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第2問

 Aは,20歳の息子に資産がないのに無職でいることに日ごろから小言を言っていたところ,BがCから500万円の借金をしていることを知り,その借金を返済してやりたいと考えた。しかし,Bは,「親の世話になりたくない。」と言って,これを拒否している。AがBの上記債務を消滅させてやるためには,いかなる法律的方法があるか。AC間に新たな合意を必要としない場合と必要とする場合とに分けて論ぜよ。

 

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一 AC間の新たな合意を必要としない場合
 1(1)まず、Bの親Aが第三者弁済として、Cに500万円を
   弁済することが考えられる(474条1項本文)。
  (2) もっとも、「利害ノ関係」を有しない第三
   者は、債務者の意思に反して弁済をなすことはできない
   (474条2項)。そして、ここでいう「利害ノ関係」とは、法律
   上の利害関係をいい、事実上の利害関係は含まれないと解さ
   れる。
    本問では、債務者である子BがAによる弁済を拒否してお
   り、親Aには法律上の利害関係がないことから、Bの意思に
   反して弁済をすることはできない。
    したがって、Aの第三者弁済でBの債務を消滅させること
   はできない。
 2 次に、AがBの債務を消滅させてやる方法として、債務引受
  をして、自分の債務として弁済する方法が考えられる。
   そして、債権者と引受人との間での合意が不要な債務引受に
  は、@履行引受、A併存的債務引受があげられる。これらは、
  債権者に損害をおよぼす恐れがないことから、債権者と引受人

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  との間の合意が不要とされる。
  (1) @履行引受について
    履行引受は、債務者と債務の引受人との間の合意により、
   引受人が債権者に弁済することを約するものである。
    本問では、債務者BがAによる弁済を拒んでいることか
   ら、AB間で履行引受の合意をなすことは困難であろう。
  (2) A併存的債務引受について
   併存的債務引受は、債務者と債務の引受人が連帯債務を負う
  ことになるものであり、第三者のための契約としての性質を有
  する。
   併存的債務引受ならば、債権者との合意が不要であり、これ
  により、AはBの債務を消滅させてやることができる。

二 新たな合意を必要とする場合
 1 まず、AC間で新たな合意を必要とする場合には、免責的債
  務引受の場合があげられる。このばあい、従来からの債務者が
  免責され、引受人のみが債務者となることから、債権者に不足
  の損害が生じないために債権者の合意が必要となる。
   また、従来の債務者が免責されることから、免責を潔しとし

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  ない債務者の意思を尊重するため、従来の債務者の同意も必要
  である。
   そして、本問では従来からの債務者BはAによる弁済を拒ん
  でいることから、Bの同意を得ることは困難であり、免責的債
  務引受の場合、AがBの債務を消滅させてやることはできな
  い。
 2  次に、考えられる方法として、AがCから債権譲渡を受け
  (466条1項本文)、Aが債権を免除(519条)することが考えられ
  る。
   債権譲渡は債務者の同意なしに可能であるし、免除も単独行
  為であるから、これにより、AはBの債務を消滅させてやるこ
  とができる。
                          以 上