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一 小問1について
1 不法行為責任と責任能力の関係
(1) 責任能力とは、自己の行為の責任を弁識するに足りるだけ
の精神能力をいう。
(2) かかる責任能力と不法行為責任は、要件・効果の関係にあ
る。
すなわち、709条の要件をみたした場合であっても、責
任能力がない場合には、不法行為責任が認められないという
関係にある(712条、713条)。
2 責任能力が必要とされている理由
(1) このように責任能力が不法行為責任の要件として必要とさ
れているのは、責任無能力者保護のためである。
すなわち、自己の行為の責任を弁識しえない者にまで不法
行為責任を負わせるのは酷だからである。
(2) そして、従来は、過失概念は純主観的なものとして捉えら
れていたが、近時においては、ある程度客観的に把握可能な
ものとして捉えられるようになっており、過失が認定されや
すくなる可能性がある。
それゆえ、責任無能力者保護のため、責任能力による不法
行為責任の限界づけがより一層必要となるのである。
二 小問2について
1 このように、責任能力が不法行為責任の要件であるとして、
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未成年者が加害行為を行った場合、親権者に対して不法行為責
任を問いえないか。その法的構成が次に問題となる。
2 この点、自己の行為についてのみ責任を負うという自己責任
の原則からすれば、未成年者の加害行為について親権者が責任
を負うことはないとも思える。
3 しかし、未成年者が責任能力を有しない場合は、前述の通り
未成年者自身は不法行為責任を負わない。それにもかかわらず
親権者が一切責任を負わないのでは、被害者保護が図れない。
そこで、714条により、親権者に不法行為責任を問うとい
う法的構成が考えられる。
なぜなら、親権者には、子を監督すべき法定の義務があると
いえるからである(820条)。
4 では、未成年者が責任能力を有している場合は、親権者に対
して不法行為責任を問いえないのであろうか。
この点、かかる場合には未成年者自身が不法行為責任を負う
ことから、親権者に責任を負わせる必要はないとも考えうる。
しかし、未成年者自身には資力がない場合もあるから、親権
者に対する責任も認めて被害者保護を図る必要がある。
思うに、そもそも714条は、被害者保護の見地から、故意
過失の立証責任を転換する趣旨にすぎず、709条の責任を排
除する趣旨ではない。
よって、未成年者が責任能力を有している場合であっても、
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709条を適用することによって、親権者に対して不法行為責
任を問いうるものと考える。
5 以上より、未成年者の加害行為に対する親権者の不法行為責
任を問う法的構成としては、未成年者が責任能力を有しない場
合は714条、責任能力を有する場合は709条を適用すると
いう構成がある。
以上
※ 問題文を見て、一瞬、目が点になってしまいました。ただ、こ
れはおそらく他の人も目が点になってるやろうと思ったので、あ
まり無理はせず、わかる範囲で短く書いてすませました。 |