憲法統治機構 第2回
甲斐 素直
民主主義と国権の最高機関
一 主権の概念
(一) 初期の定義=その国における絶対的、恒久的、不可分な最高権力
1 王権神授説 君主主権説・・ボーダン
2 社会契約説 君主主権説・・ホッブス、ロック
3 社会契約説 人民主権説・・ルソー
社会契約に参加したもの=被治者が主権者
4 個人主義 国民主権説
統治者と被治者の自同性
○主権とは、一国を統治する権能で、唯一・絶対・不可分という特徴を持つ。
⇒君主主権、人民主権及び国民主権でいう「主権」概念は、何れもこの意味
○初期においては、主権者=国家と認識されていた。
(二) 国家主権説
1 近代国家の発達⇒主権者と国家の分離
国家の三要素説
国家とは、次の三要素で構成される。
@ 主権
A 人民
B 領土
2 主権概念の細分化
(1) 国家権力そのもの=統治権 「日本国の主権は本州・・に局限」
(2) 国家権力の最高独立性=対外的独立性 「自国の主権を維持し」
対内:他のいかなる権力主体よりも優位にあること
(3) 国政についての最高決定権 「主権の存する日本国民」
(4) 国家主権の下において、主権者をどう把握するか
@ 国家法人説⇒美濃部達吉「天皇機関説」
国家を一つの法人と考え、天皇をその法人の機関と考える
A 狭義の国家機関説
国家の主体性を「『人格』と呼んで、擬人的な表現を用いるのは、原始社会以来、つねに人間の思惟を支配したアニミズムの結果である」宮沢俊義
二 国民主権と代表機関
(一)人民主権→人民代表
命令的委任 15条1項
歳費の受領権 49条
直接民主制による修正
人民発案(請願権? 第16条)
人民投票(憲法改正 第96条)
人民拒否(地方自治特別法 第95条)
(二)国民主権→国民代表
1 間接民主制の原則 命令的委任の禁止 第15条第2項、第51条
(1) 国民の概念
@ 国民と認められる一切の自然人たる国民の総体(抽象的存在)
A 現時点での有権者の全体(実行力をもつ具体的存在)
これは本来、国民主権では認められない
⇒人民主権原理の影響による国民概念の変容
(2) 国民主権の意義
@ 正当性の契機←国民の総体
A 権力性の契機←有権者集団
(3) 国民代表の種類
@ 純粋代表 44条本文、47条
A 半代表 44条但し書き⇒普通選挙
B 半直接代表 7条3号、81条、96条
三 わが国国会の地位
(一)国権の最高機関
1 政治的美称説=国民主権説を採る場合、最高機関とは国民のことである。
議論の前提にあるのは、「国家主権」概念である。
2 総合調整機関説
わが憲法は立法以外にも国会に様々な権限を認めている。
例:議院内閣制、国会中心財政主義
その基礎となる地位は何か?
この点に関する説の対立からくる差異
国政調査権
補助権能説←政治的美称説
立法機関としての補助権能
議院内閣制からくる補助権能
国会中心財政主義からくる補助権能
⇒結果として、今日においては、学説の差異による結論の差異はない。
独立権能説←総合調整機能説
(二)代表機関
全国民を代表する選挙された議員で組織する(第43条第1項)
@ 議員及び選挙人の資格(第44条)
A 選挙に関する事項 (第47条)
これらについての決定権は、議会自身にある←国民主権原理の反映