憲法 第14回                         甲斐 素直

権力分立制と唯一の立法機関

一 自由主義と立法権の意義 

(一) 旧憲法の考え方=帝国議会のいう立法とは「法律」という法形式である。

憲法が「法律」事項としたもの〈憲法における「法律の留保」〉

 ⇒法律によらない限り行政は制限することができない。

法律事項としていないもの(例:信教の自由[28条])は行政限りで制限できる。

(二) 二重法律概念=現在の通説的考え方←権力分立制は自由主義の派生原則

○ 実質的意味の立法=法規命令Rechtssatz(単に法規ともいう)を国会は独占する。

○ 形式的意味の立法は、憲法の定める場合、国会はこれを保有する

 法規命令(法規)の概念=実質的意味の立法

  1 対国民的な効力を持つ法規範

「直接に国民を拘束し、または少なくとも国家と国民の関係を規律する」法規範

 ○ 国家機関内部だけを対象とする法規範(内部規則)

 @ 立法機関内部を対象とする法規範=議院規則 (582項)

 A 司法機関内部を対象とする法規範=裁判所規則(77条)

 B 行政機関内部を対象とする法規範=行政規則 (講学上の名称)

内部規則であって、国会が立法権を有する法規範

 内閣法(66条)、裁判所法(761)

  2 一般性ある法規範

 ※一般性=2重の一般性

一般的な人々に対して、一般的な指図規律を行う。

 実際には、法は人々を類型化し、その範囲内で同一の取り扱いを行うので、そのことを考慮すれば定義は「類型的に同じ範囲に属せしめられた人々及び生活関係について、類型的に平等な指図・規律を行う」とするのが実際的である。

形式的意味の立法=個別具体的な法規範(特定性ある法規範)

 @ 行政行為

 A 司法行為

特定性ある法規範であって、国会が立法権を有する法規範

 予算(86条)

 

二 国会による「立法権の独占」原則の派生原則

(一) 国会中心立法主義

  国の立法は、すべて国会によって行われる。

⇒国会が立法権を独占し、国会以外のものが立法する事を認めない

  1 法規命令と行政立法の関係

     「法の支配」(法治主義)

       執行命令(第73条第6号本文)

       委任命令(同但し書き)

  (1) 白紙委任の禁止(網羅的な列挙も白紙委任である)

    ナチスに対する授権法(議会による立法権の放棄)

違憲の可能性が論じられるもの

  国家公務員の政治基本権の制限(国家公務員法102条)

 

  (2) 裁判所規則による執行命令ないし委任命令の制定(第77条第1項)

 内部規則については、裁判所規則は自由に制定が可能であるが、対国民的法規範については、法律による委任もしくは法律の執行目的である必要がある。

  2 憲法の定める国会中心立法の例外ないし適用外

  制度の根拠
@ 議院規則 (582) 内部規則
A 裁判所規則 (77) 内部規則
B 条例 (94) 地方自治
C 条約 733号) 国際慣習法
D 憲法改正 (96) 法律より上位の法規範

(二) 国会単独立法主義

  国の立法は、すべて国会によって行われる。

⇒立法は、他の国家機関の関与なしに、国会の議決だけで行う

  1 憲法41条の591項による補足

   →大日本帝国憲法6条「天皇は法律を裁可し其の公布及び執行を命ず」

   37条「すべて法律は帝国議会の協賛を経るを要す」

41条及び591項が存在する結果、

○法律に対する主任の国務大臣の署名等(74条)は、立法の効力に影響しない。

○法律の、天皇による公布(71号)は、立法の効力に影響しない

  2 憲法の定める国会単独立法の例外ないし適用外

  制度の根拠
@ 地方自治特別立法 (95条) 地方自治
A 条約       (733号) 国際慣習法
B 憲法改正     (96条) 法律より上位の法規範
C 内閣の法律案提出権(72条) 議院内閣制