<1頁目>
一 AC間の新たな合意を必要としない場合
1(1)まず、Bの親Aが第三者弁済として、Cに500万円を
弁済することが考えられる(474条1項本文)。
(2) もっとも、「利害ノ関係」を有しない第三
者は、債務者の意思に反して弁済をなすことはできない
(474条2項)。そして、ここでいう「利害ノ関係」とは、法律
上の利害関係をいい、事実上の利害関係は含まれないと解さ
れる。
本問では、債務者である子BがAによる弁済を拒否してお
り、親Aには法律上の利害関係がないことから、Bの意思に
反して弁済をすることはできない。
したがって、Aの第三者弁済でBの債務を消滅させること
はできない。
2 次に、AがBの債務を消滅させてやる方法として、債務引受
をして、自分の債務として弁済する方法が考えられる。
そして、債権者と引受人との間での合意が不要な債務引受に
は、@履行引受、A併存的債務引受があげられる。これらは、
債権者に損害をおよぼす恐れがないことから、債権者と引受人
<2頁目>
との間の合意が不要とされる。
(1) @履行引受について
履行引受は、債務者と債務の引受人との間の合意により、
引受人が債権者に弁済することを約するものである。
本問では、債務者BがAによる弁済を拒んでいることか
ら、AB間で履行引受の合意をなすことは困難であろう。
(2) A併存的債務引受について
併存的債務引受は、債務者と債務の引受人が連帯債務を負う
ことになるものであり、第三者のための契約としての性質を有
する。
併存的債務引受ならば、債権者との合意が不要であり、これ
により、AはBの債務を消滅させてやることができる。
二 新たな合意を必要とする場合
1 まず、AC間で新たな合意を必要とする場合には、免責的債
務引受の場合があげられる。このばあい、従来からの債務者が
免責され、引受人のみが債務者となることから、債権者に不足
の損害が生じないために債権者の合意が必要となる。
また、従来の債務者が免責されることから、免責を潔しとし
<3頁目>
ない債務者の意思を尊重するため、従来の債務者の同意も必要
である。
そして、本問では従来からの債務者BはAによる弁済を拒ん
でいることから、Bの同意を得ることは困難であり、免責的債
務引受の場合、AがBの債務を消滅させてやることはできな
い。
2 次に、考えられる方法として、AがCから債権譲渡を受け
(466条1項本文)、Aが債権を免除(519条)することが考えられ
る。
債権譲渡は債務者の同意なしに可能であるし、免除も単独行
為であるから、これにより、AはBの債務を消滅させてやるこ
とができる。
以 上 |