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一 小問1について
1 (1)について
(1) BのCに対する甲土地返還請求は、所有権に基づくものと
考えられる。そして、そのためにはBに所有権がなければな
らないので、A夫妻とCとの間の甲土地売買契約が無効であ
ればよい。
そこで、A夫妻とCとの間の甲土地売買契約の効力が問題
となる。
(2)ア A夫妻はCの親であることから法定代理権を有するので
(818条1項・3項)、当該売買契約は有効とも思える。
もっとも、AはDに対する自己の債務の弁済に充てるた
めに甲土地を売却したのであるから、かかる行為は利益相
反行為(826条1項)にあたるのではないかが問題となる。
イ 思うに、ある行為が利益相反行為にあたるか否かは、取
引安全のために、客観的に判断すべきである。
ウ そして、本問のA夫妻とCとの間の売買契約は、客観的
に見ると、利益が相反しているとはいえない。よって,利
益相反行為にあたらない。
(3)ア もっとも、当該売買契約には、AがDに対する自己の債
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務を弁済するためという権限濫用の意図がある。
かかる場合、93条但書を類推適用して、相手方が濫用意
図につき悪意または有過失であれば、契約が無効になると
解する。
なぜなら、経済的利益を本人に帰属させようという表示
と自己に帰属させようとする内心との間に不一致があるか
らである。
イ 本問では、Cは甲土地を買い受ける際に、売却代金をA
のDに対する債務の弁済に充てるためという権限濫用意図
につき知っていたため悪意である。
よって、A夫妻とCとの間の当該売買契約は無効とな
る。
(4) したがって、甲土地の所有権はBにあることから、Bは所
有権に基づいてCに対し、甲土地の返還を請求することがで
きる。
2 (2)について
前述のように、A夫妻とCとの間の甲土地売買契約は無効と
なる。よって、売買契約の効力がBに効果帰属することはな
く、利得があるのはBではなく、Aである。
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したがって、CはBに対して500万円の支払いを請求するこ
とはできない。
二 小問2について
1 Cへの甲土地売却時においては、A夫婦は売却代金をBの教
育資金に用いるつもりであったので、権限濫用意図はなかった
といえる。よって、A夫妻とCとの間の甲土地売買契約は有効
である。したがって、甲土地所有権はCに帰属し、500万円の
代金債権はBに帰属する。
よって、BはAに対して、AがCから受け取った500万円に
つき支払請求権を有することになる。
2(1)それにもかかわらず、Aは500万円をBに払わずにDに弁
済している。
そこで、BはAD間の弁済を詐害行為として取消すことは
できないか(424条1項)。
(2) 思うに、ある行為が詐害行為になるか否かは、行為の客観
的態様と行為者の主観の相関関係から判断すべきである。
そして、弁済はその客観的態様は詐害性が弱いものである
から、詐害行為となるためには、 行為者間において通謀ま
たはこれと同視できるような主観的な詐害性が必要と解す
る。
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(3)
本問では、確かにAD間に通謀はないが、Dは500万円が
甲土地の売却代金であることを知っていたのであるから、実
質的に見れば通謀と同視できる主観的な詐害性が認められ
る。
よって、弁済は詐害行為にあたり、Bはこれを取消すこと
ができる。
3 そして、Bは直接Dに対して500万円の支払いを請求するこ
とができる。
なぜなら、このように考えなければ、Aが受け取りを拒んだ
場合に詐害行為を取消した実効性がなくなるからである。
以 上 |