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【午後の組・1番クジ】

主査

「それじゃ、私の方からは、刑事訴訟法の質問をさせていただきます。」

Otomo

「よろしくお願いします。」

主査

「えー、さっきの(刑法の)事案を前提にして考えてください。警察官Aは、甲を公務執行妨害罪で現行犯逮捕し、甲の上着のポケットから注射器を、またダッシュボードから覚せい剤を発見しました。まず、この甲の捜索の法的根拠は何ですか?」

Otomo

「はい。逮捕に伴う捜索です。」

主査

「うん。条文があるのを知っていますか?」

Otomo

「はい。220条1項2号です。」

主査

「そうですね。さて、1項2号には、逮捕の現場と書かれているのですが、これをあなたはどう解釈しますか?」

Otomo

「はい。被疑者の身体および直接の支配下をいうと考えます。」

主査

「なるほど。では、Aが、その場では交通の妨げになるとして、2、3分離れた警察署に連れて行って捜索しました。これは適法ですか?」

Otomo

「はい。適法です。」

主査

「なぜ?」 

Otomo

「はい。身体という場所に変わりはないですし、交通の妨げになるという必要性もあります。また、2、3分程度であれば、時間的場所的接着性も認められるからです。」

主査

「じゃ、30分かけて警察署に連行した場合は?」

Otomo

「えーと、自動車で30分ということでしょうか?」

主査

「はい。」

Otomo

「その場合は、時間的場所的接着性がないので、捜索は違法と考えます。」

主査

「でも、この場合も、交通の妨げになるからという合理的理由はあるんだよね?」

Otomo

「はい。しかし、そのような必要性と、時間的場所的接着性を総合して判断すべきと考えますので・・・。」

主査

「総合的に考えるんですね。では、その場で、トランクから覚せい剤が発見された場合はどうですか?」

Otomo

「はい。その場合は、捜索は違法と考えます。」

主査

「どうして?」

Otomo

「はい。トランクは車の後部であり、被疑者の身体の直接の支配下とはいえず、逮捕の現場にあたらないからです。」

主査

「なるほど。ところで、あなたは220条1項の捜索押収の根拠をどのように考えますか?」

Otomo

「はい。被逮捕者の抵抗の抑圧、逃走の防止、罪証隠滅の防止という点を根拠と考えます。」

主査

「うん。そのような根拠から、本事案の捜索はどうですか?」

Otomo

「はい。注射針は踏み潰すなどして容易に罪証隠滅が可能ですから、捜索も許されるということになると思います。」

主査

「うーん? でも、現行犯逮捕の被疑事実は何ですか?」

Otomo

「あっ! ・・・公務執行妨害罪です。失礼しました。そうしますと、覚せい剤とは被疑事実が異なりますので、先ほどの発言は撤回します。」

主査

「うん。じゃ、どうなりますか?」

Otomo

「捜索は違法です。」

主査

(両主査、声を出して笑う)「あっはっは。いや、あなた、もう少し落ち着いて考えて。」

Otomo

(がーん!)「・・・・。あっ、そうか。公務執行妨害罪についても、凶器を所持している可能性があるので、被逮捕者の抵抗の抑圧という点から、捜索自体は適法です。そして、その後の注射針の押収が違法となります。失礼しました。」

主査

「うん、そうだよね。それで、今ちょっと言ってくれたけれど、押収の方はどうして違法になるのかな?」

Otomo

「(しまった、先取りしちゃったのか・・・)はい。注射針は、公務執行妨害罪の証拠物とは言えず、被疑事実が異なるからです。」

主査

「じゃ、この注射針と覚せい剤はどうしますか?」

Otomo

「任意提出を求め、領置することになると思います。」

主査

「そうですね。じゃあ、次に、事案を少し変えまして、甲の運転する車の助手席には、B女が乗っていたとします。警察官Aが、このB女の身体を捜索することは適法ですか?」

Otomo

「はい。適法です。」

主査

「どうして?」

Otomo

「はい。現場に居合わせた第三者の身体も捜索することができるという条文が、準用されていたと思います。」

主査

「うん。それ、何条だかわかります?」

Otomo

「えー・・・222条で準用していると思いますが・・・。たしか、100条あたりの・・・。法文を見てもよろしいでしょうか?」

主査

「あ、いや、内容をわかってくれてればいいんですよ。102条なんですけどね。」

Otomo

「はい。そうでした。」

主査

「えーと、それで、102条には、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができるってあるんですけど、本問の捜索は無制限に認められますか?」

Otomo

「いえ。本問でも、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のあることが必要だと思います。」(そのまんまやん)

主査

「あっ、しまった。私が先に答えを言っちゃったね。」(両主査、笑う)

Otomo

「はぁ・・・。」(つられて笑う)

主査

「じゃあ、次に、甲を公務執行妨害罪で逮捕した後、覚醒罪所持罪で勾留することはできますか?」

Otomo

「できないと思います。」

主査

「どうして?」

Otomo

「はい。被疑者を勾留するためには、逮捕が先行することを要しますが、本問では覚せい剤所持罪についての逮捕が存在しないからです。」

主査

「うん。それじゃ、甲を公務執行妨害罪で逮捕・勾留した後、別途、そこから生じた傷害罪で逮捕・勾留することはできますか?」

Otomo

「はい。できます。」

主査

「どうして?」

Otomo

「はい。公務執行妨害罪と傷害罪は被疑事実を異にしますので、再逮捕・再勾留にはあたらないからです。」

主査

「うーん。でも、この場合の傷害は、公務執行妨害罪の暴行から生じたわけでしょう? とすると、公務執行妨害罪の中に既に含まれてるんじゃないですか?」

Otomo

(そうか)「あっ、はい、そうでした。公務執行妨害罪の中に既に傷害も含まれていますので、別途、傷害罪で逮捕・勾留することはできないと思います。」

主査

「うん。それじゃ、公務執行妨害罪での逮捕が違法であった場合、公務執行妨害罪で勾留することはできますか?」

Otomo

「いいえ、できないと思います。」

主査

「どうして?」

Otomo

「はい。逮捕それ自体には不服申立が認められておらず、逮捕段階の違法性は一括して勾留の段階で審査せしめる趣旨と考えられるからです。」

主査

「勾留するためには、適法な逮捕が先行していなければならない、ということを、何といいますか?」

Otomo

「はい。逮捕前置主義です。」

主査

「はい。終わります。お疲れ様でした。」

Otomo

「ありがとうございました。」

 

<感想>

 今回の口述試験で唯一、無難にすませることの出来た科目だったと思います。間違ったことを言っても、主査が優しく誘導してくださり、とんとん拍子で話が進みました。実際のところ、口述試験というのは主査の当たり外れが結果に大きく影響するなぁ、と痛感しました。