クエント編

第四十一話『クエント』
すべての謎を知るため、キリコはロッチナの言葉に従い、惑星クエントへやってきた。灼熱の太陽が照りつける熱砂のなかをさまよい歩くキリコ。ついに意識を失い、倒れたキリコを拾ったのは、砂漠商人のゲッコであった。
 目覚めたキリコはゲッコのもとを離れ、クエント人に会うため、この星で唯一の都市ゴモルへ向かう。クエント人に会うため、傭兵センターへ侵入したキリコは、クエント人の代表に対面する。代表は語る。クエント人は政府を持たず、部族ごとに暮らしていること。連絡手段は狼煙に頼っていること、などを……。
 キリコがクエントにやってきたことは、すでに秘密結社の知るところとなっていた。アロンとグランは直接的な介入をひかえ、ゴモルで商売するならず者を金で雇う。ならず者のボスであるハゼガーはゲッコからキリコの行き先を聞きだし、傭兵センターを脱出したところで襲撃してきた。猛獣用の麻酔で眠らされてしまうキリコ。
 宇宙港へキリコを運んで来たハゼガーの前に、ゴモルの市長が現れた。クエント人がキリコの身柄を要求しているというのだ。この星でクエント人の言うことは絶対である。ハゼガーでさえも、それに従わざるを得なかった。やがて、麻酔がきれたキリコは目の前にクメン王国での戦友ル・シャッコがいることに驚く。クメンとの契約が切れて故郷に帰還したシャッコに、ゲッコが連絡したのである。キリコはシャッコとともに彼の村に向かう。


第四十二話『砂漠』
クエントの衛星軌道上では、秘密結社の母艦が待機していた。慎重論を唱えるキリイに対し、アロンとグランは強攻策をもって独断先行しようともくろんでいた。クエントの脅威を知らぬがゆえに……。
 一方、シャッコの村へ向かって砂漠を渡っていたキリコたちは、そこで夜明けを迎えていた。シャッコは原始的な猟法で砂モグラを捕らえてみせる。その原始的な生活習慣は、PSの謎を求めてやってきたキリコにとって、違和感のみを感じさせるものであった。
 アロンとグランの率いる砂漠戦用のAT部隊が、キリコたちのサンドランナーに襲いかかる。辺り一面の砂漠のなかでは身を隠す術もない。さらに武器も持たないキリコたちであったが、前方に出現した裂け目の谷へ逃げ込むことに成功する。この裂け目こそ、クエント人の居住区であった。谷底へ降りていくキリコたちを追撃するAT隊。追いつめられ、弱音をはくキリコをかわいくなった…と評するシャッコ。だが、キリコは銃一丁でAT1機を奪取し、残りを撃破してみせる。
 この戦闘の報告を受けたキリイは、クエントを恐れぬアロンとグランの行為に怒りを覚えるのだった。
 キリコとシャッコは、奪ったATで先を急ぐ。ひたすらシャッコの故郷の村を目指して……。


第四十三話『遺産』
やはり谷底に存在するシャッコの村にたどりついた、キリコは静かな村人たちに迎えいれられる。キリコはここに落ち着く間もなく、シャッコに睡眠薬を飲まされ、眠ってしまう。意識を失ったキリコに、クエント人の女たちが呪術的な儀式を施した。キリコが<手を加えられた民>であるか否かを調べているのである。
 一方、サンサから退却したロッチナもまた、クエントへ向かっていた。その艦内で、ロッチナはフィアナにこれまでの自分の行動と雇い主のことを語る。彼自身もその正体を知らぬ雇い主は、常にキリコだけに関心を抱き続けていたのだった。
 キリコが眠りから覚めたのは、翌日のことであった。シャッコの村の村長であるテダヤは、女たちが感じたことを語る。キリコは手を加えられた民かもしれないと……。キリコはさらなる真実を求め、洞窟の奥で瞑想する長老メジに会う。メジはクエントに伝わる伝説を語った。かつて、クエントに神と名乗る者が現れ、手を加えられた民を作ろうとした。だが、クエントの民によって、追放されたのだという。この伝説もキリコに自分の正体がなんであるかを教えてはくれなかった。その夜、キリコは洞窟の奥へ向かう。クエントの超文明の遺産であるクエント素子はこの洞窟からとれるというのだ。そこへ、アロンたちが襲撃を加えてきた。奥へと逃げるキリコとアロンたちが見たものは、今も稼動し続ける巨大なプラントであった。そして、キリコに害を加えようとしたアロンたちは、謎の光に包まれてしまう。


第四十四話『禁断』
閃光に包まれたアロンたちの姿は、洞窟の中から消え失せていた。彼らがふたたび現れた地、そこはゴモルであった。数千キロの距離を瞬間的に移動した彼らは、母艦に帰還してその超科学の巨大さをキリイに説く。アストラギウスのすべてを手に入れることができるかもしれない、とキリイに迫るアロン。だが、キリイはクエントの謎に迫った者が、ことごとく消滅させられてきた事実を知っていた。
 その頃、窮地を脱したキリコはふたたびメジに対面していた。そこでキリコは、古代からクエントを守る不思議な力が存在していることを知る。禁断の地となっているゴモル上部に秘密があるのでは、と考えるキリコ。
 そして、ロッチナ率いるバララント艦隊が接近していることを知ったキリイは、ついに決断を下す。アロンらはそれに従い、AT50機からなる大部隊をゴモルに侵攻させた。ゴモル駐屯のギルガメス軍とバララント軍も緊張するが、大部隊を前に手を出すことはできない。クエント人の代表はこの事態を狼煙により、クエント全土に報じた。これを知ったキリコはゴモルに向かおうと考えるが、村からではあまりに遠すぎる。そこで、キリコはシャッコとともに洞窟へ入り、武器を使ってみた。思った通り、ゴモルへ飛ばされる二人。シャッコも敵のATを奪い取り、秘密結社のAT隊との間に戦闘が開始された。だが、この戦いは何者かの目覚めを誘発してしまう。次々とATが光に包まれていき、その場から消滅していく。


第四十五話『遭遇』
ゴモルから、動力を停止したキリコとシャッコ以外のすべてのATが消滅した。クエントの超科学に驚嘆するキリコ。シャッコとともにゴモルの遺跡のなかを探索するキリコに、何者かが語りかけてきた! 宙にキリコの身体を浮かせ、脳のなかに直接送り込まれてくるメッセージ。キリコは、古代クエント文明の栄枯盛衰の歴史を見る。
 一方、バララント艦隊を率いるロッチナもついにクエントに到着した。ゴモルの遺跡のなかを、ロッチナもまた自らの足で進んでいく。その傍らには、フィアナの姿があった。何者かの意志により、遺跡内で邂逅する四人。ロッチナは、キリコに干渉してくる謎の意志が自分の支配者であることを明かす。キリコはそんなロッチナを後にして、フィアナとシャッコを連れてその場を後にした。
 そして、ついに秘密結社、バララント軍に続いて、ギルガメス軍までもクエントの事件に介入してきた。しかも、その艦隊のなかの一艦には重要な参考人として、サンサから脱出したはずのゴウト、ココナ、バニラが捕らえられていたのである。ギルガメス軍もまた、AT隊をゴモルに降下させる。しかも、謎の意志はギルガメスATをキリコたちの眼前に出現させた。AT隊に追われるキリコ。謎の意志に翻弄されるようにして瞬間移動を繰り返したキリコたちは、ふたたびロッチナの前に戻されてしまう。そして、またも謎の意志はキリコの頭の中に語りかけてくるのであった……。


第四十六話『予感』
クエントに侵攻したギルガメス艦隊は、バララント艦隊を圧倒する規模のものであった。衛星軌道上で待機する艦隊司令官レイパードは、バッテンタインからクエントの謎と素体の所在についての指令を受け、バララント艦隊の司令官ロッチナとの交渉を開始する。
 両軍司令官の会談は、ゴモル宇宙港で行われることになった。外交儀礼を守りつつ、互いを牽制しあうロッチナとレイパード。レイパードは素体の返還を要求するが、ロッチナは知らぬ存ぜぬで通そうとする。しかし、証人としてゴウトたちが連れてこられ、ロッチナもレイパードの要求を退けることはできなくなる。圧倒的な戦力の敵を前に、ロッチナはフィアナの引き渡しを受諾せざるを得なかった。
 むろん、キリコがこの事態をだまって受け入れるはずはなかった。シャッコの協力でバララントの護衛ATパイロットと入れ替わり、フィアナを乗せた連絡機に潜入したのである。ギルガメス艦の内部で行われた引き渡しの際、ロッチナは交換条件として、ギルガメス艦隊の即時撤退を要求する。レイパードはそれを拒絶し、交渉が決裂しようとした瞬間、キリコのATが攻撃を開始した。混乱のなか、フィアナとロッチナは連絡艇で脱出することに成功する。この戦闘の結果、両軍の艦隊は全面的な交戦状態に突入した。キリコはその混乱のなかで、ゴウトたちを救出し、ギルガメス艦から脱出する。だが、その時、キリコは闇からの予感を感じていた……。


第四十七話『異変』
ギルガメス艦隊とバララント艦隊が激突する乱戦のさなか、キリコによって救出されたゴウトたちの小型艇は、今度はロッチナの率いるバララント艦隊に捕まってしまう。フィアナと再会を果たすゴウトたち。バララント艦隊は果敢にギルガメス艦隊に応戦していたが、戦力差による劣勢をくつがえすにはいたらなかった。ロッチナはついに退却を決意し、キリコのATを収容する。だが、すでにロッチナの艦も航行不能となるほどの甚大な被害を受けてしまっていた。
 その時、惑星クエントから無数の火玉が打ち出されてきた。そして、その火玉は次々と両軍の艦艇を呑み込み、消滅させてしまう。キリコは、それがゴモルで見たものと同じ、クエントの自動防衛システムの発動だと気づく。ようやく異変がおさまった時、その宙域に残されていたのは、キリコたちが乗り込んだ連絡艇のみであった。しかし、彼らに接近する艦が存在していた。戦闘宙域の外から様子をうかがっていた秘密結社の戦闘母艦である。連絡艇で対抗しうるはずもなく、キリコたちは秘密結社に捕らわれてしまう。ブリッジに連行される一行。連絡艇に同乗していたロッチナは、秘密結社の最高幹部が、かつて同じギルガメス軍に属していたキリイであることを知って、驚愕する。そして、ついに謎の意志は戦闘母艦にも干渉を開始した。艦の全機能が停止したなかで、キリコ、ロッチナ、キリイの三人だけがメッセージを受け取った。ワイズマンと名乗る存在からのメッセージを……。


第四十八話『後継者』
ワイズマンによって遠隔操作される戦闘母艦は、惑星クエントからほど近い宙域へ向かっていた。黒い円筒型のフローターベルトが無数に浮かぶ空間を抜けると、一行の眼前に巨大な人工天体があらわれた。人工天体に到着すると、キリイはワイズマンの意志に従い、キリコを中枢部へと連れていく。功績を独占しようと考えるキリイによって監禁されてしまったロッチナであったが、ゴウトたちがフィアナを助け出すドサクサにまぎれて、脱出することに成功する。ゴウトたちも、ロッチナも、キリコたちの後を追った。
 その頃、ギルガメス軍の上層部はクエントにおける異変にただならぬものを察知していた。そして、バララントとの星雲会議を開く決定が下され、事態は全銀河を巻き込んだものとなっていった。
 一方、ついに中枢部にたどりついたキリイたちであったが、最後の神殿に入室を許されたのは、キリコただ一人であった。神殿の中で発行するパネルと電子音に包まれるキリコ。ついにワイズマンが直接キリコに真相を語りかけてくる。キリコは自分が生まれながらのPSであり、ワイズマンの後継者として選ばれたことを知る。それに対し、自分が神に受け入れてもらえなかったことを納得できないキリイは、その場で抹殺されてしまう。やがて、神殿から姿を現したキリコは、キリイの死体を冷ややかに見おろした。神の後継者が誕生したのである……。


第四十九話『異能者』
ギルガメスとバララントの連合艦隊が、ワイズマンの人工天体に接近しつつあった。惑星クエントの異変により、アストラギウス銀河を支配し続けてきた神の存在を知った人類が、歴史を自分たちの手に取り戻すべく、反逆を開始したのである。
 一方、アロンとグランはキリコが神の子であり、自分たちの新たな指導者となったことを、ワイズマンのよって知らされていた。警備兵の手を逃れ、神殿にまでいたったフィアナやゴウトたちもその事実を知らされる。説明を求める彼らを冷ややかな目で一瞥したキリコは、彼らにかまわずに人工天体からの脱出計画を進める。そして、ついに連合艦隊の攻撃が開始された。フローターを武器として、キリコは連合艦隊を手玉にとる。分離した人工天体の一部を楯として発進する戦闘母艦。連合艦隊の濃密な包囲網を突破しようとする戦闘母艦であったが、圧倒的な戦力の前に危機に陥ってしまう。そこでキリコは、部下となった秘密結社の構成員たちに命じた。ワイズマンのために命を捨てろ、と。戦闘母艦の後部を切り離して囮にする。その隙にキリコたちの乗る前部が離脱しようというのだ。そこにフィアナやゴウトたちが乗っているにもかかわらず……。切り離された後部が連合艦隊に破壊されていくが、ゴウトたちは小型艇を奪い、かろうじて脱出に成功する。そして、キリコはワイズマンの眠る地、惑星クエントの地下をめざすのであった……。


第五十話『乱雲』
奪った小型艇で脱出したフィアナとゴウトたちは、惑星クエントに不時着した。そこで彼らと出会ったのは、メジの予言により神の子の到来を知ったシャッコであった。シャッコからいまだキリコがクエントに到着していないことを知らされたゴウトたちは、それをいぶかしがる。
 キリコたちの艦は、何者かによって航法プログラムに細工をされていた。そのため、クエント到着が20時間以上も遅れたのだ。しかし、犯人の正体はワイズマンに把握されていた。アロンが一部の不満分子を組織化して、反乱を企てていたのだ。未然に計画を阻止されたことを悟ったアロンはキリコに銃口を向けるが、逆に射殺されてしまう。
 やがて、クエントに単身で降り立ったキリコの前に、その真意を確かめようとするシャッコが現れた。二人はゴモル中枢にある防御システムのコントロールルームへ向かう。そこでシャッコの疑問にキリコは答える。自分は神の後継者となって、戦争を支配するのだ、と。その言葉に驚愕したシャッコは、銃を制御システムに乱射する。システムの破壊を阻止しようとするキリコは、シャッコの手から銃を奪った。クエント人としてキリコの野望を止めようとするシャッコ。だが、駆けつけたゴウトたちの目の前でキリコの銃弾はシャッコを貫く。キリコはATでクエントの砂漠に去っていった。もはや彼を見放したゴウトたちの制止の声も聞かず、フィアナはATに乗り込み、キリコの後を追っていった……。


第五十一話『修羅』
ギルガメスとバララント連合軍の陸上戦力が、クエント地表への降下を開始した。間一髪でクエントからの脱出に成功したゴウトたちは、フィアナにキリコ説得をあきらめるよう、通信を送り続けるが、彼女にはそれを聞くことはできなかった。
 一方、キリコはわずかな手勢のみを連れて、連合軍の包囲網に突入していた。数千機のATとの対決がはじまる。異能者としての能力で、圧倒的な敵のなかを突破するキリコ。彼の後についてこられたのは、わずか二機の部下のみであった。さらに展開する大部隊の頭上を、敵から奪った揚陸艇で突破するキリコ。だが、その機体にフィアナのATが取り付いていることは、彼自身も知らずにいた。しかし、その作戦も長くは敵の目をあざむけなかった。揚陸艇は総攻撃にさらされるが、グランの指揮する戦闘母艦が楯となってキリコをかばった。グラン艦はついに撃墜され、グラン自身も深く傷ついた。そんな彼の最期を看取ったのは、艦に密航していたロッチナであった。ロッチナはキリコを最後まで見届けるため、その後を追う。
 大裂溝の奥深く、巨大プラントの中へ突入していくキリコ。もはや、彼につき従う者はいなかった。ただ一人、フィアナを除いては……。ようやくプラント中枢部へたどりついたキリコは、ワイズマンに叫ぶ。神の力が欲しい、全銀河に復讐するために、と……!!


第五十二話『流星』
キリコは全銀河のすべてを敵にまわして、ワイズマンのもとへたどりついた。その前に最後に立ちはだかったのは、フィアナ。キリコはフィアナから銃を奪い取り、彼女へ向ける。フィアナのATを貫いていく銃弾。その光景に、ワイズマンはキリコの固い意志を見てとった。もはや限界を越えたATを捨て、自分の足でプラント中枢部を目指すキリコ。そんな彼の前に、ワイズマンが自分の姿を現した。しかし、それは実体のない映像でしかなかった。ワイズマンの肉体は遠い過去にすでに滅び、原形質保存装置の中に意識だけが残されていたのである。ついに真の中枢部へたどりついたキリコ。その身体にワイズマンの伝達装置が触れようとした瞬間、キリコの放った銃弾がワイズマンのシステムを打ち砕いた。ワイズマンの意識と記憶を破壊していくキリコ。ワイズマンは、キリコの行動を動揺させようと、フィアナとの出会いを自分が仕組んだことを伝える。さらに、彼を追ってきたロッチナがその行動を止めようとする。だが、そこへフィアナが現れ、ロッチナを打ち倒した。キリコの銃弾がわざと急所をはずしていたことに気づいていたのだ。二人は協力して、ワイズマンを破壊し、脱出した。連合艦隊はクエントそのものを破壊しようとするが、ロッチナが自爆装置を発動させた……。
 一年後、神が死んだにもかかわらず、人間たちはまたも戦争を始めていた。キリコとフィアナは、未来に望みをたくすべく、ゴウトたちに見送られながら、コールドカプセルで眠りにつくのであった……。