憲法講義 第18回
甲斐 素直
国会の種類と権限
一 国会の種類
国会は会期中だけ存在している⇒会期不継続の原則(国会法第68条)
(一) 会期(国会が活動能力を持つ期間)
国会が活動能力を持つ期間=召集の日から起算(国会法第14条)
1 国会の召集=会期の始期(国会法第14条)
内閣が召集する→形式的には天皇が召集する(7条2号)
⇒わが国の場合には、自律召集は認められない。
2 会期の種類
(1) 常会(「通常国会」といわれることが多い)(52条)
毎年1月に召集(国会法2条) 会期は150日(同10条)
(2) 特別会(第54条第1項) 衆議院の解散後、最初に召集される国会
(3) 臨時会(同じく「臨時国会」といわれる)
@ 内閣が任意に決定(53条本文)
A いずれかの院の議員の4分の1以上の要求(同第2文→国会法3条)
B 任期満了に伴う選挙終了後(国会法2条の3)
3 会期の延長(国会法12条)及び休会(国会法15条)
(二) 参議院の緊急集会(54条2項但書→国会法99条以下)
内閣が召集する。
会期の定めはない⇒緊急案件の審議のすべてが終了すれば、散会する。
二 委員会(国会法40条)
(一) 常任委員会(同41条)
・全議員が必ず、少なくとも一箇の常任委員になる(同42条2項)
・専門員及び調査員がおかれる(同43条)
(二) 特別委員会(同45条)
・特に必要と認めた案件
・常任委員会の所管に属しない特定の案件
(三) 本会議
三 国会の権限
(一) 法律の制定
@ 本会議の公開の原則(57条→国会法62条、63条)
A 両議院での可決(59条1項)
B 衆議院の出席議員の3分の2以上による再可決(同2項、4項)
C 両院協議会(同3項)
(二) 財政権(予算の制定など)⇒第24回(財政)で説明予定
(三) 条約についての内閣と国会の権能
1 憲法98条2項にいう条約の概念
国家間の合意もしくは国際機関と国家間の合意であって、文書化され、法的拘束力をもつものの総称⇒どのような名称を使うかに関わりなく、実質で決める
2 憲法73条3号本文にいう条約(内閣が締結する条約)
(1) 正式の条約の締結手続き
@ 署名(記名、調印) :全権代表者⇒原則=これで条約は発効
A 批准(承認、受諾、加入):内閣⇒例外=本国政府の批准権留保
(2) 簡略方式による条約の締結手続き
交換公文、共同声明など簡略な方式による条約締結が増加している。
3 憲法73条3号但し書きにいう条約=国会承認の必要な条約
(1) 承認の必要な条約(政府見解)
@ いわゆる法律事項を含む国際約束(例:租税条約)
A いわゆる財政事項を含む国際約束(例:経済協力に関する条約)
B わが国と相手国との間、あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それ故に、発効のために批准が要件とされているもの(例:日中友好条約)
(2) 承認の不必要な条約(一般に「行政協定」という。)
上記@ABの裏返しとなる⇒条約のほとんどはこの類型に属する。
4 事後の承認が得られなかった場合の条約の効果
条約法に関するウィーン条約第46条
いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし、違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則にかかるものである場合は、この限りではない。
違反は条約の締結に関し通常の慣行に従いかつ誠実に行動するいずれの国にとっても客観的に明らかであるような場合には、明白であるとされる。
5 条約と憲法の関係
(1) 超憲法的な効力を持つ条約
ポツダム宣言、EU条約、国際慣習法(確立された国際法規)の成文法化、等
(2) 憲法に劣後する効力を持つ条約
国会の承認が必要な条約(73条3号但し書き)
(3) 法律に劣後する効力を持つ条約
国会の承認が不要な条約(73条3号本文の条約及び省庁間協定)