ハワイ紀行第
3回甲斐素直
ハワイの人と産業
[はじめに]
ハワイを歩いていて、面白いと感じたところ、違和感を感じたところ、不便と思ったところ、そういう赤ゲット特有の感覚に引っかかって来たあれやこれやを、少し掘り下げて調べてみたところ、案外興味深いことが判ってきました。そういうことを今回はお話しすることにしたいと思います。
一 ATM
cash dispenserという英語を使ったことに問題があったのかもしれません。現実問題として、ホノルルの町中で見かけた現金自動支払機には、すべてATMと書いてあったからです。ATMといえば、automated teller machine、つまり現金自動預け払い機でなければいけません。だから、預ける機能のなく、支払いだけの機械をATMと呼ぶのは、英語として絶対に間違いだと思うのです。日本では、普通にはCDといいますよね。しかし、現にアメリカ人がそういう名前で何の違和感も持っていないのであれば、非英語国民が文句を言っても仕方がない、ということになるのでしょう。
入国の時に、空港で見つけられなくて困った現金自動支払機ですが、これは、私が空港職員などに設置場所を聞く際に、
そこで、以下
ATMと呼ぶことにします。第1回に述べたように、到着ターミナルには一台も設置されていないATMですが、ちなみに、ワイキキに入れば、どこにでも、例えば私のホテルのロビーにさえ、現金自動支払機はあります。デュークス・レイン(Duke's Lane)というところには、屋台の土産物屋がずらりと並んでいるのですが、その一画には、路上に雨ざらしの形で現金自動支払機があるのには恐れ入りました。こういう設置の仕方ができると言うことは、治安レベルの良さを端的に示すものでしょう。商店などの屋内に設置されているATMも、その辺の柱の陰等に、日本で言えば公衆電話並みの安直さで設置されています。
そこで、実際の治安レベルはどんなものなのだろうと考えて調べてみたのが、現実の犯罪件数です。表
1は2003年度の数字です。 表1 ハワイ州における犯罪発生件数
全体 69,267
殺人 22
強姦 367
強盗 1,168
加重暴行 1,843
住居侵入窃盗 11,409
単純窃盗 44,807
自動車窃盗 9,651
放火 509
表中、加重暴行とは、女性や子供など、弱者に対する暴行行為のことです。
1994年には、殺人が56件、単純窃盗が59,907件もあった(同年が最近10年間で最悪)ことを考えれば、この2003年の数字は、ハワイの治安が急速に好転していることをよく示しています。出発前に考えた、ハワイは治安がよいからというのは数字から見ても明らかに正しいのです。2009年には、50万人以上の人口を持つ世界の都市では、もっとも治安がよいという数字が出た、ということです。しかし、同時に全く犯罪のない楽園という訳ではない、ということも明らかです。
しかし、強盗や強姦、放火などはかなりハワイの方が数字が大きいことが判ります。アメリカとしては非常に治安状態の良いハワイですが、やはり日本の国内と同じようなつもりで、不用心に町を歩いてはいけないということが判ると思います。また、高校生が高校に武器を携行してくる率なんていう以下にもアメリカ的な統計がありますが、2005年には4.9%となっています。
ATMのコーナーのように、屋内に設置しているのですが、ほかの銀行は、皆、街路にむき出しで設置してあります(写真参照)。しかし、幾ら治安がよいとはいえ、夜間に道ばたで数百ドルの現金を引き出しているところをあまり見られたいとは思いません。だから、おろす場所には苦労しました。
銀行支店の場合でも、バンク・オブ・ハワイだけはなぜか、日本の
ハワイの
ATMで、最大の悩みの種が、引き出し限度額でした。私のホテルで引き出そうとしたら、200ドルが限度とでました。ホテルのだからいけないのだろうと、バンク・オブ・ハワイにまで行ったのですが、結果は同じ。最初は、手許金がないので、仕方なくそのままおろしましたが、これでは話になりません。ホテル住まいで基本的にすべて外食という生活をしているのですから、もたもたしていると1日に100ドルくらいはすっ飛んでしまいます。だから、200ドルでは、下手をすると1日おきにおろす羽目になります。そんなことでは、引き出し手数料だけでも馬鹿にならない訳です。そこで、日本の銀行のトラベルデスクまで行って教えて貰いました。それによると、アメリカン・セイヴィング・バン
American saving Bank)とファースト・ハワイアン・バンク(First Hawaiian Bank)という二つの銀行のATMだけは、500ドルまで一度におろせるという話でした。日本のように、コンビニに設置されているATMからでも10万円までならおろせる国から来ると、こういうところは何とも不便です。先に触れたように、バンク・オブ・ハワイのATMだけは、銀行施設の中にありますが、この二つの銀行のATMはたいてい道路にむき出しです。別に安全度が高いからたくさん引き出せるという訳ではなさそうで、この辺も混乱します。なお、ファースト・ハワイアン・バンクのATMは、なぜか大きく“Otto”と書いてあるので、非常に目立ちます(写真B参照)。ク(
二 お金
ATMについて論じたついでですから、この際に、アメリカのお金というものについても考えてみましょう。
米ドルというのは、世界の基軸通貨にふさわしからざる不便な代物だと思ったことはありませんか。特に奇妙なのが、硬貨です。
我が国の場合であれば、
500円までが普通に硬貨です。EUだって同じようなものです。イギリスの場合には、硬貨が少々重すぎてうんざりしますが、やはり同じ程度のレベルまで、硬貨が存在していることに変わりはありません。ところが、アメリカの場合、
500円相当の5ドル硬貨どころか、1ドル硬貨さえ、通常は存在していないのです。これにはきょとんとしました。少なくとも、昔は間違いなく存在していたからです。西部劇で、ガンマンが、酒場に入っていって、1ドル銀貨を投げ出してウィスキーを注文するのは、おなじみのシーンですよね。『荒野の1ドル銀貨』なんて映画までありました。そもそも、アメリカの、普通「ダイム」と呼ばれる
10セント硬貨が、なぜあんなに小さいのか、ご存じですか。それは、1ドル銀貨のちょうど10分の1の重さに作ってあるからです。初期のアメリカ硬貨は、そのものズバリ、その貨幣に含まれている貴金属の交換価値で、額面が決定されていたため、そういうことになったのです。しかし、そのやり方で5セント硬貨を作ると、やたら小さくなって実用に適さないので、5セント硬貨については、銀をあきらめて、ニッケル合金で作った訳です。そのため、5セント硬貨は「ニクル」と呼ばれます。しかし、交換価値どおりの大きさという発想は変わらなかったため、今度はダイムに比べてやたら大きな硬貨ができた訳です。ニッケル合金だって、見た目には銀色をしていますから、ダイムとニクルの関係はややこしく、混乱の原因になるという手の話は昔からいろいろとありました。こうした事実は、アメリカで、
1ドル銀貨は昔は普通に流通していたことを明らかにしてくれます。一体いつの間に、何故なくなったのでしょう。これについては、いろいろ調べてみたのですが、現時点では、私には判っていません。もしご存じの方があれば、教えてくっださい。更に驚くべきは、
50円玉に相当する50セント硬貨さえ、通常は存在しないことです。流通している硬貨の最高額面は「クォータ」、つまり25セント硬貨です。その下に、10セント硬貨(ダイム)、5セント硬貨(ニクル)、そして1セント硬貨(ペニー)があります(写真参照)。しかし、これらには、アラビア数字が入れてありません。25セント硬貨であればQUARTER DOLLARと硬貨の下部に書いてあります。以下、ダイムであればTEN CENT、ニクルであればFIVE CENT、ペニーであればONE CENTとそれぞれ書いてあるだけです。それが読み易いならともかく、長年流通しているものは、結構摩耗していて、とっさには読めません。それでも、ダイムはずば抜けて小さいし、ペニーは赤い色をしているから、ダイム、ニクル、ペニーの三つに関しては、判別に苦労はしません。それに対して、私が手こずったのが、クォータとニクルの区別です。先に述べた理由から、ニクルが、その額面の割には大きい硬貨であり、かつ、どちらも銀色をしているからです。確かにニクルの方がちょっと小振りなのですが、それは並べれば判るという程度で、はっきりと大きさが違う訳ではないのです。しかもやっかいなことに、クォータは、なぜか知りませんが、例えばライト兄弟の飛行の記念といった様々な記念硬貨が作られているためですが、やたらといろいろな図柄の硬貨が同時に流通しているのです。だから、買い物で、クォータとニクルを間違えて出して、レジ嬢にきょとんとされるという馬鹿なことを何度かする羽目になったほどです。
昔、日本でも
50円玉と100円玉が、少し紛らわしくて評判が悪かったことがありました。あのとき、日本では、50円玉に穴を開けることで、抜本的に問題を解決してしまいました。5円玉に穴が開いているのも、10円玉と間違っても混同しないように、という対策です。なぜ、アメリカではそういう知恵を何百年にもわたって示さないのか、と実に不思議な気がします。50セントや1ドルの硬貨がないということは、硬貨が必要な自動販売機の類は、ひたすらクォータに頼らなければならないということを意味します。何とか苦労してクォータを手に入れ、じゃらじゃらと持ち歩かないと、自販機が使えないというのは、不便なことです。上述の硬貨の混同の問題と一緒で、なぜ国民が不平を鳴らさないのか、不思議でなりません。
紙幣の方も、奇妙なもののです。こちらは、アラビア数字ではっきりと金額が表示してある上に、ワシントン(
1ドル)、リンカーン(5ドル)、ハミルトン(10ドル)、ジャクソン(20ドル)、グラント(50ドル)という調子で、特徴ある肖像が中央に書かれていますから、硬貨と違って間違える心配はあまりありません。しかし、俗にグリーンバックといわれますが、どれも同じような緑っぽい彩色で、見るからに安っぽいといわざるを得ません。これだから、ひっきりなしに偽造通貨が国際的に流通したりするのです。独特の手触りを持つ和紙の上に細密な凹版印刷技術を駆使した我が国紙幣、あるいは金属を織り込んで、偽造を極端にむずかしくしたEU通貨等を考えると、このように古い型の紙幣を使い続けるアメリカは、無責任というべきではないでしょうか。三 ハワイの産業
さて、お金と来れば、それを生み出す産業はどうなっているのだ、ということが気になります。しかし、それに入る前に、まず、人について見てみることにしましょう。
アメリカは人種のるつぼだとよく言われます。ハワイもその例外ではありません。表
3は、2000年度の国勢調査による数字で、人種のベストテンをあげてみたものです。 表3 ハワイ州人種ランキングベストテン
純血のもの
混血のもの
白人 日系人 フィリピン人 ハワイ原住民 中国人 韓国人 294,102
201,764
170,635
80,137
56,600
23,537
白人 日系人 フィリピン人 ハワイ原住民 中国人 韓国人 476,162
296,674
275,728
239,655
170,803
41,352
黒人・アフリカ系アメリカ人 22,003
黒人・アフリカ系アメリカ人 33,343
サモア人 16,166
サモア人 28,184
ベトナム人 7,867
アメリカ原住民 24,882
ミクロネシア人 6,492
ベトナム人 10,040
8位のサモア人までは、純血でも混血でもランキング順位に違いがありませんからどちらを使おうとたいして違いはありませんが、混血の欄の方では、同一人が、複数の欄に掲記されている訳です。したがって、人種別比率ということをいう場合には、どちらの数字を使うかによって、非常に答えが違ってきます。例えば、ハワイ原住民が、今日どのくらいいるか、という議論の場合でも、純血に限れば、総人口のわずか6.3%に過ぎないという答えになります。それに対して、混血でも良いとすれば、総人口の19.0%はまだハワイ原住民であるというかなり大きな比率になる訳です。
人種比率をいう場合には、たいてい純血のものの比率で論じているようです。その観点から見た場合の最大の特徴は、アジア人が
41.6%と、半分近い数字になっていることです。こんなにアジア系人種が優勢な土地は、アメリカのどこにもありません。その内訳を見ると、なんといっても日系人が
16.9%でトップです。ついでフィリピン系が14%、中国系が4.7%、朝鮮系1.9%、ベトナム系0.6%と続きます。アジア人以外で多いのは白人で24.3%と、ほぼ4分の1の割合を占めています。ハワイ原住民は、こういう純血人口中の比率では6.3%ということになります。このように、アジア系が優勢だということは、観光客向けの店はともかく、町の普通の飲食店では、一番普通にあるのはアジア系の食べ物だということです。ハワイ大学の学生食堂に行って、つくづくそれを感じました。ハワイ大学マノア校の学生食堂は、おおざっぱに
4つのセクションに別れています。一つはハンバーガーショップ、一つは韓国料理、一つは中華料理、最後の一つはハンバーグ・ステーキライスだのチキンカレーライスだのという、日本風の洋食を出す店です。そのものズバリ、寿司、鉄火巻き、おにぎりなんてものもカウンターの上に並んでいますから、日本料理と分類して良いのだろうと思います。つまり大学食堂に関する限り、圧倒的にアジア系が席捲しているのです。これはやはり、こうした人口構成が反映していると見るべきでしょう。今度は、産業について細かくみてみましょう。かつて、ハワイの代表的な産業は砂糖でした。アメリカの若者達は、キリスト教宣教師としてハワイに来て、ハワイの伝統的な宗教や文化を破壊した後に、宣教師を辞めて土地を占拠し、そこに砂糖きびのプランテーションを建設し、ハワイの経済を支配したのです。日本からの移民が大量にハワイに渡ったのも、このプランテーションにおける労働者としてでした。しかし、今日では労働コストが上がり、他国との競争に負け、ハワイ全体の生産高で見ると、パイナップルやマカデミア・ナッツ、コーヒーといった新たに成長しつつある農業分野を加えても、全産業に占める農業比率は、
1%に満たないレベルに転落しています。それに代わって、なんといっても大きいのが、観光産業です。
2004年度のデータに依れば、同年、ハワイを訪れた観光客は年間6,908,173人に達します。さすがにアメリカ国内からの観光客が4,877,360人と圧倒的ですが、国外からも2,030,813人が訪れています。このうち日本からは1,477,603人だったそうです。総人口の6倍近いわけです。この結果、ハワイ州産業経済開発観光局(DBEDT)のデータによると、観光産業関連の経済規模は128億ドルに達し、また、州全体の雇用機会の22.3%、租税収入の26.4%がこれによるということになります。州経済の
4分の1という比重は、それ自体軽視できませんが、しかも、これは直接関連する経済規模だけです。観光客は、当然食事をし、交通機関を利用し、様々な買い物をするわけです。統計数字に依れば、171,481人が、1日あたりの平均滞在者数です。これは、住民の数の2割近い数字です。少なくとも観光客として滞在中は、普段より豪華な生活をするでしょうから、相対的に住民より生活レベルは高いと見て構いません。これが町の日常生活に与える影響は非常に大きなものといわざるを得ないはずです。同じようなことが、軍事についていえます。ハワイは、アメリカ軍から見た場合、北米西海岸からアフリカ東海岸まで更にアラスカから南極大陸までという膨大な範囲、比喩的に言えば地球の半分以上を、アメリカの「勢力下にある範囲」として維持せんがための中心的戦略拠点とされ、それに対応するべく、アメリカ太平洋軍がここに設置されています。この結果、州全体の土地の約
2割(2004年度の統計の場合、19.4%)が、米軍統治下にあります。特にオアフ島に関していえば、正確な数字を発見できなかったのですが、四分の一が、米軍統治下にあるといわれます。たとえば、ホノルル空港から車を走らせれば、ワイキキの入口に緑豊かな公園が広がっています。誰でも入って遊べるのですが、それは、実はフォート・デ・ルッシと呼ばれる米軍施設なのです。沖縄県が、米軍基地に多くの土地を提供し、基地の島と呼ばれたりします。しかし、その総面積は沖縄県ホームページによれば沖縄全体で
11%、特に基地比率が高いといわれる沖縄本島でさえ19%だということと比較すれば、それの2倍に達するのですから、ハワイにおける米軍の比率の高さが判ると思います。沖縄県が観光の島であると同時に基地の島である以上の意味で、ハワイは観光と基地の島なのです。ハワイに駐留する軍人は45,624人、軍属が57,056人ですから、併せて10万人程度ということになります。その家族も考えれば、軍事関連の経済規模が、観光に次ぐ第二の産業だといわれるのも判るというものです。どの程度、ハワイ経済に寄与しているのか、ということに関する正確な数字を発見できなかったのですが、2割程度だといわれています。つまり、観光と軍事という、どちらもきわめて消費型の産業が、島の経済の半ば近くを占めているということは、党内での自給自足がほとんど不可能ということを意味します。すべての物資は、外部からの輸入品なのです。
この結果、スーパーやコンビニの棚を眺めると、ほとんど日本と違わない品揃えになります。例えば、ビールだって、バドワイザー等の非日本系のビールより、キリンやアサヒという日本産のビールの方がたくさん並んでいます。値段を見ても、バドワイザーとアサヒが同じくらいで、何故かキリンが微妙に安いということになります。
一番驚いたのが牛乳です。
1クォート(946ml)、つまり1リットル弱のパックが、なんと3ドル以上もするのです。現実にハワイで交換したレートで計算すれば、400円近い計算です。ドイツなどに比べて、日本の牛乳は高いといつもぼやいていたのですが、上には上があるものだと感心しました。同じ理由で、ワインも、日本で買う場合に比べ若干高いという感じでしたから、今回の滞在では、ワインはほとんど飲まずに、ビールばかり飲んでいました。一般に、アメリカは食事の量が多いのに、それに加えてビールでは、体重にはどうしても悪影響が出ますね。ハワイの町では、曙や小錦のような巨漢をざらに見かけるのですが、その原因は、この食事の量に加え、ビールの相対的な安さの性ではないかと思いました。四 ハワイの教育
ハワイ州憲法第
10章第5節は、ずばり「ハワイ大学(The University of Hawai`i)」と題されています。つまり、ハワイ大学は、れっきとした憲法機関なのです。したがって、正式にはハワイ大学システムというべき存在です。UHという言い方も非常にポピュラーです。大学キャンパスを三つ持ち、そのほかに七つのコミュニティカレッジといわれるキャンパスがありますから、合計10のキャンパスがあることになります。これらが、主要6島に散在している訳です。これらのキャンパスを合計すると、学生数は
5万人に達します。このうち、4万4千人がアンダーグラデュエイト・スクール、すなわち日本であれば、短大か学部レベルの大学生で、残りがグラデュエイト・スクール、すなわち大学院レベルの学生ということになります。5万人という数字そのものは、我が大学に比べればちょっと小振りで、最初、そう驚かなかったのです。しかし、はっと気が付いたのが、母集団、すなわちハワイの総人口が上述の通り、120万人に過ぎないということです。しかも、出身地別には、ハワイの住民が89%、米本土から来た学生が6%、残りがその他の国々ということになります。すなわち、ハワイ大学学生の9割はハワイの住人なのです。これからすると、ハワイ住民のかなりの割合が、ハワイ大学に通った経験があるはずです。そこで、一体ハワイの教育水準はどうなっているのだろう、と考えて調べてみました。表4は、25歳以上の年齢のハワイ住民に関する2000年度の統計数字です。 表4 ハワイ州における教育水準別人口
教育水準 人数 割合 (単位:人) (単位:%) 5年生未満の教育 19,319 2.41 5年生〜8年生 38,486 4.80 9年生〜12年生(卒業証書なし) 66,006 8.23 高校もしくはそれと同等の学校卒業 228,832 28.52 College卒業(学位なし) 175,092 21.82 Associate degree(準学士) 64,701 8.06 Bachelor's degree(学士) 142,493 17.76 Master's degree(修士) 43,665 5.44 Professional school degree(専門職博士) 16,523 2.06 Doctorate degree(博士) 7,360 0.92 25歳以上の総人口 802,477 100.00 この表の数字から高校進学率を計算すると、
84.6%ですから、ほとんど100%の日本の方がすごいということになります。しかし、カレッジ以上の大学進学率は56.1%で、日本を上回ります。4年生大学の卒業以上ということになると、26.2%で、再び日本が上回りますが、博士号保有者は日本が下回るということで、基本的には日本とほとんど変わらない、高学歴社会なのだということが判ると思います。こういう数字から見ると、ハワイの、教育に対する投資は、相当なもので、おそらく第
3の産業というべき地位を占めているのではないかと思うのですが、残念ながら、それを裏付ける数字を見つけることはできませんでした。ハワイ大学の学生の内訳を見ると、次のようになります。
男女比で見ると、男性が
42%、女性が58%ですから、かなり女性比率の高い大学です。人種別に見ると、白人
20%、日本人20%、フィリピン人15%、ハワイ原住民もしくはその混血が13%、そして、のこり32%がその他の民族ということになります。総人口レベルでは、先に紹介したとおり、白人24.3%、日系人16.9%、フィリピン系14%でしたから、白人が若干低く、アジア系が若干高くなってはいるものの、ほぼ人口に比例した進学率になっています。それに対して、ハワイ系原住民だけが混血人口まで許容して水増ししていますが、それでもこの数字ですから、原住民系の人々の大学進学率は低いと言えそうです。これは深刻な問題で、ハワイ大学では、入学に当たってアファーマティブ・アクションを導入していますが、全体に低学歴であるため、大学レベルの対策ではあまり効果が出ていないという状況のようでした。