インターネットがひらく総合的学習
(明治図書)掲載
生徒と先生私たちの心を届けよう
−湯島からケナフを送ろうプロジェクト−
「ケナフが大きくならないところがあるんだって。」
「湯島のケナフを送ろうよ。」
「湯島からケナフを送ろうプロジェクトだ。略してKYOP。」
「キャラクターがほしいね。鳥がいい。ケナフを届けるイメージにぴったりだ。」
「できるだけたくさん送ってやろうよ。もう一度種を植えた方がいいね。」
次々にでてくるアイデア。話し合いをする子どもたちの眼は、とても輝いていました。子どもたちが興奮しているのが伝わってきます。私も一緒に興奮していたのです。
「北海道からケナフを送ってほしいってメールが来たよ。」
「待ってました。」「はやく送ろう。手紙も一緒にいれようよ。」
子どもたちの思いは、どんどん大きくなっていきました。
本校は、熊本県の有明海に浮かぶ、人口500名あまりの小さな島の学校です。豊かな自然と温かな人々に囲まれた環境のなかで、7名の子どもたちが元気に生活しています。
ケナフを植えたとき、本校ではインターネットができる環境はありませんでした。ホームページから、いろいろな情報を手に入れることができると知っていても、パソコンの向こう側の人と交流する楽しさは全く知らなかったのです。
「ケナフを全国の人と育てよう。」
と提案したときも、それほど興味を示しませんでした。みんなで種を植えても、私の家に届くたくさんのメールを読んでも、子どもたちの気持ちはそう変わることがなかったのです。
そんなとき届いたのが、静岡県の清水国際中学校から北海道の中学校へ宛てたメールでした。なかなか芽がでない学校へ、現在育っている7本の苗のうち3本を宅急便で送るというのです。その1通のメールをきっかけに、子どもたちの気持ちは大きく変わったのです。
よく考えると、インターネットを使って交流をしていたといっても、それほど実感がなかったようなのです。相手のことがしっかり見えていなかったのでしょう。困っている人がいる、その人を私たちが助けよう、そう思ったとき、パソコンの向こう側には人がいるんだ、その人と関わっているんだということを感じることができたのです。それが、子どもたちの気持ち、そしてその後の取り組みを変えました。
全国の4つの学校へケナフを送ることができました。ケナフの苗を送ったわけですが、それと一緒に私たちの気持ちを送ることができたと思います。とってもとっても大きな気持ちです。お礼に、メールやべにばななどを頂き、楽しい交流は続きました。さらに全国の人の役に立てる楽しさを味わうことができたのです。
このように、全国の人とケナフを植えたことは、予想以上に盛り上がり、たくさんのことを学ぶことができました。それはどうしてなのでしょうか。私なりの見方ですが、みんな違うところからスタートしているのです。小学校から養護学校まで、校種も様々です。もちろん学年もバラバラ、山の学校、海の学校、町の学校とまわりの環境も様々です。そして、ケナフの育ち方も、育てる目的も違うのです。お互い違っていることを打ち消しあうのでなく、それぞれの違いを生かしあっていたのです。それぞれが違う色で、輝きあっていたのです。それを可能にしてくれたのが、ケナフであり、インターネットであったと思います。
そして、夢がありました。ケナフの種を植えたとき、これほどまでに活動が広がるとは考えてもいませんでした。活動がどんどん発展していったのです。
現在は、本校でもパソコンも整備され、全国の人との交流ができるようになりました。いろいろな人と出会えることは、とっても楽しいことです。それを最初に教えてくれたのが、ケナフでした。そして全国の人の温かい心でした。これからも、この温かい心をもらいたい、そして私たちからも送りたい、そう願っています。このプロジェクトに参加できてよかったと、心より感謝します。
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