憲法統治機構論第19回

       甲斐 素直


財政(その4) 租税法律主義・会計検査院


一 租税法律主義(憲法84条)⇒課税要件法定主義

(一) 税法学上の概念(田中二郎)

「国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、その経費に充てるための財力調達の目的をもって、その課税権に基づき、法律(又はこれに基づく条例)の定める課税要件に該当するすべての者に、一般基準により賦課する金銭給付」

   これをそのまま憲法上の概念とする説もある。

 この説の問題点

  1 金銭給付性

 金銭を徴収しなくとも、租税といえる。⇒江戸時代の米や労力の賦課

 現行の狭義の租税法の説明に過ぎない。

  2 一般的標準に基づく賦課

 法律が一般性を有することを述べているに過ぎず、租税と負担金等とを区別する基準にはならない。



(二) 憲法学上の概念

  1 広義説A(宮沢俊義説)

   国による強制的な金銭賦課

→国の許認可にかかる私企業の料金も84条の対象となる。



  2 広義説B(清宮四郎説)


   公権力により国民の自由意志にもとづかないで定められ、徴収されるもの


→国の特別の給付に対する反対給付としての料金の徴収も含まれる。



  上記2説と財政法3条の関係<財政法3条は、実質的租税概念を定めたものか?>


  41条と、83条、84条の相互の関係はどのように理解すべきか。



  3 私見

 租税とは「国(地方公共団体を含む)が、その特定の行政サービスに対する対価としてではなく、その経費に充てるための財力調達の目的をもって、人民から徴収する財産価値である」


  (1) 非対価性


  (2) 国の収入目的性


  (3) 非選択性


 根拠:法における予見可能性の確保=担税力の存在を認定する客観的基準は存在しない

 ⇒課税要件法定主義



 84条は「担税者の範囲、担税の対象、担税率等を定めるにつき法律によることを必要としただけでなく、税徴収の方法をも法律によることを要するものとした趣旨」である(最高裁判所大法廷昭和37年2月21日判決)


 ○通達課税の違憲性  判例は反対⇒最裁昭和33年3月28日判決(百選U432頁)


 ○地方税における「租税条例主義」と課税要件の明確性


⇒仙台高裁秋田支部昭和57年7月23日判決=百選U 434頁


⇒札幌高裁平成11年12月21日判=平成12年度重要判例解説 22頁



二 会計検査院


(一) 権力分立制と会計検査院


  1 立法府付属機関説



  2 司法機関説



  3 行政府所属機関説



  4 第4権説



  5 私見=国会の優越する内部行政領域



(二) 決算の法的性格


 ○ 実務は、単なる報告案件とし、法規範性を認めていない。


 ○ 学説には、法規範性を認めるべきだとする有力説がある。


  1 政府の責任解除説について



  2 予算確定説について



  3 予算決議との照応関係説について



  4 私見=「決算による財政管理」説