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一 令状の要否について
1 本問の捜査は、@甲の腹部のレントゲン撮影、A下剤を用い
て大麻樹脂の塊を体外に排出させ、これを押収するものであ
る。
では、これらの捜査に令状が必要であろうか。
2(1)これらの捜査が強制捜査であれば、強制処分法定主義によ
り令状が必要となる(197条1項但書)。そこで、強制処分の意
義が問題となる。
(2) 思うに、科学技術の発展に伴い、捜査にも科学技術が用い
られるようになってきたことから、捜査する側ではなく、捜
査を受ける側に着目する必要がある。
そこで、強制処分とは、捜査を受ける者の意思に反して権
利・利益を侵害するものをいうと解する。
(3) よって、@、Aの捜査に甲が同意すれば甲の意思に反する
ものではないため、これらの捜査は任意捜査となる。
したがって、かかる場合は令状は不要である。
3 しかし、甲が同意をするとは通常は考えられない。では、甲
に同意がない場合はどうか。
(1) @について
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レントゲン撮影は、甲の意思に反してプライバシーの権利
を侵害するものであるから、強制捜査である。
よって、@の捜査には令状が必要である。
(2) Aについて
下剤を用いて大麻樹脂の塊を体外に排出させこれを押収す
ることは、甲の意思に反して精神的・肉体的利益を侵害するも
のであるから、強制捜査である。
よって、Aの捜査にも令状が必要である。
二 令状の種類について
1 @、Aの捜査が強制捜査にあたる場合、令状が必要となる。
では、どのような種類の令状が必要か、@、A個別的に検討
する。
2 @について
レントゲン撮影は、物の形状・性質を五感の作用を用いて感
知する処分であるから検証にあたる。
よって、検証令状(218条1項)によるべきである。
3 Aについて
思うに、飲み込んだ大麻樹脂の塊は、血液のように人が生存
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していく上で必要不可欠なものではなく、単なる物と同様の性
質を有するにすぎない。
よって、Aの捜査は物の占有を強制的に取得する処分といえ
るため、捜索差押令状(218条1項)によるべきである。
以 上 |