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蝉の声

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金木犀の花びらが ふと微笑んで枝を離れた

散るという飛翔のかたちがあってもいい

私は飛びたいとは思わないし 

散りたいとも思わないけれど・・

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『君の書く字は 水に浮いた文字のようだね』

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彼が私にそう言った

そう言われたのは 初めてではない

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私自身もきっと 

水に浮いたような女なのだと思う

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私は いつだってそう

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だから 抱かれるきっかけを

自分で決められないから

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真夏のあの日のあの時に

『あなたが決めてください』と言ったのだ

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彼に抱かれながら 私は蝉の声を聞いていた

そして また 流されるような

 漂うような恋が始まると思うと

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涙がこぼれた

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ひかれあうことと 

結ばれあうことは違うとは

 知っていたはずだけど

愛された記憶はどこか透明で

私はいつも一人で・・

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さらさらと 風が吹く

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おしえてと 私が言う

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知らないよ と君が言う

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彼は眠りながら 私の髪を 優しくまさぐる

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彼方はどんな夢をみているの?

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風に吹かれて風鈴が鳴っている

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彼方は寝返りをする

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もう逢うたびに抱かれなくてもいいように 

一緒に暮らしたいと思った

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夏の終わり

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そとは 蝉の声がするばかり

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Index

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