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一 DのCに対する請求とこれに対するCの反論について
1 まず、DがCに対してなしうる請求としては、甲建物の所有
権に基づく明渡請求が考えられる。
なぜなら、DはAから甲建物を譲受けて、Bよりも先に登記
を備えており、甲建物の所有権を確定的に取得するからである
(177条)。
(1) これに対し、Cとしては、まず、自分は賃借権を有してお
り、対抗要件(借地借家法31条)も備えていると反論する
ことが考えられる。
しかし、本問ではDが土地所有権を確定的に取得している
ため、BC間の売買は他人物賃貸借として当事者間において
のみ有効であるにすぎず(560条、559条)、これを真
の所有者たるDとの関係で対抗することはできない。
よって、Cの右反論は認められない。
(2) 次に、Cとしては、Bに対する損害賠償請求権(後述)を
被担保債権として留置権(295条)を行使する、との反論
をすることが考えられる。
しかし、そもそも留置権は、物を留置して相手方の弁済を
促すという点にその趣旨があるから、留置権成立の時点にお
いて、物の返還請求権者と被担保債権の債務者が同一人であ
ることを要すると解すべきである。
とすると、本問では、前者はD、後者はBであり、別人で
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あることから、留置権は成立しない。
よって、Cの右反論も認められない。
(3) そこで、次に、Cとしては、Dに対する300万円の有益
費償還請求権(196条2項)を被担保債権として留置権を
行使する、との反論をすることが考えられる。
この点、Cは飲食店経営目的で甲建物を賃借し、給排水管
の工事を行ったものであるところ、Dが飲食店経営目的を有
しない場合にも「有益費」といえるのかが問題となる。
思うに、同条は、費用を支出した占有者に投下資本を回収
させる点に趣旨があるから、占有者保護を重視して、「有益
費」といえるかどうかは客観的価値が増加したか否かによっ
てのみ決すべきである。
とすると、本問でも、客観的に価値は増加している以上、
Dの目的にかかわらず「有益費」といえる。
よって、Cの右反論は認められる。
2 次に、DがCに対してなしうる請求として、使用利益の返還
請求(703条)が考えられる。
(1) これに対し、Cとしては、そもそも自分に利得はないと反
論することが考えられる。
思うに、CがBに対して賃料を支払っていた場合は、そも
そもCには利得があるといえないので、Cの右反論は認めら
れる。
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(2)
また、賃料を支払っていない場合であっても、Cとしては
果実収取権がある以上(189条1項)、使用利益を返還す
る必要はないと反論することが考えられる。
この点、CはDが真の所有者であることにつき善意であっ
たと考えられるから、果実収取権があり、Cの右反論は認め
られる。
二 BC間の法律関係について
1 まず、BC間では、当初、賃貸借契約が有効に成立していた
が、後にDが甲建物所有権を確定的に取得し、Cに対して明渡
請求をしたことにより、Bの使用収益させる義務は履行不能と
なる。
そして、これにより、Bの帰責性の有無にかかわらず、賃貸
借契約は当然に終了すると解すべきである。
なぜなら、そもそも賃貸借契約は目的物を使用収益させる点
に本質があるところ、それが不能な場合にまで賃料債務を残存
させるのはその本質に反し、また非現実的だからである。
2(1)また、CはBに対して、Bの帰責性の有無にかかわらず、
損害賠償請求をすることができる(561条)。
そして、この場合の請求の範囲は、信頼利益に限られると
解する。なぜなら、そもそも同条は、有償契約の信用を維持
するための法定無過失責任にすぎないからである。
(2) 次に、Bに帰責性がある場合には、CはBに対して債務不
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履行に基づく損害賠償請求もなしうると考える(415)。
なぜなら、561条は415条を排除する趣旨ではないか
らである。
そして、この場合の請求の範囲は、履行利益も含まれる。
(3) さらに、Bに帰責性がある場合には、CはBに対して不法
行為に基づく損害賠償請求もなしうると考える(709条)
そして、前述の請求とは要件・効果を異にすることから、
いずれも選択的に請求できると解する。
(4) なお、以上の損害賠償請求において、工事費用の300万
円は損害には含まれないと考える。
なぜなら、そもそも当初の契約においても工事費用はCが
負担することになっていたのであり、Bの不履行との相当因
果関係が認められないからである。
以上
※ この問題も、何を書いたらいいのかよくわからなかったです。
その割には、答案の分量はえらい多いのですが・・・。(ただ、
実際の答案はここまで長くはないです。この再現答案においては
条文や句読点などすべて全角で入力しているため、実際の答案よ
り分量が多めになっています)
※ 賃料50万円、期間3年という問題文の事情は、結局使わずじ
まいになってしまった・・・。どこか、処理の仕方が根本的にず
れてるのかなぁ。 |