悠々自適の生活をしている修習生がいる一方で,自分のような一般庶民の修習生は貯金や実家の資産など全く当てにできないので,まぁ貧しい生活を送ってるわけです。(それでも,修習生の給料は,公務員の初任給の中ではかなり高めだそうですが・・・。その分,何かと出費も多いんです。)
Date: 2002/08/28



修習生,何でもやりマス◎
週末が近づいて,少々お疲れモード・・・。今日は,自分の取調べはなく,コンビを組んでいる修習生の取調べの事務官を担当しました。事務官役の修習生は,取調官役の修習生の隣のデスクに座り,コピーをとったり,取調べ状況のメモをとったりという仕事をしますが,最も重要な仕事は「供述調書のタイピング」です。すなわち,事情聴取がひととおり終わった後,取調官がその内容を口頭で事務官に伝える(口授といいます)のを,事務官が一太郎にバシバシ打ち込んでいくわけです。これは,キーボードを打つ速度が遅いと,大変なことになりますよー。打ち終えるまでの間,参考人をずっと待たせているわけですから・・・。また,取調官のフラストレーションもたまりますしね。受験生のみなさん,司法修習に来る前に,タイピングだけは絶対に練習しておいた方がいいです。ただでさえ検察修習はハードなのに,タイピングでつまづいてたら,かなり出遅れてしまいますよ。できれば,1分間あたりの有効打鍵数300以上にはなっておくことをお勧めします。

修習生というのは,こういった取調官や事務官の仕事以外にも,実にいろいろな仕事を経験します。そうそう,証拠として使う写真なんかも,修習生が自らデジカメで撮影したりするんですよ。物を撮るだけならまだいいんですけど,炎天下での警察の実況見分における立会撮影や,司法解剖における立会撮影は,仕事とはいえなかなかきついものがあります。ある時は捜査官,ある時はカメラマン,ある時は電話の取り次ぎ,またある時は買い出し屋(パシリ?(笑))。「やれ」と言われれば何でもやる,そしてそこから何かを得ていく,それが修習生なんです(笑)。
Date: 2002/08/29



「追い込まれてこそ,成長していくんや。」
昨日とはうってかわって,今日は一日中,参考人の取調べをやりました。ホントは一日中やるつもりじゃなかったんですけど,いざやってみると,なかなか思うように進まなくて・・・。で,夕方の4時くらいになってようやく調書案を作り上げ,部長の決裁をもらいに行ったところ,大量のダメ出し(補充聴取すべき事項の指摘)を受けてしまいました。もうこの時は,本当に体中から汗が吹き出るような感じがしましたよ。これだけ長時間にわたり事情聴取して調書案を作っときながら,どのツラさげて参考人の前に戻れようか,と(苦笑)。

それでも,人間,追い込まれたら必死になるもので,その後どうにか20分弱で補充聴取を終えることができました。指導係検事がよく,「追い込まれてこそ,成長していくんや。」とか「おまえらはまだ追い込み方が足りひんなー。」とか言っているのが,少しわかったような気がします。思えば,もし仮に,これまでの2ヶ月間,記録ばっかり読んで,たまーに取調べやって,あぁ時間余ってるなぁ・・・みたいな修習をやってたら,今の自分とはずいぶん違う風になってた気がしますもん。その意味で,指導係検事には感謝しています。

そんな指導係検事や指導係事務官と同じ部屋で修習をするのも,実は今日が最後です。来週からは,どうやら指導係が代わるらしいんですよ。それで,今日は,昼休みに修習生同士でこっそり打ち合わせをして,クラッカーを鳴らして花束を贈呈し,記念撮影をするというささやかなセレモニーをやりました。普段はいっぱいいっぱいになってても,最後となるとやっぱり寂しいもんですね。今の指導係検事と指導係事務官に2ヶ月間接していたわけですが,そこにはまさに,被害者と共に怒り共に泣く,血の通った捜査官の姿がありました。7月,検察修習が始まったばかりの頃に,検事が幼児虐待殺人事件の捜査経験を話しながら見せたあの涙を,修習生8名はきっと忘れないでしょう。

今までどうもありがとうございました。
Date: 2002/08/30



12時30分
本日の帰宅時間は,夜中の12時30分・・・。くたくたです。それでも,残業手当が出るわけでなし,誰が褒めてくれるわけでもなし。それどころか,むしろ,「こなせて当たり前」の世界。

今日がまだ月曜日だと思うと,言いようのない暗い気持ちに襲われるのでした。
Date: 2002/09/02



「怒られない」ということの怖さ

新しい指導係検事が着任して,2日目。まだ,検事も修習生も今のところいっぱいいっぱいなので,お互いに自己紹介すらしておらず,とりあえず同じ部屋で仕事をやっているという感じです。仕事のやり方とかも今までとは結構違うので,正直なところ,まだかなりとまどっています・・・。まぁ,またそのうち慣れてくるのかもしれませんが。

今度の指導係検事は,前の検事とはうってかわって,極めて冷静沈着,合理的,クールな印象の女性検事。もう修習生室に怒号が飛び交うことは無いのかと思うと,少し寂しい気もします(苦笑)。たまに前の指導係検事が心配げに部屋をのぞきに来て下さると,なんかとても懐かしくて,妙にほっとしたような気持ちになるのでした。

今日は,自分が主任をやっている身柄事件の参考人取調べをやりましたが,こちらもあまり思うようには進みませんでした。ことごとく警察での話よりも抽象的かつ後退した内容の調書になってしまって・・・。準備不足のまま取調べに突っ込むと,こういうことになってしまうわけです。これはヤバいと。間違いなく大量のチェックが入るだろうなぁと思いつつ,検事に調書を見せたところ,「ほんとにこれでいいの?」と怪訝そうな顔をされつつも,ほとんどチェックを入れずにそのまま口授して署名・押印まで終わらせてしまったのです。

・・・それを見た瞬間,自分は悟ったんですよ。「怒られない」ということの怖さを。今までは,まずい調書案を作っても,最後には検事がチェックを入れて指示を出してくれるだろうという甘えが,自分の中にはあったんです。また,調書に限らず,色々な捜査方針で怒られたりしていたことは,裏を返せば,自分の捜査のまずい所を端的に指摘して下さっていたわけで,こちらとしては,直すべき所がはっきりとわかったということに他ならないわけです。逆に,「怒られない」ということは,全てを自分で判断し,自分で考えなければならないということを意味するわけですよ。なんか,この2ヶ月間で,検察庁の仕事にだいぶ慣れてきたような気になっていましたが,それは実は,前の検事からあれやこれやと怒られて指摘を受けていたからこそ,こなせていってただけなんだなぁと気づいて,愕然としたのでした。

明日からまた,不安いっぱいの再スタートです。
Date: 2002/09/03



昼間っから,できあがっております。
検察修習の目玉企画のひとつとして,飲酒検知の実験というものがあります。飲酒検知というのは,いわゆる酒気帯び運転や酒酔い運転を検挙するため,呼気内のアルコール濃度を検査するやつです。やり方は実に簡単で,ビニール袋の中に息を吹き込み,これをポンプのようなもので吸い出すと,目盛りの所にアルコール濃度が出る仕組みになっています。

昼の3時ころ,修習生全員が指導室に集められました。席に着くと,全員の前にビール瓶とコップが置かれます。・・・そう。修習生が実際にお酒を飲んで,どの程度の酒量でどの程度のアルコール濃度が検出されるのかを実体験せよという修習なのです(笑)。しかも,検知結果に影響が出ないよう,つまみはごくわずか。すきっ腹にガンガンとビールを入れていきます。自分のように全く酒を飲まない人間にとってはかなり苦痛な修習なわけですが,それでも「これも仕事だ」と思い,今日は腹をくくってビール瓶2本空けました。で,飲酒検知器にかけてみると,なんとアルコール濃度1.47という,普通人では考えられない数値をはじき出しました(注:道路交通法では,0.15を越えると,1年以下の懲役または30万円以下の罰金です。)

修習生はみな非常に熱心に修習に取り組んだので,昼間っから完全にできあがってしまいました(苦笑)。自分は,1時間位で気分が悪くなってきて,ふと気づいたら床に寝てたんですが,どうやら寝ている間に他の修習生が少々陽気にやりすぎたらしく,検事正(地方検察庁で一番偉い人です)の逆鱗に触れてしまったとか・・・。指導室は,検事正室と建物の反対側にあるのですが,それでも笑い声などがうるさかったということなので,そらもう,よっぽどひどかったのでしょう。普段は非常に温厚なあの検事正がお怒りになったぐらいですから・・・。修習生全員,反省しきりで,明日は土下座行脚です。
Date: 2002/09/04



グサッ!
検事から言われて,心にグサッとくる一言。「これ,日本語の意味,よくわかんないんだけど。」 こっちは一生懸命頑張って起案してるのに,このような言い方で一蹴されてしまうと,結構落ち込みます。この仕事,向いてないんかなぁ,って・・・。修習生というのは実にナイーブかつ気ままでして,怒られないと何か物足りないし,かといって,あまりキツい言い方をされると傷ついてしまうんですね。まぁ,この2ヶ月間で,「あほかっ!」「何しとんねんっ!」等と怒鳴られることにはかなり慣れましたけど(苦笑)。

今,主任で持っている身柄事件の捜査の関係で,来週からは殺人的に忙しくなりそうな予感・・・。修習旅行などの行事も色々あるため,なかなか思うように捜査が進まないんですよねー。勾留延長請求書に「修習行事により捜査未了のため」とか書いてみようかと思うぐらいでして(笑)。来週以降は,休日出勤も辞さない構えです。もう自分は,処理件数へのこだわりなんて,完全に捨て去りました。一般に,処理した事件の数が多いほど,「仕事ができる」という評価がされるらしいんですよ。けど,今の自分の状態は,とてもそんな数字を追っかけてる場合じゃないです。いや,ここには詳しいことは書けないですけど,なんか事件がかなり複雑になってきてて・・・。とりあえず,体壊さない程度に頑張ります。
Date: 2002/09/05



香川県警・密着24時
現場を知らずして,捜査を語るなかれ・・・ということで,今日は,社会修習の一環として,夕方から香川県警の市内パトロールに同行しました。実際にパトカーの後部座席に乗せてもらうことができるという,非常に貴重な体験です。(いや,被疑者として乗ることはないと思うので(笑)。)

たった2時間半の見学なので,そうそう事件や事故なんて起こらないだろうと思っていたら,なかなかどうして,交通事故・信号無視車両の追跡・手配車両の追跡という,3件の処理を見ることができました。無線で連絡を受け,現場に急行する時の緊迫感。警察官が慌ただしくパトカーを降りるのに続いて,自分もパトカーを降りた時の,付近に残っていた事故の痕跡。当事者からの事情聴取,けが人の救急車での搬送,現場保存と,次々に手際よく処理が進んでいく様子。サイレンを響かせながら,猛スピード・急ハンドルで車両を追いかける時の激しい車内の揺れ。・・・その全てが,テレビの「警察密着24時」なんかよりもはるかにリアルに,脳裏に鮮烈に焼き付いたのでした。

現場の警察官の方々は,本当に献身的に必死で頑張っているんです。安易に警察バッシングをする人達にも,ぜひこの現場を見せてあげたいものです。
Date: 2002/09/06



事件は日を選ばない
休日返上で,今日は身柄事件の弁解録取をやってきました。これは,警察により逮捕されて送検されてきた被疑者について,勾留すべきかどうかを判断するために,被疑者の言いぶんを聞く手続をいいます。

事件は日を選んでくれませんので,当然,休日に検察庁へ送られてくることもあるわけです。そのため,検察庁では,「当番」の検察官を置いておき,その人が弁解録取その他緊急の事態に備える体制になっています。この場合,まったく初めて見る記録でも,わずかな時間で全て読み,把握しなければなりません。自分も,今朝,辞書のように分厚い記録を渡されて「今すぐ読んで」と言われ,どうしようかと思いましたが,なんとか検事に助けていただき,勾留決定までこぎつけたのでした。今日はぐっすり眠れそうです(苦笑)。
Date: 2002/09/08 (休日特別版)



板挟み
検察庁配布の日程表によると,これから検察修習が終わりに近づくにつれて,また社会修習が増えてくるようです。今日は,刑務所の見学に行き,実際に在監者と同じメニューの昼食をいただく・・・はずだったのですが,自分は体調がすぐれないため,早退して帰ってきました。この週末は,土曜日がボディビル,日曜日が休日出勤と高松の案内をしていたため,ちょっと休養が足りなかったのかもしれません。

あと,心労が少しずつ蓄積されてきているのも事実です。検察修習も3分の2が終了し,そろそろ修習生同士の間で,「何件落とした?」等という会話が交わされ始めてます(「落とす」というのは,検察用語で,事件を処理することです。一般に,処理件数が多ければ多いほど,仕事ができるとされます)。これ,よくよく考えてみると,事件ごとに処理の難易は異なるはずですから,単に件数の寡多だけをとりあげるのは少しおかしい気もするんですよね。たまたま処理が簡単な事件を配転された人はラッキーということになってしまいますから。・・・まぁ,そうはいっても,難易おりまぜて全員にまんべんなく事件が配転されているという前提に立つならば,処理件数というのはやっぱり無視できないわけです。

で,そうすると,板挟み状態が生じてしまうわけですよ。すなわち,修習生は,自分の受け持っている事件の取調べとは別に,他の修習生の取調べの立会い(事務官役)をやらなければならないでしょう。それで,自分の事件の処理と,他人の事件のお手伝いとの間で,板挟みの状態になるわけです。上からは「自分の在宅事件は,残さずちゃんと処理していってや。」とか言われる一方で,修習生からは「立会いをお願いしていいかな?」とか頼まれますから・・・。手伝ってあげたくても,こっちがいっぱいいっぱいでどうすることもできないこともあるし,逆に,むこうもいっぱいいっぱいだということはわかっているから,こちらから立会いをお願いするのもなかなか心苦しかったりします。そういう,全員がいっぱいいっぱいになってしまっている状況が,修習生室の雰囲気自体に微妙な影響を与えていることは否めません。

休養不足と,処理件数の重圧。自分の事件処理と他人の事件処理の板挟み。そんな中で,追い打ちをかけるように,やたらと複雑な事件を配転されたりすると,体の調子がおかしくなってもまぁ不思議はないわけです。とりあえず,一晩寝て,明日からまた頑張ります。
Date: 2002/09/09



フリーズしまくりでお困りのあなたへ
今日も自分の取調べはなかったので,修習生仲間の取調べの立会い(事務官役)を1件やりました。不思議なもので,立会いをやると,主任の時には見えないことが逆に非常によく見えたりします。たとえば,被疑者や参考人の顔色。自分が主任として取調べをやっている時は,話を先に進めることで精一杯なので,なかなか相手の顔色まで読むことはできないんですよ。でも,立会いとして横から見ていると,顔色の変化等がなんとなくわかったりします。その意味で,修習生が立会いをやることには,それなりに意義があるなぁとも思ったりしました。

ところで,立会いの仕事のひとつとして,供述調書のタイピングがあります。この途中で,パソコンがフリーズしてしまった等ということは,絶対に許されません。2時間とか3時間もかけて聞いた話の内容が,一気に吹っ飛んでしまうわけですから・・・。従って,windows98のような不安定なOSは恐くて使えないわけでして,高松の修習生はみんな,堅牢性に定評のあるwindows2000又はwindowsXPを使用しています。古めのパソコンを使っている方も,検察修習に来るまでには,OSをアップグレードしておいた方がいいですよ。あと,スキャンディスクやデフラグ,ハードディスク内のファイル整理も,ちょくちょくやりましょう。

(なお,スキャンディスクとデフラグについては,下記のサイトにある「すっきりデフラグ」というソフトを使えば,一括して簡単に行うことができます。↓
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se162092.html

また,ハードディスク内のファイル整理については,自分は,下記のサイトにある「Drive Diet」というソフトを使っています。↓
http://hp.vector.co.jp/authors/VA010593/ )
Date: 2002/09/10



「今すぐ,持ってきて下さい。」
取調べをする時には,証拠品や写真等を示して話を聞くということがよく行われます。典型例としては,事件の目撃者に対して,犯人の写真を含むいくつかの写真を見せ,その中から犯人を言い当ててもらう,通称「面割り」という取調べ方法がありますね。・・・ただ,こういった取調べをやるためには,あらかじめ警察にお願いして,証拠品や写真等を検察庁へ持ってきておいてもらわなければなりません。自分は,これをうっかり忘れてしまって,めちゃくちゃ焦るハメに陥りました。取調べの30分前になってから,そのことに気づいたんですよ。で,真っ青になりながら警察に電話し,「今すぐ,持ってきて下さい(汗)。」などと無茶苦茶なお願いをきいてもらいました。お忙しい中,本当にすみませんでした・・・.

まぁ,そんなハプニングもありながらも,今週の修習ももう終わり。あ,いや,終わりじゃないんですけど,明日からは修習旅行ということで,愛媛県の方に行くことになってるんです。新しい指導係検事のもと,新しいやり方にもだいぶ慣れてきて,修習生室がまた活気づきつつあるところなので,ちょうど良いタイミングで修習旅行が入ってきました。いっぱいいっぱいの毎日からしばし解放されて,親睦を深めてきます。
Date: 2002/09/11



来なきゃよかった。けれど,来てよかった。
介護施設・大阪地検に続いて,3回目の修習旅行。今回は,犯罪者の社会復帰を支援する施設の見学に行ってきました。

ひとつは,高松から1時間弱の所で,刑務所から釈放ないし仮釈放された人を対象とする「寮」のような感じの施設です。玄関ロビーはまるでどこかの画廊にでも迷い込んだかのような感じ(と,施設長の方が自画自賛しておられました(笑))。具体的には,宿泊・食事の用意や,生活指導,就労指導等を行っています。ついつい心の弱さに負けて犯罪を犯してしまう者を,あたかも自分の子供のようにあたたかく迎え入れる施設長は,なかなか人間味あふれる方でした。

もうひとつは,お隣の愛媛県。こちらは,受刑中の者を対象とした「塀のない刑務所」です。これは,逃走の危険がなく,かつ知力・体力にも問題のない受刑者を,ある程度自由な環境で収容し,職業訓練を施す施設です。受刑者の人格を尊重した矯正が期待できる一方で,付近の住民からしてみれば,「そんな危なっかしい施設を近所に作ってもらっては困る」という向きもあり,なかなか問題も多いようです。ただ,こうした特別予防的・教育刑的な色彩の強い試みが現実になされているということは,今後の刑罰のあり方を考えていくにあたっても,大きな意味があると思いました。

で,ここまでで終わればよかったんですが・・・。この後,修習生の有志で,しまなみ海道(愛媛県と広島県を結ぶ,瀬戸内海縦断道路です)をサイクリングしようという話になったんですよ。で,自分も頼まれると断れないタチなので,ついつい参加してしまったんです。これが大きな間違いでした(苦笑)。愛媛県の今治から,広島県の尾道までは,なんと70キロもあるんです。しかも,いくつもの山を越えていきますから,急な上り坂,下り坂もあります。そらもう,ファイトー,いっぱーつ! とかいうCMの世界ですよ。ほとんどトライアスロン状態。けど,それに気づいたときには,もう手遅れでした。とても引き返せない位置まで来てたので・・・。

自分は非常にパワレスといいますか,運動神経がしょぼいので,他の体力ある修習生がサクサク登っていける坂道でも,なかなか登れないんです。どんなに一生懸命こいでも,他の修習生達は,遠く米粒のように小さく消えていきます。それを見て,自分は,「他のみんなにできることが,自分にだけできない」ことのつらさをつくづくと感じました。そして,「来なきゃよかった」とひたすら思いましたよ。自分がもたもたしてるせいで,他の修習生のサイクリングのリズムを止めてしまったりして,結局,迷惑をかけてしまいました。

結局,自分はほとんど虫の息状態になりながらも,5時間位かけて,なんとか尾道まで到着しました。本州に上陸した時のあの達成感は,すごいものがありましたよ。なんか,自信つきましたもん。明らかにムチャやろと思うことでも,その気になってやればできるんやなぁって。尾道で食べた広島焼きとラーメンは,忘れられない味となりました。あと,古い路地とお寺と野良猫が見事に融合した町並みも,雰囲気よかったです。結局,最後には,「やっぱり,来てよかったかも。」と思ったのでした。
Date: 2002/09/12・13



赤か,黒か。
3連休・・・なんですが,自分は先週に引き続いて,今日も休日出勤でした。連休明けすぐに身柄拘束の期限が満了してしまう関係で,休日中に警察から報告書や調書等を受け取って即検討しなければならなくなったんですよ。まぁ,夕方ごろにひょこっと顔を出した程度なので,それほど大変というわけではなかったですけどね。

それよりも大変なのが,家計ですよ,家計。修習生の給料日は毎月15日なんですが,今月は15日が日曜日でしょう。自分はてっきり,直前の金曜日である13日に給料が振り込まれると思ってたんですよ。ところが,検察庁ではなんと直後の火曜日である17日に給料が振り込まれるんです。これには参りました。修習に入ってからえらい借金をしてる自分にとっては,2日遅れたら,死活問題になるわけです(汗)。修習生になってからというもの,なんでこんなに毎月赤字の生活が続くんやろうと不思議になって,昨日家計簿をつけてみたら,なんと家賃と食費と公共料金等引き落としだけで,給料全額に相当していることが判明しました。そら黒字になるわけないわ・・・。思えば,電気や電話の使い方をはじめ,自分の生活にはえらく無駄が多いので,そのへん反省して,来月からはなんとか給料内におさめようと決意したのでした。
Date: 2002/09/16 (休日特別版)



負けず嫌い
9月も半分を終えて,いよいよ検察修習も大詰め。今日は,身柄事件の取調べを1件やりました。前の事件に続いて,またも否認事件です。なんかもう,高松修習では否認事件を担当することがそれほど珍しいことではなくなってきてます(苦笑)。

被疑者の否認にも,大きく分けて2つのタイプがあります。1つは,「俺じゃない。俺はやってない。」という感じの積極的な否認。これの場合は,理論的に矛盾を突くなどの方法で,ある程度崩していくことも可能です。これに対して,もう1つは,「覚えてません。」という感じの消極的な否認。これは,反論可能性がないぶん,やっかいです。写真を見せたり証拠物を見せたり記憶喚起を試みて,それでも「覚えてない」と言われてしまうと,こちらとしては攻めようがないわけですよ。今,自分が担当している事件のひとつも,どうやら後者のようでして,なかなかてごわい・・・・。記録をよく読むように,検事から指摘を受けたのでした。

さて,新しい指導係検事のもと,帰宅時間がかなり早くなったので,みんなで一緒に夕食を食べて帰る機会も多くなりました。今日は,給料日ということもあって,みんなで焼き肉を食べて帰ってきました。それと同時に,時間のゆとりも少しずつできつつあるので,修習生同士で色々なことにトライしてみようという構想が練られています。今のところの予定としては,TOEIC対決,タイピングスピード対決,DDR(ダンスダンスレボリューション)対決などなど・・・。なにぶん,高松の修習生は「負けず嫌い」が多いため,対決という形式をとることになるんですね。もちろん,負けた場合はご飯をおごる等のペナルティもありますので,つい燃えてしまうわけです。もし,近所のゲームセンター等で,スーツ姿でDDRにムキになっている奇妙な集団がいたら,それは司法修習生かもしれません(笑)。

(なお,上記のタイピングスピード対決で使用している公式タイピングソフト(?)は,次のソフトです。↓
http://www.vector.co.jp/soft/win95/edu/se111693.html
これのレベル3を使って,どれだけ高いスコア,高いランクを得られるかで対決します。よければみなさんもお試し下さい。)
Date: 2002/09/17



刑務所よりひどいかも?
数多くの社会修習もいよいよ最後です。今日は,県内にある精神病院を訪問してきました。

院内に入ると,彫刻とか絵画が飾られており,何やら落ち着いた色調のロビーを通り抜けて,会議室へ。ここで,院長先生から,精神鑑定における責任能力の基準について講義がありました。精神分裂病,パラノイア,躁鬱病,酩酊状態,覚醒剤中毒など,それぞれのケースに応じた基準を,実に詳細に説明していただきました。そのあまりの詳細さに,自分の脳内CPUは処理しきれずフリーズしてましたが(苦笑)。

それに続いて,院内施設の見学です。病棟のほかに,精神障害者の授産施設,老人のデイケア施設なども見せていただきました。ただ,こういった施設は,以前に介護施設に行った時に見ているので(7月11・12日の日記参照),それほど驚きというか,目新しい感じはありませんでした。職員さんの献身的な姿が印象に残っています。

自分がむしろ驚いたのは,隔離入院病棟ですね。精神病患者の中でも,自傷他害のおそれのある患者さんがこの病棟へ入れられるそうです。この病室が,かなり衝撃的でした。壁も天井も一面コンクリートがむきだしになっていて,窓側には頑丈そうな鉄格子があります。部屋の中はがらんどうで何もなく,ただ隅のほうに直径15センチ位の穴があいていました。この穴で,用を足すのだそうです。仕切り壁もないので,扉の覗き窓や監視カメラから一部始終が丸見えということになります。これは,いくら本人がわかってないといっても,問題あるんじゃないかなぁという感じがしました。修習に来る前に見学した大阪の刑務所の方がましですよ,ほんと。・・・もっとも,現在,新しく病棟を建設しており,そちらは患者の人権にもう少し配慮した施設にするということでした。たのんますよ,ほんと。

※ なお,過去の日記については,このページの最下部の検索欄に 07/11 といった具合に日付けを半角文字で入力すれば,簡単に表示することができます。
Date: 2002/09/18



サンドバッグになる
今日は,身柄・在宅をあわせて3人も取り調べなければならないという,強行日程でした(注:本物の検事にとっては,普通の量ですけど。) しかも,そのうちの1人は,警察段階の調書だけで40ページにも及ぶという,結構複雑な恐喝事件です。前の晩は,睡眠3時間で尋問事項書を作成するはめに陥りました。

それで,朝からずっと丸一日かけて取調べをやって,調書をとったわけですが,これがまた非常に出来が悪かったため,検事からめちゃくちゃ怒られました。構成要件事実で聞き漏らしているところがある,文章がつながっていない,主観面が具体的にとれてない,日本語がおかしい,などなど,大量にまずい点の指摘を受けて,えんえん1時間怒られ続けましたよ。そらもう,まさにサンドバッグ状態というか,マシンガンで撃ち抜かれてハチの巣にされたような感じでした。傷ついたというよりも,むしろ愕然としましたね。今まで自分がやってきた検察修習は何やったんやろう,何も身に付いてなかったんやろうか,と・・・。しかも,怒られ続けている間,参考人はずっと待たせることになるので,修習生としては,検事と参考人との板挟みになるわけです。そんなわけで,すっかり心も体も打ちのめされてしまいました。

けど,自分も,もうちょっと打たれ強くならなきゃいかんよなー・・・。打たれ強くなる方法をご存知の方,ぜひ教えて下さい。
Date: 2002/09/20



法廷デビュー!
検察修習は,大きく分けると,捜査修習・公判修習・社会修習の3つがあります。このうち,捜査修習・社会修習については,これまでにも色々書いてきましたが,公判修習については全く書いていませんでしたね。

公判修習というのは,法廷で裁判所に提出するための証拠を整理してカードにまとめたり,冒頭陳述・論告等の書面を起案したりすることも含まれますが,それよりもなによりも,やっぱり最も大きいのは,実際に法廷に入れることです。しかも,一般の傍聴席ではなく,検察官席に座ることができるんですよ。自分も,今日,ついに法廷デビューしてきました。検察官席に座ったら,そらもう,相手方弁護人が100パーセント敵キャラに見えます(笑)。で,手続が始まると,自分が苦労して起案した起訴状や冒頭陳述を検事が読み上げてくれるますから,感慨もひとしおです。

高松では,こういった公判修習は,自分が実際に捜査を担当した事件をそのままやることなっていますが,この点は,修習地によって異なるようです。つまり,大阪などの都会では,捜査を担当する検事と,公判を担当する検事を分ける制度(専従立会制)がとられています。そのため,修習も,期間を区切って,捜査と公判のそれぞれを別で行うことになっています。これに対し,高松などの地方では,捜査を担当した検事がそのまま公判も担当する制度(主任立会制)をとっていますので,修習生も,自分が捜査を担当した事件について,引き続き公判も担当するわけです。この方式だと,もう既に事件の内容は熟知しているわけですから,非常に興味を持って,深く,公判修習に臨むことができるわけです。その反面,公判修習の回数は,大阪などに比べると,どうしても少なくなってしまいますね。修習生が起訴する事件の数なんて,たかがしれてますから。自分なんて,残り修習日数から考えても,これが最初で最後の公判修習になりそうです(汗)。
Date: 2002/09/24



すべりこみセーフ
賢明な受験生諸君はご存知の通り,捜査段階で被疑者の身柄を拘束することができるのは,勾留延長をしたとしても,逮捕3日間+勾留20日間の合計23日間です(再延長はひとまず無視)。しかし,実際に捜査をすることができるのは,このうち13日間くらいなんですよ。よっぽど大きな事件でない限り土曜や日曜は休みですしね。また,上司の決裁を満期の2日前位には受けておく必要があるのですが,そうそう簡単に上司のOKは出ませんから。色々新たに補充捜査の必要が出てきたりもするわけで,23日目の満期ギリギリに決裁を受けに行くなんちゅーことは,絶対に許されないわけです。

ところが,自分は,ついにやってしまいました。事案が複雑だったり,参考人が多数だったり,なかなか日程の調整がつかなかったり,3連休が2回続いたりという不運もあって,満期前日までずっと取調べをやっており,そのまま満期決裁が避けられない状態に・・・。それでも,起訴状を起案して持っていったところ,指導検事に突き返されること3回,部長に突き返されること3回,公判管理室に突き返されること1回,次席に突き返されること1回,検事正に突き返されること1回と,全く手心なしの厳しいチェック(当たりまえ)。もう,本当に泣きそうになりましたよ。っていうか,泣いてました。とにかく,重圧がものすごいんですよ。もし今日中に決裁が通らなければ,自分の責任で被疑者をシャバに返してしまうことになるわけですから・・・。結局,次席検事と検事正に夜7時前まで待ってもらい,満期決裁&時間外決裁という二重の禁止事項を大目にみていただくことで,ようやくようやく決裁をもらって,起訴までこぎつけたのでした。

そういや,昔,ある弁護士の先生が冗談っぽく言ってましたよ。「みんな,必ず,『司法試験に受からなきゃよかった・・・』と思う瞬間が,2,3回はあるよ。」って。自分,さっそく今日,1回目を経験しましたよ,ほんと(苦笑)。
Date: 2002/09/27



職責の重さを知る
あわただしかった検察修習も少し落ち着いてきたので,今までのことを少し振り返ると,非常に貴重な経験として,解剖の立会いがありました。(但し,それがいつだったのかは秘密です。関係者の方にご迷惑がかかりますから。)

ある朝,登庁すると,突然「今日,解剖がありますんで,手の空いてる方は立会いに行って下さい。」と呼ばれるんです。よりによって自分は,この時,たまたま手が空いていました(汗)。従って,必然的に,立会いを避けられない状況になったというわけです。人気(ひとけ)が全くない法医学教室の前に着き,白衣と帽子とゴム手袋が渡される時の緊張感。おそるおそる部屋へ入る。解剖の先生と,その助手らしき人が5〜6名,警察関係者が5〜6名ほどおり,指示や質問が始終飛び交う物々しい雰囲気。ベッドの上に横たえる被害者の方が気の毒で,2日間ほどずっと頭からその光景が離れませんでした。

修習で解剖立会いをさせる理由は,命の重みを知り,そういった人の命を奪う行為と向き合う検察官の職責の重さを知ること。検事はそう言っていました。
Date: 2002/09/30



チリも積もれば・・・
怒濤の検察修習もいよいよ大詰め。しかし,まだ最後の大仕事がいくつか残っていました。

まずは,「修習日誌」です。これは,その日にあった出来事や思ったことなどを自由に書いて検察庁に提出するというものでして,3日に1回くらい当番がまわってきます。本当は,その当番がまわってきた時にちゃんと書いて提出しないといけないのですが・・・自分はこれを何度かさぼっていたため,今になって,たまっている日誌をまとめて書いて提出するはめに陥ったわけです。もちろん,1か月前のことなんかもう覚えてませんので(苦笑),筆が進むはずもなく,執筆は難航を極めます。

次に,「修習結果簿」と「担当事件簿」です。これらは,自分が修習中に配転された事件について,罪名や事案の概要,問題点,捜査内容,処分内容といった所定の事項を記録して,検察庁に提出するというものです。これも,日誌と同様,その都度その都度書いておけば全く問題ないのですが,自分はやはりさぼっていたため,これも直前になって焦りまくって書くことになりました。しかも,「修習結果簿」は司法研修所にも回されますので,かなりシャレになりません。

さらに,「検察事例研究」と言われるものがあります。これは,自分が扱った事件の中から1つをピックアップして,レポート形式でまとめ,やはり検察庁に提出するというものです。これまた,自分は全く手を付けていなかったため,今ごろになって,事件をピックアップする段階からスタートです。(ただし,こちらは締め切りが多少先なので,まだ間に合いますが)

そんなわけで,今晩は徹夜です。まぁ自業自得ですけど・・・。でも,今までずっと毎日のように取調べで追いまくられてたので,これらを書いてる暇がとても無かったというのも,正直なところです。これから検察修習を受けるみなさん,こまめに書いとかないと,こうして終了日前日に地獄を見ることになりますよー(汗)。
Date: 2002/10/02


「常に悩め。法律家は,悩まなくなったら終わりや。」
検察修習最終日。まず午前中は,残務処理と反省会でした。反省会では,修習生が1人ずつ,この3か月間の経験を通じて感じたこと,やりとげられなかったことなどを話していきました。わかりやすい文章を書くことの難しさ,正確な日本語を使うことの難しさ,人の心をつかみ人を感動させることの難しさ・・・。それぞれが,思い思いの感想と反省を話しながら,これまで扱った数多くの事件を振り返っていきました。みんなの考えの深さに,感心させられることしきり。最後に,検事から,「常に悩め。法律家は,悩まなくなったら終わりや。」という言葉をいただいたのが印象的でした。

午後は,割と慌ただしかったです。お昼休みに,指導検事と一緒にみんなでホテルバイキングに行き,修習生から花束も渡しました。その後,捜査記録の引継ぎをやって,午後の修了式です。検事正の講話を聞いたあと,修習生代表がお世話になった検事1人ずつに謝辞を述べていきました。さらに,それが終わると,検察庁の部屋をひとつひとつ訪れて,挨拶回りです(7月3日の日記参照)。特に,刑事部長室や次席検事室は,これまで決裁で色々戦った(?)思い出がよみがえってきます。もうここに決裁をもらいにくることはないと思うと,なぜか寂しい気持ちになり,刑事部長の「また遊びにおいで。」という言葉がとても温かく思えたのでした。

この3か月間,色々怒られたりもしましたが,自分は決して修習で手を抜いたりはしてないし,自分なりに精一杯やってきたと思います。そのことを心の支えにして,これからの弁護修習,頑張っていきたいです。

※ なお,過去の日記については,このページの最下部の検索欄に 07/03 といった具合に日付けを半角文字で入力すれば,簡単に表示することができます。
Date: 2002/10/03



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