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Otomo

「じゃ、次、択一ですね。」

筈井さん

「まぁ、これまでに話したこととダブる所もありますけどね。」

Otomo

「うん。まず、択一対策はいつごろからやるのがいいですかね?」

筈井さん

「まだ択一に合格されてない方は、遅くとも1月から始めるべきでしょう。できるなら、12月からが望ましいですが。」

Otomo

「答練とかとの兼ね合いもあるしね。」

筈井さん

「やっぱり、新規参入組は1000人しか受からないわけでしょう。残り4000人は、去年の論文不合格組が帰ってくるわけで。きついっすよ。鬼のように厳しい。そういう意識を持たないと。」

Otomo

「そういう見方をすると、確かに熾烈だよねぇ。で、何を使ってどう勉強するか、という話に入るわけですが。」

筈井さん

「まず当然、過去問でしょうね。・・・で、まぁ、みんな過去問解いてるわけでしょ。それにもかかわらず、現実には点数の差がついてるのはなんでやと思います?」

Otomo

「お、逆に質問してきたね(笑)。うーん。やっぱり、過去問解いても、身についてないんじゃないかなぁ。解き方にもメリハリが必要だと思うんですよ。」

筈井さん

「と、いいますと?」

Otomo

「過去問3周とかよく言うけど、以前に正解した問題と間違えた問題を同等に扱ってベッタリと解いたら、時間をロスっちゃうだけでしょう。間違えた問題、さらにはその中の間違えた肢はどれかいうふうに、自分がやり直すべき部分を絞り込めるだけ絞りきった上で、そこを繰り返すようにしないと。なかなか使える知識として定着しないと思います。」

筈井さん

「過去問を解く目的は何だと思います?」

Otomo

「自分は、インプットだと思います。」

筈井さん

「僕も同意ですね。それだからこそ、全てをベッタリとやることは、まさに無意味であると言えますね。」

Otomo

「うん。自分の中では、テキストを過去問で補完する、みたいなイメージで使ってましたね。」

筈井さん

「ただ、まだ合格したことない人を念頭に置いた場合、一度正解した問題を二度とやらないっていうのはちょっと怖いですね。もうええやろと思ってから、さらにあと1回くらい解いて完成するという感じがします。」

Otomo

「なるほど。確かに、新しい知識をどんどん入れていくと、それによって既存の知識が邪魔されてしまうことってあるよね。昔できたはずの問題なのに、次解いたら間違えてしまうという(苦笑)。」

筈井さん

「で、それは結局、射程範囲をわかってないってことなんですよね。新しい知識の射程範囲が理解できてないから、既存の知識と混乱してしまうと。」

Otomo

「うんうん。」

筈井さん

「あと、過去問の解き方ですけどね。一日に1科目を解くのか、複数科目を解くのかっていう。」

Otomo

「ほー。自分は一日1科目でしたけど。」

筈井さん

「僕もです。特にこれといった理由はないんですけど。過去問本をたくさん持っていくのが面倒くさいから(笑)。」

Otomo

「ただ、択一模試は毎回3科目なわけで。そうすると、論文答練との兼ね合いも含めて、どういう科目の割り振り方で勉強すべきかが難しくなってくるんですよねー。」

筈井さん

「そこ問題ですよね。」

Otomo

「自分は、論文答練にあわせて、1月は憲法ばっかり、2月は民法ばっかり、3月は刑法ばっかりというふうにしてました。答練の範囲とそろえて勉強した方が合理的だと思うんですよね。」

筈井さん

「えーっ。それはだめでしょ。ここ、議論しましょか?(笑)」

Otomo

「当時は、A型答練と範囲が対応した『A型択一』っていう20問模試があったんですよ。だから、それを受けてた。その科目しか勉強してないわけだから、3科目60問の模試は4月まで受けなかったですね。」

筈井さん

「うーん。でも、それだと体系的理解とか、大丈夫ですか?」

Otomo

「科目横断的な体系的理解はいらないわけだし・・・。1つの科目をはじめから終わりまで集中的にやった方が、その科目としては体系的に身につくと思うんだけど、自分は。」

筈井さん

「僕はそういうやり方はしてませんでしたね。」

Otomo

「なんかね、1月に答練で憲法の勉強をしてるのに、択一模試で民法とか刑法を解くのはすごく無駄というかロスのような気がするんですよ。・・・あ、でも、これは自分が予習型だからでしょうね。予習型か復習型かによって、ここの考え方は分かれるんじゃないかな。」

筈井さん

「あぁ、そうですね。それはあるでしょうね。」

Otomo

「筈井さんは、どうやったらいいと思います?」

筈井さん

「論文をある程度捨てざるを得ないと思います。」

Otomo

「捨てる!?」

筈井さん

「少なくとも、初受験の人を前提にするならば、ですが・・・。この時期に、論文と択一を両立するのは不可能じゃないですかねー。僕が初受験のとき、アドバイザーの方にも、『そうしないと、どっちつかずになるよ』って言われてたんですよ」

Otomo

「まぁ、択一に受からなきゃ始まらないものねぇ。」

筈井さん

「模試の点数との兼ね合いにはなるでしょうけどね。点数が良ければ、その分、論文にシフトできますし。」

Otomo

「そのへんは人によって違うし、一概には言えないですよね。」

筈井さん

「ただ、それでも、一度も受かっていないということを考えると、やはり圧倒的に択一の方に重点を置くべきだと思います。」

Otomo

「そうすると、例えば、午前中だけ論文の勉強をやって、午後からはずっと択一対策、みたいな比率とか?」

筈井さん

「それ、いいんじゃないですか。もっと択一に割いてもいいぐらいかと思いますが。それこそ9対1とか、10対0とか。」

Otomo

「論文のほうが心配になったりしない?」

筈井さん

「実際、択一の勉強をやってると、論文のほうも上がるんですよ。知識が正確になって。特に民法とか。」

Otomo

「なるほど。」

筈井さん

「択一に受かると、モチベーションも上がりますしね。」

Otomo

「確かに、5・6月を死に物狂いで過ごすのと、まったり過ごすのとでは、ものすごい差がつくでしょうね。」

筈井さん

「僕、択一の合格が一番嬉しかったんですよ。自分の力が通用するっていうのがわかったから。そういう意味で、択一合格というのは大きなポイントになると思いますね。」

Otomo

「うん、うん。えー、あと、択一は知識だ、とかも言われるわけですけどね・・・。」

筈井さん

「知識でしょ(笑)。テクニック無くても合格はできると思います。」

Otomo

「でもさ、要件・効果をソラで言えたりしました? 例えば、取得時効の要件は@、A、B・・・みたいな感じで。」

筈井さん

「あー、そういうの、ソラでは言えなかったですね。」

Otomo

「自分も言えなかった(笑)。にもかかわらず、自分や筈井くんは、割と択一解くの速いほうでしょ。なぜ速く解けるのか、っていうことですよ。」

筈井さん

「それは、言うたら『逆ルート』ですね。」

Otomo

「出た、筈井名言集(笑)。何ですか、それ?」

筈井さん

「一般的には、知識があって問題が解ける、っていう発想でしょう。でも、そうじゃない。むしろ、問題を見ることによって知識が出てくると、そういう感じなんですよね。思考過程が逆なんです。」

Otomo

「なるほどねー。そうかもしれない。問題を見たら思い出せるというレヴェルで頭に入れてるんですよね。」

筈井さん

「ソラで覚えたって、解けないですよ。僕の勉強は、ほとんど逆ルートですね。もちろん順ルートもあることはありますけど、どちらを重視してたかと言われたら逆ルートです。」

Otomo

「なるほど。あと、模試でどの程度点数をとれればいいのか、っていうのもしばしば話題に上ったりしますけど。」

筈井さん

「やっぱり推定プラス5点でしょうね。」

Otomo

「プラス5ですか。」

筈井さん

「っていうかね、取るべきは何点かと言われたら、そんなん満点に決まってるんですよ。高ければ高いほどいいに決まってるし、そこを目指さなきゃいけない。だから、『何点取れればいいですか』っていうことを尋ねる時点で、既に自分の中で言い訳を作ってしまっているという、そんな気がしますね。その意味で、『何点とれればいいですか』っていう質問はすごくナンセンスだと思います。」

Otomo

「まぁ、一応安心できる点数は、っていうことなんだろうけどね。」

筈井さん

「あと、よく『合格推定点はいつ頃に取れればいいんですか』って尋ねられるんですけど、これも、そんなの初めから取れたほうがいいに決まってるんです。『いつ』っていう時期を設けようとしているのは、単なる自分への言い訳作りにすぎないんですよね。」

Otomo

「きびしー。けど、その通りですよね。問題を解くにあたってのコツとか持ってました?」

筈井さん

「んー、特に無いですねー。」

Otomo

「今年の択一本試験の問題用紙をここに持ってきてるんやけどね。」

筈井さん

「書き込みびっしりですね。僕のはもっと白いです。相変わらず(苦笑)。」

Otomo

「肢切りの時に着目すべき点にアンダーラインを引いたり、問題文のテーマを四角で囲んだり、文末の『正しいもの(誤ったもの)を選べ』という問いかけ部分に波線を引いたり・・・。あと、問題を解き始めた時間も書き込んでます。1問にあんまり時間をかけすぎないように。そうすると、このように真っ黒な問題用紙になると(笑)。」

筈井さん

「正しいもの、誤ってるものは、線を引いて確認した方がいいでしょうね。確かに。」

Otomo

「あとは、選択肢を絞るときにですね、○か×かっていう2つで考えずに、◎・○・×・××っていう4段階で印をつけてました。◎は100%の自信があってマルという場合、××は100%の自信でバツという場合です。」

筈井さん

「僕は△を使ってました。記号は違いますけど、肢を絞る際に濃度をつけるっていう発想は同じですね。で、確実にわかるところから手をつけるっていうのが、コツと言えばコツですね。」

Otomo

「それに、濃度をつけておけば、組み合わせ問題などで迷ったときに、迷うべき選択肢が絞れますしね。絶対自信があるといったん判断したものは、再度見返す必要がないですから。」

筈井さん

「そうですね。わからない肢の判断だけをいったん保留する。択一を解く上で、『保留』っていう発想は大事ですよね。1問に10分もかけちゃったりする人は、その発想自体を変えたほうがいいですよ。もう次に行けばいいやんと。」

Otomo

「そう、そう。自分も、じゃんじゃん飛ばしてたもの。」

筈井さん

「コツを身に付けるためには『問題をたくさん解け』ってよく言いますけど、もし問題をたくさん解いても成績が伸びなかったら、どうしたらいいと思います?」

Otomo

「うーん。ついそういうアドヴァイスをしがちだよねぇ・・・。」

筈井さん

「僕が思うには、たとえば問題を60問解いたとしても、60個の知識がバラバラに入るだけじゃないですか。そこで、択一六法を見るというのが非常に有意義だと思うんです。整理といいますか。」

Otomo

「あ、それ大事ですね。例えば新しい知識を入れるときに、『これは一体、自分の既存の体系のどの部分に入るものなのか』っていうのを意識しなきゃだめですよね。」

筈井さん

「そうそう。それ本質突いてますね。逆に言うと、成績が伸びないっていう人はそれができてないことが多いと思います。結局は体系的な理解であって、それをおざなりにして数だけこなしても意味がないんですよね。」

Otomo

「全くその通りですね。」

筈井さん

「で、この体系的理解というのは、別に基本書を読んだから身につくというものではないと。」

Otomo

「むしろ、普段自分が使用している本ですよね。」

筈井さん

「そういうことですね。自分の中で、その本の目次立てが出来ているか、です。だから、テキストをあんまり読まずに問題を解きまくるっていう方法論は、僕はちょっとどうかと思いますね。」

Otomo

「両方それぞれに意味があると。」

筈井さん

「普段からメインにしてる本が基本書であれば、それはそれで構わないわけです。要は基本書の使い方ですよ。問題を解いたあとに戻るテキストが基本書であれば、それはいいんです。ただ、基本書を読んだから問題が解けるようになるというような考え方だけはやめた方がいいです。」

Otomo

「筈井さんは択一六法を使ってたんですか。」

筈井さん

「はい。僕は択一基礎完を受けてないですから、択プロヴィを持ってないんですよ。だから市販の択一六法を使うしかなかったんです。」

Otomo

「なるほど。ただ、普通に基幹講座を受けてきた人が択一六法を使うとなると、メインテキスト(プロヴィとか)と択一六法の2本立てになっちゃうでしょう。それ、意味あるのかなぁと。」

筈井さん

「それは1本立てにすべきでしょうね。だから、たとえば伊藤真に行ってて択一六法を使うのも、不思議なんですよ。情報シートがあるやんって。」

Otomo

「自分も、複数あると、かえってややこしいと思うんですけどねー。」

筈井さん

「調べる素材としては、いくつか持ってていいと思いますけどね。わからないところを基本書で調べたり。ただ、ベースを1つに決めておかないとだめでしょう。」

Otomo

「なるほどね。」

筈井さん

「知識量がハンパじゃないですからね。2つの本をベースにしたら、2つの本の目次を頭に入れるのが大変だと思います。択一六法とかを使う目的は、自分の頭の中で目次立てをするということにある以上、それは一本に絞るべきだと言えます。そういう意味では、プロヴィはちょっと量が多すぎる気がしますね。」

Otomo

「あー。普段からプロヴィ使ってると、それほど気にならなかったんだけどね。」

筈井さん

「あと、特に民法、LECのは順番が変ですからねー(苦笑)。」

Otomo

「LEC体系、ですか? あれ、後々の答練とかで範囲がうまくかみあわなくて、苦労するんですよねー。自分は、総則・物権・債権総論・債権各論っていう風に並べ替えて使ってました。」

筈井さん

「それやると、何ページ参照とか書けなくなっちゃうじゃないですか。」

Otomo

「うーん。けど、自分で並べ替えたわけだから、ある場所は覚えてますしねぇ。」

筈井さん

「なるほど。それが出来ればいいんですけど。僕は択一六法をお勧めしますね。」

Otomo

「逐条式になってるのは確かにいいですよね。条文を強く意識できますし。条文の素読とかしました?」

筈井さん

「しましたよ。」

Otomo

「自分は、口述前にしかやらなかったですね・・・。択一の時もやりましたか?」

筈井さん

「やりました。」

Otomo

「それはどうして?」

筈井さん

「なんとなくです。やれと言われたので(苦笑)。あと、憲法は、意外と条文を知ってないとキツイですね。民法に匹敵するぐらい。」

Otomo

「そうですよね。特に憲法の統治に、細かい条文ありますもんね。」

筈井さん

「それから、刑法も案外条文が必要ですよ。各論とか。条文を離れると、論点の意味がわからないと思います。」

Otomo

「確かにね。ある論点が、条文のどの文言の問題なのかっていうのは大事ですよね。『窃取』なのか『財物』なのかとか。」

筈井さん

「そうですそうです。そういう意味で、条文読みは必要ですね。」

Otomo

「自分も、条文素読こそやってませんでしたが、そういう風に条文を意識するようには心がけてましたね。」

筈井さん

「実際には、どの教材が具体的にどのように役に立ったか、っていうのはなかなか説明しにくいところがありますけどね。かといって役に立たなかったとも言いがたい、みたいな。」

Otomo

「うん、うん。」

筈井さん

「さっきの(論文編の)ベターの話にも関連するんですけど、ある教材が印象に残ってないから切り捨てるというのは、ちょっと違うような気がしますね。だから、こういう合格者の意見も、話半分で聞いておいたほうがいいと思います。」

Otomo

「なるほどと思ったとこだけを参考にしつつ、自分に合った勉強法を模索して下さればいいわけですからね。うん。・・・では、最後になりましたけれども、司法試験に合格するために最も必要なものは、一体何だと思われますか?」

筈井さん

「なんでしょうねー。自己分析力ですかね、やっぱり。たとえば、論文過去問を解けるようにするっていう目標を立てたとして、その目標から自分の距離を逆算して、足りないものを見極める力、みたいな。・・・力っていうと、なんか説明になってないですね。何なんでしょうね。」

Otomo

「いや、そこは結局は意識の問題でしょう。そういうことを意識して勉強してるかどうかっていう。能力の有無とはまた違うと思いますし。それでいいと思いますよ(笑)。今日はどうもありがとうございました。」

筈井さん

「いえいえ、こちらこそ。」