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第2問

 甲は、乙に対し、自己の所有するA土地について偽造書類によって甲から乙に所有権移転登記がされているとして、甲から乙への所有権移転登記の抹消及びA土地の所有権確認を求めて訴えを提起した。
1 乙の債権者である丙は、甲乙間の訴訟に補助参加することができるか。
2 甲乙間の訴訟の係属前にA土地を乙から買い受けたと主張する丁が甲乙間の訴訟に参加した。この場合に、丁は、それまでの訴訟の中で乙が自白した事実を争うことができるか。

 

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一 小問1について
 1 丙が甲乙間の訴訟に補助参加するためには、「訴訟の結果」
  について「利害関係」を有することが必要である(42条)。
   では、本問でかかる要件をみたすか。
 2(1)まず、「利害関係」とは、法律上の利害関係をいう。具体
   的には、被参加者の敗訴により、自己の法的地位が事実上不
   利になることをいう。
  (2) 次に、「訴訟の結果」とは、訴訟物についてのみならず、
   判決理由中の判断も含むと考える。
    なぜなら、そもそも補助参加制度は、第三者の利益保護を
   図る点にもその趣旨があるところ、判決理由中の判断であっ
   ても後訴への影響は無視しえず、第三者の利益保護を図る必
   要があるからである。
 3 これを本問についてみるに、甲は乙に対してA土地の所有
   権確認の訴えを提起しており、その主文中でA土地の所有権
   の帰属について判断がなされる。
    そして、もし乙が敗訴し、A土地の所有権が甲に帰属する
   との判断がなされれば、乙の債権者である丙はA土地を引き
   当て財産とすることができなくなり、債権回収が困難となる
   おそれがある。とすれば、これによって、丙が乙から弁済を
   うけられるという法的地位は事実上不利になるといえる。
    よって、丙は「訴訟の結果」について「利害関係」を有す

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   るといえる。
 4 以上より、丙は、甲乙間の訴訟に補助参加することができる
  (42条)。

二 小問2について
 1 次に、甲乙間の訴訟に参加した丁が、乙の自白した事実を争
  うことができるかは、丁の参加形態によって異なる。
   そこで、以下、@丁が独立当事者参加(47条1項前段・権
  利主張参加)した場合と、A丁が補助参加(42条)した場合
  とに分けて検討する。
 2(1)まず、@丁が独立当事者参加した場合、丁は乙の自白した
   事実を争うことができるか。
  (2) この点、そもそも独立当事者参加訴訟は、三当事者間の紛
   争の矛盾なき解決を目的としていることから、合一確定を図
   るべく、必要的共同訴訟の規定が準用されている(47条4
   項)。
    そして、40条1項は、一人の訴訟行為は全員の利益にお
   いてのみその効力を生じるとしている。
    これは、合一確定の必要がある一方で、各参加人は自らの
   請求を立てて当事者として参加するものである以上、不利な
   効果まで及ぼしたのではあまりにもその防御権を害するから
   である。
  (3) とすれば、自白は自己に不利益な事実を認めて争わない旨
   の陳述であるから、乙の自白は丙の利益とはいえず、自白の

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   拘束力は乙に及ばない。
    よって、丙は当然に、乙の自白した事実を争うことができ
   る。
 3(1)では、次に、A丁が補助参加した場合、丁は乙の自白した
   事実を争うことができるか。
  (2) この点、補助参加人は、補助参加の時における訴訟の程度
   に従いすることができない行為をなしえない(45条1項但
   書)。また、被参加人の訴訟行為と抵触する行為もなしえな
   いとされている(45条2項)。
    これは、補助参加人が、自己の利益を守る立場にある一方
   で、自らの請求を立てて請求に参加するわけではなくあくま
   で一方当事者を勝訴させるために参加するにすぎないため、
   付従性をも有するからである。
  (3) そして、当事者が自白をした場合、その当事者は原則とし
   てこれを撤回することができない。なぜなら、相手方の不要
   証(179条)に対する信頼を保護する必要があるからであ
   る。
    よって、かかる場合は、補助参加人も自白の撤回をするこ
   とができず、自白にかかる事実を争うことはできないのが原
   則である。
  (4) ただし、例外的に、(ア)相手方の同意がある場合は、相手
   方の信頼保護があてはまらず、また、(イ)刑事上罰すべき行

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   為により自白がなされた場合、(ウ)自白した事実が真実に反
   しかつ錯誤に基づく場合は、自白者保護の要請が相手方の信
   頼保護を上回るので、自白の撤回が認められる。
    もっとも、補助参加人は被参加人の訴訟行為と抵触する行
   為をなしえないから、当事者が自白を撤回した場合に限り、
   補助参加人も自白の撤回をすることができ、自白にかかる事
   実を争うことができる。
  (5) よって、本問でも、丁は原則として乙の自白した事実を争
   うことはできないが、(ア)ないし(ウ)の場合に乙が自白を撤
   回すれば、例外的にこれを争うことができる。
                           以上

 

※ これも今ひとつという感じですね・・・。補助参加はヤマだと
 言われてましたが。普通は判決理由中の判断だというところが問
 題となるのに、本問では所有権確認の訴えがあるので、主文にも
 ろに出てくるんですよね。そうすると、前段はあんまり書くこと
 がなくなってしまいます。

※ 後段は、「参加」とあるのみなので、一応、独立当事者参加と
 補助参加に分けた上で、両者の結論が異なる理由を示せるように
 書きました。もっとも、よく考えると、そもそも「事実」という
 のが主要事実なのか間接事実なのか明らかでないので、その点で
 さらに場合分けが必要な気がします。そうすると、2問連続で弁
 論主義がらみということになりますね・・・。

※ 二3(4)について、「当事者が撤回した場合に限り、補助参加
 人も撤回をすることができる」という部分を、再現の際に書き忘
 れたので、訂正しておきました。