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 「経験的アプローチという司法判断」のくだりの意味がよくわかりません。(p.398-399)

 ああ、これ、たまに耳にしますね。

 司法権というのは、法の客観的意味を探求することをその任務のひとつとしています。かかる任務を達成するためには、実は、紛争当事者同士に主張を戦わせるのが一番なんです。裁判官なんて、しょせん他人ですからね。当事者の方が、必死になっていろいろな可能性を模索できます。そこで、司法権の行使には事件性が必要とされていますね。

 以上のような、当事者同士が主張を戦わせることの積み重ねによって真理を探求していく、といった手法のことを、経験的アプローチと呼んでいるのだと思います。

 

 恵庭事件判決は、通信線切断行為の構成要件該当性を否定して被告人を無罪にしています。これは一般に憲法判断回避の例として紹介されますが、見方を変えれば、「防衛の用に供するもの」を制限的に解しているのだから、合憲限定解釈の例とも考えられませんか。(p.421)

 ほう、言われてみれば・・・。ん? 待てよ。いやいや、やっぱりそんなことはありません。

 合憲限定解釈というのは、憲法判断に入っていることが前提です。これに対して、恵庭事件判決は、そもそも憲法判断に入っていませんね。この点において、両者は区別されます。