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【午前の組・2番クジ】

主査

「では、引き続き、私の方から、民事訴訟法についてうかがいます。」

Otomo

「よろしくお願いします。」

主査

「まず、間接反証というものがありますが、これはどのようなものですか?」

Otomo

「はい。間接反証とは、ある主要事実について証明責任を負う者が、これを推認させる十分な間接事実を証明した場合には、相手方の側で、これと両立しうる別の間接事実を証明して、主要事実の推認を妨げなければならないという、・・・えー、そのような相手方の立証活動のことをいいます。」

主査

「うん。それで、あなたは、そのような間接反証についてどう考えますか? 認めたほうがよいと思いますか?」

Otomo

「はい。認めたほうがいいと思います。」

主査

「その理由は?」

Otomo

「はい。今日においては、たとえば公害訴訟など、主要事実を直接に立証するのが困難な場合もあり、そのような立証の困難を救済する必要があるからです。」

主査

(ちょっとズレてるんだよなぁ・・・という顔をして)「そうですか? ・・・うーん、まぁいいでしょう。じゃ、たとえばね、A・B・Cという間接事実によって、ある主要事実が一応推認されたとします。で、その推認を妨げる間接事実としてDが主張されたんだけど、Dは証明されるに至らなかった。この場合、どのような法規が不適用になりますか?」

Otomo

「不適用・・・ですか? えーと、Dが証明されなかったのですから、Dによって推認されるべき主要事実を要件とする法規が不適用になるのではないでしょうか・・・。」(よくわからないなぁ)

主査

(ほんとに? と言いたげに、首をかしげる)

Otomo

「あ、いえ、えっと、A・B・Cは立証されているわけですから、それによってある主要事実が推認され、これを要件とする法規が適用されます。そして、この推認を妨げるDが証明されなかったというのですから、そのまま右法規が適用されるというだけであって、「不適用」という問題は生じないと思います」

主査

「ふーん。(ニヤリと笑う) じゃ、パネルの方を見てください。」 

Otomo

(何だったんだ、今の質問は?)

 

  背信行為
  (主要事実)
    ↑
  推 |
  認 |←―――――¬
    |         |
    |         |
  無断転貸     特段の事情
  (間接事実)      (間接事実)

 

主査

「さきほどの(民法の)無断転貸による解除のケースについてね、背信行為を主要事実として、これを推認させる間接事実が無断転貸であると。で、その推認を妨げる間接事実が特段の事情である、というふうに、間接反証の理論で説明する見解があるんですけどね。この考え方に、何か問題はありませんか?」

Otomo

「問題ですか? えっと・・・」(さっぱりわからん)

主査

「・・・・・」

Otomo

「えー、無断転貸から背信行為が推認されるという点は・・・。あ、いや、この図自体は前提にするんですよね?」

主査

「いや、この図のような考え方に、何か問題はありますかと聞いているんです。」

Otomo

「はぁ・・・。えー・・・。無断転貸があれば、通常それは背信行為にあたると考えられますから、このような推認をすることは合理的だと思います。また、特段の事情があれば、まさにその推認は覆りますから、この点もやはり合理的です。とすると、このケースを間接反証の理論で説明することも、十分理由があると思います。」

主査

(やれやれという感じで)「この背信行為っていうのは、背信性という規範的な要素を含んでいるでしょう。それで、そのような規範的な意味を含むものを主要事実と捉えて間接反証の理論を用いてよいのかという問題なのですが、・・・そういう話は、聞いたことありませんか?」

Otomo

(なるほど)「・・・すみません。はじめて聞きました。」

主査

「うん。それで、あなたは、この場合の主要事実をどのように考えますか?」

Otomo

「はい。えーと、無断転貸の事実と、それが背信行為にあたることが主要事実と考えます。」

主査

「ほぉ。どうしてですか?」

Otomo

「単に無断転貸というだけでは、解除権は発生しない以上、背信行為ということも要件事実といえますので・・・。」

主査

「とすると、あなたは、背信行為という点は抗弁ではなく、原告の側が積極的に主張・立証しなければならないと考えるわけですか?」

Otomo

(しまった!)「・・・いえ、それは不都合だと思います。先ほど申し上げたのは撤回して、無断転貸のみを主要事実とすべきと考えます。」

主査

「それはどうして?」

Otomo

「はい。無断転貸がなされた場合、それは通常背信行為といえますので、被告の側で背信行為でないということを主張・立証させるべきだからです。」

主査

「そうですか。えっと、じゃ、また話を変えますけどね。原告が訴訟において、要件事実を主張したんだけれども、その立証を全くしないんですよ。いくら裁判所が促しても、全然。このような場合、裁判所としては、どのような措置をとることができますか?」

Otomo

「はい。その主要事実については原告が証明責任を負うので、裁判所としては、その要件事実が存在しないものと認定することができます。」

主査

「うん、その場合の裁判所の措置は?」

Otomo

「請求棄却です。」

主査

「そうですね。他には?」

Otomo

(証拠共通かな?)「他には、えー、相手方の提出している証拠から、原告主張の要件事実が認定できるのであれば、請求を認容することもできると思います。」

主査

(どうやら主査が予定している答えとは違うらしく)「うーん・・・。他にない?」

Otomo

「他に、ですか・・・。えーっと・・・。」

主査

「不熱心な訴訟の追行に対する措置、という話があると思いますが・・・」

Otomo

(当事者の欠席か?)「えっと、原告は法廷に出頭はしているのでしょうか?」

主査

「出頭はしてる。ただ、立証を一切しないの。」

Otomo

「・・・・?」

主査

「原告に対する措置として、何か・・・」

Otomo

「原告に対して、ですか・・・。うーん、うーん・・・。そのような原告の不熱心な訴訟追行の態度を、弁論の全趣旨として斟酌することもできるかと思います。」(消え入るような声で)

主査

(あきらめたらしく)「そうですか。ところで、先ほど証明責任って言ったけれども、証明責任の分配についてあなたはどのように考えるの?」

Otomo

「はい。当事者は、自己に有利な効果を基礎付ける法規の要件事実について証明責任を負うという、法律要件分類説に立ちます。」

主査

「他の学説もあるんだけど、なんていうか知ってる?」

Otomo

「はい。えーと・・・。あ、すみません。学説の名前までは知らないのですが・・・。」(まさか、「新堂説」って答えるわけにもいかないよなぁ)

主査

「あぁ、利益衡量説っていうんですけどね。」

Otomo

「あ、はい、そうでした。」

主査

「じゃ、あなたの考え方に立つとして、ちょっと民法415条を見てくれる?」

Otomo

「はい。」(415条を開ける)

主査

「債務者の責に帰すべき事由ってあるよね。これについては、誰が証明責任を負いますか?」

Otomo

「はい。えー、債務者の帰責事由は、債権者に有利な効果の発生を基礎付ける主要事実ですから、先ほど述べた法律要件分類説をあてはめると、債権者が証明責任を負うことになりそうです。・・・が、信義則上、債務者に負わせるべきと考えます。」

主査

「公平の見地から、債務者に負わせるんですね。」

Otomo

「はい。」(ここはこれ以上突っ込まないのかな。)

主査

「じゃ、次に、94条2項に善意の第三者ってあるんだけど、この善意は誰が証明責任を負いますか?」

Otomo

「はい。第三者が自らの善意につき証明責任を負うと思います。」

主査

「ほんとにぃ?」(こちらをじっと見つめる)

Otomo

「あ、いえ・・・。えー、やはり、原権利者に負わせるべきかと思います・・・。」

主査

「どうして?」

Otomo

「えー、相手方が善意でないこと、というのを無効の主要事実と考えれば、原権利者が証明責任を負うことになると思います。」

主査

「うーん・・・。いや、実質的な理由を聞きたいんですけどね・・・。」

Otomo

「あっ、はい、実質的な理由は、えーと・・・。」(沈黙)

主査

「・・・・。ま、まぁ、複雑だから、混乱しちゃったかな。」

Otomo

「はぁ・・・。」(まずいなー)

主査

「じゃ、最後に、あなたは法律要件分類説に立つということだけれど、その理由を聞かせてもらえるかな?」

Otomo

(久々に自信をもって答えられる質問だ)「はい。まず、基準として明確であること、また、そもそも実体法自体が当事者の公平を考慮して定められていることが、理由としてあげられると思います。」

主査

「わかりました。以上です。」

Otomo

「ありがとうございました。」

 

<感想>

 今ひとつ、主査とかみあわないまま終わってしまったなぁ、という印象です。間接反証の具体例(不貞の抗弁)や、法律要件分類説の具体的な内容(権利根拠規定など)を問われた人もいるようですが、自分は、全く聞かれませんでした。本問のメインと思われるパネル事例について、何も答えられなかったのは痛い・・・。マイナスをつけられた可能性のある科目の1つだと思います。