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 Aは、大手証券会社の社長である。ある日、Aは、秘書のB女に対し、自己の息子Cとの見合いを持ちかけた。Cは有能で、次期社長と目されている者であるが、その容姿は必ずしもB女の嗜好と合致していなかった。B女の採るべき措置について論ぜよ。



【解答例】

一  本問B女の採るべき措置としては、見合いを
  受け入れる又はこれを断ることが考えられる。

二  では、いずれの措置を採るべきか。見合い相
  手の違憲審査基準をいかに解すべきかが問題と
  なる。

 1 この点、あらゆる面において理想にかなって
  いる相手に限り、見合いを受け入れるべきであ
  るとの立場もある(厳格な理想の基準)。
   しかし、これでは、基準としてあまりにも厳
  格にすぎるため、事実上全ての場合に違憲判断
  が下されることになる。そして、年齢を重ねる
  ごとに選択の幅が狭められていくため、最終的
  には、あらゆる面において理想を下回る者と見
  合いせざるをえなくなるおそれがある。

 2 思うに、そもそも見合いの趣旨は、本来的に
  は、@自己の好みに合致する容姿を持つ者との
  共同生活によって本能的満足を得る点(本能的
  意義)にある。
   ただ、今日では、A性格の合致する者との共
  同生活によって精神的安定を得る点(理性的意
  義)、およびB財産の共有により自己の生活に
  安定をもたらす点(財産的意義)にもその趣旨
  を認めうる。

 3 そこで、まず、容姿が自己の好みに合致する
  場合には合憲性の推定が働き、緩やかな審査基
  準で判断すべきと考える。具体的には、性格・
  財産が著しく不合理であることが明白でない限
  りは合憲とする明白性の原則によるのが妥当で
  ある。
   これに対し、容姿が自己の好みに合致しない
  場合には違憲性の推定が働き、厳格な審査基準
  で判断すべきと考える。具体的には、性格・財
  産の点で他に選びうる相手がいないと言えるほ
  ど優れている場合に限り合憲とするLRAの基
  準によるのが妥当である。(二重の基準論)

 4 この点、本問では、Cの容姿はB女の嗜好に
  合致していないので、違憲性の推定が働き、L
  RAの基準によるべきである。
   そして、Cの性格については明らかでないが
  財産については、大手証券会社社長の息子であ
  り、かつ有能で次期社長と目されていることか
  らすれば、他に選びうる相手がいないと言える
  ほど優れているといえる。

三  以上より、B女は、Cについて合憲判断を下
  し、見合いを受け入れるべきである。

                     以上

【みなさんの添削】

 ・25点
   守りの合格答案です。もっとも、容姿によ
   る形式的な二分が困難な場合もあることか
   ら、学歴・出身地・職種・趣味などの態様
   を加味すべきとの修正説が近時有力です。

 ・24点
   あてはめがやや雑な印象を受けます。本問
   のB女はAの「秘書」であり、もし見合い
   を断れば職を失う可能性がある、などの実
   際上の不都合性も指摘できるとよいです。

 ・22点以下
   本問は憲法の私人間効力の問題であること
   そして、B女の相手を選ぶ権利(13条)
   とCの人格権(13条)の調整の問題であ
   ることをしっかり示してください。

 ・25点
   全体的な流れはいいです。ただ、いきなり
   違憲審査基準に入るのは唐突過ぎるので、
   導入部分に工夫が必要です。

 ・24点
   「恋人の違憲審査基準」のブロックをその
   まま吐き出した感じがします。本問は「見
   合い」ですので、「恋人」の場合に比べて
   容姿の重要度は下がると思われます。

 

※ あなたも、ぜひ採点・添削して下さい。

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