−結婚前夜−

それは突然のことだった。
卒業式の日に伝説の樹の下で、
学園のアイドル藤崎詩織ちゃんから告白されるとは
思ってもいなかった。


あれから5年…

「それじゃぁ、おやすみなさい、
あしたは式場で会えるのを楽しみにしているわ」
電話の相手は藤崎詩織、隣に住んでいて、
小さい頃から良く遊んでいたが、
今では僕のフィアンセだ。

明日はその詩織との結婚式の日…
電話が終わって時計を見ると、まだ夜の9時だった。
居間に降りていくと、オヤジとおふくろにつかまり、
「あんた、藤崎さんの詩織ちゃんを嫁にもらうんだから、
真面目に働いて早く出世してちょうだいよ。
でないと釣り合いが取れなくって、
恥ずかしいったりゃありゃしない」
もう5年も聞きつづけた小言だ。

テレビを見て、お茶を飲んで…
結婚式の前日だというのに、
男っていうのはすることがないものである。
詩織は今ごろ何をやっているのだろう?
11時を回ったので2階に上がってパソコンを立ち上げると、
1通のメールが届いていた。


−メールを読む−

明日は朝の5時に起きて結婚式、今日は早く寝ることにしよう。
おやすみ、ぼくの詩織ちゃん。