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【午後の組・10番クジ】

Otomo

「2組51番です。よろしくお願いします。」

主査

「はい。じゃ、(席に)どうぞ。」

Otomo

(穏やかそうな主査。助かったー。)

主査

「えー、リラックスしてくださいね。」(笑顔)

Otomo

「はい。」

主査

「さて、この1月から省庁再編が行われているんですが、知っていますか?」

Otomo

「はい。」(なんか嫌な話題・・・)

主査

「あれは、一体どういう目的で行われているんですか?」

Otomo

「目的・・・ですか?」(まずい! 全く知らないぞ・・・)

主査

「うん。目的というか、狙いというか・・・。」

Otomo

「えー・・・。行政にかかる費用の節約、でしょうか・・・。」

主査

(渋い顔をして)「節約?・・・まぁ、このリストラの時代ですから、そういう意味もあるかもしれませんけどねぇ・・・。」

Otomo

(ニュース見とけばよかった・・・)「はぁ・・・。」

主査

「他にない? もっと大事な目的。」

Otomo

(何か言わないと・・・)「行政の効率化という目的もあると思います。」

主査

「うん。具体的にはどういうふうにして効率化するのかな?」

Otomo

「具体的には、えー、これまで2つの省庁であったものを、1つにしたり・・・。」

主査

「でも、全く関係ない省庁をくっつけても仕方ないよねぇ。」

Otomo

「あっ、はい。関連する分野の多い省庁をくっつけるのだと思います。」

主査

「たとえば、どういう所がありますか?」

Otomo

「えー・・・。」(やばすぎ・・・。)

主査

「そうだなぁ。じゃ、総理府はどうなりましたか?」

Otomo

「はい。内閣府になりました。」

主査

「うん。内閣府ね。ただ単になっただけ?」

Otomo

「いえ、何かがくっついたのだと思いますが・・・。」

主査

「何がくっついたの?(苦笑)」

Otomo

「えー・・・・(沈黙)」

主査

「官房長官って知ってる? 官房長官って、何をする人?」

Otomo

「はい。えーと、行政各部の総合調整を行います。」

主査

「それは内閣総理大臣がやるんじゃないの?」

Otomo

(あれ、収賄のところで聞いたことあるんだけどなぁ・・・と思いつつ)「はぁ・・・。」

主査

「内閣と行政の違いって、わかる?」

Otomo

(??)「えー、内閣の下に行政各部があると思います。」

主査

「うーん・・・。」(全然納得いかないという様子)

Otomo

(まずいな・・・。)

主査

「じゃあ、大蔵省はどうなった?」

Otomo

「はい。財務省になりました。」

主査

「うん。それじゃ、法務省は?」

Otomo

「法務省はそのままだと思います。」

主査

「職務の内容も、全然変わってないの?」

Otomo

「はぁ・・・。」(知らないのに、変わりましたとは言えないしなぁ・・・)

主査

「じゃあさ、今回の再編で、いくつになったか知ってる?」

Otomo

「えーと、10・・・」

主査

(軽くうなずく)

Otomo

(おっ、10代か?)「15個くらいかと・・・。」

主査

(少し悲しそうに)「はぁ・・・15個にもなりましたか・・・。」

Otomo

「あ、いえ・・・。」

主査

「1府12省になったんですよね。」

Otomo

「そうでした。失礼しました。」(惜しかったなー)

主査

「じゃ、大臣は何人置けるようになった?」

Otomo

(こんなん答えられる奴いるのか?!)「はぁ・・・1府12省ということは・・・。」

主査

「13人?(苦笑)」

Otomo

「あっ、いえ、もう少し多かったと思います。」

主査

「うん。17人になったんですけどね。どの法律に規定されていますか?」

Otomo

「はい。えー・・・国家公務員法?」

主査

(渋い顔で)「そうですか?」

Otomo

「あっ、失礼しました。内閣法です。」

主査

「うん、そうだよね。で、13よりも多い大臣を置くことができるわけだけれども、どこの省も担当しない大臣のことをなんていうか知ってる?」

Otomo

「はい。無任所の大臣です。」

主査

「うん、無任所大臣ね。」

Otomo

(やっとまともに答えられた・・・)

主査

「じゃあ、話を戻すけど、省庁再編の一番の目的は何でしょうね? 効率化以外に、何か。」

Otomo

(げげっ! またその話か!)「はぁ・・・。」

主査

「今までだと、何か弊害があったから、変えたんじゃないのかな?」

Otomo

「弊害・・・。そうですよね・・・。」(半分、涙目)

主査

「内閣総理大臣の権限を強化しようとしたんですよね。」

Otomo

(しまった! そうか!)「あっ、はい、そうでした・・・。」

主査

「うん。ところで、憲法上、既に内閣総理大臣の権限というのは定められていると思うんだけど、どんなのがある?」

Otomo

(やっと憲法の話だ)「はい。まず、内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を提出し、一般国務および外交関係について国会に報告します。」

主査

(大きくうなずく。)

Otomo

「それから・・・あれ? 72条にあと1つあったと思うのですが・・・」(げっ、ど忘れしてしまったー。)

副査

(小声でぼそっと)「行政各部・・・」

Otomo

「あっ!! 行政各部を指揮監督します。」(なんて優しい副査だ!)

主査

「そうだね。他には?」

Otomo

「えーと・・・。」

主査

「一人で内閣を組織するの?」

Otomo

「あっ、国務大臣を任命・罷免する権限があります。」

主査

「うん。それから?」

Otomo

「うーん・・・。」

主査

「内閣の中で、悪い奴が出てきたら、どうします?(笑)」

Otomo

「あっ、国務大臣の訴追について同意する権限もあります。」(なんか、教えてもらってばっかり・・・。)

主査

「うん。そのように内閣総理大臣には、憲法上、それなりに強い権限が認められてるんですよね。じゃあ、現行憲法の内閣は、合議制ですか、独任制ですか?」

Otomo

「はい。合議制です。」

主査

「うん。合議制って何?」

Otomo

「はい。構成員どうしの話し合いによって、その意思を決定する制度をいうと思います。」

主査

「じゃあ、たとえば、国務大臣の中で、総理大臣に反対する者がいる場合、総理大臣はどうしますか?」

Otomo

「はい。まずはその国務大臣を説得し、それでもだめなら、罷免することになると思います。」

主査

「うん。それじゃ、総理大臣以外の全員が反対してる場合はどうする?」

Otomo

「えー・・・。その場合も、やはり、全員を罷免することになるかと・・・。」

主査

「でも、全員辞めさせられるのなら、独任制と変わらないんじゃない?」

Otomo

「たしかに・・・。」

主査

「そのようなことは、憲法上認められますか?」

Otomo

「いえ、憲法の予定するところではないと思います。」

主査

「どのような防止策がありますか?」

Otomo

「えーと・・・。総理大臣の罷免権も全くの無制限ではなく、濫用的な罷免は許されないのではないでしょうか。」

主査

「えっ、罷免権を制限しちゃうの?」

Otomo

「あ、いや、その・・・。」

主査

「内閣総理大臣を選ぶのは誰ですか?」

Otomo

「はい。国会が指名します。」

主査

「うん。じゃ、国会が内閣総理大臣を辞めさせるには、どうしたらいい?」

Otomo

「はい。不信任決議を可決すればよいと思います。」

主査

「そうだね。そうすると、議院内閣制という制度によって、国会が内閣総理大臣に一定のブレーキをかけるということができますよね。」

Otomo

「はい、そのように言えると思います。」(なるほど・・・)

主査

「では、この議院内閣制というものの本質について、あなたはどのように考えますか?」

Otomo

「はい。内閣の成立と存続が国会の意思に依存している点に本質があると思います。」

主査

「なるほど。他の学説もありますよね?」

Otomo

「はい。先ほど述べたのは責任本質説という考え方ですが、その他にも、国会の不信任権に対し内閣が解散権を持って対峙する点にも本質があると考える均衡本質説があります。

主査

「うん。で、その2説は、どう違うの?」

Otomo

「はい。えー、均衡本質説の方が、解散が広く認められるのだと思います。

主査

「均衡本質説だと、無制限に解散できるの?」

Otomo

「あっ、いえ、党利党略のための解散は認められないと思います。」

主査

「うん、それは当然だよね。じゃ、どこが違うの?」

Otomo

「えー・・・。責任本質説は、民意を問うという解散の民主主義的意義を重視するのに対し、均衡本質説は国会と内閣が対立するという自由主義的意義も重視される点で異なるかと・・・。」

主査

「国会と内閣って、対立関係にあるの?」

Otomo

「あっ、いえ、協働関係にあります。ただ、国会と内閣で意見が異なるような場合に、不信任権と解散権が対抗するという意味で、対立関係にあるのだと思います。」

主査

「あなたの考えは、均衡本質説だと、民主主義的意義を軸としつつ、自由主義的意義から一定の制限がかかるということで、解散がむしろ狭くなるということですか?」

Otomo

「あ、いえ、均衡本質説の方が広いと考えるのですが・・・。」

主査

「うーん・・・。まぁ、両者が具体的にどう違うのかっていうと、難しいよねぇ。」

Otomo

「はぁ・・・。」

主査

「じゃあ、あなたの責任本質説によるとして、69条の不信任決議を経ない、いわゆる7条解散は認められますか?」

Otomo

「はい。認められます。」

主査

「どうして?」

Otomo

「民意を問うという解散の民主主義的意義からすれば、69条以外の場合にも解散を認めるべきだからです。」

主査

「なるほど。それで、判例は、このような解散を認めてますか?」

Otomo

「認めていると思います。」

主査

「ほんと?」

Otomo

「あっ、いえ・・・。えーと、違憲と判断した判例はないと記憶しています。」

主査

「判例はなんて言った?」

Otomo

(あっ、そうか)「高度の政治性ゆえに、司法審査を控えるべきとしました。」

主査

「うん、そうだよね。・・・(副査に向かって)何か?・・・それじゃ、終わります。お疲れさま。

Otomo

「ありがとうございました。」

 

<感想>

 これはマイナスつけられた可能性大・・・。省庁再編の話は、本題に入る前の肩ならしなのかなぁと思ってたら、やけにしつこく続いたので、やっぱりメインテーマの1つだったのかなという気がします。後半の合議制と独任制、責任本質説と均衡本質説の違いを考えさせる問題も難しい・・・。他の受験生の出来がどの程度かで決まりそうです。