*1 この通信の定義は、鈴木秀美「通信の秘密」『憲法の争点(第3版)』118ページより引用。

*2 この通信の定義は、棟居快行「通信の秘密」『法学教室』21245頁より引用。

*3 隔地者でない場合には、憲法35条の問題と把握することを明言するものとして高橋正俊「通信の秘密」『憲法の争点(第2版)』104

*4 本文に述べた修正4条は「人民を保護するのであって、場所を保護するのではない」という有名なキーワードは、カッツ対合衆国事件Katz vs. U.S.,389 U.S.347(1967)連邦最高裁判決で述べられたものである。事件は、カッツが2州間の電話によって賭博情報を伝えたことが犯罪とされたものであるが、その捜査にあたり、FBI捜査官雅電話ボックスの外側に電子盗聴・録音機を取り付けてカッツの会話を盗聴・録音して犯罪の事実を証明したことが問題となった。これに対して、連邦最高裁は、プライバシーに対する合理的な期待権reasonable expectation of privacyを侵害するとして、実際の物理的侵入がなくとも、プライバシーの侵害が成立する、としたのである。

 本件判例につき、法文文献としては、ロランド・V・デル=カーメン著『アメリカ刑事手続法概説』第一法規1994年刊288頁参照

*5 公的言論と私的言論という用語については、棟居快行注2前掲論文参照。

*6 表現の自由と通信の秘密に関する文章は、芦部信喜『憲法』新版補訂版、199頁より引用。なお、この説の典型的な表現は次のものの方が明確である。

「通信の秘密の保障は、表現の自由を補完する作用を有するとともに、プライヴァシーの権利(13条)の内容をなすものといえよう。」長尾一紘『憲法』第3版、236

 この他、伊藤正己『憲法』新版320頁、野中他著『憲法T』新版357頁(中村睦男執筆部分)等は同旨と見ることが許されよう。この立場では通信の秘密を表現の自由の一環として把握している点に特徴がある。

 それに対して、佐藤幸治は通常、この説の一人と数えられるが、通信の秘密を表現の自由の一環として論ぜず、特に「私的生活の不可侵」という節を設けて住居の不可侵と一括して論じていることからみて、疑問である。次のような表現に着目するならば、高橋正俊などと同様に、プライバシー説を採るものとして把握する方が妥当であろう。

「『表現の自由』は、いわば外的コミュニケーション過程を保護しようとするのに対して、『通信の秘密』は、内的コミュニケーション過程の保護を通じて個人間の私的接触を可能としようとするところに本来の意義を有し、その意味で『私生活の秘密(自由)』ないし『プライヴァシーの権利』の保護の一環としての性格を有する。」

佐藤幸治『憲法』第3576

 ここでは、表現の自由と通信の秘密が保護するコミュニケーションの性格が明確に異質なものとしてとらえられ、内的コミュニケーションはプライバシーの権利の一環であると明言しているからである。同様に理解しうるものとして、戸波江二・新版273頁がある。

*7 表現の自由と通信の秘密に関するこの文章は、右崎正博「通信の秘密」佐藤幸治編著『要説コンメンタール日本国憲法』三省堂1994年刊、155頁より引用。

*8 プライバシー説の立場からのこの文章は、高橋正俊前掲論文より引用。同旨と解しうるものとして辻村みよ子『憲法』259頁(ただし同書は芦部信喜前掲書をこの説の一つとして数えているので、あるいは表現の自由・プライバシー説の可能性もある)。

*9 通信の自由説については、詳しくは、阪本昌成『憲法理論V』成文堂140頁参照。この見解においては、通信の自由は次のような内容を持つものと説かれる。

「@等しく利用者(潜在的発信者)となりうること、A現実に発信者となった場合には、チャネルをいつ利用するか自由に判断し得るばかりでなく、その発したメッセージをそのままデータとして搬送されるよう保障されること、B搬送中のデータを他者から評価されることなく、いかなるメッセージであっても自由に選択して送受できることを前提として、Cデータにつき知得・漏洩・窃用されないこと」

*10 NTTなどの守秘義務の根拠に関する文章については、高橋注3前掲論文より引用

*11 平成12年度版の通信白書(郵政省編集)によると、平成11年度の電気通信事業者は、第1種電気通信事業者が249社、第2種電気通信事業者が7651社の、計7900社という膨大な数に達している。

*12 通信の秘密の限界としての公共の福祉に関するこの文章は、高橋注3前掲論文より引用

*13 プライバシー固有情報とプライバシー外延情報の区別については、佐藤幸治注6前掲書454頁以下の記述に準拠している。

*14 外国からの脅威に対して国を守るに当たっては、電子監視に合衆国大統領は令状を必要としないという制度については、デル=カーメン注4前掲書282頁参照。

*15 郵便物の押収に関する合憲説は、法学協会『注解日本国憲法』有斐閣昭和28年刊、427頁より引用

*16 憲法学者は、今日では同条について一般的に違憲と考えている。これまでに引用した書のうち、上記注に言及した書を除き、この問題に言及している全ての書が同様の見解である。刑事訴訟法学者の間にも21条違反として違憲の主張が強い。例えば田宮裕『ホーンブック刑事訴訟法』北樹出版108頁参照。

*17 当事者一方の了解を得た盗聴について、合理的緊急行為と解する者としては、例えば、阪本注9前掲書144頁参照。

*18 米国における会話の一方当事者の同意に関する文章は、デル=カーメン注4前掲書280頁より引用

*19 宴の後事件については東京地方裁判所昭和39928日判決(昭和36年(ワ)第1882号)LEX-ID27421273、参照

*20 通信の電子的監視の基準に関するこの文章は、佐藤幸治著、芦部信喜編『憲法U』665頁より引用

*21 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律関連の規則や通達の内容については、田口守一著「通信傍受法の施行」有斐閣『法学教室』200012月号、2頁参照。

 しかし、これらの法令の内容が、最高裁や国家公安委員会のホームページでは公開されておらず、法案に反対する人々のホームページを見て初めて入手しうるという状況は、国側の情報公開に対する姿勢に存在する問題性を端的に示すものといえる。

*22 米国で、わが国の盗聴法に対応する法律は、「1968年の犯罪防止及び街路の安全税に関する包括法第3Title Vof the Omnibus Crime Control and Safe Streets Act of 1968」(デル=カーメン注4前掲書279頁以下参照)及び「1986年の電子機器によるコミュニケーション及びプライバシーに関する法律The Electronic Communications and Privacy Act of 1986(EPCA)」(同285頁以下参照)である。その内容は、わが国盗聴法に比べて遙かに詳細である。

*23 犯罪捜査に盗聴器を利用した事件については、東京高等裁判所昭和28717日決定昭和27年(く)第76号、LEXID27760408参照

*24 アメリカにおける、ペンレジスターによる電子的監視に関しては、デル=カーメン注4前掲書286頁参照。

*25 棟居快行注2前掲論文によると、「多数のネット参加者が発言し、批判し、出入りが基本的に自由な井戸端会議」をチャットという。

*26 情報化社会と犯罪者に関する文章は、棟居快行注2前掲論文より引用。