人権総論 |
法人にも、プライバシーの権利が保障される。 | ○ 情報コントロール権と捉えれば、法人にも保障することが可能。 |
憲法10条は、日本国民たる要件を法律で定めるとしているが、これは国籍に関する原則が一般的に条約によって定められる可能性を否定するものではない。 | ○ 98条2項参照。 |
93条の「住民」とは国民全体のうちの一部の国民という意味だとする考え方からは、地方レベルでは外国人に選挙権を付与することも許容されるとの結論は導かれない。 | × たしかに、全面否定説にも結びつきやすいが、判例のように地方自治の本旨を強調して、憲法上許容されているとすることも可能。 |
外国人にいったん参政権を認めた後に、それを剥奪することが立法政策上可能となる余地を認めるような解釈はすべきでない。これは、地方レベルでの外国人の選挙権の付与は憲法上許容されているとの見解に対する批判となる。 | ○ 許容されているにすぎず、憲法上の人権として保障されるわけではないので、いったん与えて再び剥奪することも立法上可能ということになりうる。 |
明治憲法下では、臣民の権利自由は法律の範囲内で保障されるにすぎなかったが、法律には議会の協賛を必要とするので、その限度において「法律の留保」にも積極的な意義のありうるところであった。この場合の「法律の留保」とは、本来的意味の法律の留保である。 | × 人権制約原理としての法律の留保の意味。かかる法律の留保も、議会が配慮を怠らなければ人権保障という積極的な意味を持ちうることを指摘するものである。 |
裁判官の政治活動の自由について、判例の立場に立ったとしても、裁判官が法律実務家あるいは学識経験者としての個人的意見を表明することは認めうる。 | ○ SC.H10.12.1は、客観的な事情のほか主観的事情も考慮すべきとした上、本問のような例示をした。 |
「公務員の争議行為には、私企業にみられるようなロックアウトや市場の抑制力といった歯止めが無い」との主張に対しては、現代社会における国家と経済の結びつき、あるいは独占企業の増大という現象を理解していないとの批判がなされる。 | ○ 国家と経済が結びつき、独占企業が増大している現代においては、私企業においても市場の抑制力は弱まっており、区別する理由はないとされる。 |
公務員が全体の奉仕者であることを理由に広く人権制約を認める主張に対しては、人権を制限するにはあくまでも憲法上の根拠が必要であるとの批判がなされる。 | × 全体の奉仕者論は15条2項に根拠を求めるものであるから、右のような批判はなされない。 |
私人による侵害の排除は、市民法秩序の維持者としての国家によって立法によりなされなければならない。これは、間接適用説の理由となる。 | × 立法で解決すべきとする以上、間接適用も否定するものであり、むしろ無効力説の理由となる。 |
包括的人権 |
帰化人および帰化人の子で日本国籍を有する者について、国務大臣等の重要な官職に就くのを禁ずることはできない。 | ○ 国籍はある以上、人種による差別に該当する。 |
夫婦および親子の同一国籍制(いずれか一方の国籍に統一させること)は許されない。 | ○ 14条、24条。 |
文化勲章と別立てで文化功労者授与法が定められたのは、両者を直接結びつけると14条3項違反の疑いが生じるからである。 | ○ 制度を別立てにした上で、かつその内容を常識の範囲内にとどめることで、合憲性を維持している。 |
14条2項は、貴族制度を禁止するが、右規定がなくても「門地」による差別とし1項により当然禁止される。 | ○ 当時は貴族制度が残っていたことから、再度確認的に定めた。 |
自由権 |
公務員は憲法尊重擁護義務を負うから、公務員として許容される政治的信条を枠付け、それに従った行動を強要するような内容の宣誓でも、19条違反とはならない。 | × 特定の憲法解釈や政治的信条を強要する宣誓までは許されない。 |
諸外国の憲法においては、信仰の自由ないし信教の自由や表現の自由と別個の条文で、思想良心の自由を保障する例はほとんど見当たらない。 | ○ 日本の場合は、明治憲法下での治安維持法などの歴史的経緯から、特に規定が設けられた。 |
皇居外苑をメーデー記念集会に使用するため許可申請したところ、厚生大臣が不許可処分とした事件について、判例は、厚生大臣の拒否権限を自由裁量とした上で、当該不許可処分を違法ではないとした。 | × 自由裁量ではないとした上で、適正な管理権の行使にあたるとした。 |
諸外国の憲法では、通信の自由は、表現の自由とは別個の条文で保障されるのが通常である。 | ○ むしろ私生活の自由の保護に重点を置いている。 |
旅券法13条1項5号の旅券発給の法的性格につき、許可行為説に立つと、外務大臣の判断権は自由裁量として一義的に帰結される。 | × 右見解に立ちつつも、海外旅行の自由の重要性から覊束裁量とすることも可。 |
感染力の強いある風土病が日本に蔓延するのを防止するために、海外でその風土病に感染して発病した日本人に対しては、その者が海外に安定した住居を有する場合に限り、わが国への入国を拒否する、という法律は違憲の疑いが強い。 | ○ 日本国民の入国の自由は無制約と解されている。入国を認めた上で、隔離措置などをとるべき。 |
22条2項は、日本の国籍と外国の国籍を有する者が外国の国籍を離脱する自由をも保障していると考えることはできない。 | × 権利の性質上、日本国民のみを対象とする権利と解されるが、そのように解したとしても、「国籍」に外国籍を含めることは可能。 |
大気汚染を防止するため、工場のばい煙発生施設から排出されるばい煙の合計量を規制するための制約は、内在的制約のみから説明しうる。 | × よりよい生活環境の保全という生活水準の向上を図る政策的制約の面もある。 |
制度的保障の中に生産手段をも含める立場に立つと、社会主義への移行も可能となる。 | × 不可能となる。 |
私人が、他の私人に、その者の意思によらないが通常人なら苦痛を感じない程度の労働を強制することは、憲法18条に反しない。 | × 「苦」という文言にこだわらず、広く本人の意思に反する場合に18条の問題とするのが通説。 |
拘禁については、要求があれば直ちにその理由を本人および弁護人の出頭する公開の法廷で示さなければならないが、抑留についてはその必要がない。 | ○ 34条。 |
最高裁は、31条などが死刑の存在を前提としていることを根拠に、死刑そのものは「残虐な刑罰」にあたらないが、死刑判決確定後30年という長期にわたる拘置の後に死刑を執行することは「残虐な刑罰」にあたるとした。 | × SC.S60.7.19。 |
37条3項後段は国選弁護人制度を定めているが、これは被告人の請求があった場合に国が弁護人を付せば足り、選任請求権を告知すべき義務を裁判所に負わせるものではない。現行法上も、かかる告知を定めたものは無い。 | × 前半は正しい。後半は、刑訴法77条、272条がある。 |
消防職員が火災予防のために百貨店・劇場その他公衆の出入りする場所に立ち入って検査することは、司法官憲の発する令状に基づかなければ、違憲の疑いをまぬかれない。 | × 特に緊急性を要するわけではないので、令状を要求すべきとも思える。しかし、そもそも百貨店等は公共の場であり、プライバシーとの抵触はない。 |
所得税法の質問検査権も不利益供述強要禁止に違反しない、との判例に対しては、質問検査権は租税犯捜査の特殊性・技術性から税務署の職員に認められた特別の捜査手続であり、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びついている、との批判が可能である。 | × 所得税の公平確実な賦課徴収という行政目的のための手続にすぎない。(もっとも、「後に改めて刑事責任追及に利用されうる」との批判は可能である。) |
37条2項後段は、「公費で」証人を求める権利を有するとしているが、ここにいう「公費」とは、証人尋問に要する費用、すなわち、証人の旅費・日当等はすべて国家がこれを支給するという意味である。 | ○ SC.S23.12.27。 |
迅速な裁判とは、起訴前の過程も含むから、起訴から判決の確定までの期間が迅速であっても、起訴前の期間が不当に長かった場合には、迅速な裁判の要請に反する。 | ○ 本肢のように考えるのが一般である。 |
国選弁護人の費用は、国が負担する。 | × 訴訟費用に含まれ、刑を受けた被告人が負担する。SC.S25.6.7。 |
奴隷的拘束は、本人が同意していても許されない。 | ○ 絶対的禁止である。 |
参政権・受益権 |
選挙事務関係者や、公務員の多くは、選挙に立候補することが法律により禁じられる。 | ○ 公選法88条、国公法102条など。 |
15条1項の「公務員」とは、広く立法・行政・司法のいかんを問わず、国や地方公共団体の事務を担当する全ての者を指す。この点で、明治憲法が、天皇の官吏と国民を代表する議員を分ける二元的構造をとっていたのとは異なる。 | ○ もっとも、全てを国民が直接に選定・罷免しうるのかは、また話が別である。 |
請願権は、憲法上、「平穏に」行使することが必要とされている。 | ○ 16条。 |
請願を受けた機関は、何らの義務も負うものではない。 | × 確かに審理・回答の義務はないが、受理の義務はある。 |
憲法16条は、「請願をしたためいかなる差別待遇も受けない」とする。これは、私的差別待遇をも禁止する趣旨である。 | ○ 請願権を権利として認める以上、公的に差別してはいけないのは当然のことであり、特にこの文言が置かれたのは、15条4項後段のように公的にも私的にも差別待遇を禁止する趣旨であるとされている。 |
夫婦の同居に関して、同居の時期・場所・態様の具体的内容を定める審判は、公開・対審の手続による必要はない。 | ○ 裁判所が後見的立場から法律関係を形成する、非訟事件である。 |
民事上の秩序罰として過料を科する手続は、公開・対審の手続による必要がある。 | × 実質的には一種の行政処分であり、純然たる訴訟事件にはあたらない。 |
遺産分割の審判については、公開・対審の手続による必要がある。 | × 判例は、純然たる訴訟事件ではないとしている。 |
国家賠償請求では、請求金額が定型化されていないのに対し、刑事補償請求ではこれが定型化されている。 | ○ 抑留1日あたりの額が定められている。(刑補4条) |
刑事「補償」の対象となる損害は、抑留または拘禁によって生じた物質的な損害のみならず、精神的な損害も含む。 | ○ 刑補4条は、額を定型化しつつ、精神的苦痛や得べかりし利益をも考慮するとしている。 |
国家賠償請求権は、「国又は地方公共団体」に対して行使できるが、刑事補償請求権は「国」に対してのみ行使できると定められている。 | ○ 17条、40条。刑罰権は国家の専権である。 |
社会権 |
教師の教育の自由の制約の一例として、判例は、学習指導要領の法的拘束力を肯定し、明白な違反行為は懲戒事由にもあたるとした。 | ○ SC.H2.1.18。 |
教科書検定は、その審査が思想内容には及ばない場合に限り、検閲にあたらない。 | × 一般図書として出版しうるので思想内容に及ぶかと関係なく、検閲にあたらない。 |
監獄法50条に基づき、監獄長が在監者の信書の内容を審査することは、検閲にはあたらない。 | ○ SC.H6.10.27。学説の中には、検閲にあたるが例外的に許されるとするものもある。 |
企業廃止の自由は、22条の一環として認められるし、またそもそも28条は労働関係が存在する場合にのみ問題となり、企業の存続を強制するものではない。よって、使用者が組合員を排除し又は組合を壊滅させる目的で会社を解散させることも可能であり、このような解散決議も有効である。 | ○ 裁判例・学説の多数はこのように考えている。(もっとも、企業廃止の自由の濫用として無効とする裁判例も一部に存在する。) |
ある労働組合からの脱退には労働組合の承認を要する旨の労働組合規約は、脱退の自由を制限するものとして無効である。 | ○ 組合の統制権の範囲を超えるものとされる。なぜなら、脱退して他の組合に入ったり、新たな組合を結成することも認めるべきだからである。(加入強制の話とは異なる) |