「出会ってしまった二人」
真夏の暑い日差しが照りつける中、僕は高くそびえるその建物の前に立っている。建物には「LEC」の文字。司法試験合格を夢見て、2年前からこの予備校に通い始めた。 僕の名はKenji。かつては旅行関係の仕事を志していたが、今は司法試験の勉強をしている。予備校内では成績優秀。合格は時間の問題と言われているが・・・。こればっかりはわからない。今日も、自習室で勉強しに、LECへやってきた。 玄関を入ると、勉強仲間のToshiとTakashiがいた。 隣のTakashiは、ひたすらノートパソコンに没頭している。 Toshiに指示された座席につき、六法を開ける。中には赤線が大量に引いてある。よく、やたらめったに蛍光ペンを使いまくるやつがいるが、そういう奴に限ってろくに勉強していない。その点、僕は赤ボールペン一色で統一する主義だ。このなまめかしい色合いがなんともいえない。・・・よし、今日もがんばろう。
・・・・・・・かりかりかりかりかり・・・・・・・ どれくらい勉強していたであろうか。あたりはすっかり暗くなっていた。時計を見ると、もう6時。そろそろ帰らないと、ドラえもんに間に合わない。僕は帰宅の準備をすべく、テキストと六法を両手で持って、自習室を出た。そのとき・・・ どんっ!! どさどさどさっ!!! 誰かにぶつかり、テキストと六法が散らばってしまった。 そう言って目があったとき、僕の脳には82500ジゴワットの電流が流れた。いわゆる一目惚れである。 女の子は、散らばったテキストと六法を拾いあげ、手渡してくれた。「急いでますんで・・・」と言い残し、彼女はその場を去った。 僕は、しばらくそこに立ちつくしていた。
♪こんなこといいな、できたらいいな、・・・・ 家に帰り、ドラえもんを見終わると、さっそく勉強だ。時間は有効利用せねばならない。僕は、自分の部屋に戻り、さっそく六法を開いた。すると、そこにはなんと、何色もの蛍光ペンでびっしりと色が塗られているではないか。 Kenji「・・・・・はっ!
あのとき・・・・あのぶつかった時だ!」
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