「私と寮生活」
佐藤 賢一 


      

 私は最近、20歳になりました。この20年間で自分のターニングポイントは、寮生活を中学1年生から始めたことです。これが自分という人間形成の大きなウェイトを占めています。そこで今回は、「私と寮生活」について書きたいと思います。
 昭和54年12月4日、私は、長野県の軽井沢町で生まれました。そして、7歳のとき、公立の軽井沢中部小学校に入学し、それから6年後、卒業となるわけですが、実は、その小学6年生の夏、1通のパンフレットによって、私は初めて「寮生活」という言葉を知りました。そのパンフレットは、埼玉県の川越市にある「秀明学園」という中高一貫・全寮制の学校のものでした。
 私は、そのパンフレットをきっかけに寮生活に関心を持ちました。少年の私にとって、両親・家族から離れて生活することや、集団で生活することは、衝撃的なことでした。確かに、中学から私立に行くことが自分の周りでは稀であり、学費等の問題があるのは、当時の私でも分かっていました。しかし、私の中の「自分自身がどこまで通用するのか」「新しい環境で生活がしたい」などの気持ちが、両親の同意を得る原動力となりました。私はなんとか両親の同意を得て、その学校を受験し、無事合格を勝ち取り、ターニングポイントである寮生活を始めました。
 寮生活は、小学校の修学旅行の延長ではなく、24時間、仲間と生活を共にします。寮室は、中学は4人部屋、高校は3人部屋、高3は個室となっていました。設備は、テレビ等の娯楽用品はなく、机と椅子、ベット、ロッカー、衣装ケースしかありませんでした。もちろん、風呂・トイレ・洗面台は、共同で使用します。食事は、朝・昼・夜とありました。
 このような環境と設備の寮生活を通して、身につけたことがあります。ここでは、主なものを挙げてみたいと思います。
 まず、「人間観察力」です。これは、寮生活という環境から、人と人との付き合い方、ふれ合い方などの人間関係を築き上げる方法を学び、それがこの力に磨きをかけてくれたと思います。
 次に、「善悪の区別」がしっかりできることです。これは、寮生活だけでなく、社会という集団の中で生きていくために重要だと思います。
 そして、「協調性」です。自分のことだけではなく、相手のことも考えて行動することが必要です。
 これらを身につけることができた中学・高校6年間の寮生活は、私にとって一生忘れられない経験であります。
 最後に、今も、寮生活をしています。ただ、中学・高校の寮とは違い、大学の寮は、あくまで学生の自主性が重要とされ、また、個人のプライバシーを守りつつ、共に生活することが要求されます。私は、その難しさを感じながら、今までの経験を生かして、生活しています。

     静かな寮室にて、
       平成11年12月13日