「この仕事やってると,気が長うなるよ」

怒らず,焦らず,じっくりと。

優しさの中に,人の心をつかむ術を見た,弁護修習。



新たな世界へ
今日から,第2ステージ・弁護修習が始まりました。検察という組織の中で過ごした3か月とはまた大きく異なった,より独立性の高い,新たな世界に入ることになります。

まずは,ホテルの会場で弁護修習の開始式でした。この日まで,各修習生の指導担当弁護士は知らされていないので,一体どんな先生が自分の担当になるのか,みな期待と不安でいっぱいです。座席の配列からいって,自分の正面に座る先生が指導担当になるようなので,弁護士の先生が部屋に入ってくるたびに,「おっ,あの先生はどこに座るんだ?」といった具合に,全修習生の視線がそちらに集中することになります(笑)。で,全員が席に着くと,互いに向き合って昼食をとりました。ちなみに,検察庁とは違って,いちいち食事代を修習生に請求してこないあたり,さすが弁護士は羽振りが良いなーと,妙な所で感心したりもしました。

自分の指導担当弁護士は,非常に温厚でユニークな先生です。最初の自己紹介でも,「ウチはあんまり仕事ないんよ。やること無いかもしれんけど,ごめんねー。」と言って,場の笑いをとっておられました。先生は,修習生指導を担当するのは4回目だそうで,もう慣れたもの。法律のことや通常の会話も,修習生のレベルに合わせて下さいます。事務員の方も,決して「よそ者」というような扱いをせず,むしろ非常にアットホームな感じで温かく迎えてくれました。おかげで,人見知りのかなり激しい自分も,ほとんど違和感なくスムーズに事務所に溶け込むことができたように思います。

さて,初日は挨拶だけで終わりかと思いきや,さっそく先生についてまわって具体的な修習に入りました(苦笑)。顧問先の法律相談を1件,債権者集会を1件,不当利得返還請求の弁論準備手続を1件,それぞれ見学しましたが,いかんせん3ヶ月間ずっと刑事事件ばかりやっていたため,頭がついていかない・・・。民法のごっつ基本的な条文知識すら忘れかけてるようなので,昔のテキストでも少し目を通そうかなぁと,早くも反省しきりなのでした。
Date: 2002/10/04



昼の修習,夜の修習
弁護修習の出勤時間は,それぞれの担当事務所によって異なりますが,うちは9時30分から10時までの間に出勤してくれとのことです。検察庁の時は9時登庁でしたから,かなりラクになりました。ちなみに,修習生の中には,朝8時に出勤するように言われた人もいるようです。非常に忙しい事務所が担当だったりすると,そういう風になるのかもしれません。その分,たくさん仕事を見れて勉強にもなるわけですが・・・。まぁ,自分は,今までバタバタしてきた分,少し腰を落ちつけてじっくり修習に取り組みたいと思ってるので,今の事務所の雰囲気はちょうど自分に合ってるなという感じがしてます。

今日は,特に法律相談や法廷はなし。その代わり,近日中に仮処分申立書を1通起案するよう指示を受け,そのための記録をどっさりもらいました。山のような資料を渡されるのは,もう検察庁で慣れているので,それほどびびりません。こういうのって,几帳面に全部を丁寧に読もうとしてもだめなんですよね。どこが大事なのかっていうのを見抜いた上で,そこにポイントを絞って読む。要は,その見極めなんです。ただ,自分はまだそのレベルに至ってませんけど(苦笑)。あと,国選弁護の刑事事件の記録も1件渡されました。

午後からは,弁護士会による講義がありました。こういった合同修習の時は,各事務所にちらばっている修習生が一時的に全員集まることになります。今日は,弁護士会の構成と会務について,会長から説明を受けました。人権擁護委員会や,消費者問題委員会,司法改革推進委員会など,ある分野に特化した委員会に各弁護士が所属し,社会に奉仕することが義務づけられているとのことです。そういった内容の1時間半ほどの講義が終わると,そのまま会長に連れられて飲み屋へ,そして・・・夜の修習が始まるのでした(多くは語りません)。
Date: 2002/10/07



秋の気配
気候が比較的温暖な高松も,そろそろ自転車に乗ると風が冷たく感じるようになってきました。先生からは,直径15センチ位もある大きな梨を頂いたし,なんかもうすっかり秋ですねー。こうして季節を感じる余裕ができたのは嬉しい限りです。

さて,今日から,仮処分命令申立書の起案にとりかかりました。昨日は,仮差押と仮処分の違いすらわかってなくて,先生に呆れられましたが・・・(ちなみに,両者の違いは,結局,被保全権利の違いであり,前者は金銭債権を被保全権利とするのに対し,後者はそれ以外の物の引渡請求権等を被保全権利とします。研修所で習ったはずなんですが(汗))。仮処分命令申立書を書くのはもちろん初めてですが,そんなことは言ってられません。一般に,起案をする時は,最初から「完璧なものを作ってやろう」と思うのではなく,まず全体の骨子をおおざっぱに作ってから徐々に内容を肉付けしていく方が絶対いいです。検察修習で時間に追いまくられる中で,そういったテキパキと起案をするノウハウ(?)はそれなりに身に付いたようで,先生からも「おっ,速いなー。」と褒められました。もっとも,内容面ではあちこち手直しを受けましたが・・・。実務家の発想が文章に反映されていく過程を見るのは,とてもためになります。証拠1つ出すか出さないかの判断にしても,色々と先を読んでるんですよねー。

あとは,明日の準備として,事件の記録を新たに1件もらいました。今度は破産事件です。破産法は,大学時代にちょこっとかじっただけなので,記録を読んでも今ひとつピンとこないという状況・・・。いよいよ,白表紙を真剣に読む必要性に迫られてきました。
Date: 2002/10/08



ガラスの向こう
昨日はずっと事務所内での修習でしたが,今日はうってかわってお出かけデーでした。移動の時は,基本的には先生の車に乗せてもらいます。これまた,ごっつ高そうな外車! そらもう,乗っただけで自分が弁護士になったような感じでして,葉巻のひとつもくわえたいぞみたいな(笑)。ただし,裁判所へ行く時は,それほど遠くないので,自分は自転車に乗って行くようにしてます。

午前中,裁判所で破産の債権者集会を10分弱で終わらせ,そのまま刑務所へ国選弁護事件の接見に行きました。接見室というのは,ドラマでよく見るような部屋のとおりです。向こうとこちらがガラスで仕切られており,人の顔あたりの高さのところに小さな円形の穴が空けられてるんですね。ガラスの向こうにいる被告人の顔は,検察修習の取調べで見たそれとは明らかに違って見えました。どう違うかと言われると困るんですが・・・。なんかこう,不安とか,後悔とか,家族の大切さとか,そういった自分の気持ちを素直に述べる人間の姿がありました。弁護人との信頼関係は,こうした中で作られていくのだなというのを目の当たりにした感じです。

午後からは,行政法律相談に1件同席した後,昨日手直しを受けた起案のやり直しです。「速い・荒い・読みにくい」と定評のある自分の起案ですが(苦笑),今日もまた即日起案で仕上げて,スピードだけは先生から褒められたのでした。え,内容? これからですよ,これから(汗)。
Date: 2002/10/09



貧乏人は思う
今日は,午後から,交通事故紛争処理センターでの法律相談3件,事務所での法律相談1件に,それぞれ同席させて頂きました。その間,ずっと座りっぱなしなんですけど,人の困りごとを聞くというのは,慣れてないと結構疲れますよ。ほんと,ひとつひとつが深刻ですから,その都度一緒になって悩んだりして,気疲れするんです。そのことを先生に言うと,先生は,「まぁ,慣れないうちは,そんなもんよ。極端な話,人の相談を聞いて(それを解決して)あげることが楽しいと思えるようにならないと。」とおっしゃっていました。なるほど・・・。自分は,その域には,まだかなり遠そうです。

ところで,最近,「司法修習生の給与を廃止せよ」という意見をしばしば耳にします。確かに,修習生は「仕事」をしてるわけじゃないですからね。税金もらって「勉強」するのはけしからんって言われるとつらいもんがあります。けど,実際問題として,給与を廃止してしまったら,うちら修習生は生活していけないですよ。自分でお金を稼ぐといっても,修習生は兼職・バイト禁止ですし,仮にこれを緩和するとしても,夕方の5時以降しか働けません。それだけで生計を立てるのも大変だし,第一,そんなことしてたら修習に専念できない気がするんですが・・・。まぁ,このご時世ですし,たとえば修習生の給料を減額するとかだったら,ある程度やむをえないと思うんですけどね。

もし,修習生の給与が最初からゼロだったら,きっと今の自分は無かっただろうな・・・と,一貧乏人として思ったりするのでした。
Date: 2002/10/10



論文試験合格発表
1年前。四季の変化が豊かな京都は,もう冷たい風が吹いていました。地下鉄丸太町駅を出ると,いつもと変わりなく,スーツ姿の男女がそしらぬ顔で歩いています。自分にとっては人生が決まるかもしれない大事な日だというのに,周囲の世界はいつもどおり普通に回っているということが,どこか不思議な気持ちでした。・・・京都地検の発表ボードの前で,おしくらまんじゅうにされながらも自分の名前を見つけた時,一瞬,周囲の騒がしい声が消え,時間が止まったような感覚だったのを覚えています。

今日,残念ながら涙をのんだ方。お気持ちはよくわかりますが,泣いてる暇はありません。まずは,「もう本当に後がないんだ」という気持ちを実感として持って下さい。そこまで自分を追い込まないと,なかなか人の上に行くことなんてできないと思います。そして,今回の受験を無駄にしないことです。本試験の成績というのは,実に示唆に富んでいますから,成績表が届いたら必ず自己分析をして下さい。「今年は商法がダメだったなー。」とかで終わらせるんじゃなくて,たとえば強引に知ってる論点に引っ張り込んだらどういう評価をつけられるのかとかを見て,じゃあ今後はどうすればいいのかと。そういう風に考えて下さいね。あと,良い評価をつけられた科目があれば,それも具体的に何がどう良かったのかを考えて下さい。ついつい悪い科目にばかり目が行きがちですが,良い科目の検討も結構大事だと思いますよ。そうすれば,きっと来年につながるはずです。

さて,今回,幸いにして結果を出せた方。これを読んだら,すぐに回線を切って,インターネットをやめましょう(笑)。もう本当に手の届きそうなところまで来ているのに,ここで頑張らないと一生後悔しますよ。ちなみに,去年,自分がこの2週間でやったことは,?Wセミナーの口述過去問集のうち,自分がこれまで間違えたものをもう一度復習,?プロヴィデンスで論点の確認,?完全整理択一六法で条文の素読,という3つです。特に,条文素読は,これまで面倒くさがっていた人も,今回だけはやって下さい。普通の六法よりも,択一六法を使ったほうが,わからないことをすぐ下で調べられるので便利ですよ。条文の大事さは,自分の口述再現↓を読んでもらえばわかるかと思います。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~k-otomo/study/kodawari/saigen/saigen.html
条文番号を全部正確に覚える必要はないですけど,上2ケタ(十の位)までは言えるようにしておくと安心ですよ。

口述試験は,よく言われるように,精神的にものすごくハードです。自分も,ホテルで頭痛と熱にうなされました。もう,我慢比べのようなもんだと思って,とにかく投げ出さずに頑張って下さい。そして,口述の最後の科目が終わって,浦安の法務省センターの建物から出た時には,空を見上げてみて下さい。あぁ,空ってこんなに青かったのか・・・と思うはずですから(笑)。
Date: 2002/10/11



要件事実の勉強会
最近,またまた睡眠不足です。というのも,岡口裁判官のホームページで実施されている要件事実の勉強会に参加してまして,その答案提出の締め切りが迫っている(というか,実はもうとっくに過ぎている(汗))んですよ。要件事実がある程度頭に入ってればいいんですけど,自分はもうすっかり忘れているため,白表紙等をあれこれ調べながら起案するため,ものすごい時間がかかるんですね。そんなわけで,日記を書く日が多少ずれることはご容赦下さい。

少々お疲れモードでしたが,幸い,今日はずっと事務所での修習でした。まずは,顧問先から相談内容に関する資料が届いたということで,それに目を通しました。いかなる資料が証拠として必要かは,もちろん先生があらかじめ判断した上で,相談者に指示を出しています。つい,サーッと読み流してしまうような所に実はポイントが隠れていたりするので,証拠の吟味はなかなか神経を使います。誤解を恐れず言えば,「ウォーリーを探せ」的な感じですね(?)。あとは,当事者からの事情聴取に基づく報告書の起案と,記録検討をやって,今日も5時30分には家路についたのでした。
Date: 2002/10/15



「この仕事やってると,気が長うなるよ。」
いつの間にやら,自分のデスクの上は,事件記録が山積みになってます。しかも,先生から「これ,読んどいてね。」と言われたにもかかわらず,まだ全く目を通せていない事件の記録が・・・。検察修習では,特に身柄事件などの場合,短期集中で一気に事件処理をしますが,弁護修習は違います。次回の口頭弁論期日が1ヶ月後なんていうことはザラですから,特定の事件を短期集中というよりも,毎日毎日違う事件を見ていくという感じなんですね。その意味で,頭を素早く切り換えていくことが必要です。で,忘れたころになって次の期日がやってきて,「あぁ,そういや,そんな事件もあったなぁ。」みたいな(笑)。

さて,今日も先生にくっついて,法廷1件,法律相談3件を見せて頂きました。弁護修習に入ってかなりの数の相談に同席してきましたが,これはほんまに職人芸というか,全人格をもってして初めて成せる業だとつくづく思いますね。いかにして,相手の機嫌を損ねないようにしつつ,こちらの知りたい話を引き出すか。相談者の話の中には,法的にみて意味のある部分と,意味のない部分が混在しているわけですよ(しかも,相談者が怒っている部分というのは,えてして後者のほうだったりしますから,なおさら話がややこしいわけで(汗))。そのへんの選別を,瞬時にしないといけないわけです。自分なんかは,あまりにも関係のない話が続くと,心の中で「いやいや,こっちはそんなこと聞いてないよ」などと思ってしまうわけですが(苦笑),先生は実にやんわりと話を軌道修正して,うまく話をリードしていきます。なんかこう,懐の広さみたいなのがかなり要求される気がしますね。そんな話を,あとで先生にしていると,先生は「この仕事やってると,気が長うなるよ。」と笑いながらおっしゃったのでした。
Date: 2002/10/17



情報と人脈
実務修習の順番は,修習地によって異なりますが,高松その他小規模な地域では,検察→弁護→裁判の順が一般的です。この順番なら,まず全員揃っての検察修習で親睦を深めるとともに実務の厳しさを教え込まれ,次に弁護修習で全く反対の立場から物事を見れるとともに年内の就職活動の機会ができ,最後に裁判修習で当事者双方の気持ちもわかった上で中立の立場から物事を見れ,かつ要件事実論も思い出せてスムーズに後期修習に入れるという利点があります。いや,本当にそういう趣旨で順番が組まれているのかは謎ですが・・・。(なお,大都市では,修習生の人数が多いため,修習生を班分けした上でローテーションを組むような形になっています)

高松でも,弁護修習に入ったころから,就職活動が本格化してきています。たとえ検察官志望や裁判官志望であったとしても,事務所訪問はやっておくのが一般的です(万が一,成績等の事情で任官がかなわなかった時に,ぷーたろーになりかねませんので(苦笑)。また,現役の弁護士にあれこれ話を聞ける機会というのは,やはり貴重ですからね)。ただ,地方にいると,あまり情報が入ってこないので,なかなか大変ですよ。東京・大阪は,ホームページで採用予定事務所を公開するなど比較的オープンなんですが,その他の地域はクローズドな所が多いです。今日,いくつかの地方の弁護士会に電話してみましたが,「うちではタッチできないので,直接事務所とかけあって下さい。」と門前払いを食らった所もありました(もちろん,丁寧に対応してくれた所もありますが)。実際には,その地域の修習生にお願いして,一緒に事務所訪問に連れて行ってもらうのが一番確実なようです。情報・人脈は,どこに言っても必要というわけなんですねぇ。
Date: 2002/10/18



今ごろ気付きました。
ずっと記録検討をしていて,あることに気づきました。単にぼやーっと記録を読んでても,全く意味がないなぁ,と。つまり,自分がもし弁護士だったらどういう立証活動をしていくか,自分がもし裁判官だったらどういう訴訟運営をするか,自分がもし検察官だったらどういう所を取り調べや尋問で突っ込むか,という具合に,いわばヴァーチャル法曹になって読んだ方が,考えが深まるし,読んでても面白いんですよ。(今ごろそんなことに気付いたのか!と研修所の民弁教官から怒られそうですが(苦笑)。) この2週間の弁護修習での記録検討の姿勢を反省し,今週からは気合いを入れ直すことにしたのでした。

さて,弁護修習では,弁護士の先生にくっついてあちこち行く他に,事務員さんについて行くこともあります(書類の授受など,純然たる手続的事項については,事務員さんが法務局や裁判所へ出向くんですね)。今日は,法務局へ連れて行ってもらい,供託所を初めて見ました。供託というのは,債権者に弁済する代わりに,供託所へ目的物を寄託して債務を免れる制度ですから,お金のみならず色々な物を預かることになるわけで,自分はてっきり貸倉庫のような所かと思ってました(苦笑)。実際見てみると,ごく普通の役所なんですねー。ともあれ,このように,自分がこれまで勉強してきたことが現実にはどのように行われているのかを見ることが,まさに今後大事になってくるわけで,実務修習の目的でもあるわけです。
Date: 2002/10/21



依頼者あっての・・・
朝,事務所に着くと,すぐ相談2件に同席しました。いずれも,これまで何度か打ち合わせをして,徐々に準備を進めてきている事件です。先生いわく,依頼者に満足してもらうために一番大事なことは,「こまめな報告」だとか。今どのような状況にあるのかを,口頭または手紙できちんと報告することで,依頼者としては安心するんですね。確かに,自分が依頼者の立場になって考えてみれば,全然音沙汰がなかったら,忘れられてるんちゃうかなーと不安になりますもんねぇ。弁護士は,依頼者あっての「サービス業」なわけです。

午後からは,先生が入っておられる弁護士会の民暴(民事暴力)委員会に連れて行ってもらいました。今後の研究テーマ,警察や検察との連携の取り方などについて話し合われたようです。中でも興味深かったのは,そのスジの人達の業界紙(?)を見せてもらえたことです。どこそこ組の幹部インタビューとか,抗争の記事などが載っており,びっくりしました。こういう週刊誌があるとは・・・。さすがにそのへんのコンビニでは売ってないと思いますが(汗)。そういえば,検察庁にいた時もそのスジの人の事件はありましたし,やっぱりこの仕事をする以上は避けて通れない問題なんでしょうね。ある意味,なかなか勉強になりました。
Date: 2002/10/22



No news is bad news ? (便りが無いのは悪い知らせ?)
久々の早起きです。いつもより1時間早く家を出て,市役所での法律相談に同席してきました。見たこともないような行政関連の法律が次々と登場してきて,「ひえー,待ってくれー。」と心の中で思うわけですが,それでも話はどんどん進んでいきます(汗)。知らない法律であっても,既存の法的思考を活用して何らかの考え方を示せることが,リーガルマインドなのかもしれません。先生の実に説得的な説明を聞きながら,そんなことを感じました。

午後からは,裁判所に行って,遺言に関する研究会に参加しました。これは,他の修習生も全員参加するので,久々にみんなと顔を合わせることになります。そこで,就職活動の話になったので,自分が「ある事務所にメール送ったのに,返事来ないんですよねー。アドレス間違えたのかなー?」と言うと,他の人から「あー,よくあるよくある。それは,向こうが『いらない』っていう意思表示だよ。だから,みんな,十何件もの事務所にメールを送りまくってるんでしょ。」と教えてもらいました。・・・そうか,そうだったのか。それ聞いた瞬間,自分は,しまった!と思いましたよ。まだかなまだかなー♪と学研のCMよろしくメールを待っていた自分は,なんとまぁお馬鹿さんだったんだろうと。自分の考えの甘さをつくづくと痛感したのでした。
Date: 2002/10/23



結果が大事なのではない
今日は,午前・午後を通じて法廷傍聴を2件。これまでにも,傍聴は幾度となく経験していますが,尋問を見たのは実は今日が初めてでした。あらかじめ尋問事項書を起案したのですが,案の定,現場で先生に大量の修正を受けました(汗)。

先生いわく,争いのない刑事事件(とりわけ,将来のある被告人の場合)は,結果が大事なのではない,と。たとえ結果が覆らないとしても,弁護人が被告人の言い分を可能な限り裁判所に訴え,家族や関係者が法廷で証言をすることによって,被告人は「自分のためにここまでしてもらっている」と感銘を受けるわけです。だから,結果が見えてるとしても,絶対に弁護活動は手を抜いてはいけない。そうじゃなきゃ,刑事弁護の仕事はむなしいだけだよ・・・。帰り際に,先生がそうおっしゃったのがとても印象的でした。

法廷が終わって,弁護士待合室に戻ると,いつものように,弁護士の先生どうしで本音トークが炸裂しまくってます(笑)。その内容をここで書くことはできませんが,まぁ弁護士が依頼者からお金を払ってもらうのは実に大変だということがわかります。弁護士の仕事は,依頼者からすれば無形ですからね。やっぱり,形のない物にお金を払いたがらないのは,人間の性(さが)でしょうか・・・。
Date: 2002/10/24



自己満足に陥るな
うちの指導担当の先生は,弁護士会の民暴委員にかかわっておられるので,今日は民暴出張法律相談に同席してきました。香川県では,民暴問題対策にあたって,警察と弁護士会が古くから協力体制をとっているようで,今回も両者の主催で相談会が実施されています。最近は,景気を反映してか,暴力団がらみの金融屋,高利貸の相談が圧倒的に多いようですね。「トイチ」「倒産屋」など,そのスジの業界用語が随所に出てきます。昔,弁護士加藤晋介の著書「ゼニの事件簿」でもこういった関連の手口を読んだことがありますが,人の弱みにつけ込むことに関しては,彼らの嗅覚の鋭さは並大抵ではありません。単に,法律はどうか,理屈はどうか,といった話を超越した問題がありますので,通常の相談よりも一層難しいなと感じました。

夕方からは,「懇親会」と称して,出張相談の打ち上げが行われました。警察の方々の飲みっぷりを見ていて,ふと2ヶ月前の検察庁での記憶が・・・(苦笑)。自転車で家へ帰る途中,他の修習生と少し話してたんですよ。弁護修習に入ってからというもの,少し自己満足に陥りやすくなってるんじゃないかなぁ,って。検察庁にいた時は,何重もの決裁を受けて怒られる中で,日本語にこだわり,文章がブラッシュアップされていった側面があると思うんですよ。ところが,弁護修習に入ると,怒られることはあまりないし,起案のチェックも検察庁よりはずっと緩いわけです。そうすると,いつのまにか「こんなもんでええやろ」と無意識に妥協して自己満足に陥っている自分がいるんじゃないか,と。そんな話をしていると,自分も少し後ろめたい思いがしたのでした。
Date: 2002/10/25



物欲談義
年末といえば,ボーナス!(気が早い) 年末商戦に向けて新製品が次々と登場する中,自分的にはクールエンドスマーツなデジタルデバイスに全額つぎこみまくりたい・・・のですが,さすがにそんなことをすれば後期で泣きを見るのは明白なので,とりあえず妥協して,欲しいもののうち1つだけを買おうかと考えています。で,今から早くも,その計画を物欲全開で着々と立てていたりするわけです。

・CLIE PEG−NX60
ソニーのキーボード付きPDAです。自分は現在,シャープのザウルスを使っているのですが,アプリケーションの使い勝手が今ひとつ。しかし,CLIEなら,palm搭載でソフトウェアが豊富なので,今度こそ紙の手帳を捨てることができそうです。いずれ,必要な書類は全てスキャナにかけてデータで保存するようになれば,それこそ夢のペーパーレス・ロイヤーですよ。モバイラーのサイバー魂を強烈に吸い寄せる,まさに「物欲のブラックホール」とでも呼ぶべき一品です。 

・A5301T
auの次世代携帯電話です。背面には,カラー液晶と31万画素カメラを搭載。写真はもちろん,動画も撮ることができ,それをメールに添付して送れます。GPS,javaにも対応してるし,ドコモやJフォンのようにメールが遅延することもありません。まさにヘビー携帯メーラーの心に激しいアースクウェイクをもたらす,「物欲のプレートテクトニクス」とでも呼ぶべき端末です。

・GIGABEAT MEG−50JS
今はやりのポータブルデジタルオーディオプレーヤーです。でも,そこんじょそこいらの128メガ程度のMP3プレーヤーとは訳が違いますよ。なんと,5ギガの小型ハードディスクを搭載してるんです。5ギガですよ,5ギガ。曲数にして,1200曲くらいは入ると思います。すごすぎです。しかも,ハードディスクは取り外してPCカードスロットに差し込んで使うこともでき,通常のファイルも保存可能。モバイルリスナーの目と耳を釘付けにして離さない,まさに「物欲のキャメロン・ディアス」と呼ぶにふさわしい製品です。

・・・あ,申し遅れましたが,今日の日記は,修習とは何の関係もありません(笑)。
Date: 2002/10/27 (休日特別版)



古巣へ帰る
国選事件の記録を閲覧するため,先生と一緒に,検察庁へ行ってきました。ついこないだまで頻繁に行き来していた捜査公判管理室の片隅に,ガラスで仕切られた一角があり,そこで調書等を閲覧することができます。供述調書を読んでいて,取調官の意図みたいなものが多少なりともわかったりするのは,一応,検察修習での成長の証でしょうか・・・。帰り際に,指導検事に挨拶していこうかと思いましたが,時間的にせわしなかったので,また日を改めることにしました。でも,なんか懐かしかったなー。

その他,今日は法律相談の同席1件,法廷の傍聴1件,契約書のチェック1件をやりました。特に,契約書のチェックは,いままでやってきたこととは全く頭の使い方が違うような気がして,難しく感じましたね。「これ,実体法に反するんじゃないの?」という法的な問題だけじゃなくて,「こんな不利な規定でいいのかなぁ?」という有利不利の交渉的な問題も含むので,考え出したらキリがないという感じがしたわけです。検察修習では,こういった頭の使い方はあまりしないですからね。・・・でも,よく考えてみれば,通常の紛争であっても,和解による解決などはまさに交渉そのものなわけで,実務をやるにあたってはこういった交渉能力(?)も非常に大事になってきます。
Date: 2002/10/28



修習も,部活も。
弁護修習は,配属事務所によって本当に内容が様々なようです。自分が配属されている事務所は,それほどあちこちに飛び回るという感じではないので,法律相談や法廷に備えて,割とじっくり記録を読む時間があります。これは,高松修習にしてよかったと思う点ですね。都会だと,なかなかこうはいかない所も多いみたいです。記録を読まずに相談や法廷を見るということになると,それまでの経緯が一切わからず,本当にその場のやりとりだけで事案の概要や問題点を把握しなければならないので,かなり大変(というか,無理)やと思いますね。

さて,今日は顧問先の法律相談に1件同席しただけでした。あとは先生が外出されたので,自分は事務所で記録検討です。読むべき記録が日増しに増えてきて,収拾つかない状態になってるので,そろそろ明確にプライオリティをつけていかないとまずいです。最初の頃は5時に帰ってましたが,今では6時を超えることがザラですしね。今日も,6時30分まで記録読みでした。インターネットがらみの事件が1件あるのはうれしいなー。

そして,帰宅後は,久々に部活です。今日は,高松修習ゴルフ部に参加してきました。ブックオフで買った1000円のアイアンセットで,練習場の芝を思いっきり痛めつけてきたとかこないとか(笑)。・・・やっぱり,我流で練習続けてても,うまくならないですねー。12月あたりから,レッスンを受けようかと考えたりもしています。
Date: 2002/10/29



弁護士の立場から見る「手続法」
弁護修習が始まって1ヶ月経ちますが,まだまだわからないことだらけです。今日は,とある破産事件の手続上の問題点について考察するよう,先生から指示を受けました。破産法なんて大学以来なので,見慣れない条文とにらめっこしてたら,ものすごい時間が経っていました(汗)。で,先生から色々と説明を受けて思ったんですが,弁護士の立場から見る「手続法」というのは,単なる学問的なそれとはかなり違う気がしましたね。要するに,「こちらとしては,次に何をやるべきなのか」が最も大事なのであって,その限りにおいて手続を把握することが必要なのであり,またそれで十分なわけです。受験勉強の時のように,A・B・Cに場合分けできて,それぞれの場合の手続を順番にフローチャートで押さえて・・・・みたいなことをやっても,意味がないんですね。このあたり,非常に実務的だなぁという感じがします。

午後は,交通事故紛争処理センターでの相談3件に立ち会い。その後,ロースクール模擬授業の打ち合わせに行ってきました。なんでも,香川大学ロースクール設立構想の一環で,来週,関係者を集めてロースクールの模擬授業をやるらしいんですよ。で,その模擬授業を行うにあたって,司法修習生が模擬生徒として出演することになったというわけです。今日お話を聞いた限りでは,内容はえらく高度で,また,実務的というよりもむしろ学問的・概念的な色合いが強い感じがしました。このあたり,どのように実務への橋渡しをやっていくのかが,ロースクールの難しいところではあります。
Date: 2002/11/06



弁護士いろいろ,事務所もいろいろ。
「色んな事務所を見ておくことも,修習のひとつ。将来,法曹3者のどれになるとしても,その経験は絶対無駄にならへんよ。」

うちの先生はそうおっしゃいます。よく,地方修習は,都会での就職活動が難しいということが欠点として指摘されますが,実際には,それほど致命的な差はないように思いますね。上記のように,修習指導担当の先生は,就職活動に理解を示して下さいます。また,受け入れ側の事務所も,「わざわざ地方から出てくるんだから」ということで,修習生の都合に合わせて下さったり,初回から個別的な訪問をさせて下さったりもします。・・・まぁ,交通費が痛いことは事実ですが(汗)。

実際に事務所を見せていただくと,確かに,それぞれ個性があります。日弁連のHPでは似たような紹介文が書かれていても,いざ行ってみると,かたや上下関係ばりばりだったり,かたや和やかだったり,かたや電話がジャンジャン鳴りまくってたり,また,ボスの先生の理念とかポリシーなんかも違ったりで,それぞれ雰囲気が全く違うんですね。そういえば,一部の修習地では,弁護修習を前半と後半に分けて,それぞれ異なった事務所に修習生を配属するところもあるそうです。固定的な見方を捨て,視野を広げるには,確かにいい工夫ですよね。(ただ,その反面,ひとつの事務所での期間が短くなるため,1つの事件を最初から最後まで見届けるということができない可能性が大きいです。まぁ,そのへんは難しいところですね・・・。)
Date: 2002/11/07



うずしおの街へ
今日から明日にかけて,修習旅行ということで,うずしおの街・徳島県に来ています。(こんなとこまでPC持ってきて,Air-H"でネット接続してる自分もいかがなものかと思いますが・・・) 宿泊も,いわゆるザコ寝ではなく,ちゃんとシングルの部屋をとってくれるあたり,さすがは弁護修習! 太っ腹!(笑)

もっとも,当然のことながら,あくまで公式行事として来てるわけでして,今回は,四弁連(四国弁護士連合会)の定期大会を見学させていただきました。色々なテーマについて意見交換がなされていましたよ。そのひとつは,弁護士過疎の問題でして,とりわけ四国は弁護士数の増加が事件数の増加に追いついておらず,今後十分な法的サービスを提供できなくなっていくことが懸念されているそうです。あとは,弁護士費用の敗訴者負担,簡易裁判所の事物管轄拡大などの問題についても意見が交わされました。時には,少しエキサイトした場面もあったり・・・。ただ,最終的に議決を取ると,いずれも満場一致でサクサク進んでいきました(苦笑)。ま,同じ地域の弁護士さんですから,基本的にはおおむね共通の問題意識を持っておられるということで大過ないと思われます。
Date: 2002/11/08



オン・デマンド
先週の土曜日が修習旅行だったため,今日はその代休として,修習はお休みでした。こうして週2回しっかりと休める身分でいられるのも,おそらくは今だけでしょう。今日,久々に検察庁へ指導係検事に挨拶をしに行くと,「俺らなんか,土・日も仕事だよー。」と,疲れた様子で話しておられました。(・・・なお,このほか,自分がかつて取り調べた事件について色々とお叱りを受け,自分も一挙に休み気分が吹き飛んだのでした(苦笑)。)

時間があったので,近くの本屋さんに行って,いくつか本を買ってきました。弁護修習で最近扱うことの多い交通事故関係,倒産処理関係の本を買ってきて読んでいます。自分って,何事もオン・デマンド(必要に応じて)じゃなきゃ気がすまないみたいなところがあるんですよねー。あまり時間の余裕もないですし。ニュースにしたって,テレビの時間とそうそう合わないので,いつもネットのストリーミング配信で見てます。(http://mbs.co.jp/news/) 勉強をするのもオン・デマンド。音楽聴くのもオン・デマンド。ネットサーフィンするのもオン・デマンド。朝寝坊するのもオン・デマンドだし,部屋の片付けをするのもオン・デマンド(って,それは単にものぐさなだけだ>自分)。

そんなこんなで,休日はあっという間に過ぎてしまうのでした。弁護修習もそろそろ折り返し地点。明日からまた頑張ろう。
Date: 2002/11/11 (休日特別版)



なるか,直接対決。
「今度,この事件やるから。」と,また新しい刑事事件の資料をいただきました。で,さっそく目を通してみると,なんと,検察修習の指導係検事が担当する事件じゃあないですか。(注:検察修習中に扱った事件ではありません) 弁護修習で経験する刑事事件の数なんてたかがしれてるのに,巡り合わせというやつは実に不思議なもんです。法廷での直接対決(?)となるかもしれません。

今日は,一日中事務所で,記録検討と法律相談3件(刑事事件,企業法務等)に同席しました。相談の時は,修習生は基本的に隣に座っているだけでして,話に加わることはほとんどありません。・・・もっとも,単に聞いてるだけではパッとしないので,自分がその立場ならどう答えるかを頭の中で考えつつ聞いたりするわけです。そうすると,いかに自分がなんにも知らないかが,よーくわかりますよ。知識うんぬんのみならず,経験という意味でも。たとえば,「今後,こういった事態やああいった事態が想定されます。だから,今の段階ではそういう処置をとっておくとよいです。」みたいなアドヴァイスは,やっぱり本を読んでたってできないわけで,経験が物を言うんです。色々な事情を考慮して見通しを立てられるようになるためには,やっぱり特定の種類の事件だけでなく,多種多様な事件と向き合った方がいいんだろうなぁという感じがしますね。
Date: 2002/11/12



スジ
法律家がよく使う業界用語のひとつとして,「スジ」という言葉があります。この言葉,非常に多義的というか,漠然としていて,意味がよくわからないんですよねー。「スジってどういう意味なんですか?」と尋ねても,「スジは,スジだよ。」という答えでして(苦笑),いまひとつ明快な答えが返ってきません。・・・が,用法をいくつか聞いていると,おおよそ次のような意味で用いられている気がします。

?人を修飾する用例  ex.「あの弁護士は,スジが良いね。」
 スジが良い:頭が切れる。的確な主張・対応をする。落としどころをわかっている。
 スジが悪い:頭の切れがよくない。主張・対応が的確でない。無理を通そうとする。

?事件を修飾する用例  ex.「スジの悪い事件は,受任したくないよ。」
 スジが良い:正攻法で対応可能。依頼者の言いぶんが理にかなう。
 スジが悪い:正攻法が通じない。依頼者の言いぶんが理にかなってない。(背後に暴力団がいる,等)

?独立の名詞として用いる用例  ex.「法律家は,スジをきちんと読むことが大事だ。」
 将来の見通しのこと。今後の筋道。

この「スジ」という言葉を,自由自在にかっこよく使いこなせてこそ,真の法曹なのです。(ほんまか?)

さて,今日の修習は,非常に複雑な不当利得返還請求事件について記録検討をした上で,法廷を傍聴しました。近々,この事件についての意見書的なものも起案しますが,それ以前にまず頭の整理をせねば・・・(汗)。事件に最初から関与しているわけではないのが,修習生のつらいところです。

昼すぎからは,裁判所と弁護士会による新民訴勉強会にも参加させていただきました。内容は,主に破産手続の運用改善についての意見交換です。法曹三者といっても,変にいがみあってるのではなくて,結局は,司法の利用者の利益を志向するという点では一致しているわけです。こういった機会が設けられているのは,ある種の風通しのよさみたいなものを感じますね。
Date: 2002/11/13



目には見えない価値
弁護修習にきて最初に扱った事件が一区切りついたため,今日は,その事件に関して依頼者にいくらの報酬額を請求するのが妥当か考えてみよ,との指示を受けました。

弁護士報酬については,各弁護士会で一定の基準が定められています。たとえば,依頼者が得た経済的利益を基準として,そのうちの5パーセントとか8パーセントとか,そういった感じで一応類型別に規定が設けられているわけです。で,さっそく今回の事件をあれこれと規定にあてはめて計算すると,ゼロがひとーつ,ふたーつ,みーっつ,よーっつ,いつーつ,むーっつ・・・・・・すごい額が出てきました。これ見たときは,さすがにびびりましたね。

しかし,先生のところへこれを報告しに行くと,「この事件で,こんなにとっちゃいかんやろ。」とおっしゃいました。実は,形式的に規定をあてはめるとかえって不当に高い額や不当に低い額が出てしまうこともしばしばで,実際には,事件の難易,手間等を総合的に考慮して,妥当な額に調整する必要があるというわけです。(報酬規定自身も,そのような弾力的な調整の余地を残しています。) そんなわけで,今回の事件でも,かなり減額することになりました。

報酬額算定は思いの外難しく,実は弁護士が最も頭を悩ませる問題のひとつなのだそうで,今日はその難しさの一端を垣間見ることができたのでした。
Date: 2002/11/14



非常事態!
自分のパソコンがやばいです。電源を入れても,画面が砂嵐状態で,ほとんど何も見えなくなってしまいました・・・。(なお,この日記はザウルスからネットに接続して書いています)

研修所にいた頃から兆候はあったんですが,だんだんひどくなってきて,ついにここまで来てしまいました。リカバリーかけてもだめだったので,ソフトウェア的な問題ではなくハードウェア的な問題なんでしょう。もう4年以上使ってますし,そろそろ限界かも。

修理に出すと中のデータが消えてしまうので,もうあきらめて新しいPCを買うことにしました。背に腹は変えられない・・・。ただ,それでも,データ移行がうまくいくかは全く予断を許さない状態です。
Date: 2002/11/15



テレビ・デビュー
その後のPCですが,ソニーのサポセンに電話をかけて,BIOS初期化したら,ひとまず元通りに使えるようになりました。まぁ,またいつおかしくなるともわからないので,油断はできません。

さて,修習生というのは,ごくたまにテレビに写ることがあります。みなさんも,テレビで法廷が写されているのを一度は見たことがあるでしょう。社会的に大きな問題となっている裁判などでは,テレビ局のカメラが来ていますね。この時,法廷にちょこんと座っている修習生も必然的に写ることになるわけです。(修習生の間では,「テレビ・デビュー」と言われています。)

今日は,ちょっと違った形でテレビ・デビューとあいなりました。昼過ぎころ,香川大学でロースクールの説明会があったんですが,その中で,ロースクールの模擬授業というのが実験的に行われたんです。その際の教官役が大学教授と弁護士,そして学生役がうちら司法修習生だったんですね。内容としては,精神分裂病の被告人による放火事件(架空)を素材として,教官と学生が互いに意見をぶつけあうというものでした。台本とかヤラセとか一切なしなので,なかなか見ごたえあったのではないでしょうか。その日の夕方のニュース番組と,翌日の朝刊(四国新聞)で,見事にその様子が報道されたそうです。・・・もっとも,自分はPCとあれこれ格闘してたせいで,見過ごしてしまいましたが(泣)。
Date: 2002/11/16 (休日特別版)



走れ!修習生 〜政治記者編〜
またまた社会修習。今日から3日間は,四国新聞社にお邪魔して,記者の方に密着することになっています。初日の今日は,政治部に配属されました。

キャップ(主任)の方に連れられて,香川県庁へ。パーティションで仕切られた記者クラブの中に入ると,おびただしい量のスクラップファイルがそこいらに山積みになっており,いかにも記者のデスクという感じです。香川県庁をひととおり案内してもらい,記者のみぞ知る「ここだけの話」も聞かせていただきました(笑)。

午後からは,いよいよ本格的に取材に同行します。カメラを首にぶらさげ,メモとボールペンを手に持って出発です。まずは,県知事の定例会見。それから,県下の自治体の首長・助役を集めて行われた男女共同参画セミナーの取材に同行しました。市の職員さんなどをつかまえて,いくつか質問をします。・・・もっとも,こちらは予備知識も全くないので,質問なんてなかなか思いつかず,妙な沈黙が続いたりするわけですが(苦笑)。あとは,講演の様子を写真に撮ります。ピントぼけまくりの写真を大量生産してきました。(記者クラブのみなさん,ごめんなさい。)

部屋に戻ってくると,その取材の原稿を修習生が執筆します。わずか1時間ほどで仕上げなければなりません。これはなかなか大変でした。新聞記事って,普段何気なく読んでますけど,いざ書こうとするとすごく難しいですよ。用語の使い方,文章の構成,分量など,実は様々な工夫が凝縮されてるんです。しかも,読み手は一般の人ですから,端的に,わかりやすく,それでいて正確に,事実を客観的に伝える必要があります。記者の人から,「なんか文章が堅いなぁ。」「これは使えんなぁ。」などと言われながらも,どうにかこうにか記事を書き上げて提出してきました。

・・・おそらくはボツになるであろう,自分が書いた幻の原稿を,以下に掲載しておきます。

「女性の社会進出の重要性が叫ばれる中,市町長や助役,行政機関の幹部職員を対象として,男女共同参画についてのセミナーが昨日開催された。
 香川県では,男女共同参画計画を策定している自治体は高松市のみで,策定率も全国最下位。その背景には,中高年層を中心として,従来型の男女役割分担論が根強く残っている現状がある。同セミナーは,行政のトップにある中高年層に意識改革を求め,計画の策定を促進するのが狙いだ。
 セミナーでは,早稲田大学社会科学部教授・内閣府男女共同参画会議影響調査専門調査会会長代理の岡沢憲芙氏による講演が行われた。同氏は,講演の冒頭で,「常識」と「非常識」は時とともに容易に反転しうるとして,意識改革を強く求めた。その上で,女性の寿命が男性よりも7歳も長く,また出生率が約1.3パーセントと著しく低迷している今日の少子高齢化社会にあって,労働人口の不足を補うためには,女性の社会進出の促進と外国人労働者への市場開放が短期的施策として最も有効であると主張した。
 女性は有権者の過半数を占めているにもかかわらず,意思決定過程の大部分は男性が占めているのが現状であり,これでは女性の納得を得られる社会を構築することはできない。女性が明るい未来を築けない社会は,もはや存続できないであろう。一刻も早い行政側の意識改革と,具体的な計画の策定が求められる。(了)」
Date: 2002/11/18



走れ!修習生 〜経済記者編〜
記者密着2日目。今日は,経済クラブへの配属でした。ここは,経済問題はもちろん,市の行政問題,さらには市民行事なども扱う部署です。昨日とはうってかわって,今日はかなり古い市役所の中に記者室があるんですね。部屋は,新聞社ごとの垣根がなく,壁もクリーム色で,なんともレトロな雰囲気が漂っていました。

朝,記者室へ行くと,さっそく車で取材へ出発。一体どこへ行くのか聞くと,なんと,幼稚園児のミカン狩りの取材だとか(汗)。・・・それでも,草木の生い茂っている道なき道を突っ走って現場に向かい,熱心に園児たちの言葉に耳を傾けるその姿には,「記者魂」を見ました。はしゃぎまくってインタビューどころではない園児たちから,半ば強引に(笑)コメントをとりつけ,それをもとに担当修習生が記事を書きました。

午後からは,メディア関係者を招いて行われた広告セミナーの取材に行きました。こちらの記事の執筆は,自分の担当です(ミカン狩りのほうにすればよかったと,ちょっと後悔したりしなかったり(笑))。さすがにこちらは責任を感じたので,講演を聞きながらメモをとりまくってました。(この2日間だけで,メモ帳1冊を使い切るという状態です。) ただ,メモにばかり気をとられていると,かえって話の本質や講師の真意をつかむことがおろそかになってしまうという面があるので,難しいところです。頭のマルチタスク化は,自分の最近の重要課題なんですが,それがまさかこんな所でも現れるとは・・・。昨日と同様,記事の執筆は難航を極めました。その苦労の成果を以下に記載するので,ご覧下さい。昨日より,少しは新聞記事っぽくなりました?

「広告の意義と役割を考える『2002広告コミュニケーションセミナー』(香川広告協会主催,四国新聞社など後援)が19日,高松市中野町の四国新聞社で開催され,変化し続ける日本経済の今後の展望と,その中での広告のあり方について講演が行われた。
 同セミナーには,広告会社やメディアの関係者が約100名参加。講師を務める香川経済研究所所長の矢野博英氏は,これまでの日本経済を『結果平等的,社会主義的体質』と指摘した上で,実質的な規制緩和と,個人消費を促進する税制改革が急務であるとの認識を示した。
 さらに同氏は,『この変革の時代にあっては,オリジナリティが要求される。固定観念を排して問題意識を持つことが重要だ。変化に対応したものだけが生き残れる。』と,参加した広告関係者に意識の変革を訴えた。(了)」
Date: 2002/11/19



走れ!修習生 〜警察記者編〜
色々な場所へ突撃(?)取材してきた新聞記者修習も,いよいよ最終日です。今日は,事件モノを主に扱う県警クラブに配属されました。火事とか事故とか,何か重大な出来事が起こると現場に急行するらしいのですが,この日は特にこれといった事件は起こらなかったようです。平和なことは良きことかな。

そんなわけで,午前中は部屋で新聞やスクラップファイルを読みながら,じっと待機です。そして,午後から,外国の高官らを招いたイベントの取材に行きました。もちろん,みんな外国人です。英検2級しか持ってない自分は,もちろん英語でインタビューなどできるはずもなく・・・(汗)。もらった資料と,日本側職員の話をベースに,なんとか記事を書き上げました。

法曹と新聞記者。両者とも,「文章を書く」ことが極めて重要な位置を占める職種であるという点は共通しています。ただ,法曹の文章は,どうしても法律家相手の文章となりがちであるのに対し,記者の文章はあくまで一般の人を相手にするため,文章の「わかりやすさ」を徹底的に追求するんですよ。表現のひとつひとつについて,推敲を重ねて。そういった姿勢は,市民の利用しやすい司法をこれから作っていこうとする法曹として見習わなければならないと思いましたね。

それでは,最後に,自分が書いた3本目の原稿をここに掲載しておきます。(なお,自分が提出した原稿は,記者の方による大幅な修正の後,新聞紙上に掲載されました。修正後の記事は,四国新聞のホームページでも検索できるので,そちらもあわせてご覧になれば,いかに原型をとどめていないかがよくわかると思います。)

「国内産業の冷え込みが続く中,外資系企業を地元へ積極的に誘致するための企画として,『四国インダストリアルツアー』(四国経済産業局,香川県ほか主催)が20日から始まった。同ツアーには,EUほか9ヶ国11名の外交官や民間企業の社長らが参加。高松市林町香川インテリジェントパーク内の研究開発施設を視察し,地域の産業基盤について理解を深めた。
 ツアーの冒頭では,香川県商工労働部次長の原山正明氏らがサンメッセ香川でプレゼンテーションを行い,工業団地の立地条件やインフラ整備,賃金コストの低さなど,地域ならではの利点を参加者にアピールした。
 続いて,参加者らは約10分間,バスでパーク内を見て回った後,ネクスト香川にある大型電波暗室を視察した。同施設は,外界からの電波の影響を遮断して電磁波を測定するというもの。参加者らは,側壁と天井に敷き詰められた多数の巨大な突起物を興味深げに見回しながら,製品認証の方法や施設の利用代金について職員に質問を投げかけるなど,関心を寄せていた。
 ツアーでは,21日に番ノ州臨海工業団地を視察した後,同日午後から22日にかけて愛媛県の研究開発施設を視察する。(了)」
Date: 2002/11/20



「きみ,丸亀支部に行ってくれる?」と言われたら・・・
各都道府県の裁判所には,「本庁」と「支部」があります。たとえば,香川県の場合,高松市に「高松地方裁判所・本庁」があって,丸亀市に「高松地方裁判所・丸亀支部」,観音寺市に「高松地方裁判所・観音寺支部」があるんですね。このうち,実務修習は,もっぱら本庁のある高松市のみで行われており,修習生が支部に配属されることは基本的にありません。ただ,今後,司法試験合格者が増員されれば,(弁護修習の間だけ)丸亀支部へ配属される可能性も出てくるみたいです。弁護修習で支部を見て,裁判修習で本庁を見れば,両方の事情を知ることができるというわけですね。・・・まぁ,修習生としては,「これ以上,田舎に飛ばさんといてくれー」という気がしないでもありませんけど(苦笑)。

さて,今日の修習は,午前中に賃貸借がらみの法律相談1件に立ち会った後,午後から香川県警にて民暴研究会で闇金融の勉強。さらに,夕方は,売買がらみの法律相談1件に立ち会いました。・・・が,先週の大部分が新聞記者をやってたため,まだ頭が完全には弁護修習に戻っていない模様。記録を読んでも,起案をやっても,いまひとつしっくりこない1日でした。しっかりしましょう。>自分
Date: 2002/11/25



起床・4時
今朝は4時起きでーす・・・。昨日は事務所訪問で大阪に行って,そのまま京都の実家で一泊しました。しかし,8時半に高松駅へ戻るためには,4時に起きて,5時の電車に乗らないと間に合わないというわけです。ほとんど睡眠はとれてないので,頭がぼやーっとする・・・。けど,受験時代は,この位の睡眠時間で毎日生活してたんですよねー。人間の環境適応能力というやつは,実に驚異的だと感じる今日このごろ。

さて,今日の修習は,まず午前中に市役所での法律相談でした。これは,市役所内の各部署で現実に直面している法律問題について,担当公務員から相談を受け付け,弁護士がアドヴァイスするというものです。その内容は,行政法の専門的な話から,住宅問題・遺産問題など住民生活と直接関わる分野まで,実に様々。やっぱり,法的サービスの必要性というのは,至るところにあるもんだなぁ・・・などと感心して,フッと相談から意識が離れた瞬間に限って,先生から「これ,どう思う?」と話を振られて焦るわけですが(苦笑)。

午後からは,とある請負代金請求事件の記録を検討後,和解に同席しました。思うに,和解というのは,「相手方とのかけひき」という側面のみならず,「こちら側の依頼者に対してある程度の妥協を納得させる」という側面の難しさもあります。むしろ,事件をとりまく経緯や,人間関係,感情のもつれなどから,後者の側面の方が難しかったりすることもある気がしますね。依頼者に楽観的な見通しや,耳障りのいいことばかりを言うわけにはいかないのであって,言うべきことはきちんと言わなあかんわけです。医者が患者に病気を告知する時も,こういう気分なのかもしれません。
Date: 2002/11/27



癖というのは恐ろしい
いつもより30分早い9時半に出勤し,高松刑務所へ国選事件の接見に行きました。刑務所の入り口まで来たところで,先生が一言。「今日はOtomo君が質問してね。」 ひえー,聞いてないよー! でも,まぁ,接見に同席するのも今回が3度目ですから,そろそろ自分もやってみないとトレーニングになりません。腹を決めて,犯行の動機や今後の社会復帰のことなど,思いつくままに色々と被告人に尋ねました。・・・ただ,検察修習の癖で,タメ口・尋問調に少しなってましたが(汗)。

午後からは,交通事故の相談3件,労働事件の相談1件にそれぞれ同席しました。交通事故の相談で,実際上問題となることが多いのは,?治療費や慰謝料など損害額の計算と,?過失相殺の有無・程度ですね。今回は,先生にお願いして,損害額の計算をやらせてもらいました。通称『青本』と呼ばれている日弁連の損害算定基準と,電卓を駆使して,大学受験以来の複雑な計算に臨みます。さて,その計算結果は・・・なんと,先生の計算結果より3倍も離れた金額をはじきだしてしまい,大変カッコ悪い思いをしたのでした(苦笑)。
Date: 2002/11/28



電話の向こうは・・・
朝,研修所の裁判教官からのお電話で目が覚めました。教官は,白表紙起案に使う題材の事件を探すために,全国あちこちを回られます。で,そのついでに,実務修習中の修習生の様子も見に来てくださるわけですね。なにぶん突然だったもんで,寝ぼけててどうも申し訳ありませんでした>先生

さて,今日は一日外回りです。午前中は,電話会議での訴訟手続を見せてもらいました。なんか今日は,電話に縁のある日です(苦笑)。ラウンドテーブル上に小型マイクが置かれており,その場にいる人全員の声が拾えるようになっています。今回は,高松地裁に訴訟係属しているものの,相手方が遠方のため,この形式がとられました。これ,ひとつ疑問なんですけど,相手方は一体どこから電話をかけてるんでしょう。向こうも裁判所のラウンドテーブルなのかなと一瞬思ったのですが,訴訟係属してるのはあくまで高松地裁ですから,よその裁判所の法廷を使うというのも変な気がしますし。かといって,まさか事務所から電話ってことはないですよねぇ・・・うーん。

午後からは,交通事故の相談を2件受けた後、高松の修習生がそろって合同修習が行われました。今回は,倒産事件の処理と,法律扶助についての講義です。単なる法理論,法解釈ではなく,実務的な処理の話がされるので,非常にリアリティがあります。(たとえば,こういうふうに電話をかけるとか,こんな写真を撮って証拠保全するとか)しかも,高松では,講義を担当する修習委員の先生もみんな知ってる人ばかりで,退屈しません。・・・そして,講義後は,修習生何人かで一緒に夕飯を食べながら,互いに愚痴をぶちまけるのでした。
Date: 2002/11/29



アグレッシブ弁護士,現る
弁護修習が始まって,はや2ヶ月。高松地裁からはそろそろ「自己紹介」の提出を求められるなど,もうすぐそこに裁判修習の足音が聞こえてきています。弁護士の何たるかを理解するためには,3ヶ月という修習期間はあまりにも短い・・・。このぶんだと,法曹三者のどれになるにしても,結局はOJT(On the Job Training:実際に仕事をやっていく中で技術を身に付けていくこと)になるんでしょうねー。

ところで,今日は,法廷ですごい弁護士の先生を見ました。部屋中に響き渡る元気な声で,ガンガンと主張をまくしたてていくんですよ。もう,法廷はその先生だけがひたすらしゃべってるような状況で,最後には「さて,次回の期日ですけど・・・」と訴訟指揮までして下さいました(苦笑)。いや,これには参りましたよ。うちの先生は冷静に対処しておられましたが,もし自分だったら,相手方のペースにのまれてたんじゃないかという気がしました。アグレッシブなことは,とても大事なことです。
Date: 2002/12/02



呼び出し?
ガーン!! 今日気づいたんですけど,うちのトップページの画像って,今まで見えてなかったんですね・・・。うっかりローカルフォルダに入れたままにしてたので,うちのPCからは見えるんですけど,他のPCからは見えてなかったようです。かなりショック・・・。長い間,お見苦しいトップページをさらし続けてどうも申し訳ありませんでした。

さて,今日は,午前中に事務所で交通事故関係の記録検討をした後,昼すぎから高松地裁の所長に呼ばれました。なんでいきなり所長から呼ばれるんやろう,なんか悪いことでもしたっけな(汗)・・・などと思ってたら,もうすぐ研修所の教官が高松を訪れるので,その時の打ち合わせをしたいということでした。研修所教官の訪問は,修習生のみならず,裁判所サイドにとっても重大イベントのようです。赤じゅうたんが敷き詰められた部屋で,30分ほど自分の近況報告をしたり,所長の修習生時代のお話を聞いたりしてきました。

話は変わりますが,今日から高松修習生ゴルフ部が本格的に始動しました。今まで何度か打ちっ放しへ行ったのですが,やはり我流でいくらやってもなかなかうまくならないということで,きちんとレッスンを受けることになったんですね。で,そのレッスンが今日から始まったわけです。意気揚々とインストラクターのおじさんにフォームを教わったんですけど,これがおそろしく打ちにくい・・・。ほんまに正しいんやろうか,このフォーム(苦笑)。慣れないフォームで2時間,合計150球くらい打ったので,明日は間違いなく筋肉痛になってることでしょう。
Date: 2002/12/03



「今日は修習生がいるから,丁寧にやってくれたよ。」
この不況の折,破産事件は増える一方です。今日は,先生が管財人をやっておられる個人破産事件の免責審尋に同席してきました。といっても,実際に見てみると,管財人が簡単に収支報告・免責不許可事由の調査報告をした後,裁判官が申立人に対して「嘘はないですか?」「賭け事には使っていませんか?」等と不許可事由がないことの確認をするだけでした。正味,5分位ですよ。・・・えらくあっけないなぁと思ってたら,後で先生が「今日は修習生がいるから,裁判官も丁寧にやってくれたよ。」とおっしゃってました(汗)。

裁判所まで来たついでに,隣の検察庁へ行って国選事件の記録を閲覧した後,さらに警察署で接見もしてきました。刑事事件で,被告人が罪を認めている場合,弁護人の活動は情状立証が主となります。で,情状の中でも効果が高いのはやはり「弁償」と「宥恕(被害者が許してくれていること)」なんですね。ただ,「弁償」とはいうものの,そんな金があるぐらいだったら普通はそもそも財産犯なんて犯さないわけで・・・。逆に,たまたま親が金持ちだったから刑が軽くて済むというのも変な話ですし・・・。ケースによっては,矛盾を感じざるをえないような場面も出てくるでしょうね。まぁ,財産犯というのはそういうもんだと,ドライに割り切るのもひとつの考え方かもしれませんが。
Date: 2002/12/04



名より実!
今まで使ってきたPCがついに壊れてしまいました。メモリやハードディスクの増設,OSのアップグレードなど,あれこれ手を加えながら4年間使い続けてきましたけど,もうそろそろ限界みたいです。PCが無いと,事務所で起案するにも非常に不便ですので,思い切って新しいPCを買うことにしました。どれにしようか色々迷った結果,東芝のミニノート・リブレット(Crusoe 800MHZ,20GB,256MB)を購入。・・・他の修習生からは,スペックが低いと馬鹿にされてますけどね。でも,自分に言わせれば,パソコンというのはスペックじゃないんです。大事なのは,使い方ですよ,使い方。自分のように外でPCを頻繁に使う場合は,1kgというこの軽さと,バッテリー駆動最大10時間という長さこそが大事なんです。あ,それと,予算も非常に大事(笑)。

そんなわけで,今日からは,修習も新しいPCで再スタートです。さっそく,とある貸金返還請求事件の和解条項を起案してきました。おおよそのアウトラインは先生から指示を受けていたので,割とすんなり完成。高松のように弁護士数が少ないと,互いに顔見知りであることが多いわけですから,和解も比較的スムーズに進みやすいんじゃないかなという気がしますね。・・・もちろん,これは馴れ合いという意味ではなくて,代理人同士が腹を割って話せるという意味ですよ。

夕方からは,ボディビル部に参加。ジムで30分ほど走ってきました。なんでも,来年2月に淡路島で実施されるマラソン大会に出場する予定なのだとか。えらい話がでっかくなってきました。これは大変だ・・・(汗)。
Date: 2002/12/05



「加害者」でもあり,「被害者」でもある
弁護修習最後の社会修習として,今日は環境衛生研究センターを見学してきました。所長さんいわく,現在の環境汚染は,従来の公害などと同列に考えてはいけないとのこと。つまり,従来型公害の場合は,企業ないし工場が「加害者」で,消費者が「被害者」という構図だったわけです。しかし,現在の環境汚染は,車の排ガスにしてもゴミ問題にしても,各個人こそが「加害者」であると同時に「被害者」でもあるんですね。そのへんの意識を変えていかないと,なかなか環境汚染問題は解決していかないんじゃないかな,という気はします。

同センターはすぐ近所なので,午後からは通常どおり事務所で修習です。たまりにたまった記録の検討を3件,それと建築がらみの法律相談2件を見せていただきました。法律相談では,必ずしも依頼者の望み通りの結論が出ないこともあるわけでして,そういう時にどうやって依頼者を説得するかというのも難しいところです。自分が思うに,その事案を熟知していることはもちろんですが,それに加えて,「自信ありげ」に見せることも意外と大事な気がしますね。こっちが不安そうにしてたら,向こうも信用してくれないわけですから。いずれにせよ,弁護士というのは,いわば法律のサービス業ですから,単に「法を語る口」として結論だけ出して突っぱねればいいということにはならないわけです。
Date: 2002/12/06



モラトリアム
このページを見ている方の中には,今年めでたく司法試験に合格して来年から修習生になる方もおられるようです。そういった方々は今ごろ遊びまくっていることかと思いますが(笑),他方で,4月までに一体どんなことをやっておけばいいのかと不安になることもあるかと思います。そこで,今回は,修習開始までの生活について少しだけ書いてみます。

まずは,よく言われることですが,自分が今まで我慢していたことを思う存分やりましょう。旅行でも,映画でも,ゲームでも,何でもいいわけです。修習に入ったら,9時から5時までは講義,夜は予習・復習・飲み会の繰り返しで,自分のやりたいことをやる時間はなかなかありません。ちなみに,自分は合格後,ホームページの改造に莫大な時間を費やしました(笑)。

次に,勉強に関して言えば,1月の面接の時に,大量の白表紙(研修所で使う教科書のこと)が渡されます。この時,教官室から,「これとこれとこれは読んでおくこと」と指示を受けますが,その通り全てこなせる人はごくわずかでして・・・。とりあえず絶対に読んでおくべきは,民裁・刑裁の第1審手続解説(テストあり),刑弁の判決文(レポートあり),紛争類型別の要件事実(研修所の民事系科目の基本中の基本)でしょう。もちろん,他の白表紙や様々な法律の本も読むに超したことはありませんが,そんな時間があったらむしろ,紛争類型別の要件事実を繰り返し読んで定着させておいた方がいいですよ。

そうそう,それと,パソコンを使い慣れてない人は,この機会に使えるようになっておくといいです。特に,ブラインドタッチはぜひ練習しておくことをお勧めしますね。検察修習で取調べをやる時,タイピングが遅いと,かなり困ると思います。

その他,簿記・英語をやる人も多いです。自分も,簿記2級はとりました。それぞれの将来の進路との関係で,必要性を見極めて下さい。あと,意外と見落としがちですが,今まで実家暮らしだった人は,一人暮らしの訓練をしておくこと。最初の頃は,自分の身支度だけで,ものすごく時間がかかったりしてしまうものです。自分のことは自分でやりましょう。

最後に・・・。修習が始まるまでのこの半年間は,おそらく人生最大のモラトリアムです。ぜひ,自分の将来のことをじっくり考えてみて下さい。これから先,どこへ行っても「どんな法律家になりたいの?」と必ず聞かれます。司法試験合格は決してゴールじゃないんですからね。もちろん,実務を見なきゃわからないことも多々ありますから,おぼろげながらでいいんですが,将来のヴィジョンを描いておくことはきっと一番大事なんじゃないかと思いますね。
Date: 2002/12/08 (休日特別版)



我が社
つい最近思い出したんですが,検察修習でやり残した宿題に,「検察事例研究」というものがありました(10月2日の日記参照)。これ,ふと気づいたら,なんともう締め切り過ぎてるんですね(汗)。しかし,締め切り過ぎたからといって,もう提出しませんというわけにはいきません。大急ぎで書き上げて,今朝事務所へ行く前に,検察庁へ行って添付資料をもらってきました。・・・ちなみに,まさかと思って,同じ高松修習生の1人に電話で尋ねてみたところ,やはり自分と同じく完全に忘れていたようでした。なんか,ちょっと安心(笑)。

さて,今日は,貸金がらみの和解1件,窃盗の国選事件1件に,それぞれ同席しました。後者については,尋問事項書と弁論要旨を自分があらかじめ起案していたので,それを使って手続が進められました。やっぱり,自分で起案を担当する事件は,気持ち的に全然違いますよ(笑)。そういえば,うちの先生は比較的多めに国選事件をとって下さっており,これまで計4件の国選事件を見ることができました。その中で,国選弁護というのは思ったよりもやりがいのあるお仕事だなぁと思いましたね。弁護活動による「感銘力」というのは間違いなく存在します。

そのあと,夕方前ころに,研修所のクラス教官がはるばる高松まで様子を見に来て下さいました。聞けば,高松地裁の裁判官にも,この教官の教え子の方がいたり,知り合いの方がいたりということで,色々つながりがあるそうです。法曹界っていうのは,実に狭い世界でして,話をしてみると意外なところで共通点やつながりがあったりすることが多いようですね。夜遅くまで教官と一緒にうどん屋をハシゴしながら,近況や自分の進路のことなどについて色々と話を聞いていただきました。

なお,余談ですが,裁判官のみなさんは,裁判所のことを「我が社」と呼びます。これは,検察でも同様でした。なぜか「我が庁」「当裁判所」などといった呼び方はしないんですね。このように呼ぶ理由は直接尋ねてみないとわかりませんが,ひょっとしたら,弁護士の先生が飲み屋で弁護士バッジをはずすのと似たような心境なのかもしれません(?)

※ なお,過去の日記については,このページの最下部の検索欄に 10/02 といった具合に日付けを半角文字で入力すれば,簡単に表示することができます。
Date: 2002/12/10



この日を待っていた
キターーーッ!! と,思わず叫びたくなる日。それは,ボーナスの日であります。どこぞの金持ち修習生ならいざ知らず,自分のように普段ギリギリの生活を送っている修習生にとっては,ボーナスはまさに命綱。ボーナスの出ない修習生活なんて,ノコギリのない横山ホットブラザーズのようなもんですよ(意味不明)。これで,たまっている公共料金やローンの支払いを・・・と,実際には,ほとんどお金の行き先が決まっているのが悲しいところ(汗)。

さて,修習のほうですが,今日は国選事件の接見に高松刑務所へ行ってきました。刑務所では,一般の方の面会もあるわけですが,弁護人は色々な意味で一般の方よりも優遇されています。まず,待ち時間は基本的にゼロ。名前を書いたらすぐに入ることができるので,時間のロスがありません。また,接見室の構造も,一般用とは違うんですね。今日,たまたま弁護人用が満室だったため,めずらしく一般用接見室で接見することになったんですけど,弁護人用と比べると部屋は狭いし,声もかなり聞こえにくかったです。あまりにも聞こえにくいため,マイクとスピーカー(ただし故障中)が置かれているのには驚きました・・・。その後,すぐに弁護人用の部屋が空いたため,そちらに移ったんですけどね。弁護人との接見を特に重視する法の趣旨が,こういった形でも反映されているわけです。
Date: 2002/12/11



「お金は,気持ち良く払うてもらわなあかんのや。」
ホームページを作る時,デザインには非常に悩みます。というのも,ホームページを見に来る人が使うPCは,それぞれ違ったOS,違ったブラウザ,違った解像度のディスプレイなわけでしょう。そうすると,うちのPCからはきちんと見えていても,他のPCから見ると形が崩れていたり,正しく表示されないことがしばしばあるんですよ。・・・そのため,こちらもかなり注意してデザインを作ってはいるのですが,今日,またひとつ不具合を発見してしまいました。うちのトップページの背景画像が,1200×1024の解像度で見ると,二重に表示されてしまっていたようです。遅くなりましたが,ついさっき直しておきました。

さて,今日は,午前・午後を通じてずっと事務所での修習でした。少々面倒な貸金返還請求事件について,じっくりと記録を検討し,準備書面の起案です。これまでの経緯がファイルで3冊分ほどありますので,事案を把握するだけでも一苦労。しかも,非常に額が大きい訴訟なので,こんなん自分が起案してええんやろうかとちょっと不安になってきて,思わず民事弁護の白表紙を久々に開けました(笑)。もちろん,修習生の起案は全て先生がチェックの上,修正を加えるんですけどね。

あと,法律相談にも1件同席したんですけど,先生がクライアント(依頼者)とお金の話をしているところを初めて見ました。話の切り出し方が実にうまくて,勉強になりましたよ(笑)。あとで先生が「お金は,気持ち良く払うてもらわなあかんのや。」とおっしゃってましたが,まさにその言葉どおり,クライアントの方は実に納得した様子で帰って行かれたのが印象的でした。
Date: 2002/12/12



受験勉強の弊害?
自分,今ごろになって,受験勉強の弊害を感じ始めてます。それは,「よくわからないことがあっても,とりあえず気にせず先へ進む」という姿勢が体に染みついてしまったことです。特に,現在の択一試験は,知識型から論理操作型にシフトしており,試験時間もかなりタイトになってきています。そのため,わからない選択肢があるからといってそこで立ち止まっている暇はないので,わからなくてもとにかくどんどん先へ進んでいくしかないわけです。で,そういうことを繰り返していると,普段本を読んだり話を聞いている時に,自分の知らないことを見聞きしても,そこで「疑問」を持つことができなくなってしまうわけです。これは非常に恐ろしいと感じました。・・・そんなわけで,先日,名刺サイズの電子辞書を購入し,わからないことはすぐ調べられる状態にして,日々「疑問」を持つ訓練をしています。

さて,今日はちょっとお疲れ気味でした。この週末に,研修所の友人の結婚式に出席するため,東京へ行ってきたもので・・・。(しかも往復夜行バスなので,事実上1泊4日(笑)) 午前中はぼやーっとしてて,午後から刑事事件の法廷に1件同席しました。刑事弁護人というのは,世間的にはあまりイメージ良くないですけど,別に,被告人に都合のいいことばかりを主張するわけじゃないですよ。「いかにして,被告人に少しでも感銘力を与えるか。それが大事だ。」と先生はおっしゃいます。そのためには,法廷で厳しいことを言って被告人に反省を促すこともありますし,逆に励ましてみたりもするわけです。また,情状証人にしても,実際問題としてあんまり刑を軽くする効果が見込めないケースもあるわけですが,それでも,被告人に対する感銘力という点からやっぱり呼んだほうがいい場合があるんです。・・・なんか,受験指導の中でこういうことも教えられたらいいんですけどねー。いやほんとに。
Date: 2002/12/16



白い紙の束の正体は・・・
朝,ふと事務員さんの机を見ると,白い紙の束がドカーンと平積みにされていました。「なんですか,これ?」と尋ねると,なんと事務所から出す年賀状でした。弁護士という仕事柄、年賀状を出す相手も非常に多く、その数は何百枚単位にもなるわけです。しかも、失礼にあたらないようにと、全て宛名は手書きするのだとか。実に気の遠くなる話でして,事務員さんというのも大変です(汗)。

今日は,昨日まで起案してた準備書面を先生にチェックしていただき,いくつか指示・助言を受けて,準備書面の手直しをしました。「いつまでかかっとんねん」と言われそうですが・・・。いや,締め切りは今月末ですから。自分なりに判例を読み込んだり,エクセルで時系列を作る練習をしたりと,色々試しながら起案をやってるので,それなりの時間はかかるわけです(と,正当化してみる)。午後は,とある家事事件の和解が成立する場面に同席することもできました。

で,夕方からは,週1回のゴルフレッスンです。なんか,はやくも生徒の人数が激減してましたが(苦笑)。前回と同様,フォームを体になじませる練習をしました。「もっと腰の捻転を使ってクラブを振らなあかん」と繰り返し言われてるんですけど,体が思った通りに動いてくれないのが実に不思議です。他の生徒さんは,結構上手な人が多くて(←レッスン受ける必要あるんやろうか?),自分は少々ばつが悪かったのでした。
Date: 2002/12/17



紛争は絶えることなく
高松には,交通事故紛争処理センターという機関があります。これは,交通事故の被害者と損害保険会社との間でトラブルが生じた際に,無料で示談斡旋等を行う機関です。今日は,先生に連れられて,ここでの相談に同席してきました。このセンターでは,迅速な解決が図られる反面,金額については被害者の方に多少妥協してもらわざるをえない部分もあるんですね。そのため,被害者の方は最初,センターの案に難色を示すことが多いです。・・・しかし,被害者の方にしてみれば,いつまでもモメてる状態が長引くのは嫌だいう気持ちのほうが強いようで,最終的にはOKされることがほとんどです。このあたり,紛争解決の「迅速性」が,当事者にとっていかにプライオリティの高い事項であるかがよくわかります。

ところで,今日,先生と話をしていて,「どんな事件が大変か」という話題になりました。よくある事件の中では,?離婚事件,?土地境界確定事件,?建築瑕疵事件あたりが結構大変みたいです。?離婚事件は,たいてい証拠が少ないですし,また,どうしても感情的な部分が前面に出てこざるをえないんでしょうね。また,?土地境界確定事件についても,証拠が少なくて水掛け論のようになり,結局,声の大きい方が勝ってしまったりすることもあるとか。さらに,?建築瑕疵事件の場合は,個人によって許容範囲が違ったりするんですね。ちょっとした寸法のズレや仕上がり具合にまでけちをつける神経質な人もいたりするわけです。そういう人に対して,「いくらなんでも,これは不完全履行とは言えないですよ」と説得することの困難性は,想像に難くありません。・・・とはいえ,今日も明日もあさっても,絶えることなくどこかしらでこの手の紛争は起こっていることでしょう。
Date: 2002/12/18



予想外
指導担当の先生から,シャケとリンゴをいただきました。今まで,それほどここには書いてないですけど,ずいぶん色々とお裾分けしていただいてます。そうそう,天ぷらもいただきました。(香川で言う「天ぷら」とは,かまぼこやちくわ等の練り物のことを意味します。これに対し,一般的にイメージする天ぷらは,香川では「揚げ物」と呼んでいます。実にまぎらわしい(苦笑)。) ともあれ,地方の修習というのは,非常にアットホーム。どこへ行っても,本当に大事にされますしね。やっぱり,都会だと「年がら年中,修習生がいる」という感覚なのに対して,地方では「1年に1回,修習生が来る」という感覚ですから,受け入れる側のインセンティブも全然違うわけです。

それはさておき,今日は午後から法廷1件に同席しました。本人訴訟(=相手方に弁護士がついていない)というのは,なかなかやりにくい面があるようです。争点が絞れなかったり,議論がかみあわなかったり,裁判所の指示に従ってくれなかったり,時には法廷に出席すらしてくれないこともありますしね。今日も,結局,相手方欠席のまま,次回期日の指定だけ行って終わりでした。裁判官の方も,「これほどまでに協力してくれないとは,私も予想外でした。」と苦笑いしておられましたが・・・。まぁ,好きこのんで裁判所に来る人なんてそうそういませんから,足が重くなる気持ちはわからないでもないんですけどねぇ。
Date: 2002/12/19



場違い?
あくまで「感覚的に」ですが,年末は,なんとなく事件が解決の方向へと向きやすくなっているようにも思えます。やっぱり,お互い,年を越えてまで紛争を持ち越したくないという思いがあるのでしょうか。今週だけで,3件くらい和解等で円満解決するのを見ました。

和解1件に同席した後,町役場の無料法律相談にも同席してきました。無料ということもあってかなり盛況なのか,3時間で6件の相談をこなすという結構ハードなスケジュールです。しかも,事務所内での相談とは違って,こちらはあらかじめ相談内容を聞いてませんので,いわばぶっつけ本番。こういう場面でこそ,まさに弁護士の力量が問われるという感じがします。内容的には,やはり一般にも言われているように,離婚・相続などの家事事件か,クレサラ(クレジット,サラ金)関係が多いですね。受験では頻出の「94条2項類推適用」を使う相談なんて,まずお目にかかりません(苦笑)。

そして,夜は,事務所の忘年会がありました。なにか食べたい物はあるかと聞かれたので,お肉がいいですと答えたところ,今まで自分が足を踏み入れたことのないような高級ステーキ店に連れて行っていただきました。メニューに書かれた値段を見たとたん,引きましたもん,ほんと(汗)。このデフレの時代に,なんでこの店だけインフレやっとんねん,と(苦笑)。・・・えらい場違いな所に来てしまったなぁとは思いつつも,食べるもんは一番しっかりと食べて帰ってきた法曹の卵なのでした。
Date: 2002/12/20



クリスマス・プレゼント
高松の駅前にも鮮やかなクリスマスのイルミネーションが飾られる季節になりました。いよいよ今週で弁護修習も終わりです。なんだか,本当にあっと言う間でした。で,ついでに,恒例の結果簿作成も待っています(10月2日の日記参照)。検察修習の終わりの時には大変な目に遭ったので,「次こそは,毎日きちんと結果簿をつけるようにしよう。」と決意したのですが・・・。やはり喉元過ぎれば暑さを忘れて,結局,ギリギリまで切羽詰まってから書き始めてる,実に学習能力のない修習生がここにいるのでした。

今日は,午前中に刑事事件の判決が1件ありました。以前に,自分が弁論要旨や尋問事項書等を作成した事案です。別に自分のおかげというわけではないのですが(笑),今回は一般的情状事実(被害弁償,反省意思等のこと)を斟酌し,執行猶予判決が下されました。この事件は,実刑か執行猶予か,やや微妙なケースだったんですけどね。・・・もっとも,うちの先生に言わせれば,12月24日の期日が指定された時点で,裁判官はおそらく執行猶予の心証を持っていたのだとか。つまり,執行猶予判決を出すのなら,身柄拘束をしたまま年を越させるのは酷ですから,なんとかして年内に判決を出してやろうと考えますよね。これに対して,実刑判決を下すつもりであれば,いずれにせよ身柄拘束状態が続くわけで(未決算入の問題のみ),なにも無理して年内に判決期日を入れる必要はないわけです。・・・うーん,なるほど。いずれにせよ,再起を誓う被告人とその家族にとっては,暖かみあふれるクリスマス・プレゼント(?)となったのでした。

※ なお,過去の日記については,このページの最下部の検索欄に 10/02 といった具合に日付けを半角文字で入力すれば,簡単に表示することができます。
Date: 2002/12/24



「迷った時は,しんどい方を選べ」
朝が苦手な自分にとって,1時間の早起きはつらいです。今日は,9時から午前中いっぱい,市役所の行政法律相談に同席してきました。これは,市役所が公務を行う上で直面している法律問題について公務員の方々から相談を受け,これに対して弁護士がアドヴァイスをするというものです。みなさん,さすが行政官だけあって,きちんと事案の概要・問題点・処理の方針・法令・判例などをキッチリとまとめて相談に来られるのには驚きました。ここまでお膳立てしてくれると,相談を受けるほうも楽やなあと(笑)。もちろん,責任は重いわけですが。

午後は,とある詐欺事件の被告人質問事項書を起案したあと,今まで自分が積み残してきた民事事件の記録を検討しました。さらに,まだ少し時間があったので,先生と色々話をしたのですが,その中で,「どういう方法をとればいいか迷った時には,しんどいほうを選びなさい。」というお話があったのが印象的でした。ある職務上の事柄について,ラクな道と面倒な道がある場合に,どちらをとるべきか迷うこともあるわけですが,そういう時はあえて労を惜しまずしんどい道を選んだ方が,良い結果を生むケースが多いし,依頼者も信頼してくれる。それに,自分自身も成長しますしね。20年間弁護士をされてきた先生の様々な経験と思いが凝縮された,貴重な貴重な一言を,自分も心に刻み込みました。

修習が終わった後,今日は,修習生だけの忘年会でした。「この3ヶ月,早かったね。」 みんな口々にそう言いながら,それぞれの弁護修習を懐かしみました。来月からは,裁判修習。またみんなで同じ屋根の下,再スタートです。
Date: 2002/12/25



当事者と同化するな
今日も引き続き,たまっている記録の検討です。とある貸金等返還請求事件の記録を読んで,当事者と弁護士の関わり方について先生から指導を受けました。弁護士は,代理人として当事者の言いぶんを理解してあげる必要がありますが,他方で,一歩引いた所から冷静に事態を把握する必要もあり,そこにこそ代理人の存在意義もあるわけです。もし,代理人が当事者と同化してしまえば,存在しない事実をうのみにして主張してしまったり,無意味な証拠を多数提出してしまうということにもなりかねず,それは結局,当事者の利益を損なう結果となるんですね。代理人が当事者をきちんとコントロールしないと,時として訴訟が泥仕合と化してしまう,典型例のような事案でした。

昼すぎころになって,以前自分が準備書面を起案した事件について,相手方の準備書面が送られてきました。うーん,さすが本物の弁護士だけあって,説得力ある反論だ・・・と納得してる場合じゃないんですが(笑)。でも,これって,やっぱり3ヶ月間ずっと同じ事務所で修習できる高松のメリットだと思います。都市部では,前半と後半で異なる事務所に配属される所が多いので,ひとつひとつの事件の経過,なりゆきをずっと追っていくことが難しいんですね。まぁ,色々な事務所を見るというのもひとつの経験ではあるので,どちらがどうとは一概に言えないんですが。
Date: 2002/12/26



カン違い
数日前の日記で,弁護修習はもう今週で終わりみたいなことを書きましたが,実は年明けにも少しだけ続きます。2日間だけ(笑)。なんか中途半端な気もするんですが,そもそも弁護修習の開始は10月3日でしたから,1月の平日2日目(=1月7日)まではきっちりと弁護修習が続いているわけです。

とはいうものの,実質的には今日が弁護修習の締めくくりでしょう。先生の軽妙な語りを聞けるのも,事務の方とのどかに雑談できるのも,使い慣れたデスクに座るのも,今日でほぼ終わりです。こみ上げるものを感じつつ,はりきっていつものように事務所へ。・・・おや? 先生の車がないぞ。おかしいなぁ。10時から事件があるはずなのに。・・・おや? 事務員さんがこちらを見てキョトンとしてるぞ。しかも大掃除してるし・・・(汗)。・・・うーむ,この状況はいったい・・・。

・・・そうか,しまった! 今日は電話会議だ!! 10時ジャストに裁判所で先生と待ち合わせ!! にもかかわらず,自分は10時ジャストに事務所へ来てしまった!!! なにやってんだ自分!!! ここから裁判所まで15分はかかるぞ自分!!! 有終の美どころか,立つ鳥跡を濁してどうすんだ自分!!! 先生は今ごろ待ちぼうけできっとカンカンだぞ自分!!! と,まぁ自分に怒ってみても仕方ないので,すぐに先生に謝りの連絡を入れ,荷物だけまとめてとぼとぼ帰ってきたのでした。我ながら,なんとまぬけな締めくくりだ・・・。
Date: 2002/12/27



日記を書くことの意味
修習が始まって9ヶ月。ちょうど1年半修習の折り返し地点です。この修習生日記も,どうにかこうにか書き続けることができました。

「なんで日記つけてるの?」としばしば尋ねられます。それはね,自分がパソコンジャンキーだからですよ(笑)。・・・というのは冗談ですが。このような日記をつけようと思ったのは,修習開始前に読んだ『素顔の法曹たち』(早稲田経営出版)という本がきっかけでした。この本は,著者が修習時代に教官へ宛てて出していた近況報告の手紙を書籍化したもので,日々の貴重な体験がいきいきと描かれています。

司法修習では,志望の如何にかかわらず,検察・弁護・裁判全ての仕事の内側に入ることができます。そして,それぞれの担当指導官は,(程度の差はありますが)基本的には修習生に包み隠しをしません。検事であれば,起訴・不起訴や強制処分を指示する時に考えていることとか,弁護士に対して抱いている感覚など。また弁護士であれば,その先生の仕事の哲学であるとか,依頼者・他の弁護士・検事などに対して抱いている感覚など。本当に本音で話して下さいます。時には,「おいおい,そんなことまで言っちゃってええんかい?」と思うぐらいですよ。もちろん,そんな話をこの日記で具体的に書くことはできないわけですが,それでも,文章として何らかのものを残しておけば,後で自分が読んだ時に,それを手がかりとしてきっと色々な話を思い出せるだろう,と。・・・要するに,第一次的には,将来の自分のためにこの日記を書いているわけです。

じゃあ,なぜホームページで公開しているのかといえば,これまた自分がパソコンオタクだから・・・というわけでは決してなくて,いわば強制の契機ですよ。他の人が見に来ると思えば,さぼらずに日記をつけようと思うでしょう(笑)。もちろん,受験生のみなさんに修習生活を紹介するという目的もあります。自分にとっては修習こそが日常ですが,外部の人にとってはこの生活が非日常なわけですからね。ひょっとしたら,修習生が起案をしている様子は,あたかもハリー・ポッターが魔法学校で「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」などと呪文を唱えているのと同じような感覚で見られているのかもしれません(苦笑)。いずれにせよ,そういった日常性を超えた面白さを提供できているのであれば,望外の喜びです。

他方,この日記を通じて,何らかの意見表明とか,制度批判とか,ましてや組織内部の暴露みたいなことをするつもりは一切ありません。だからこそ,自分はこのホームページのアドレスを堂々と教官や指導官にも渡しているし,たまにそういった方からクレームを受ければ素直に訂正しています。この日記は所詮その程度のものですし,また,その程度のものだからこそ気負わずに続けていられるのだと思います。

先ほど紹介した『素顔の法曹たち』は,事件の中身についても結構書かれていますが,自分はチキンなので,そこまで踏み込むことはできません。関係者のプライバシーの問題があり,なかなか書きたいことが書けなくてもどかしい思いをすることもありますが,それがかえって文章を推敲し内容を熟慮するよい契機となっている側面もあります。

日記を読むのを楽しみにして下さっている方のため,そして将来この日記を読むであろう自分のため,来年も修習生日記は試行錯誤の歩みを続けます。今後とも,どうぞよろしくお願い致します。
Date: 2002/12/31 (休日特別版)



朋あり,遠方より来たる,また楽しからずや。
修習生の年末年始の過ごし方は様々でして,実家に帰る人もいれば,どこかへ旅行に行く人もいるし,地域によっては,正月明けの模擬裁判の準備で忙しいという人もいます。

自分は,京都の実家へ戻って,高校の同窓会に参加してきました。各地にちらばっているクラスメイトが集まって久々に顔を合わせます。で,一人ずつ近況報告をしたりするわけですが,こういう場で「昨年司法試験に合格し,高松地方裁判所で修習中です。」などと報告すると,なんだかすごくいい気分(笑)。・・・いや,別に偉いわけでもなんでもないんですが。それでも,周囲から「その仕事,おまえには合わんやろ!」などと返してくるような連中ですから,それはそれで構わないわけです。

中には,勤めている会社の名刺を配っている人もいました。これには驚きましたね。やっぱり,意識がまるで違うんですよ。同窓会に名刺を持ってこようという発想自体,そもそも自分にはこれっぽっちも無かったですもん。それ見た時,自分は,「正真正銘の社会人」と「学生以上社会人未満(=修習生)」との差を目の当たりにしたような思いでした。

・・・と,そうこうしているうちに,結果簿の作成や要件事実の復習,白表紙の読み返しなど,面倒な仕事は次々と後回しにされていくわけです(汗)。
Date: 2003/01/03 (休日特別版)



ライセンス
短かかった正月休みを終えて,今日から修習再開です。・・・といっても,まだどこも本格稼働はしてないみたいですね。事務所に法律相談しに来る人もなく,ちらほら挨拶回りに来られる方がいた程度でした。裁判所へ行っても,まだ期日は入っていないようです。自分は,とある離婚請求事件の控訴状を1通起案した後,先生方と記念写真を撮影して,定刻どおりに帰ってきました。まだウォームアップの段階という感じです。いや,年明け早々が裁判修習じゃなくてよかった・・・とつくづく感じる今日このごろ(苦笑)。

さて,年末に新しいパソコンを買ったはいいのですが,ひとつ困った問題が・・・。それは,「ソフトウェア・ライセンス(使用許諾)」の問題です。そもそも,パソコンのソフトは,いったん買ってしまえばやりたい放題!というものでは決してありません。あくまで,そのプログラムの著作権者が認めている範囲でしか使用することができないんですね。従って,たとえば著作権者が「このソフトは,1つのパソコンにしかインストールしちゃダメ」と定めれば,ユーザーは複数台のパソコンへインストールすることはできないんですよ。・・・で,自分が今まで使っていたOfficeというソフト(ワードやエクセルを含む統合ソフト)には,まさに上記のような定めがなされていたわけです。

ということは・・・新しいパソコンでOfficeを使うためには,もう1台分のライセンスを買わないといけないのでした・・・(価格4〜5万円)。ぐおおおぉぉぉ・・・。さすがに生活が苦しいので,当面は,互換性のあるフリーソフトでしのぐことにします。

※(注)
上記日記の内容は,あくまでパソコンに最初から同梱されていたバンドル版Officeに関するものです。これに対し,単独のパッケージとして販売されている通常のソフトウェアの場合は,同一人が使用する限り,複数台のパソコンへインストールすることも認められることが多いです。詳しくは,お手持ちのソフトウェアの使用許諾書をご覧下さい。
Date: 2003/01/06


今どきの修習生は・・・
弁護修習も最終日ということで,今日は実にリラックスムード。午前中は,当番弁護のマニュアル(弁護士会が作成・配布している)を見せてもらってました。実のところ,自分は結局,当番弁護を見る機会が一度も無かったんですね。香川県では,名簿登録制といって,「私は当番弁護をやってもいいですよ」と登録している弁護士の中から抽出し,弁護士会から各法律事務所へ電話をかけて接見を依頼するという仕組みをとっています。しかし,48時間以内に接見しに行く必要があるため,弁護士としても急に都合をつけることが難しい場合が多いのが実情のようです。まぁ,事件のめぐりあわせというやつは,そうそううまくはいかないですからね。

午後は,弁護士会の執行部(弁護士会の会長,副会長)とひざをつきあわせての意見交換会が行われ,夕方には指導担当弁護士も交えて,修習生の歓送会が行われました。その中で,幾度ともなく出てきた話が,「今どきの修習生は真面目だが,遠慮しすぎる」という話でした。要するに,言われたことはキチンとこなすが,積極的に自分で考えてアクションを起こさない,と。・・・昔の修習生というのは,弁護士から指示された起案もなかなか提出しなかったり,修習時間中によその事務所へ遊びに行ったりしてたこともある反面,今よりも積極的にどん欲に弁護士の先生に食らいついていたそうです。なんというか,こう,ハングリー精神みたいなものでしょうか。そういうのが欠けてることは確かかもしれません。

ちなみに,自分が指導担当の先生から最後にいただいた言葉も,「弁護士というのは,遠慮してたらダメ。実務に出たら,もっと大胆にね。」といった趣旨でした。・・・・・頑張ります!
Date: 2003/01/07



現行ログ/ [1]


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