憲法統治行為論第
24回甲斐 素直
憲法第
9条憲法第
9条に関する次の各文章について、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。ア
この解釈に対しては、これまでの国際法の用例が、「国際紛争を解決する」ための戦争を禁止するという定式によって、専ら侵略戦争を禁止しようとしてきたことと合致しないのではないかという批判が加えられている。
イ
.憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争が、いわゆる侵略戦争を意味すると解すると、同項自体は、自衛権の発動としての戦争(自衛戦争)を禁止していないことになる。しかし、この解釈に立っても、同条第2項が、侵略戦争放棄という「前項の目的」を実質的に達するために一切の「戦力」の不保持を定めたと解すれば、結局、外敵との戦闘を主たる目的とする物的組織体を設け得るという解釈は、生じる余地がなくなる。同条第
1項の「国際紛争を解決する手段」及び同条第2項の内容を前記のように解することに対しては、侵略戦争以外の戦争についても、結局同条第2項によって不可能になるというのであれば、同条第1項による放棄の対象を侵略戦争に限定する意味があるか疑問であり、立法技術的にも拙劣といわざるを得ないとの批判がなされている。ウ
.憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争をいわゆる侵略戦争と解した上で、そのような限定的放棄をすることを同条第2項の目的ととらえ、同条第2項の意味を、同条第1項で放棄された侵略戦争を行うための戦力は保持しないことを定めたものと解すれば、一定の戦力の保持は許されることになる。この解釈に対しては、侵略戦争を行うための戦力とそれ以外の戦力を区別できるのかという批判がなされている。
1.
ア○ イ○ ウ○ 2. ア○ イ○ ウ×3.
ア○ イ× ウ○ 4. ア○ イ× ウ×5.
ア× イ○ ウ○ 6. ア× イ○ ウ×7.
ア× イ× ウ○ 8. ア× イ× ウ×(
2005年8月プレテスト公法系短答式1番)一 憲法第
9条制定の経緯(一)
毎日新聞の政府憲法草案のスクープ(1946年2月1日)
(二) マッカーサーノート(
2月3日)第
The Emperor is at the head of the State. His succession is dynastic. His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and responsible to the basic will of the people as provided therein.
日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。第2項 国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも放棄する。日本は、その防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。
War as sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection.
No Japanese Army, Navy or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.
第
3項 日本の封建制度は廃止される。貴族の権利は、皇族を除き、現在生存するもの一代以上には及ばない。華族の地位は、今後どのような国民的又は市民的政治権力を伴うものではない。予算の型はイギリスの制度にする。The feudal system of Japan will cease. No rights of peerage except those of the Imperial Family will extend beyond the limits of those now existent. No patent of nobility will from this time forth embody within itself any national or civic power of government.
Pattern budget after British system.
(三)
2月12日完成し、13日に日本側に交付されたマッカーサー草案第8条国権の発動たる戦争は、廃止する。いかなる国であれ他の国との間の紛争解決手段としては、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する。
陸軍、海軍、空軍その他の戦力を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が国に与えられることもない。
No army, navy, air force, or other war potential will be ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon the State.
(四) 政府原案
国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決手段としては、永久にこれを抛棄する。
陸海空軍その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権はこれを認めない。
(五) 芦田修正
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the proceeding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.
(六) 文民条項(憲法
66条2項)の追加日本に軍隊の存在が予定されていることは文民条項にも明らかである=高辻正己
二
解釈上の問題点(一) 芦田修正の狙い
1 「国際紛争を解決する手段としての戦争」
これは国際法上、一般に「国家の政策としての戦争」を意味する。⇒侵略戦争
2 「前項の目的を達するため」
前項の目的とは、「国際紛争を解決する手段」を意味する。
⇒侵略戦争を目的としない限り、いかなる軍隊を持つことも可能である。
(二) 通説の解釈
1 「国際紛争を解決する手段としての戦争」
従来の国際法上の解釈にとらわれず、およそ戦争は、すべて国際紛争を解決する手段であることを直視し、すべての戦争が放棄されている、とする。
2 「前項の目的を達するため」
3 「戦力」の意義
「対外的戦闘目的のために設けられた人的、物的な組織体」
4 交戦権
国際法上の通例に従い、交戦状態に入ったときに、交戦国に認められる国際法上の権利
→「戦いをする権利」と解することもできる
⇒それでは、上述のところと一致してしまい、意味のない重複となる。
(三) 政府解釈の変遷
1
1946年6月26日衆院本会議における吉田茂の答弁「戦争放棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定しておりませんが、第
2
1952年11月25日の閣議で法制局がまとめた統一解釈@ 憲法第
A 右にいう戦力とは近代戦争遂行に役立つ程度の装備、編成を具えるものをいう。
B 「戦力」の基準は、その国の置かれた時間的空間的環境で具体的に判断せねばならない。
C 「陸海空軍」とは戦争目的に装備編成された組織体をいい「その他の戦力」とは本来戦争目的を有せずとも実質的にこれに役立ちうる実力を具えたものをいう。
D 「戦力」とは人的物的に組織された総合力である。したがって単なる兵器そのものは戦力の構成要素ではあるが「戦力」そのものではない。兵器製造工場のごときもむろん同様である。
E 憲法第
F 「戦力」に至らざる程度の実力を保持し、これを直接侵略防衛の用に供する事は違憲ではない。このことは有事の際国警の部隊が防衛に当たるのと理論上同一である。
3
1954年12月22日衆院予算委員会=鳩山内閣の示した統一解釈要旨@ 自衛権は国が独立国である以上、その国が当然に保有する権利である。憲法はこれを否定していない。
A 他国から武力攻撃があった場合に、武力攻撃そのものを阻止することは、自己防衛そのものであって、国際紛争を解決することとは本質が違う。国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない。
B 自衛隊のような自衛のための任務を有し、かつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは憲法に違反するものではない。
C 自衛隊は外国からの侵略に対処するという任務を有するが、これを軍隊というならば、自衛隊も軍隊ということができる。しかし、このような実力部隊を持つことは憲法に違反するものではない。