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Midnight Bar.
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CHATE AU MARGAUX
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二人で
おなじ ワインを飲むことは できる
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二人で
おなじ ショパンを聞くことも できる
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二人で おなじ 海を見たあと
おなじ ベットで眠ることだって できる
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だけど なぜだろう
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二人で おなじ 夢を見ることができない
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あなたは 一人しか いないのに
私には目が二つある
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もう ひとつの目は
何を見たらいいの?
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私には 目が二つしかないのに
空には星が無数にある
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かぞえのこした星は
だれが かぞえて くれるでしょう?
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わたしは
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あなたと シャトーマルゴー を飲むたびに
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いつも おなじことを 思い出すのです
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それは 幼い頃に見た夢の話
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幼い私が 祭りの 露店で
赤い宝石を探している夢..
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さがしても さがしても
宝石が 見つからなくて 私は思った
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私に買える宝石なんて あるのだろうか?
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私の手に入る 宝石なんて あるのだろうか?
と
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私が 途方に暮れて 泣きはじめると
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いつも 決まって 目が覚めた
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私が 夢の中で泣いたのは
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宝石を 探し出せなくて
それが 悲しかったからではないのです
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宝石を どうしても欲しがる
私の心が 悲しくて
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せつなくて
泣いたのです
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それは まだ 私が幼い少女の頃
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人生が悲しみを 教えてくれるまえのことだったから
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だから 私は
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シャトーマルゴーの粘つく甘さを
くちびるに感じるたびに
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なぜか 涙が出るのです
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