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第2問

 以下の各訴えについて,裁判所は司法権を行使することができるか。
1 国会で今制定されようとしているA法律は明らかに違憲であるとして,成立前に無効の宣言をするよう求める訴え。
2 B宗教の教義は明らかに憲法13条の個人の尊重に反しているとして,その違憲確認を求めてC宗教の信徒らが提起した訴え。
3 自衛隊は憲法第9条に違反する無効な存在であるとして,国に対して,自己の納税分中自衛隊に支出した額の返還を請求する訴え。

 

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一 小問1について
 1 本小問の訴えについて、裁判所は司法権を行使することがで
  きるか。
   ここに、司法権(76条1項)とは、具体的な争訟について法を
  解釈・適用してこれを裁定する国家作用をいう。
   裁判所は個人の人権を保障するための機関であるから、司法
  権の対象となるためには具体的な争訟でなければならない(法
  律上の争訟、裁判所法3条1項)。
   そして、法律上の争訟にあたるためには、@具体的な権利義
  務の存否に関する争いについて、A法を解釈・適用することで
  終局的に解決することができるものである必要がある。
   よって、@・Aを満たす場合には、一定の場合を除いて裁判
  所は司法権を行使することができる。
 2 本小問についてみると、A法律は成立前であり、何ら権利侵
  害がないから@具体的な権利義務の存否に関する争いではな
  い。
   よって、法律上の争訟にはあたらず、裁判所は司法権を行使
  することができない。

二 小問2について

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 1 本小問の訴えについて、裁判所は司法権を行使することがで
  きるか。前述の@Aの基準について検討する。
 2 まず、憲法第13条の個人の尊重に反するというのは@具体的
  な権利義務の存否の争いであるとはいえない。
   また、宗教上の教義の内容の判断については、A法を解釈・
  適用することで終局的に解決できる事項ではない。
   よって、法律上の争訟にはあたらず、裁判所は司法権を行使
  することができない。

三 小問3について
 1 本小問の訴えについて、裁判所は司法権を行使することがで
  きるか。前述の@Aの基準について検討する。
 2 まず、本小問の訴えは自己の納税分中自衛隊に支出した額の
  返還請求という@具体的な権利義務の存否に関する争いであ
  る。
   また、憲法9条の解釈によって自衛隊が無効な存在とされれ
  ば、返還請求権を肯定しうるのであるから、A法を解釈・適用
  することで終局的に解決できる。

<3頁目>

   そうだとすれば、法律上の争訟にあたり、裁判所は司法権を
  行使できるとも思える。
 3(1)もっとも、高度に政治的な事項については、民主的基盤の
   ない裁判所よりも、民主的基盤のある政治部門の判断にゆだ
  ねるべきと解される。
  (2) そして、自衛隊は国家の国防を担う組織であって、その存
   在は国家の存亡に関わる高度に政治的な事項といえる。した
   がって、法律上の争訟にあたるとしても、例外的に、裁判所
   は司法権を行使することができない。

                          以 上