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 「レーモンテスト」 と 「目的効果基準」は同じものですか。(p.131)

 うーん、少し概念が錯綜してるかな。

 「レーモンテスト」は、アメリカ憲法判例で打ち出されたものです。@行為の目的が世俗的で、かつ、A行為の効果が世俗的で、かつ、B行為と宗教の間に過度の関わりがない場合に限り、合憲であるとします。

 これが日本に輸入されて、「目的効果基準」ができあがりました。ただ、この輸入の仕方が、判例と学説で大きく異なるのです。

 学説は、「レーモンテスト」をそのまま輸入し、前述の@ABを要件とする「目的効果基準」を作り上げました。判例は、「レーモンテスト」を少し緩やかにし、前述の@orAのみで足りるとする「目的効果基準」を作り上げたのです。

 

 二重の基準のところで出てくる「合憲性の推定」「違憲性の推定」とは、具体的にはどういう意味ですか。(p.139-140)

 合憲性の推定というのは「裁判所が、その法律を、原則として合憲なものとして取り扱う」という意味です。つまり、裁判になったときに、国民の側から「この法律は違憲だ」と言えるだけの証拠を提出しないといけません。

 違憲性の推定というのは「裁判所が、その法律を、原則として違憲なものとして取り扱う」という意味です。つまり、裁判になったときに、政府の側から「この法律は合憲だ」と言えるだけの証拠を提出しないといけません。

 少し高度な言葉ですが、「立法事実の存在が推定されるか否か」の問題とも言えるでしょう。(p.427-429)

 

 知る権利の請求権的側面は「情報公開請求権」であると書いてありますが、これ、プライバシー権の請求権的側面としても習ったように思うのですが。(p.144、100-102)

 一応、両者は別物として区別できると思います。

 つまり、プライバシー権としての「情報公開請求権」は、権利の性質上、個人的情報に限られます。それゆえ、限定的ではありますが、肯定説に立ちますよね。

 これに対し、知る権利としての「情報公開請求権」は、より広くて、個人的情報に限りません。その点で、あまりにも広範に過ぎるため、否定説が一般的なんです。

 

 選挙運動の自由が「選挙の公正」により制限されるということの意味がわかりません。(p.150)

 「選挙の公正」は、一種の人権制約原理だと考えて下さい。

 つまり、人権というのは無制限じゃないですね。「公共の福祉」や「パターナリスティックな制約」などの制約原理によって、内在的に限界づけられているわけです。これらと同様に、選挙運動の自由は、「選挙の公正」という制約原理によって、内在的に限界づけられていると。そういう意味です。

 

 選挙運動の自由を保障する趣旨は、自己統治の価値ですよね。他方、 これを制約する「選挙の公正」も、要は民意を忠実に議会に反映させ民主主義を守ることであって、結局、保障の趣旨と同質のような感じがするのですが(p.150)

 たしかに、この場合は、自由を保障する趣旨と制約根拠が同質的な気がしま す。でも、さほどおかしなことではないと思いますよ。

 選挙運動の自由を保障する趣旨は自己統治にあるとしても、それを無制限に 認めると、かえってその趣旨に反する結果が生じかねない。そこで、その趣 旨を十全に果たさせるべく、「選挙の公正」による制約が働く。・・・と考えることも可能でしょう。

 

 事前抑制禁止の原則は、なぜ「文面審査」なのですか? 例えば、名誉権侵害に対して、裁判所が事前差止をする場合、具体的な社会的事情を考慮していると思うのですが。(p.164-165)

 えーと・・・。あまり自信がないのですが、一応お答えします。

 自分は、事前抑制は文面審査となることもあれば、目的手段審査となることもあるのではないかと思います。具体的には、対行政権の場合は文面審査(=検閲)、対立法権・対司法権の場合は目的手段審査となるのではないか、と思いますね。

 

 政治活動の自由が自己実現・自己統治に不可欠であるということはわかるのですが、そこから直ちに21条で保障されるとするのは、どうも納得がいきません。(p.65)

 たしかに、少し唐突な感じもしますね。

 でもね、具体例を考えてみて下さい。たとえば、市民団体が街頭でメガホン持って「消費税反対!」とか叫ぶのは、政治活動ですよね。あるいは、政党が新聞に意見広告を載せるのも、政治活動です。つまり、よく考えてみれば、政治活動っていうのは「表現」の一種なんです。だから、もともと21条の範疇にあるんですね。

 政治活動の自由を丁寧に論証するならば、「そもそも政治活動も、表現の一種である。しかも、自己実現・自己統治に不可欠である。よって、政治活動の自由も21条で保障されると考えられる」という感じになります。これなら、納得いくでしょう?