憲法統治機構論 第7回
甲斐 素直
国会の権能とその行使
一 委員会制度
憲法上は、明文がないが、国会の権能は、現実には委員会制度を通じて行使される。
(一) 常任委員会(国会法41条)
1 すべての議員は、いずれかの常任委員会に属する(国会法42条2項)
⇒内閣総理大臣や閣僚も例外ではない
⇒会派割り当ての関係(国会法46条)
2 専門員・調査員がおかれる(国会法43条)
(二) 特別委員会(国会法45条)
(
三) 委員会審議の特徴(国会法47条、52条)二 法律の制定権
(一) 法律の制定過程
甲議院へ提案⇒委員会審議⇒本会議に付するを要しないとする決議(国会法56条3項) ⇒廃案(4項)。7日以内の20人以上の要求で本会議に付する必要(3項但書)
甲議院へ提案⇒委員会審議⇒委員会での表決(賛否何れでも良い)⇒甲本会議審議
⇒甲本会議での否決⇒廃案
⇒甲本会議での可決⇒乙議院への送付⇒委員会審議⇒乙本会議審議
⇒乙本会議での否決⇒甲議院へ返付→甲議院(衆議院)による両院協議会の要求
⇒協議案の成立⇒甲議院による審議⇒乙議院による審議⇒成立⇒公布
⇒協議案の不成立→衆議院による特別多数の議決⇒成立⇒公布
⇒乙本会議での修正⇒甲議院への回付→以下は否決の場合と同様
⇒乙本会議での可決⇒成立⇒公布
(二) 法律の提案
@ 議員提案(国会法第56条)
A 委員会提案(国会法第50条の2)
B 他の議院による提案(国会法第56条の4、60条)
C 内閣による提案(第72条→内閣法第5条、国会法第58条等)
(三) 議案の委員会への付託(国会法第56条第2項)
@ 内閣の意見陳述権(第63条→国会法第57条の3、第70条)
A 国務大臣等の出席要求権(国会法第71条、72条)
B 公聴会(国会法第51条)
C 委員会の非公開の原則(国会法第52条)
(四) 本会議
@ 議案の趣旨説明(国会法第56条の2)
A 本会議の公開の原則(第57条→国会法第62条、63条)
B 両議院での可決(第59条第1項)
C 衆議院の出席議員の3分の2以上による再可決(同第2項、4項)
D 両院協議会(同第3項)
(五) 法律の公布
@ 内閣を経由しての議決の奏上(国会法第65条)
A 内閣総理大臣及び主任の国務大臣の連署(第74条)
B 天皇による公布(第7条第1号)
三 憲法改正の発議権(96条)
(一) 衆参両院は、この点では対当の権限を有する。
(二) 総議員とは?
@ 法定数説
A 各議院に現に在職する議員総数を言う
⇒A説が妥当 欠員を自動的に反対者に数えることになる。
(三) 国会への提案権は誰が有するか
法律の場合と同様に考えてよいか?
四 財政権
改めて詳しく論ずる
五 条約の承認権
改めて詳しく論ずる
六 内閣総理大臣の指名権
参議院規則
20条 内閣総理大臣の指名は、単記記名投票でこれを行う。
A 投票の過半数を得た者を指名された者とする。
B 投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について 決選投票を行い、多数を得た者を指名された者とする。但し、得票数が同じときは、決選投票を行わなければならない二人又は指名される者を、くじで定める。
C 議院は、投票によらないで、動議その他の方法により指名することができる。
衆議院規則
18条 内閣総理大臣の指名については、記名投票で指名される者を定める。
A 投票の過半数を得た者を指名される者とし、その者について指名の議決があつたものとする。
B 投票の過半数を得た者がないときは、第八条第二項の規定を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。
C 議院は、投票によらないで、動議その他の方法により、指名することができる。
8条2項 投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。
七 弾劾裁判所の設置権(第64条←第15条第1項)
公の弾劾 Public Impeachment(第78条)
民意を背景とする訴追行為に基づく、公権力による罷免手続き
(一) 訴追理由(裁判官弾劾法第2条)
弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき
(二) 裁判官訴追委員及び訴追委員会(国会法第126条及び裁判官弾劾法第5条以下)
裁判官弾劾法
5条
@裁判官訴追委員(以下訴追委員という。)の員数は、衆議院議員及び参議院議員各十人とし、その予備員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各五人とする。
11条(調査)
@訴追委員会は裁判官について、訴追の講求があつたとき又は弾劾による罷免の事由があるを思料するときは、その事由を調査しなければならない。
A訴追委員会は、官公署に前項の調査を嘱託することができる。
B訴追委員会及び前項の嘱託を受けた官公署は、その調査に関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
12条(訴追期間)罷免の訴追は、弾劾による罷免の事由があつた後三年を経過したときは、これをすることができない。但し、その期間内に、衆議院議貝の任期が満了し、又は衆議院が解散されたときは、その後初めて召集される国会において衆議院議員たる訴追委員が選挙されて後一箇月を経過するまで、又、同一の事由について刑事訴追があつたときは、事件の判決が確定した後一年を経過するまで罷免の訴追をすることができる。
(三) 弾劾裁判所(国会法第125条及び裁判官弾劾法第16条以下)
16条(裁判員・予備員)裁判員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各七人とし、その予備員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各四人とする。
(四) 判決の効果(同第37条)
37条(罷免の裁判の効果)裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免される。
41条(免官の保留) 罷免の訴追を受けた裁判官は、本人が免官を願い出た場合でも、弾劾裁判所の終局裁判があるまでは、その免官を行う権限を有するものにおいてこれを免ずことができない。
(五) 資格回復の裁判(同第38条)
38条(資格回復の裁判)弾劾裁判所は左の場合においては、罷免の裁判を受けた者の請求により、資格回復の裁判をすることができる。
一 罷免の裁判の宣告の日から五年を経過し相当とする事由があるとき。
二 罷免の事由がないことの明確な証拠をあらたに発見し、その他資格回復の裁判をすることを相当とする事由のあるとき
A 資格回復の裁判は、罷免の裁判を受けた者がその裁判を受けたため他の法律の定めるところにより失った資格を回復する。
八 法律に基づく権能
(一) 緊急事態の布告の承認権(警察法74条)
内閣総理大臣は、71条の規定により、緊急事態の布告を発した場合には、これを発した日から20日以内に国会に付議して、その承認を得なければならない。ただし、国会が閉会中の場合または衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において速やかにその承認を得なければならない。
(二) 自衛隊の出動の承認権(自衛隊法76条)
(三) 中央選挙管理委員会委員の指名権(公職選挙法5条の2第2項)
委員は、国会議員以外のもので参議院議員の被選挙権を有するものの中から国会の議決による指名に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する。
(四) 会計検査官任命の同意権(会計検査院法4条)
検査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。
(五) 人事官任命の同意権(国家公務員法5条)
(六) 国家公安委員任命の同意権(警察法7条)
その他独立行政院会員の任命