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一 小問1について
1(1)まず、そもそもAの検察官面前調書(以下、検面調書)は
反対尋問を経ない供述証拠すなわち伝聞証拠であり、原則と
して証拠とすることができない(320条1項)。
なぜなら、知覚・記憶・表現・叙述の過程に誤りがないか
反対尋問(憲法37条2項)によりチェックする必要がある
からである。
(2) もっとも、反対尋問に代わる信用性の情況的保障と、証拠
とする合理的必要性があれば、例外的に証拠とすることが認
められる(321条以下)。
2(1)そこで、まず、本問ではAが「覚えていない」旨供述して
いることから、供述不能として321条1項2号前段により
証拠とすることができないか、記憶喪失がここにいう供述不
能に含まれるかが問題となる。
(2) たしかに、同条前段は、証拠とする必要がある場合を例示
したにすぎず、列挙事由以外の場合も供述不能に含まれる。
しかし、記憶喪失にも、病的なものから一時的なものまで
ある。そして、前者は供述不能といってよいが、後者は記憶
喚起のための措置(規則199条の11)などもとりうるの
であり、反対尋問権を重視する見地から、供述不能に含まれ
ないと解すべきである。
(3) 本問についてみるに、Aの「はっきりとは覚えていない」
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との供述からすれば、一時的な記憶喪失と考えられる。
よって、321条1項2号前段の供述不能にはあたらず、
これによって検面調書を証拠とすることはできない。
3(1)次に、本問検面調書では、犯行を目撃した旨の供述があり
公判供述よりも詳しい。そこで、検面調書の方がより詳しい
場合に、321条1項2号後段の「実質的に異なる供述」と
いえるのかが次に問題となる。
(2) 思うに、「実質的に異なる供述」とは、他の証拠とあいま
って異なる認定を導く供述をいう。とすれば、単に検面調書
の方が詳しいというだけでは、「実質的に異なる供述」とは
いえないものと考える。
かように解することが、被告人の反対尋問権保障の見地か
らも妥当である。
(3) よって、本問でも、321条1項2号後段「実質的に異な
る供述」にはあたらず、これによって検面調書を証拠とする
こともできない。
4 以上より、Aの検面調書は、原則どおり証拠とすることがで
きない(320条1項)。
二 小問2について
1 本問でも、Aの検面調書は原則として証拠とすることができ
ず、ただ321条以下の場合には例外的に証拠とすることがで
きる。
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2(1)この点、本問では、Aは外国に行っており1年間は帰国の
見込みがないことから、321条1項2号前段の「国外にい
る」にあたり、Aの検面調書を証拠とすることができるとも
思える。
(2) しかし、被告人の反対尋問権保障の見地からは、検面調書
が証拠請求されるに至った状況を一切考慮することなく形式
的に「国外にいる」にあたるとして証拠とするのは妥当でな
い。
そこで、検察官において、当該証人がいずれ外国に長期滞
在するため公判期日で供述することができなくなるというこ
とを認識しながら、ことさらにこれを利用しようとした場合
など、検面調書を証拠とすることが手続的正義の観点から公
正さを欠くと認められる場合には、これを証拠とすることが
できないものと考える。
(3) 本問でも、検察官において、かかる事情があった場合には
検面調書を証拠とすることができない。
3(1)また、かかる事情がない場合であっても、321条1項2
号前段についても特信状況を要求すべきである。
なぜなら、検察官は一方当事者であり、被告人に有利な供
述まで聞き出すことは必ずしも十分に期待できないからであ
る。
(2) よって、本問でも、Aの検面調書にある供述につき特信状
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況がある場合に限り、これを証拠とすることができる。
以上
※ 小問2がよくわかりませんでした。強制退去じゃないのに、こ
の規範使っていいのかなぁ・・・と思いつつ、他に書くことが思
いつかないので、仕方なく無理矢理流用してしまいました。
※ しまった。同意ある場合とか弾劾証拠としてなら、証拠とする
ことができるのかな。ファイナルでやってしまった過ちをまたや
ってしまった・・・。 |