ハワイ赤ゲット紀行第
1回甲斐素直
ハワイの旅
[はじめに]
ハワイというのは、日本からも多くの人が訪れたことがある場所ですから、読者の皆さんの中にもすでに行かれた方は多く、そういう方は、今更改めて紹介される必要はない、と思うことでしょう。しかし、私にとっては、事実上ハワイは初めての訪問です。正確には一度だけ訪問したことがあります。
20年くらい前、カナダに行った帰りに2日だけ滞在したことがあるのです。しかし、寒冷のカナダから、常春の島にいきなり飛んだせいで、身体が反応しきれなかったためだと思うのですが、空港に降りたとたんに風邪を引いてしまいました。そこで、食事のための外出くらいに押さえて、後はひたすらホテルの部屋で寝ていたものですから、どんなところか、ほとんど記憶に残っていません。したがって、今回のハワイ行きは、1から10まで、すべて手探りで決めることになりました。その結果、見るもの、聞くもの、皆珍しいという、昔ながらの赤ゲット旅行になりました。そういう赤ゲット旅行記というのもまた面白いかもしれないし、私特有のしつこさで、その赤ゲット的関心事を掘り下げて調べてみましたから、これまでハワイに行ったことのない人には、案外参考になることもであろうと考え、この随筆を書くことにしました。
なお、赤ゲットって何だ、という人もいるかもしれないので、よけいな注釈をつけると、「ゲット」とは「ブランケット(
blanket)」の略で、だから赤い毛布という意味です。なぜか、明治初期、東京見物にきた田舎からのお上りさんは、赤い毛布を羽織っていたのだそうで、そこから、お上りさんに対する蔑称として使われた言葉です。それが、その後、なぜか慣れない海外旅行者にもいうようになった訳です。
緑したたる木陰に立つハワイ大学ロースクール
一 なぜハワイか
そもそもなぜ今年、ハワイに行くことにしたのか、という話から始めましょう。
私は、これまで外国法としては、ドイツ法を中心に研究してきました。ドイツに関しては、会計検査院に勤務していた時代に人事院の海外研修生として2年、大学に戻ってから在外研究として1年滞在しています。その間やその後も、数日から数週間という単位で、数回訪問してきました。だから、ドイツを中心とする欧州諸国なら、法制や風俗も含めて、大体どういうところなのか、判っています。
しかし、学者として飯を食っていくとなると、ドイツ法と並んで現代日本の公法分野に強い影響を与えているアメリカ法を無視するわけには行きません。これまでも、決して手をつかねていたわけではなく、必要に応じてあちこち読み散らしてはいたのですが、やはり体系的な知識を持っているというわけではないので、早い話、法令の検索の仕方一つ満足に判らないという状態です。現在では、外国書も日本で楽に入手できるようになり、なによりインターネットを通じて膨大な情報を入手することも容易な時代になりました。とはいっても、手当たり次第に入手する等という乱暴なことはできない以上、誰か標準的な本を知っている人に聞きながら、読む以外に、標準的な知識を手に入れる方法はありません。そこで、今年、一念発起して夏休みを
20日間ほど、ハワイ大学ロースクール(写真@参照)を訪問し、その図書館(写真A参照)に入り浸って過ごすという計画を立てたのです。アメリカ法を研究するのに、なぜハワイなのかと思う方も多いと思いますが、大きな理由は二つあります。第一に、私が自動車の免許を持っていないことです。私が理解している限り、米国は車社会で、車がないと全く身動きがとれない社会構造になっているといいます。短期の滞在ならともかく、
3週間も過ごすとなると、このマイナスは大きなものがあります。その点、ハワイなら小さな島ですから、歩いて行動できることも多く、さらにバス網が発達していると仄聞していたのです。第二に、安全面です。私は、盗難恐怖症で、イタリアやフランスのようなラテン語圏、あるいはドイツ国内でもベルリンやフランクフルトなど、治安面で問題があると定評のある地域にいる間は、神経が休まりません。以前、大学から欧州研修旅行と称する学生旅行団の副団長としてイタリアに行ったときなど、学生たちが私の警告を聞いてくれないものですから、特に神経を張りつめたものです。その時は、結局、フィレンツェで、一人、強盗にあった学生が出てくれたおかげで、他の学生も安全に注意してくれるようになり、後の旅は楽になりました。しかも、幸いなことに、強奪されたのはクレジットカードだけが貴重品という財布で、それは直ちにカード会社に連絡したおかげで事実上被害はゼロだったので、人身御供としてはもっとも無事に済んだ事件でした。それでも、スイスに入って、これで一安心と思ったとたん、疲れが吹き出して、一日、アルプスの湖の畔でぐったりと寝て過ごしたものです。この安全面に関しても、ハワイは、少なくとも米国の中ではかなり治安が良いところと知られています。
二 ホテル探し
そういう訳でハワイ行きと決めたのですが、行くと決めて、最初に必要なのがホテル探しです。数泊程度の観光旅行なら、旅行者任せでも差し支えないのですが、
3週間も滞在する以上、様々な要素を考慮して決定しなければなりませんから、単純に人任せという訳には生きません。しかし、インターネットのおかげで、少なくとも、ネット上にホームページを開いているレベルのホテルなら、簡単に見つけられるようになりました。このような長期滞在なのですから、欧州で宿を探すなら、ドイツであればプリバート・ツィンマー(
Privatzimmer)、イギリスならベット・アンド・ブレックファースト(B&B)、つまり日本だと民宿と呼ばれるような安宿を探します。当然、ハワイにもその類の部屋はあるだろうと考えました。私が目的とするハワイ大学マノア校は、ワイキキのすぐ北にあります。そこで、最初、その歩いていけるほどの近くのその手のB&Bということでインターネット上で検索をかけてみました。しかし、驚いたことに、見つけられたものは、いずれも日本円に直して1泊数万円というレベルで、高くて話になりません。なぜハワイのB&Bがこんなに高いのか、見当も付きません。どなたか、ご存じでしたら、教えてください。そこで、方針を変更してコンドミニアムと考えたのですが、不思議なことに、それでさえもワイキキの安いホテルの値段よりも遙かに高いのです。また、そのほとんどが、ワイキキでもはずれの方にあるのです。仮に、私のドイツにおけるホームグラウンドであるミュンヘンなら、少々繁華街から外れた場所でも、どういう利・不利があるかの判断はできるのですが、何しろホノルルに関しては、全く土地勘がありません。中心部の方が便利に違いないと考えると、その点からも、コンドミニアムは候補から脱落することになります。
こうして、またまた方針を変更して、ワイキキのホテルの中で、手頃なものを探すことにしました。ついでに言えば、ワイキキ以外では、ホテルはほとんどなく、しかもぐっと高くなりますから、できるだけ安いとことという基準と大学に行きやすいところという基準を立てる限り、ワイキキが唯一の選択肢なのです。しかし、短期の滞在ではないので、ビジネスホテル同然の狭い部屋では、神経が持ちません。少々の値段差なら、少しでも広い部屋のホテルと考えます。幸い、ホテルの中には部屋の面積を明記しているところも多いので、そういうホテルに対象を絞って探すことになります。また、同じ値段なら中心部の方が、食事や買い物に便利ではないか、などとも考えて、あちこちのホテルを調べるので、調べれば調べるほど、迷いが深まります。
実は、アメリカのある旅行社のホームページに、ワイキキのホテルに泊まった人の寸評を載せているものがあります(同じようなことは、日本の旅行社でもやっているところがあるのですが、ワイキキのホテルに関する限り、評価者の人数が少なくて、使い物になりません)。評価が中以下に集中しているホテルを落とすのには、問題がありません。しかし、ほとんどの人が良かったと絶賛しているようなホテルでも、誰か一人くらい、くそみそに貶なしている人がいるのです。しかも、そういう人に限って、文句の内容が非常に具体的なので、いくらほかの人が褒めていても、読むほうではおびえてしまうわけです。
5月一杯迷い続けて、6月に入ったとたん、ぎょっとしたのが、一部のホテルでは、満室という表示が出始めたことです。長期滞在するつもりの者の弱点で、予定する期間中の一日でも、満室という日が出ると、そのホテルは使えないことになってしまう訳です。そこで、あわてて予約を入れにかかったのですが、やってみると、インターネット上では満室表示が出ていないホテルでも、すでに満室の日があるので、お受けできないという返事が返ってきます。かなり連敗を続けたあげく、私が実際に予約を取ったのは、正直に言って、5月中には検討リストに全く載せていなかったホテルでした。もし、読者の皆さんの中に、私のように長期のホノルル滞在を計画される方があったら、予約は絶対に5月末までには入れておくべきだ、と言うことを強調しておきたいと思います。そうでないと、気に入ったホテルが取れなくなってしまいます。
私が実際に泊まることになったホテルは、英語版のほかに、日本語版のホームページも作っています。しかし、日本語版が決して英語版の翻訳ではない、というところが恐ろしいところです。日本語版には、インターネット割引で、1泊
230ドルと書いてあります。他方、英語版なら110ドル。倍以上の開きです。なぜこのようにむちゃくちゃな開きが生ずるのか、見当も付きません。しかし、こちらとしては、しっかりと念を押して、英語版の値段で予約を取った訳です。日本人はとかく日本語版のホームページを頼りにする傾向がありますが、それを必ずしも信用するな、ということも、強調しておきたいと思います。ホテルの予約を取るにあたって気にしたのが、なぜかほとんどすべてのホテルが、素泊まりの料金表示だったことです。日本でも欧州でも、朝食時に開いている町のレストランはまずありませんから、ホテルの朝食は必須の条件であることは、ご存知のとおりです。その点に私はかなりの不安を感じました。私が最終的に泊まることにしたホテルを選択した理由の一つに、英語版のホームページに、朝食込みでなんと…式の宣伝が書いてあったからです。
しかし、ハワイに着いて、つくづく痛感したことは、多くのホテルが素泊まりになっているのはそれだけの理由があるということです。ハワイ全体ではどうなのか知りませんが、少なくともワイキキの町は非常に早起きなのです。朝、町に出ると、多くの飲食店は、
6時でも開いていました。7時になれば、間違いなくどこも開いているという感じです。マクドナルド等に代表されるファーストフード店に至っては、どこも24時間営業でした。朝の町を散歩していると、そういう店が宣伝ビラをくれるのですが、安いところなら3ドルくらいでかなりちゃんとした朝食を食べられるようです。ちなみに、私のホテルの朝食は約13ドルでした。実際問題として、
20日も同じホテルの朝食を食べていると、いくらバイキング方式である程度選択の幅があるといっても、こちらに好き嫌いがある以上、いい加減飽きて、うんざりします。ホテルの方でも、日によって少しはメニューに違いを設けていますが、基本的に大きな変化はないからです。そういう点から考えても、ワイキキの朝食は、事前の予約はしない方がよい、ということも、強調しておきたい点です。
三 出国
私が乗ったのは、夜9時に成田を飛び立つ、全日本空輸(
ANA)の飛行機でした。乗ってはじめて、これがANAとユナイテッド航空のシェア便ということを知り、しまったと思ったものでした。実は、インターネットで航空券を探した際、ANA自身が提示している料金よりも、ユナイテッド航空の料金の方が若干安いことに気が付いていました。それでも、若干の差なら、乗り慣れているANAの方が様々な点で無難ではないかと考えた訳です。しかし、物理的に同じ飛行機なら、安い方が絶対に良いに決まっています。事前に調べた成田空港のフライトスケジュールのどこにも、これがユナイテッドとのコードシェア便とは書かれていなかったので、こういうときには、どこを調べたらよいのか、今も首をひねっています。この飛行機、夜の
9時に飛び立って、途中で日付変更線を超える関係で、その同じ日の朝の9時にハワイに到着します。つまりこの飛行機は、ちょっとしたタイムマシンという訳です。ハワイと日本の時差は19時間と言います。これはややこしいので、私は単に1日日付が違うだけで、時差は5時間と理解した方が簡単だと思います。この便の最大の問題は食事です。あらかじめ飛行機会社に問い合わせたら、離陸後
1時間したらちゃんとした食事を出す、と言うのです。従って、それを無駄にしたくなかったら、夕食はかなり軽めにしておかねばなりません。10時が夕食というのは、そういう生活習慣のある人ならともかく、私にとってはかなり遅い夕食時間で、かなりそれが出てくるのを待つのはつらいものでした。更にこの食事が問題なのは、ハワイ時間との関係です。つまり、日本で夜の10時に食べる夕食というのは、先の5時間の時差という発想を当て嵌めると、ハワイ時間で言うと夜中の3時に食べるということを意味します。そして、ハワイ時間の朝の7時過ぎには、この飛行機ではちゃんと朝食を出すのです。夕食をハワイ時間の朝4時に食べ終わり、その後、フルに眠ったとしても、3時間しか睡眠がとれないという計算になります。実際にはそんなにあっさりと眠れる人はいないでしょうから、結局、1時間かそこらの仮眠しかとれないことになります。そして、朝9時からの丸一日が待っている訳ですから、これはきつい話です。国際便では食事を出すという習慣は忘れて、離陸後すぐに寝かせてくれた方が、本当の意味での顧客サービスになると思うのですが、航空会社間の競争が、たぶんそれをさせてはくれないのでしょうね。
四 ハワイに降りて
ホノルル空港というのは、少し奇妙な空港で、ターミナルが一つの建物ではなく、いくつにも区切られています。
最初の関門が、入国審査です。決して混むシーズンではないのですが、それでも大変な行列ができています。何を揉めているのだろうとよくよく見たら、飛行機の中で何度か配ばりにきた出入国カードをなぜか受け取ることをしなかったらしく、その記入をしろと、窓口から戻されている人がいるではありませんか。しかし、そういうドジな人がいることだけが列の長い原因ではありません。入国審査官は、滞在予定期間や宿泊予定のホテル、帰りの飛行機を一々確認します。そればかりでなく、すべての入国者について、左右の人差し指の指紋と顔写真まですべて撮影しているのです。これは同時多発テロ以来、急に法律が制定され、こういうことになったのだそうです。
これを見て、我が国憲法の有名な判例である「森川キャスリーン事件」というのを想い出しました。我が国の外国人登録法が、一部外国人に指紋の押捺を義務づけているのを、人権侵害だとして拒んだアメリカ人女性(日本人男性の妻)が外国旅行をしようとしたのを、法務省が再入国を認めないと宣言することで阻んだという事件です。法務省のやったことは、江戸の敵を長崎で討つ式の了見の狭いやり口だと思うのですが、これをキャスリーンさんが、出入国の権利侵害だとして争ったのです。我が国最高裁判所は、この法務省のやり口について、何ら問題はないと判決したのです。この判例は、在日外国人の海外旅行の自由を侵害するもので、妥当ではないと私は思っています。しかし、ここでこの事件を思い出したのは、普通のアメリカ人にとり、指紋押捺の強制が人権侵害と感じられるのだ、ということがこの事件から判ると言うことです。しかし、同時多発テロ事件が起こると、このような人権意識が完全に吹っ飛んでしまうところに、アメリカ人の人権意識のもろさが示されているようで少し怖い気がしました。
アメリカ人には、何か問題が起こると、かぁーとなって、それまで築いてきた人権論が一撃で崩壊するという悪い癖があります。例えば、第
2次世界大戦に参戦すると同時に制定された防諜法(戦争反対と唱えると、スパイと同視して処罰した)や、大戦後のマッカーシーの赤狩り旋風や、その時に制定された幾つかの反共法にも、そういう傾向が端的に現れていました。それがまたこういう形で息を吹き返している訳です。アメリカとつきあう際、注意しなければならない点だ、等と言うことを、指紋の押捺をしながら考えていたものでした。税関は、入り口で立話的に職員から事情聴取を受けただけですんなりと通れました。外に出て、さて米ドルを入手しなければ、と辺りを見回して愕然としてのが、現金自動支払機はおろか、両替窓口さえどこにも見あたらないことです。私は、銀行カードで現地通貨を手に入れるのが一番簡単ということから、最近、外国に行くときには、事前に外貨を入手することはせず、常に、現地の空港の現金自動支払機のお世話になっていたので、それがないということは、
1セントの現金も持ち合わせておらず、全く身動きができないということを意味します。昨年、タイに行ったときでさえ、現金自動支払機のお世話になるのに何の問題もなかったのに、なぜれっきとした先進国のハワイでこんな目に遭うのか、理解できません。通りかかった空港職員を捕まえて「現金自動支払機か、あるいは銀行か両替所はどこだ」と聞くと、「ここにはない、
2階の出国ロビーの方だ」という返事です。入国ロビーは1階にあるのです。そこで、重い荷物を引きずりながら、2階に上ったのですが、やはりどこにも見あたりません。その辺で暇そうな顔をしていた航空会社の職員に、同じことを聞くと、「ここにはない、中の税関のところにあったのだ」と教えてくれました。もちろん、そこを通過するとき、すなわち私にとっては出国時でないと、もはやそこには入ることはできないという訳です。呆然としました。しかし、どう考えても、空港に両替所一つないのはおかしいのです。意を新たにして暫く探し回った末に、ある日本の旅行会社が屋台を出しているのを見つけました。同じことを聞くと、「この道を突き当たりまで行って左に曲がったところにありますよ」と教えてくれ、ようやく両替所を発見することができました。このように、空港関係者数人に聞いて、誰も知らなかった現金自動支払機ですが、後で調べてみたところ、本当に到着ターミナルにはないことが判りました。ただし、到着ターミナルとは、道路を挟んで向かいにある、バンク・オブ・ハワイ空港内支店に設置されているそうです。しかし、私もそういうことは想定して、質問の中に、バンクはどこだということも尋ねているのですが、誰も知りませんでした。いったいどうなっているのでしょうね。とにかく、着いてそうそう、海外旅行用の大荷物を引きずって道路を横断するなどということは、仮に正確に場所がわかっていてもできることではありません。ハワイに行く場合には、最小限の米ドルだけは日本から持って行くというのが正解のようです。
さて、空港からホテルまでどうやっていくかが最後の問題でした。私が泊まったホテルの、日本語版ホームページには何も書いてありませんが、英語版のホームページには、ホテルがシャトルバスと契約していて、それを利用すれば空港からホテルまで片道
9ドルだとあります。ただし、事前に予約を取れとあるので、その指示に従い、日本国内の代理店にメイルを送って、シャトルバスの予約を頼みました。しかし、代理店は「確かにホームページにその旨の記載はあるけれども、いまだかつてそれを利用した人はいない」といって、予約に応じてくれませんでした。ですから、ハワイに到着した時点ではおとなしくタクシーを利用するつもりでいたのです。そこで、両替後に、タクシー乗り場はどこだと上記の両替所の窓口で聞くと「タクシーなんかもったいない、シャトルバスになさい」というのです。まさに私の考えていたことなので、「ではシャトルバス乗り場はどこだ」と聞くと、「タクシー乗り場に行ってシャトルバスといえば教えてくれる」と言います。指示の通りに行ったら、本当にすんなりと乗ることができました。
これはどうやら、私のホテルが契約しているシャトルバスとは違うものらしく、事前の予約もいらないし、料金は
8ドルと、1ドル安くなっていました。更に、往復を買えば14ドルと更に安いのです。もちろん1ドルでも安いのが好きな私は、往復券を購入しました。お客は、乗るときに泊まる予定のホテル名を告げておきます。すると、運転手は、その所在地を頭の中で一筆書きにして、次々と各ホテルの前に止まっていくというやり方です。私の乗ったバスの運転手はおしゃべりな人で、ついでにハワイ観光のイロハ的な話までしてくれましたから、なかなか面白い道中になりました。ホテルのチェックインは午後
3時からと、ホームページに書いてありました。一方、飛行機は、朝の9時に着くことになっています。その間の6時間をどうしようかということも、計画段階における大きな問題でした。しかし、ほとんどのホテルで、アーリーチェックインの場合には1泊分の料金をいただきますと書かれています。わずか2〜3時間部屋でゆっくりするために、1泊分の代金を払うのもばかげています。そこで、3時までに時間が空いたら、フロントに荷物を預け、市内をぶらつくしかないと考えていました。実際にホノルル空港に着陸したのは
9時半でした。これまで述べた様々な出来事から非常に時間を喰い、無事にホテルに辿り着いたのは12時でした。しかし、すんなりと部屋の鍵を貰って入室できました。アーリーチェックインのことを心配して、あちこちのホテルのホームページを調べて回ったのは、全く無意味だった訳です。どこのホテルでも、前の晩のお客がチェックアウトして部屋が開いていれば、部屋に入れてくれるものだ、という常識に頼っておけば良かった訳です。
五 出国
出国では、ひどい目に遭いました。
最初にホテルに着いて、チェックインをしたら、最初に聞かれたのがチェックアウトは何時するか、というのです。そこで、帰国予定日を告げたら、そうではなく、時間を教えてくれ、というのです。そこで、帰国便の離陸時間は
10時50分だと答えたところ、では7時にチェックアウトですね、という返事です。私の英語が拙くて、きちんと帰国便の離陸時間が伝わらなかったのではないかと考えて、わざわざ帰国時の切符を出して見せたのですが、返事は変わりません。出国手続きには2時間くらいかかるし、ホテルから空港までは45分は見なければいけないから、7時くらいがちょうど良いというのです。何とも信じられなくて、その後、ホテル内に店を開いている観光会社の窓口の日本人に聞いたら、やはりそれが妥当な線だというのです。同時多発テロ以来、単に入国ばかりでなく、出国時においても、アメリカの警戒は大変強いので、
2時間は見ておくのが無難だというのです。このように、
2重に確認して同じ答えを得たので、あきらめて帰国する日には、朝の5時半に起き出して身支度を調え、6時に朝食を摂り、7時にチェックアウトして、空港行きのシャトルバスに乗ったのです。結果として、出入国管理はなく、手荷物検査以外はどこもすらすらと通過したものですから、
8時前にはすでに待合室の前に立っていました。当たり前の話ですが、出発の3時間近く前なのですから、待合室の扉は開いていません。いったい出国手続きに2時間かかるという話は何だったのだろうと首を捻るばかりです。もし、この奇妙な経験について、なぜなのかが判る方がいらしたら、是非教えてください。ハワイ大学ロースクールの図書館 ロースクールの建物と向かい合って立っている。