ささやかなおはなし

 

 冬の凍てついた空気が、目覚めろ、と体を動かす。
 二酸化炭素に犯された脳を振って、窓の止め具をかちゃり、と外した。

 自分の腕を自分でさすって、温度を逃がさないようにしていた。
 かたかた、と歯が鳴る音が二階のここまで聞こえてきそう。
 とても寒そう。

「あのさぁ……」

 ごめん、と赤い舌が口から伸びた。一緒に白いものがこぼれた。
 吐き出した息は、黒を背景にして、強くその存在をアピールする。

 例え窓を閉めても、部屋のストーブはもう能力を発揮できないだろうと思った。
 四方に伸びるヒビ、破かれた窓がそれを許してくれないだろう。

「ほんとごめん。あと、誕生日おめでとう」

 床に散らばったガラスの中で転がっていた石ころ。
 と、呼ぶには大きめの石を拾いあげて、ため息をついた。
 素敵なプレゼントをありがとう。
 ため息まで上にのぼっていくんだな、って小さな感動までもらってしまった。

「来年は失敗しないようにする」
「うん、できるだけそうして」
「絶対約束するから」

 じゃあこれで。と、くるっと向きを変えて走っていく。
 窓のヒビごしに、暗闇の向こうへと消えていく、その潔い背中を見送った。
 机を照らしていた電気スタンドのスイッチを切って、参考書を閉じた。
 残されたプレゼントの残骸を抱えて、ベッドにもぐり込んだ。

「……さむー」

 カーテンの揺れ方で。
 冬の凍てついた空気が絶えず入り込むのを感じる、部屋の中で。
 布団をできるだけ引き寄せて、必死に自分を守って戦って。
 どうにもこうにも耐えがたいので、思わず笑いが漏れた。
 白く染まった息に、ささやかな願いを込めて。
 目を閉じた。

 

 

 

 

 

 おしまい。

晴れた日の音がする。。は、1月23日で、無事二歳になりましたー。
大事な誰かを思い浮かべて読んでもらえたら嬉しいです。
訪問して読んでくれた、すべての方に捧げます。ありがとうございます。
約束してしまったので、来年まではきっちり頑張りたいなぁと思います。

 

 

 

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