日本映画  さ〜た (映画は五十音順になっております)

 

 

細雪
1983年   東宝   140分     監督 市川崑  音楽  大川新之助他
                        出演 佐久間良子/吉永小百合/古手川祐子/岸恵子他
 
吉永小百合が一番美しく撮れている映画である。また石坂浩二の好色さが極めて正確に出ている
映画でもある。(あんな奴が水戸黄門をやってはいけないのである)
市川監督はストーリーよりも、いかに女優陣を美しく見せるかに力を注いだに違いない。見ている私も
最後の方にはストーリーなどどうでもよくなってしまった。
吉永小百合と義理の兄との精神的なつながりをいくつかの場面で市川監督は表現していた。
とにかく女優を見る為の映画。関西弁もうまく使われたいました。

 


 

秋刀魚の味
1962年   松竹    133分      監督 小津安二郎      音楽 斎藤高順
                          出演 笠智衆/岩下志麻/佐田啓二/岡田マリ子
 
小津監督作品の笠智衆さんはどうしてこんなにいいのだろう。全く演技に力がはいってないように見える
のだが、笠さんは一生懸命だったそうである。そこが凄い。
この映画では婚礼期に入った娘とふたり暮らしの父親である笠さんが、婚期を逃しはしまいかとやきもき
する様をじっくりと捉えている。娘役の岩下志麻さんのお美しいこと。極道の妻シリーズで関西弁のつもりで
宇宙語でタンカを切る滑稽な主役を演じている方と一緒の人とはとても思えない。
縁談がまとまったらまとまったらで寂しいという複雑な父親の心境を笠さんは淡々と演ずる。その淡々の
凄さといったら、見る度に笠さんが大きく見えていく位なのである。これはイコール小津の凄さである。

 


 

静かなる決闘                     NEW!
1949年  大映  95分           監督 黒澤 明      音楽 伊福部 昭
                           出演 三船敏郎/志村喬/三條美紀/千石規子
 
この題名だけでは内容が判らないのではないか。それにしても黒澤監督の初期の傑作なのに全く評価されて
いないのがかえって嬉しい。私の映画という気持ちになれるから。戦争末期、軍医の藤崎は手術の途中のミス
でその患者の持っていた性病を移されてしまう。日本には婚約者がいるものの、それを打ち明けることなく話
は一方的に破談とする。この医者の苦悩のシーンが素晴らしい、デビューしてから3年というのにこの三船の
演技にはうならされてしまいます。それと看護婦役千石規子さんが、また素晴らしい演技!彼女の成長がスト
−リーの中で同時進行します。この作品の持つ一貫したヒューマニズムの美しさはもっと評価されるべきです。

 


 

七人の侍                        
1954年  東宝  208分          監督 黒澤 明      音楽 早坂文雄
                           出演 三船敏郎/志村喬/津島恵子/加東大介/宮口精二
 
日本映画が世界の映画のレベルを飛び越えた傑作である。映画ファンなら必ず見たことのある作品であろう。
戦国時代に、野盗集団の度重なる略奪、暴行に困っていたある村の農民達は、村の長老の助言で侍を雇い
入れることにした。が、農民のお返しできることといえば腹一杯飯を食わせることぐらい。あることから志村喬
演ずる侍を口説き落として、全部で七人の侍を雇い入れる事に成功。村に戻ると戦いを知らない農民達にも
一から教え、野盗がやってくるための防衛体制を整えていく。そして、戦い。七人の其々の侍の性格描写の見
事さで、抜群の面白さに仕上っている。中にいろいろなエピソードが完璧な形で挿入されている。この映画を
見てつまらないと言う人間がいたら一度会ってみたい。特に志村喬のリーダー役が最高です。

 


 

忍ぶ川         
1972年  東宝    120分     監督 熊井啓     音楽 松村貞三
                        出演 栗原小巻/加藤剛
 
モノクロで静かで動きの少ないまるで絵を鑑賞しているような気持ちになる。しかしストーリーは激しくて深い。
「忍ぶ川」という料亭の娘と学生が惹かれあい、学生の郷里へ向うというのが大筋ではある。
栗原小巻のこの映画での美しさは素晴らしいの一語につきる。最初はこの映画は吉永小百合が演じるはず
ではあったが、映画のなかでヌードシーンがあるために踏み切れなかったといういわくつきの作品である。
今のこの薄汚れた世の中でこうした純粋な愛を求めるのは難しく、絵空事に若い人には感じられるかもしれ
ない。それでも若い女性に見て欲しい作品である。熊井監督のベストの作品でもある。

 


 

ジャズ大名                    
1986年  大映  85分    監督 岡本 喜八  音楽 山下 洋輔他 
                    出演 古谷一行/財津一郎/神崎 愛/殿山泰司
 
私はこの映画が異常に好きである。見る度に踊ってしまう。
はっきり言ってメジャーとは程遠い映画ではあるが、岡本監督のよさが全面にわたって出でいる。
また金をかけて作ってないのがまる判りなのがまたいい。
ストーリー的にはアフリカに帰ろうとした黒人がひょんなことから幕末の小藩に流れ着く。彼らはジャズ
を演奏するのだが、それを知った音楽好きなのんきな殿様との絡みがあり、最後の大セッションまで
スピーディ溢れる物語がある。そこに幕末のごたごたを徹底的に風刺していて観ていて本当に小気味
がよい。
何よりも音楽がいい。最後のセッションに江戸時代の人間が何を楽器として使っているのかを見て
楽しむのもいいですよ。音楽と映像を見事に融合させた点では日本映画の中でもっと評価されるべき
作品である。見て楽しんで、踊ってもらいたい。

 


 

十三人の刺客                    
1963年  東映  125分     監督 工藤栄一   音楽 伊福部 昭
                      出演 片岡千恵蔵/嵐寛寿郎/西村晃/内田良平
 
ラストの面白さは出色の出来です。将軍の弟で明石藩主である暴君がやりたい放題の悪行を重ねる。
これに困った千恵蔵率いる旗本以下十三人が集り、ある宿場を通ることを踏まえて罠を作って待ち伏せ
る。その前に尾張藩を通過させずの戦略をとり、彼らを追い込んでいく。最終的には殿側回り役や家老
総勢53人対13人の戦いとなる。七人の侍に匹敵するほど素晴らしい作品である。特にラストの立ち回り
はダイナミックかつ迫力のある場面である。暴君に仕えざるをえない家老の半兵衛扮する内田良平と
十三人のうちの西村晃さんの演技は出色の出来である。一気に見せられる素晴らしい作品です。

 


 

新幹線大爆破
1975年  東宝  153分      監督  佐藤純彌     音楽 青山八郎
                       出演  高倉健/山本圭/宇津井健/千葉真一/織田あきら
 
日本映画がこんなに面白くて、わくわくさせるサスペンス映画を作ったとは本当に驚きである。そして
ハリウッド映画に負けないほど素晴らしい作品である。この映画はもっと評価されるべきである。
国鉄を相手に新幹線への爆弾設置による脅迫を行う犯人と警察の戦いと、一方で速度を落とせない
新幹線内でのパニックを並行して見せるのだが、とにかく脚本が絶品である。
高倉健が犯人なのにこんなにかっこ良くていいのかと思うほどの演技をみせる。私はこの路線で高倉健
は世界に挑戦するアクション・スターになってほしかった。(この映画はフランスで大ヒットしたそうである。)

 


 

仁義なき戦い
1973年   東映   99分     監督 深作 欣二     音楽  津島 利章
                       出演 菅原 文太/松方弘樹/金子信雄/梅宮辰夫
 
私は暴力的な映画と、現代のやくざ映画は大嫌いである。だからビートたけしの作品は全て嫌いである。
だがこの深作監督のシリーズだけは例外である。全5作、全てが大好きである。
それは時代的な暴力団の発生の流れをこれほど的確に見せる映画は他にはないことである。そして首尾
一貫した映画の柱に、はかなく抗争の前線に立たされ虫の如く死んでいった若者達への想いが感じられる
からである。そしてこの映画は音楽が素晴らしい。(誰も評価しないのはおかしいと思う)
俳優ではやはり金子信雄さんの演技が最高である。それと眉毛のない梅宮辰夫さんの怖いこと。

 


 

砂の女
1964年  勅使河原プロ   147分     監督 勅使河原 宏      音楽  武満  徹
                             出演 岡田英次/岸田今日子/三井弘次
 
有名な安部公房の小説を映画化したものである。私は小説を先に読んで、たまたま後で映画を見たのだ
が小説に負けないくらいの素晴らしい出来である。
映画を見ているだけで体にまるで砂が付着しているような幻想を感じてしまう程、不思議な感覚を見る人
に思わせる。特にこの映画では岸田今日子さんの演技が凄い。強烈に女のホルモンを発散させ、こんな
にこの人は美しかったのかと感動してしまう程である。
現実から逃避したい方が見たら、絶対にはまる映画かもしれない。

 


 

青春デンデケデケデケ
1992年   ギャラックプレミアム  136分  監督 大林 宣彦   音楽 久石 譲
                             出演 林泰文/大森嘉之/浅野忠信
 
大林監督の作品では一番のお気に入りである。
タイトルのデンデケデケデケはこの映画の時代設定当時に人気のあったベンチャーズのエレキギター
の音を表している。
仲のいい高校生たちがロック・バンドを組んで・・・・・・・といういわゆる青春ものであるが、大林監督なら
ではのしみじみとした気持ちにさせてくれる映画である。
特に寺の息子で、バンドにも参加する大森嘉之が傑出した演技を見せる。

 


 

セロ弾きのゴーシュ        
1982年               63分   監督 高畑 勲       音楽 間宮芳生
                           (アニメーション)
ご存知の宮沢賢治の作品をアニメにしたものであるが、映画の完成度は極めて高い。実は私はこの映画
を50回以上繰返して見ている。私自身が宮沢賢治の大ファンであることもあり、この題材が好きなことも
あるのだが、音楽的に行き詰まっているゴーシュを救うのが動物や鳥たちであり、そのふれあいの仕方が
違和感なくアニメで再現されているので、まるで宮沢賢治の作品を読まされているような錯覚に陥ってしま
う。
何よりもこの映画の良さは音楽と映像が見事なハーモニーを奏でて、見るものを癒してくれることである。
子供さんにもいいが、大人でも十分鑑賞に堪えうる傑作であると断言する。是非、見てもらいたい。

 


 

太平洋ひとりぼっち    
1963年  石原プロ=日活   97分   監督 市川崑   
                           出演 石原裕次郎/森雅之/田中絹代
 
市川監督の奥さんである和田夏十さんの完璧な脚本とそれに見事に答えほとんど一人芝居で主役を
演じた石原裕次郎のベスト作品である。これには裕次郎のファンの方には異論があるかもしれないが
私はベストだと思っている。この映画は22歳で単独でヨットに乗り、太平洋横断を行った堀江謙一さん
の手記を原作にしたもので、映画の大部分がヨットの中のシーンとなっており、俳優に魅力と実力が
ないとこれだけの作品にはならなかったであろう。最後にアメリカに着いたことがわかった瞬間の若者
の喜びを見事に裕次郎さんは見せてくれる。いい映画である。

 


 

太陽を盗んだ男       
1979年 東宝=キティ・フィルム  147分  監督 長谷川和彦  音楽 井上氏
                            出演 沢田研二/菅原文太/池上希美子
 
この映画は75点の作品評価ではあるが、どうしても紹介したい作品であった。特に前半一時間の面白さ
は日本映画でも傑出している。ある中学校のいつもはぼんやりとした中学校の理科の教師が、計画して
東海原発よりプルトニウムを盗むことからこの映画が始まる。(一人で盗み出す場面にはとても無理が
ありすぎるが。)そしてこともあろうにマンションの一室でプルトニウムを使って原爆を製造する。そこまで
の行程がとても面白い。一緒に悪の道に手を染めていく感じすら印象を与える。中盤から終盤にかけては
話に辻褄あわせが多いし、車のアクションシーンも余計。ラストに原爆を持って歩くアップでの場面は秀逸
ではあった。沢田研二の演技が素晴らしい。一度騙されたと思って前半60分楽しんでほしい映画である。

 


 

タンポポ
1985年  伊丹プロ  114分    監督 伊丹十三   音楽 
                        出演 山崎努/宮本信子/役所広司/桜金造他
 
伊丹十三は私の大好きな日本映画の宝であった。映画は見る人を楽しませることという基本を見事に
具現化されたのである。馬鹿なマスコミによって殺されたのが残念でならない。
この映画のベースは「シェ−ン」にあると思う。だから西部劇的楽しさがてんこ盛りでとても楽しい。
トラック・ドライバーがふらりと女性がやっている閑古鳥の鳴くラーメン屋にやって来て、いろいろな手を
つくして大人気店に作り変えてふらりと去っていくというのが大筋のストーリーである。
山崎努さんが何ともカッコいい。この映画はアメリカやヨーロッパでもヒットしたとのこと。この映画は日本
映画らしくない楽しさがいっぱい詰まっていることが理解されたのであろう。
伊丹監督の作品の中で一番お気に入りの作品である。

 


 

天国と地獄      
1963年  東宝   143分     監督 黒澤明    
                       出演 三船敏郎/香川京子/仲代達也/山崎努/三橋達也
 
この映画は見事なプロットを見せ付けたご馳走である。とにかく映画から目を離すことのできない見事な
展開。そして犯人のキャラクターの素晴らしい設定。地道な警察の捜査状況を詳細にかつ人間らしさを
見せつつも積み上げていく展開力。日本のサスペンス映画としてはベスト3に入る作品であろう。
黒澤監督の他の作品とは毛色が弱冠違うが、これも完成されたベストの一つである。
高台に住む会社社長の運転手の息子が、社長の息子と間違えられて誘拐される。犯人はそれでも社長
に身代金を要求する。犯人は金を手にするのか。警察は賢い犯人を捕まえることができるのか。

 


 

どついたるねん     
1989年   荒戸源次郎事務所  110分    監督 阪本順治   音楽 原一博
                               出演 赤井英和/相楽晴子/原田芳雄
 
この映画を初めて見た時、主役の赤井英和の圧倒的な存在感にノックダウンされてしまった。
作品のストーリーが赤井がプロボクサーとして経験したことを焼き直しているところもあるので、演じ
やすかったこともある。だが、それにしてももの凄いの一言につきる。
ドラマはボクシングによって再起不能の傷を負ったボクサーが不屈の闘志と情熱をもって復帰を目指す
というのが大筋であるが、とにかくこの映画は赤井英和だけをじっくりと観察するだけでいい、ホント。
阪本監督は出来不出来の激しい監督であるが、大阪を舞台にした作品だけは皆素晴らしい。

 


 

泥の河                              
1981年   木村プロ     105分       監督 小栗康平    音楽 毛利蔵人
                               出演 田村高廣/藤田弓子/加賀まり子
 
最初見た時は正直何にも感じなかったけれど、2回・3回と繰り返して見ていくうちにいかに小栗監督が
ディテールにこだわったかが判ってきて、3回目には目にこみ上げるものがあった。ストーリーは昭和
30年代頃の大阪が舞台である。川岸のうどん屋の子供とその近くの岸にいつともなくやって来た廓船
(娼婦が男を引き入れる船。)の姉弟との短いつきあいが丹念に描かれている。廓船の子供達は3年
生と5年生なのだが、親の仕事の関係上学校にはいけない。それでも明るく生きている二人とうどん屋
の息子との関係がゆっくりと噛み締めるように時間が流れて行く。モノクロで撮影したのが最高。必見!

 

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