二重譲渡の理論的説明について、不完全物権変動説は、「登記を具備することで、完全な所有権を取得する」としています。とすれば、背信的悪意者も、登記を具備すれば、完全な所有者となるのではないですか。(p.386) |
うーん、「完全」という言葉が誤解を招いてますね・・・。 「完全な所有権を取得する」というのは、排他性を具備するという意味です。背信的悪意を治癒するわけではありません。 |
土地がAとBに二重譲渡され、Bが背信的悪意者であったとします。Aが登記なしに所有権を主張した場合、Bは登記の欠缺を主張できません。では、Bの側から所有権を主張した場合はどうなるのですか。(p.394) |
この場合も、やはりBを勝たせるわけにはいきませんね。 Bは、信義則上、保護に値しない者ですから、所有権の主張は権利濫用として排斥される、と考えればよいでしょう。 |
「甲が、質権の負担つきの動産を乙に譲渡した」という事例において、乙が質権の存在につき善意無過失であった場合、乙は即時取得によって質権の負担のない所有権を取得する、とされています。でも、甲は「無権利者」ではないのだから、即時取得の要件を充たさないと思うのですが。(p.413) |
たしかに、甲は所有者ですもんね。これ、よく考えてみると、難しい問題かもしれません。 おそらく、「質権の負担つきの所有権」と「完全な所有権」は全く別物と考えるのだと思います。つまり、甲は、「質権の負担つきの所有権」の権利者ですが、「完全な所有権」の無権利者なのです。それゆえ、乙は、後者の「完全な所有権」を即時取得することができると考えられます。 |
上の質問の事例では、即時取得に加えて担保責任(566条)の問題も生じると思うのですが、どちらで処理すればよいのですか。(p.413) |
うーん・・・。両者が競合することはないと思いますよ。 つまり、もし即時取得が成立したとすれば、質権の負担のない所有権を取得するわけですから、「質権ノ目的タル場合」(566条)とは言えませんね。即時取得が否定されてはじめて、担保責任が問題となるわけです。 そして、566条にいう「知ラサリシトキ」は、単なる善意で足りるので、即時取得が否定されても担保責任が肯定されるという事態は十分考えられるのです。 |