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「イトニセの女」

 

Kenji「・・・・・・・・・というわけなんだよ。」

翌日の昼休み。僕は、食堂でToshiとTakashiに昨日の出来事を話していた。

Toshi「ふーん。俺ならその場で押し倒してるけどな。」
Kenji「あんたと一緒にするなって。」
Takashi「でも、名前もわからないんじゃなぁ・・・。その娘、どんな娘だった?」
Kenji「うーん、顔はキャメロンディアス似の美人だった。髪は肩ぐらい、身長は158くらいで、・・・・・うんぬんかんぬん。」

Takashiは、それを聞きながら、何やらパソコンをいじっている。
うぃーん、がっちゃんがっちゃん、かたかたかたかた・・・・・。

Takashi「おっ、出た出た。この娘じゃない?」
見ると、画面には、まさに昨日ぶつかったあの娘が映っていた。

Kenji「そうそう、この娘だ! ・・・って、あんたのパソコン、どういう仕組みになっとんねん。」
Takashi「えーっと、なになに・・・。名前は、S子。」
Kenji「へぇ・・・。」
Takashi「小・中・高とモテまくり、自称 『恋愛の達人』。」
Kenji「だろうな。」
Takashi「伊藤偽(いとう・にせ)の司法試験塾に在学中。」
Kenji「イトニセの生徒だったのか!」
Takashi「イトニセに行けば、彼女に会えるかもな。」
Kenji「そうか! Takashi、ありがとう!」

 

翌日、僕はあの六法を持って、伊藤偽の司法試験塾へ来た。自習室に入り、S子さんを探すが、それらしき人はいない。他の教室や談話室ものぞいてみるが、やはりいないようだ。

Kenji「今日は来てないのかなぁ・・・・・。」
僕は休憩所でコーヒーを飲みながら、途方に暮れていた。

ふと足元に光るものが見えた。コンタクトだ。その時−

S子「すみません、このへんにコンタクト・・・・・・あっ! こないだの!」
Kenji「あっ!! えーと、えーと、これですよね?」
S子「はい! ありがとうございます。」
Kenji「あの、こないだの六法なんですけど・・・・・。」
S子「そうそう、私も気になってたの。今、持ってるよ。」

彼女のカバンから、僕の六法が出てきた。それと彼女の六法を交換する。

Kenji「あの・・・・・。」
S子「はい?」
Kenji「えーと・・・・・。」
S子「??」
Kenji「はは・・・なんでもないです! さ、さよーなら!」

だだだだだだだっっっっっっっっ・・・・・

 

帰りの電車の中で、僕はさっきの出来事をレヴューしていた。
Kenji「あんなキレイな人、僕にはもったいないな。やっぱり、彼女のことは忘れよう。六法も帰ってきたことだし・・・。」

そうだ。明日は答練じゃないか。予習しなきゃ。僕は、いつものように六法を開いた。中は、赤一色でラインが引かれている。

パラパラパラ・・・・・・。
なにげなくページをめくると、1ヶ所だけ折れているページがある。

Kenji「あれ?」

そのページをめくってみると、そこにはなんと、S子さんの携帯電話の番号が書かれていた。


つづく