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STAR DUST
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人をひとり だますたびに
空の星がひとつ 増えると
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女に 教えた男は
船出をして
そのまま 帰ってこなかった
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女は 窓辺で 星の数を かぞえながら
男の帰りを 待っているうちに
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ひとり 淋しく
年老いていきました
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あれは 夏のある夜のこと
窓辺にたたずみ
流れ星に願いを託す 女に
幼い少女が たずねました
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「流れ星に 願いを 唱えると 願いが叶うというけれど
消えてしまう星に願いを かけたら
願いも消えて しまわないの?」
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少女を見つめながら
女は 優しく 悲しそうに答えました
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「消えてしまう星だから 永遠に輝きが 心から消えないものなの」
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と
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女の言葉を理解するには
少女は まだ 幼すぎたのです
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その日から 少女は
空に いくつ星があるのか
数えてみようと思いました
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だけど
数えても 数えても 星はなくなりません
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少女は 星の数を数えるうちに
いつのまにか おとなになってしまったのです
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窓辺に すわり
姉と一緒に 星を数えていたのは 僕の母
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帰ってこなかったのは 僕の父です
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.そして 今夜もまた
誰かが星を数え始めるのでしょう
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そして
その人も また 数え終わる前に
年老いてゆくのです.
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だから 僕は
真夏の星降る夜に
ひとりで星を見上げるとき
なぜか かなしく なるのです
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