「明渡時説を貫くと、敷金との同時履行は認められない」というのは、なぜですか。(p.483-486) |
たしかに判例は、そのような考え方をしていますね。 そもそも同時履行の抗弁が認められるためには、相対立する二つの債権が存在していることが必要です。ところが、明渡時説は、「明渡をして、はじめて、敷金返還請求権が発生する」と考えます。つまり、明渡請求権が消滅すると同時に敷金返還請求権が発生するわけで、両者は併存していないのです。それゆえ、同時履行などということをそもそも観念できないのですね。 ただ、学説は、546条類推による533条の準用によって、同時履行関係を認めています。 |
類推と準用って、どう違うんですか。(p.483-486) |
なるほど。たしかに、どこにも書いてないですね。 両者は、明文の規定の有無により区別します。つまり、別の場面を予定した条文を借りるにあたって、その旨の明文の規定がない場合が「類推」です。これに対して、明文の規定がある場合が「準用」なんですね。 ただ、実際には、結構ごちゃごちゃに使われていたりしますので、あまり神経質になることはないでしょう。 |
賃貸借契約における債務不履行解除について、判例・通説は541条の適用を肯定しつつ、修正をしますよね。つまり、@信頼関係の破壊と認めるに足らない特段の事情があれば、解除権は発生しないとし、また、A著しい信頼関係の破壊があれば、無催告解除できる、としています。ということは、結局、541条の通常の方法は全く使わないということですか。(p.508-509) |
これもまた、面白い質問ですね。 541条の通常の方法は、@A以外の場合に使われると思います。つまり、「信頼関係がまぁまぁ破壊されている場合」には、催告をして解除することになるのでしょう。 もっとも、破壊が「まぁまぁ」か「著しい」かの区別は、かなり曖昧な気がしますけどね。 |