恵比寿でのサイン会の報告です。

ここんところアレルギー性鼻炎などで体調がわるく、ゼェーゼェー言いながら有隣堂アトレ恵比寿店にたどりつくと
サイン会開始予定時刻より20分以上前のはず(ワタシ、時計を持たない主義)なのに
すでに、入口(当然、出口にもなる)のところに、整理券の番号とは無関係に、サイン待ちの列ができていた。
整理券があるのだから、今から並ばなくともよいと思い、店内を一巡。
入口を入ったところの通路右側にサイン会用とおぼしき机が置かれ、その上に、『「恋する音楽小説」刊行記念 阿川佐和子サイン会 3月3日・・・・』
と印刷されたお知らせ掲示板(B4かA3くらいの大きさ)が立てられるとともに、その両脇に本が平積みで何冊かずつ積み上げられ
通路左側にも同様な掲示板と本が数十冊並べられている。
しかし、それから店内を見て回ると、サイン会のために用意されているものと言えば、あと上記掲示板と「恋する音楽小説」が
数十冊並べられているコーナーがあるだけで、タテカンもノボリもなく、何も見当たらない。
池袋では、阿川佐和子フェアーをやっていたようですが、恵比寿では、それらしきものはやっていない。
やっていないどころか、阿川さんの著書は、いくら探しても単行本では「恋する・・・」の他は
「ああ言えばこう行く」と「いつもひとりで」だけ、文庫本は文春文庫が4冊あるだけ、あとは見当たらず。
ここの有隣堂さんは、大型店とは言えるけど、ワンフロアーだけなので、三省堂本店とか、八重洲ブックセンターなんかに比べると、総売り場面積は1/5以下。
だからといってこれでは・・・・正直なところ「オイオイ、こんなところで阿川さんのサイン会をやるのかよオー」という気持ちになった。
店内は混雑しているのに、ほとんどの人はサイン会お知らせ掲示板をちらっと一瞥して通り過ぎ、「恋する音楽小説」を手にとっている人はあまりいない。
明らかに宣伝不足。大丈夫かあー?

そういえば、先日、整理券をもらいに来たときには、サイン会があることを知らせるものは全くなく、ただ、新刊コーナーに「恋する音楽小説」が数冊おいてあるだけ。
そこの本を持ってレジへ行き、「サイン会の整理券をください」というと、店員さんは、私がなんのことを言っているのかわからず
上司のところに聞きに行き、その上司は、冷たく「サービスカウンターへ行ってください」というだけだった。
このときは、阿川さんの人気が高いから、整理券を出し惜しみしているのかなあと思ったが、そうではなかった。
もう一度、お知らせ掲示板に目を向けると、サイン会を行う時間である17:00〜18:00と記された下に、注意書きらしきもの・・・うろ覚えですが
サイン会終了予定時間前でも、サイン会を終了する場合がある旨・・・だったと記憶。どういうことだ? 
よくはわからないけど、例えば、30分位でサインを求めるお客さんが途絶えた場合は、その時点でサイン会はで終了するということか?
著者を手持ち無沙汰にしない、ないしは、著者に恥をかかせないための配慮か? 
30分でサイン会が終了してしまったら、阿川さんはコールド負けしたような気分をあじわうのではないか?
なんとなく腑に落ちないまま、店内を二巡りくらいしたところで、そろそろ時間だと思い、入口のところにできている列の最後尾に並ぶ。
しばらくすると、私の後ろにも人が並びはじめ、そのうち、店員さんが大勢、といっても4、5人だが、出てきて列の整理を始める。
入口のところに立っている店員さんの手をみると、かなりの枚数の整理券を握っている。やっぱり、売れ残ったんだ。
こんなことなら、無理して整理券をもらいに来なくてもよかったのにと思った。
サイン会でお客さんがあまり集まらなかった場合、著者は相当ガックリするだろうなあー
・・・阿川さんはそういうことはあまり気にしないタチのようだけど・・・でも、やっぱり滅入るだろうなあー・・・なんて考えた。

と、ここまで書きすすめたところで、ふと、阿川さんのエッセイでサイン会のことを書いたものがあったな・・・
あれを見ておく方がよさそうだ思い・・・しばし探索・・・ありました。「ときどき起きてうたた寝し」の中の・ミミズのダンス・というエッセイ。
このエッセイは、阿川さんの生まれて始めてのサイン会を題材としたもの・・・ちょっと、余談ですが、この最初のサイン会ではないでしょうが
’91年の秋の日の夕方に八重洲ブックセンターで行われた「メダカの花嫁学校」の刊行記念サイン会?
には、全くの偶然ですが、ワタシ、仕事の取引先の人と一緒に資料探しに行っていて、そこに居合わせ、しばらく阿川さんを眺めていた・・・のです。
上記エッセイにも、「ときどき驚くほどお客さんの集まらないサイン会がある」とか
「サイン会なんてあんな恥ずかしいことは引き受けない方がよい」とか、「作家間でサインを求めるお客さんの人数を競っている」とか・・・・・
書店、出版社、著者は、何人くらいのお客さんが集まるのか相当気をもんでいることが書かれている。
そりゃそうだ。著者にとっては人気のバロメーターであるし、書店、出版社にとっては売れ行きの目安になるだろうし。

あっと、書き忘れていたけど、このサイン会においては、あらかじめ配布された整理券に自分の名前を記入する欄があり
その記入欄に書かれた名前を阿川さんがご自分のサインと共に入れてくれるようになっている(サイン会ってフツウそうなんスか?)。
私は、名前なんか入れるのは芸がないと思い、一発、短歌でもつくってやろうと考えたが(←ウソ)
どう見ても名前記入欄には5、7、5、7、7の31字(だっけ?)を入れるスペースはない。
それに、阿川さんが名前の代わりにそんなに長ったらしい文を入れてくれるかどうか心配だったので、もっと短い言葉はないかと考えた。あるんですよね。
阿川さんにはおなじみのちょうどよい言葉。すなわち、「あひみて」と「めくるめく」。共に「ああ言えばこう行く」に出てくるし、「あひみて」の方は
婦人画報1月号で阿川さんが毛筆で‘書き初め’しているから書きやすいはず。
でも、「あひみて」と「めくるめく」の2語をそのまま羅列したのでは意味をなさない。ここで、3日3晩寝ずに考えて(←これもウソ)
サイン会に出かける直前に、「あひみて」に短歌通りに「の」を加え、「めくるめく」に「春」を加えれば
『あ ひ み て の め く る め く 春』となり、サイン会という一種の・逢瀬・?にはぴったりの言葉になることを思いついた(笑)。
さっそく、これを名前記入欄に鉛筆で書き込み、阿川さんどんな顔をするかなあーと、思いを巡らせながら、ワタシは恵比寿に来ていたのでした。

さて、どこまで、書いたんだっけ?あっそうそう、今日はお客さんが集まるのだろうかというところでしたね。
それで、今日はお客さんが100人も来るのだろかと不安になり、列に並んでいるサイン待ちの人数は?と、ざっと数えてみると、せいぜい20〜30人。
こういう状況のときには、ふつう書店は、お客さんの呼び込み、客引きとか、店内アナウンスを流すとかするもんだと思うけど、そういう気配はまったくなし。
残りの整理券は全部さばけるのかなあーと、ぼんやり考えていると、店内にざわめきが起き
入口とは反対側にある従業員専用口?から阿川さんが颯爽と、いうよりワタシには跳びはねているように見えたけど
笑顔をふりまきながら登場。通路の両側に人垣ができ、ちょうど、上記エッセイに書かれているように、花嫁登場場面の如き趣を呈して
阿川さんは、うしろに美形の助手兼付き人?、書店の幹部?、講談社の編集者?等を従えて、足早にサイン用の机に向かう。
阿川さん、黒っぽい半袖セーター?で首にホータイじゃなくてスカーフ?を巻いた、春らしい装い。
若干やせて見えるのはいでたちのせいか?(←かめさんが撮影した画像参照)わが生まれ故郷では阿川さんのような体つきを「きしゃ」というのだが
広辞苑には出ていない。
阿川さんがサインのための定位置に着く頃には、その周りに人垣ができ、私がいた位置からは見えなくなってしまった。
・・・が、すぐに、主催者(ってだれ?)らしき人が、「エー、これから阿川佐和子さんのサイン会を・・・・」とかなんとか、あいさつというか、開会?宣言を行い
花束贈呈などはなく?、そのままサイン会に突入した模様。

様子をうかがうべく、列からはみ出してサイン用机のあたりを見ると、先頭にいた、ずいぶん長い時間お待ちになったであろう男衆3人組が順次
机の横に立っていた書店のオバサン?に自分の本と整理券を渡し、そのオバサンがサインを入れる表紙の内側のページを開き
着席している阿川さんの前に置き、閉じないように押さえている。
そこで、阿川さんが二言三言、何か言い、サインを始める。ワタシ、ここに来るまでは、1時間で100人分ものサインができるのか疑問に思っていたけど
阿川さん、筆速は相当速そうで、一冊20〜30秒といったところ。これならあっという間に終わってしまう、と思っていたら
先の男衆は、阿川さんの著書を何冊も持参していて、それら全部にサインを入れてもらっている様子。
そういうのあり?と思ったけど、今日のサイン会は、整理券が残っており、予定時間より早く終わってしまう可能性も無きしもあらず。
よって、なるべく時間を稼いでほしいという気持ちの方が強い。ワタシも、阿川さんの著書全部、それにお父さんやお兄さんの著書も一緒に担いでくればよかった。

そんなことを考えているうちに、前の人たちのサイン入れが順調に進んで、いよいよワタシの番になった。
オバサンに本(一冊だけ)と整理券を渡すと、オバサン、整理券を見ながら大きな声で、あ・ひ・み・て・の・・・・と字句通りに読み始めた。
やめてくれえと言おうとしたが声が出なかった。すこし恥ずかしかった。オバサン、「ああ言えばこう行く」は読んでないんだろうな。
前の人のサインが終わり、オバサンが本を開き、阿川さんの前に置くとともに、整理券を阿川さんに渡すと、阿川さんも、整理券を見ながら
あの独特のイントネーションで先頭の「あ」と「い」に強めのアクセントをつけて、「あ・い・み・て・の・・・」と言い
ウフフフフフッ、だったか、ホホホホホホッだったか、少し笑った。でも、あまりウケなかったようだ。

そして阿川さんは、整理券を横におき、書く位置を目検討し、躊躇することなく、すぐに書き始めようとする。この人はホントに動作が素早い。
小柄なせいもあるだろうが、とても機敏に見える。そんなに急がなくてもいいんだってばあ、と言おうとしたが、声が出なかった。
わきにいたオバサンが、「これ、ご自分でお考えなさったんですか?」と、ワタシに向かって余計なことを聞くので
「いえ、これは阿川さんの本から・・・」と答えているうちに、阿川さんは、太目のサインペン(黒色)を持って、縦書きで
まず、『あ ひ み て の』と入れ、その上に手を汚さないようにするためか、吸い取り紙?を置き、続いて
一段下げて、『め く る め く 春』と入れ、いま書いた二つの語句を見ながら、最後の『春』の下に『・・・』を加えた。
「オォー」とワタシは少し笑った。やっぱり、あと5字を足して俳句にするか、5、7、7と加えて短歌にすればよかったか。(←できゃあしないってばぁ)
そのあと、今日の日付けとご自分の名前を入れ、結局、ワタシの本へのサインは、縦書きで、
   『あ ひ み て の
     め く る め く 春・・・
         二000一年三月三日(←これは小さな字)
          阿 川 佐 和 子』
となった。
阿川さんの書いた字、特にひらがなは、丸っこくて、マンガチックで、のびのびとしており、のどかな春を思わせる。
それに字間・行間スペース、全体のバランスもぴたりと決まっており、10年前に・ミミズのダンス・と自ら揶揄していたのが信じられない。
阿川さんのサインが入った本は、次いで、隣に座っていた美形の助手兼付き人さん(どなた?)のところにまわされ
蔵書印のような四角いスタンプ(赤色)が押され、これにも吸い取り紙が当てられる。「どうも・・・」とかなんとか言って、本を受け取り
これにて、サイン入れの全工程は終了。阿川さんとの・逢瀬・時間は約30秒であった。

本にサインしてもらったのだから、もう帰ってもよかったのだが、もう少し阿川さんを見ていたかったのと
サインを求めるお客さんが18:00までに途絶えやしないか心配だったので、居残ることにした(ワタシが居残ってもしようがないが)。
本を探しているフリをしながら、阿川さんを中心として半径10m〜20mくらいの円を描くように歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まって
阿川さんを前から横から後ろから眺めた。阿川さんはときどきお客さんと談笑しながら、テキパキとサインを入れているようだ。
客層は?と、並んでいる人たちを見ると、女性7〜8に対して男性2〜3といったところ。
親子連れ、若いカップル、男性グループも見られ、おじいさん、おばあさんと呼んでもよさそうな人も混じっている。
ときどき聞こえて来る話声から、以前からの阿川ファンの他、「恋する音楽小説」という書名に惹かれたのか
音楽関係と見受けられる人も数多くいたようだ。
写真を撮っている人も結構おり、中には、阿川さんとツーショットで撮ってもらっている男もいた。チト、うらやましくなる。
やはりカメラを持ってくるべきだったか。また、今日、ここに来てから、阿川さんのサイン会をやっていることを知って
「恋する音楽小説」を買い求め、サイン待ちの列に加わる人も少なからずいた。
みなさんは、どんなサインをしてもらっているのだろか?と、少し気になったが、ワタシのいるところからは見えなかった。
ただ、モーツァルト・・・という声が聞こえたので、自分の名前の他にも何か言葉を入れてもらっている人もいたようだ。
ワタシも、「恋する音楽小説」にまつわる言葉・・・例えばオペラのアリアの一節とか・・・を入れてもらった方がよかったかもしれない。
『あ ひ み て の・・・』は、やはり短歌にして「ああ言えばこう行く」に入れてもらうのがベストだったような気がする。

こうしてウオッチングを続けているうちに、サイン待ちの列がだんだんと短くなっていく。今、何時だ?と思って、店内を見回しても時計が見当たらない。
サイン開始から30〜40分が過ぎた頃だろうか、サインを求めるお客さんが数人となり、ヤバイなあと思っていると
入口のところに立っていた店員さんが、ようやく、大声で『今、阿川佐和子さんのサイン会をやっいます。
「恋する音楽小説」をお買い求めになった・・・・』(←不正確)と、宣伝を始めた。それに呼応するかのように
何人かの人が「恋する音楽小説」を手にしてサイン待ちの列に加わる。これを3〜4回繰り返したところで、ついにサインを求めるお客さんが途絶えてしまった。
阿川さんどうするのかなあーと見ているいると、しばし休憩といった風情をして両手で頬杖をついた。
TVタックルで、ヒマだなあーつまんないなあーというとき?によくやるアレである。ワタシは、阿川さんヤルナーと思って笑ってしまった。
しかし、阿川さんが頬杖をついていたのはわずかな時間だけで、すぐに、「恋する・・・」を手にしたお客さんが阿川さんのところへ行く。
店員さんもお客さんを途絶えさせてなるものか?と、声を張り上げる。
このころになると、阿川さんも、子供に話しかけたり、無駄口をたたいたりしながら、余裕をもってサインしているように見える。
こうして、サイン入れが間欠的に行われるうちに、阿川さんの前にお客さんがいなくなって、整理券が全部さばけたのか、時間が来たのか
もうそろそろという雰囲気になり、じゃあーこの辺でと・・・・関係者のみなさんが阿川さんを取り囲むように集まり、主催者らしき人が閉会?宣言を行い
最後は拍手でしめくくった。その後、阿川さんは、机の上に出していたサイン用具類を紙袋?(笑)にしまい込み
みんなに囲まれながら最初に出てきた従業員専用口の方へ消えて行った。ワタシもヤレヤレ無事終わったと思いながら、書店を後にした。

今回のサイン会は、ワタシも準備不足だったと思う。どういうサインを入れてもらったらよいのかあまり真剣に考えず
カメラを忘れ、本も一冊しか持って行かなかった。阿川さんに話したいこと、質問したいことがいろいろあったのに、ちゃんとした作戦を立てていなかった。
行き当たりばったりという感じだった。
今回を教訓として、次のサイン会は、阿川さんとの・逢瀬・時間を3分以上にしたい(笑)。

ところで、次のサイン会はいつ頃あるのだろうか? 3月と4月?には
文庫本で「あんな作家 こんな作家 どんな作家」と「阿川佐和子のこの人に会いたい」の第3弾が出るようだが、文庫本でサイン会はやるのだろうか?
婦人公論連載の「ああだこうだ」は、もう単行本になるくらいの量はたまっているのでは?
また、’99年以降に、別冊サライに連載されていた食べ物に関するエッセイや他の雑誌類に掲載されていたエッセイなどを合わせると
こちらも単行本1冊分くらいの分量になるのでは?そう考えると、夏頃には新刊本が一つくらいは刊行されるのではないかと推測される。
サイン会は、このときが狙い目ですな。
あー、それから、これはワタシの希望ですが、週刊文春以外の雑誌に掲載されていた
阿川さんと、檀ふみさん、林真理子さん、五木寛之氏、野口悠紀雄氏等との対談をまとめると
これも単行本一冊分くらいの分量になるはずだからどこかの出版社で出してもらえないだろうか?
また、あっちこっちで行なった講演会の話や大阪帝国ホテル(だっけ?)で行われている対談などをまとめた本も出せないものだろうか?
ついでだが、ああ言えばシリーズ第3弾はやらないのだろうか?

以上、だらだらと書いてきましたが、ここら辺で終わりたいと思います。
駄文を読んでくださってありがとうございました。今後のサイン会の参考になれば幸いです。それにしても、長くなったなあー。
ここまで詳細に書いて下さった左うちわさん、ご投稿本当にありがとうございました。
 


BACK