+サンタのくしゃみ+
はっくしゅん。 くしゃみも例外なく白い空気になって、空へとのぼっていく。 噂の出所の覚えがありすぎて、弱ったなぁと思った。本日の場合はとくに、だ。 鼻の頭を赤くしながら、両腕を交差してさする。摩擦熱とか発生させたらなんとかならないものかと思った。 先ほどばったりと、追いはぎに出会った。 世界で一番平和な国と謳われた日本も、夜道を一人で歩いちゃいけない物騒な時代になりました。 幸い、上着をはがれても下には防寒用にトレーナーを着ている二段構えで。 イルミネーションで華やかに飾り付けられた通りは、人の出もそこそこ。 立派に産んでくれた両親に感謝を、でも同じぐらい憎悪を。 通りの建物から漏れてくる、明かりとかにおいとか音とか。 思わず、ふふふんふんと、幸福な歌、鼻から作り出しちゃうくらいに。 「ふふふふふんふんふん……ふふ?」 途中から、下手くそな鼻歌の半音上をハモる音が。 少し先、建物と建物の間、少しくぼんだところから。 |
そのくぼみはクリスマス色の街中で唯一の灰色で。 道を行く人たちはみんな、上手に視界の端に追いやるのに成功していた。 元祖サンタ自身、それを望んでいるようで。 光でできた影を見つけるのは難しいことだった。 たぶん自分が見つけちゃったのは、中途半端な色に染まっていたからだな。 と、真っ赤なズボンを見下ろしながら分析してみる。 「クリスマスなのにずいぶん薄着だな、にいちゃん」 はは、という乾いた笑いは、次の瞬間豪快な笑いに吹き飛ばされた。気持ちいいくらいに。 そのとおり、無視して、なかったことにすることもできた。 「そりゃあどういうつもりだ?ん?」 言い訳を、しなければ。 はらり、と雪が舞い降りてきた。 |
「お前は、厄介なもんまで呼んできやがったなー」 すんません、と言いながらずるずるとする鼻を手の甲でぬぐう。 ヒビがたくさん入った顔をしわくちゃにして、元祖サンタがまた笑う。 「俺も見習って、追いはぐかな。お前のそのナウい真っ赤なズボンをくれよ」 サンタ志望なんで。 ダンボールの隙間から空を睨みつけたあと。 「どっか、行くんですか?」 確かにこのままここで寝たのでは朝には冷たくなっているだろう。 「……なんだぁお前、家なしか?」 答えたくないので答えない。 すっと、伸びてきた手に頭をぐしゃぐしゃとされた。 元祖サンタクロースがそんなに甘いはずもなくて、すぐに突き放された。 はっくしゅん。 一年に一度だけの特別な日、半人前サンタも休んでいる暇があるはずもなくて。 一輝はよいしょ、と重い腰を上げた。 |
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誕生日お祝いも兼ねてかなり豪華版。
はたちになったぞー
ということで、一番付き合いの長い彼です。
雪のように平等に、今夜はたくさんの幸せが降りますように。