憲法 第15回

          甲斐 素直

国民主権と国会の最高機関性

 

一 封建体制下における主権概念の不要性

 

二 主権の概念

 ○主権とは、一国を統治する権能で、唯一・絶対・不可分という特徴を持つ。

⇒君主主権、天皇主権及び国民主権でいう「主権」概念は、何れもこの意味

 ○初期においては、主権者=国家と認識されていた。

 

(一) 国家主権説

  1 絶対王制における国家と主権者の一致

 朕は国家なり

 

  2 近代国家の発達⇒主権者と国家の分離

  (1) 国家の三要素説

国家とは、次の三要素で構成される。

 @ 主権

 A 人民

 B 領土

  (2) 主権概念の細分化

@ 国家の統治権 「日本国の主権は本州・・に局限」ポツダム宣言

「国会は国権の最高機関」憲法41条

A 国家権力の最高独立性=対外的独立性

 「自国の主権を維持し」憲法前文

B 国政についての最高決定権

 「主権の存する日本国民」憲法1条

 

  3 国家主権の下において、主権者をどう把握するか

  (1) 国家法人説⇒美濃部達吉「天皇機関説」

 国家を一つの法人と考え、天皇をその法人の機関と考える

 

  (2) 狭義の国家機関説

国家の主体性を「『人格』と呼んで、擬人的な表現を用いるのは、原始社会以来、つねに人間の思惟を支配したアニミズムの結果である」宮沢俊義

 

  (3) 国民主権説と人民主権説の対立

 

 

三 国民主権と代表機関

(一) 人民主権説(社会契約説)

人民=社会契約を行いうる人の集団→直接民主制の要求

○ 人民代表における命令的委任→リコールの容認

○ 人民発案

○ 人民拒否

○ 人民投票

 

(二)国民主権→国民代表

国民=「老若男女の区別や選挙権の有無を問わず、『いっさいの自然人たる国民の総体』を言う」(芦部信喜『憲法学T』240頁)

○ 国民代表における間接民主制の要請(15条2項)

   ⇒命令的委任の禁止(51条)→リコールの禁止

○ 国民発案・拒否・投票の禁止⇒議院の解散の禁止

(三) 普通選挙と国民主権の変容

厳格な国民主権は、制限選挙を要請する(純粋代表)⇒44条本文参照

 

社会構造の変化が、普通選挙を要求する(半代表) ⇒44条但書参照

 

議会が国民を害する危険性が発生する

直接民主制的制度の導入により、普通選挙制のもたらした弊害を除去する必要がある(半直接代表)⇒7条3号、81条、96条

 

(四) 現行憲法下における国民主権

  1 国民の概念

  (1) 国民と認められる一切の自然人たる国民の総体(抽象的存在)

  (2) 現時点での有権者の全体(実行力をもつ具体的存在)

 

  2 国民主権の意義

  (1) 正当性の契機としての国民←国民の総体

  (2) 権力性の契機としての国民←有権者集団

 

(五) 国民主権原理とわが国国会の最高機関性

 「国権の最高機関」という言葉の意義

  1 政治的美称説=国民主権説を採る場合、最高機関とは国民のことである。

議論の前提にあるのは、「国家主権」概念である。 

  2 総合調整機関説

わが憲法は立法以外にも国会に様々な権限を認めている。

          例:議院内閣制、国会中心財政主義

        その基礎となる地位は何か?