. . 蝉の声 . . . . . . . 金木犀の花びらが ふと微笑んで枝を離れた 散るという飛翔のかたちがあってもいい 私は飛びたいとは思わないし 散りたいとも思わないけれど・・ . . . 『君の書く字は 水に浮いた文字のようだね』 . 彼が私にそう言った そう言われたのは 初めてではない . 私自身もきっと 水に浮いたような女なのだと思う . 私は いつだってそう . だから 抱かれるきっかけを 自分で決められないから . 真夏のあの日のあの時に 『あなたが決めてください』と言ったのだ . . . . . 彼に抱かれながら 私は蝉の声を聞いていた そして また 流されるような 漂うような恋が始まると思うと . 涙がこぼれた . .. . . ひかれあうことと 結ばれあうことは違うとは 知っていたはずだけど 愛された記憶はどこか透明で 私はいつも一人で・・ . . . . . さらさらと 風が吹く . おしえてと 私が言う . 知らないよ と君が言う . 彼は眠りながら 私の髪を 優しくまさぐる . 彼方はどんな夢をみているの? . . . 風に吹かれて風鈴が鳴っている . . 彼方は寝返りをする . .. もう逢うたびに抱かれなくてもいいように 一緒に暮らしたいと思った . . 夏の終わり . . . そとは 蝉の声がするばかり . . . |
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