【解答例】
一 甲は、路上でヤンキーにからまれた上、金を
要求されている。すなわち、当該ヤンキーには
カツアゲの実行の着手(刑４３)が認められる。
かかる場合、甲としては、精神的・身体的・金
銭的損害を何ら被ることなくその状況から抜け
出したいと考えるであろう。そこで、いかにし
てこの場をしのぐべきかが問題となる。
二１ この点、判例は、ヤンキーの怒りを収めると
いう金銭の機能を重視し、素直に金を渡すべき
とする。しかしこれでは、①財布にたくさんお
金が入っていた場合、多大な金銭的損害を甘受
せざるをえない。他方、②少ししかお金が入っ
ていなかった場合には、「シケてるんじゃ！」
と逆に暴行を加えられ、身体的損害を被るおそ
れがあるため、やはり妥当でない。
２ そこで、通説は、本物の財布とカツアゲ用の
財布を分けた上、あらかじめ後者に一応のお金
を入れておき、これをヤンキーに手渡すべきと
する（二段階財布説）。たしかに、この立場に
よれば、円満かつ迅速な紛争解決が図れるよう
にも見える。しかし、知能派のヤンキーに当た
った場合、「なんでこの財布、カードが一枚も
入ってないんだ」と鋭いところを突かれるおそ
れがある。かかる場合に被るであろう身体的損
害は、事後に回復不能な程度までに至りうる。
三 思うに、そもそもヤンキーといえども、自分
の友達からカツアゲをすることは、社会通念上
観念できない。そこで、私は、「おぉ、懐かし
いじゃないか！ 俺だよ、俺。小学校１年の時
に同級生だった、○○だよ！」と昔のクラスメ
イトのふりをしてごまかすべきと考える。近時
の下級審も同様の結論である。
四 以上より、本問の甲も、小学校時代のクラス
メイトを装ってごまかすことにより、その場を
しのぐべきである。
以上
【みなさんの添削】
・２４点
「あ、おまわりさん！？」と叫んで相手の
注意を逸らした瞬間に走り去るという間隙
逃走説を提唱したい（笑）。
・２６点
判例を批判する時に、きちんと場合分けし
てあるのが好印象でした。まさに攻めの答
案ですね。
・２５点
いきなり論点に飛びつくのではなく、問題
の所在が端的に示されているところが好印
象です。
・２２点以下
この見解では「おまえは心の友だったな」
と、かえってタカられるおそれがあります
（ジャイアニズム）。詳しくは、剛田武教
授の「おまえのものは俺のもの、俺のもの
は俺のもの」を参照してください。
・２５点
近時の学会では、「事前の対処」の重要性
が強く唱えられていますので、その問題意
識を表現できれば、他の受験生に差をつけ
ることができます。具体例としては、護身
用器具の携帯があります。
・２５点
ヤンキーの人数について場合分けするとよ
り良かったと思います。相手が一人の場合
は、ダッシュして逃げるというのが通説で
す。これに対し、囲まれた場合は、あなた
の見解が有力です。
・２４点
旧友のフリをする際に、名前などの固有名
詞を間違えた場合の対処について触れられ
ていません。「３６計逃げるに如かず」の
重要性に言及するのもよいと思われます。
他に、①思いきって頭髪を金色にする、②
ピアスを装着する等も触れてほしいです。
・２５点
合格答案と思われます。最近有力な説とし
て、財布を出してヤンキーが財布を見たす
きに蹴りなどを入れて逃走する「あっちむ
いてポカ説」も参照すると、より理解が深
まるでしょう。
・２５点
「空手の練習に励む」という説は超少数説
なので、触れる必要はありません。
・２４点
旧友のフリをする際に、相手に「・・・の
くせに生意気な」（第２ジャイアニズム：
剛田説）といちゃもんをつけられた場合の
対処法に触れられていないのが残念です。
・２４点
手持ちの道具（鍵・携帯電話など）を武器
にするという臨機応変説にふれれば加点事
由です。
・２４点
大長編ドラえもんになると，急にヤンキー
がいい人になる（第３ジャイアニズム）が
近年主張されますが，かかる具体的場面に
ついて触れる必要はないでしょう。
※ あなたも、ぜひ採点・添削して下さい。
|
