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「出会ってしまった二人」

 

真夏の暑い日差しが照りつける中、僕は高くそびえるその建物の前に立っている。建物には「LEC」の文字。司法試験合格を夢見て、2年前からこの予備校に通い始めた。

僕の名はKenji。かつては旅行関係の仕事を志していたが、今は司法試験の勉強をしている。予備校内では成績優秀。合格は時間の問題と言われているが・・・。こればっかりはわからない。今日も、自習室で勉強しに、LECへやってきた。

玄関を入ると、勉強仲間のToshiとTakashiがいた。

ヘヴィースモーカーのToshiの周囲には煙の膜が出来ており、一目でわかる。
Toshi「よっ、自習室の座席、とっといてやったぜ。」
Kenji「ああ、ありがとう。」

隣のTakashiは、ひたすらノートパソコンに没頭している。
Takashi「へー、JAMはもうすぐ解散するらしいよ。」
Kenji「どこに載ってるんだ、そんな情報・・・。」

Toshiに指示された座席につき、六法を開ける。中には赤線が大量に引いてある。よく、やたらめったに蛍光ペンを使いまくるやつがいるが、そういう奴に限ってろくに勉強していない。その点、僕は赤ボールペン一色で統一する主義だ。このなまめかしい色合いがなんともいえない。・・・よし、今日もがんばろう。

 

・・・・・・・かりかりかりかりかり・・・・・・・

どれくらい勉強していたであろうか。あたりはすっかり暗くなっていた。時計を見ると、もう6時。そろそろ帰らないと、ドラえもんに間に合わない。僕は帰宅の準備をすべく、テキストと六法を両手で持って、自習室を出た。そのとき・・・

どんっ!! どさどさどさっ!!!

誰かにぶつかり、テキストと六法が散らばってしまった。
Kenji「いててて・・・。気をつけろい!」
女の子「ご、ごめんなさい!」

そう言って目があったとき、僕の脳には82500ジゴワットの電流が流れた。いわゆる一目惚れである。
Kenji「いやいや、大丈夫ですよ、はっはっは・・・。」

女の子は、散らばったテキストと六法を拾いあげ、手渡してくれた。「急いでますんで・・・」と言い残し、彼女はその場を去った。

僕は、しばらくそこに立ちつくしていた。

 

♪こんなこといいな、できたらいいな、・・・・

家に帰り、ドラえもんを見終わると、さっそく勉強だ。時間は有効利用せねばならない。僕は、自分の部屋に戻り、さっそく六法を開いた。すると、そこにはなんと、何色もの蛍光ペンでびっしりと色が塗られているではないか。

Kenji「?????」
さっきも言った通り、僕は赤ボールペンしか使わない主義だ。

Kenji「・・・・・はっ! あのとき・・・・あのぶつかった時だ!」
そう。拾い上げる時に、僕の六法と彼女の六法が入れ替わってしまったのである。

Kenji「これ、返さないとなぁ・・・・・。」


つづく