クメン編
第十四話『アッセンブルEX−10』
ムナメラ河を遡行する一隻のガンポート。その船上にキリコの姿があった。内乱の続くクメン王国の傭兵基地アッセンブルEX-10に向かっているのだ。EX-10では意外な再会が待っていた。ゴウトが武器の卸商として基地に出入りしていたのだ。
キリコは基地で入隊のための身体検査を受けるが、体内から衛星監視用ビーコンが発見された。メルキア連邦のスパイ容疑をかけられ、カン・ユー大尉の拷問を受けるキリコ。しかし、基地司令ゴン・ヌー将軍とゴウトがその窮地を救った。キリコはリドからのメルキア軍との経緯を語り、解放された。だが、カン・ユーにはそれが納得できるもでがなかった。
ゴウトは基地近くのニイタン市にある歓楽街にキリコを連れて行く。気のすすまないキリコを案内した店の名は<ファンタムクラブ>。バニラがマスター、ココナが歌姫として働き、傭兵たちの間でも大繁盛している店だ。仲間たちとの再会に、キリコは一時、過去を忘れた。だが、そこへ反政府軍のビーラーゲリラが夜襲をかけてきた。キリコは基地へ帰還し、カン・ユーの指揮のもとで出撃する。そこでキリコが見たものは、驚異的な戦闘力で味方を倒していく青いATの姿であった。キリコは、そのATのパイロットがフィアナであることを確信する……。
第十五話『疑惑』
キリコはフィアナに自分のことを気づかせるため、ATのコクピットから身をさらけだしたが、機体を破壊されてしまった。そのキリコの異常ともいえる行動は、スパイではないかというカン・ユーの疑惑をさらに深めることになった。キリコは青いATのパイロットがPSだと指摘する。
ファンタムクラブにもどったキリコに、傭兵のキデーラがからんできた。ポタリア、シャッコと並んで、基地でも一番のボトムズ乗りだ。ビーラーゲリラの仕掛けた爆弾に気づいたキリコは、間一髪でキデーラたちの命を救う。
その夜、キリコはゴウトの事務所のコンピュータで対PS用の独自のミッションディスクを作成する。青いATのパイロットが本当にPSならば、ウドでの経験が活かされるはずだ。
翌日、キリコらに出撃命令が下った。補充されるAT運搬の護衛である。作戦の最中にムナメラ河を遡る輸送艇が、中州に座礁してしまった。キリコはウインチを設置しようとするが、そこにビーラーゲリラが襲撃してきた。応戦するEX-10の部隊。敵の中には、青いATの姿もある。キリコはオリジナルのミッションディスクをセットし、立ち向かった。キリコの思惑通り、ウドでのフィアナの動きと青いATの動きは同じものだった。なんとか、ビーラーゲリラを撃退したものの、キリコは疑惑を抱き続けていた。何故、フィアナは自分に気づかないのかと……。
第十六話『掃討』
ビーラーゲリラの夜襲が、ついにアッセンブルEX-10にも仕掛けられてきた。キリコたちは銃をとり撃退するが、ポタリアは敵の中に見覚えのある顔を見つけていた。
翌日、EX-10からカン・ユー指揮の特別部隊が出動した。目的地はムナメラ河上流のゾンム村。平和な農村と思われていたここが、昨夜のゲリラの根拠地であることが判明したのだ。捜索の結果、隠れていた数人が見つかるが、その中にはポタリアの幼なじみであるモニカの姿もあった。カン・ユーは情報を聞き出すため、村長とモニカを含む人々にロシアン・ルーレットを強要する。ついにモニカの番になった時、ポタリアはたまらずに止めさせる。モニカに自分の理想を語るポタリア。だが、彼の考えはモニカにすれば、悪しき幻想としか思えないものであった。二人のやりとりを聞きながら、キリコは自分にとって、すべての戦いは幻想であったと考える。
ポタリアの願いもむなしく、村に隠れていたビーラーゲリラたちは姿を現した。EX-10の傭兵部隊とゲリラの間で激しい戦闘が始まる。そのさなか、キリコはまたも見た。正確な攻撃を仕掛けてくる青いATを。キリコは自分のATのターレットを点滅させ、発光信号で合図を送る。それに応えるかのように銃を下ろす青いAT。だが、その中から現れたのは、フィアナではなかった。金髪の男がキリコを見つめる……。
第十七話『再会』
キリコは青いATのパイロットが第二のPSイプシロンであることを知る。イプシロンは激しい敵意を放ちながら、キリコを追いつめる。その光景を目撃したカン・ユーは、キリコを見捨てて、基地に帰投する指令をくだした。キリコ帰還せず、その知らせにココナやポタリアたちの気も沈む。
その頃、奥クメンに存在する神聖クメン王国のカンジェルマン宮殿では、フィアナとカンジェルマンがクメンの武術バランシングの稽古をつけていた。そこへやってきたイプシロンは、キリコを逃したことを報告する。だが、誰もがキリコはここへ来ることを確信していた。
イプシロンらの予測通り、キリコは宮殿に向かっていた。しかし、その途中で無人の警備ロボットに捕らわれてしまう。宮殿の広場に引き出されるキリコ。イプシロンはキリコの処刑代わりにバランシングの決闘を申し出た。初めてバランシングをやるキリコに、PSを相手の勝ち目などほとんどない。イプシロンの華麗な攻撃に、キリコはわき腹を切られてうずくまった。そこへ止めをさす、と姿を現したのはフィアナだった。フィアナの刃はキリコの肩を切り裂く。
その夜、フィアナは地下牢のキリコのもとへ向かった。昼間の行動は、キリコを生かすためのフィアナの必死の演技だったのだ。互いの気持ちを確認しあい、ついに再会した二人。だが、フィアナはキリコの脱出を確かめると、その場に残ってしまうのだった……。
第十八話『急変』
傷だらけでEX-10に帰還したキリコ。カン・ユーは無事に帰還できたのは裏があるからではないかと疑う。しかし、ゴウトが軍医を買収して、絶対安静に見せかけたため、とりあえず疑いは晴れた。
キリコに逃げられたカンジェルマン宮殿では、カンジェルマンが内部の者が手引きしたことを察していた。フィアナはイプシロンに犯人が自分であることを語る。だが、イプシロンは戦いのなかで決着をつけようと考えていた。そんな中、カンジェルマンのもとへ、メルキア連邦の使節団がクメン王国首都ザイデンに到着したとの報がもたらされた。二十年に渡り、完全独立を要求して交戦状態にあったメルキアとの和解。それはクメン王国が、対神聖クメン王国戦に全力をかたむけることの前触れであった。
この状況に至り、ゴン・ヌーはある目的のため、メルキア使節と接触すべく、ザイデンに向かう。また、商売上、事態の推移が気になるゴウトも後を追った。その夜、キリコはゴウトからの通信でメルキアとクメンの間に和平が結ばれたことを知る。カン・ユーはキリコの行動をスパイの証拠と決めつけようとするが、ビーラーゲリラの侵攻が始まった。敵もまた、事態の急変に急ぎ対処しようとしているのだ。防衛のために出撃したキリコであったが、これは囮であることに気づく。ビーラーゲリラの真の目的は、EX-10の生命線であるニイタン市だ。キリコは基地防衛を主張するカン・ユーに背き、ポタリアらとともにニイタンへ向かう。
第十九話『思惑』
キリコが予測した通り、ビーラーゲリラの本隊はニイタンに奇襲をしかけていた。街中が炎に包まれ、ファンタムクラブにも火の手が迫ってくる。これまでの闇商売から足を洗うことを考えていたバニラにとって、この店はすべてだった。最後の瞬間まで必死に消火を続けていたが、ついにココナに連れ出されるバニラ。ニイタンはキリコらの活躍で壊滅をまぬがれた。だが、痛手を与えるだけで十分とイプシロンに出撃を禁じたカンジェルマンの思惑のうちであった。
ゴン・ヌーの帰還後、カン・ユーはキリコを命令違反で告発する。しかし、ゴン・ヌーは自分の判断でそれを退け、キリコに自分の同行者を引き合わせる。その人物は何とメルキア軍のロッチナであった。ロッチナは、これまでの観察からキリコと秘密結社が敵対していることを知り、協力を求めに来たのである。素体奪回をめざすロッチナは、キリコに遺伝子工学と脳生理学の粋を極めて開発されたPSの秘密を明かす。キリコもまた、フィアナが誕生以前に自分を見たことを語り、協力を承諾する。そして、二人を引き合わせたゴン・ヌーにもまた、独自の思惑があった。彼は、奥クメンを攻めるかたわらでロッチナの作戦に協力して、その見返りとしてメルキア軍に迎え入れてもらうつもりだったのだ。
それぞれの思惑が交錯した結果、カン・ユーを指揮官とした特殊部隊が出発することになった。すべてを失ったバニラもキリコに同行しようとするが、一足違いで部隊を乗せた船は出発していくのだった……。
第二十話『フィアナ』
アッセンブルEX-10の特殊部隊は、ムナメラ河を遡行しつつあった。その船上で、キリコは作戦の真の目的であるフィアナのことを思い出していた。
……小惑星リド襲撃作戦に巻き込まれたキリコは、軍から脱走し、ウドの街に紛れ込んでいた。ATの操縦以外に生きる術を持たないキリコは、ATの賭試合であるバトリングの選手となった。そんなキリコに、法外なファイトマネーと危険な内容の試合が持ち込まれた。だが、それはウドの街を牛耳る治安警察がキリコを抹殺するために仕組んだものであった。そのことを知ったキリコは、逆襲に転じた。治安警察本部に乗り込んだキリコを待っていたのは、パーフェクト・ソルジャーと呼ばれる女であった。彼女は誕生以前に目撃したキリコに深い関心を抱いていた。いつしか、二人の心に絆が芽生える。彼女が連れ去られるとき、思わずキリコは叫んだ。フィアナ!!…と。
第二十一話『溯行』
奥クメンをめざして、ムナメラ河を遡る特殊部隊。指揮官のカン・ユーは敵本拠地への奇襲が目的と信じていたが、真の目的はキリコだけが知っていた。PS=フィアナの奪還である。現地での指揮はキリコにまかされていたため、カン・ユーにはそれが納得できなかった。
やがて、カン・ユーはキリコの反対を押し切り、民間船を臨検する。異常は見つからなかったのだが、カン・ユーは機密保持のため、民間船に銃撃を加えた。だが、神聖クメン王国側も彼らの行動は予測済みであった。
河の中流に達した特殊部隊は、ラモー寺院に上陸する。現地到着までの指揮権を有するカン・ユーは、またもキリコの反対を退けて、寺院の調査を開始する。調査中、キリコはビーラーゲリラの兵力を目撃するが、ここで戦闘に突入するのは得策でないと黙殺する。だが、カン・ユーは執拗に調査を続け、ついに必要のない戦闘を勃発させてしまう。
EX-10の誇る特殊部隊は、見事にビーラーゲリラの圧倒的なAT隊を壊滅させ、寺院を廃虚としてしまう。だが、部隊の船も沈められてしまい、これ以上の作戦行動がとれなくなってしまった。
廃虚のなかで足止めをくう特殊部隊のもとへ、基地からの伝令がやってくる。なんと、それは軍に志願したバニラであった。当初の目的を遂行できなくなった部隊に新たな命令が下る……。
第二十二話『触発』
ゴン・ヌーからバニラを通じて、新たな指令が伝えられた。それは、AT隊と輸送船をヘリで運び、最短距離から敵本拠地を襲撃しようというものである。新たなコースで出発する特殊部隊。だが、三日月湖付近で敵戦車隊に発見されてしまう。ヘリから降下し、戦車隊を撃破したキリコたちであったが、このことから敵にその位置を知られてしまう。だが、これ以上の遅延は許されない。特殊部隊は湖に輸送船を降ろし、進撃する。
キリコたちの進撃を知ったカンジェルマン宮殿では、防衛の準備が進められていた。フィアナを結社の本部に送還しようとするボローに反対するイプシロン。ボローはキリィに指示をあおぐ。キリィの考えは、キリコの死をもって、フィアナからキリコに関する記憶を消去することであった。そして、それがかなわなぬ時はフィアナを処分せよ、と語る。
イプシロンはキリコとの決着をつけるため、三日月湖で特殊部隊に奇襲をかける。湖での戦闘とイプシロンの執念に苦しめられる特殊部隊。キリコは対PS用のミッションディスクを用意するが、イプシロンの潜在能力はそれさえも越える。ついに機体に深刻なダメージを受け、水中に沈んでいくキリコのAT。だが、その時、キリコは見た。キリコの最期を見せるためにボローが連れてきたフィアナが、自分たちの乗ったヘリをイプシロンのATにぶつける命がけの光景を……。
第二十三話『錯綜』
フィアナは墜落したヘリから脱出し、密林に姿を消した。その後を追ったイプシロンも行方不明となり、ボローはPSがまだ不完全であることを確信する。逃亡するフィアナを最初に発見したのは、イプシロンであった。フィアナを連れ戻そうとするイプシロン。フィアナはそれに従うことはできなかった。だが、イプシロンに銃口を向けることもできない。自分に銃を向けるフィアナ。そこへ、ビーラーゲリラの追撃隊が迫ってきた。PSとしてのレクチャーを受けたイプシロンには味方を撃つことはできず、ただ楯となってフィアナを守る。そこへフィアナを捜し求めていたキリコたちも到着する。キリコは、フィアナをかばってATを失ったイプシロンを逃がし、ビーラーゲリラを撃破する。しかし、フィアナはカン・ユーに捕らえられてしまう。
本部に連絡し、増援を待つカン・ユーに襲いかかるキリコ。豪雨の降りしきるなかの格闘の末、カン・ユーは濁流に流され、キリコは傷を負って気を失った。目覚めたキリコが見たものは、野営の準備をするフィアナの姿であった。二人はしばしそこが戦場であることを忘れる。
だが、キリコにはそのまま安息にひたることはできなかった。カンジェルマン宮殿の位置をフィアナにたずねるキリコ。フィアナは自分と逃げようと言うが、キリコにはそれは受け入れることができなかった。追い求めたフィアナと会えたのに何故……。
第二十四話『横断』
奥クメンのカンジェルマン宮殿をめざすキリコ。ATの腕にはフィアナも乗っている。そこへビーラーゲリラの部隊が襲ってきた。数の多い敵の前に苦戦を強いられるキリコだったが、そこへポタリア、シャッコ、キデーラが駆けつけてきた。ビーラーゲリラを撃退したキリコは、三人に奇襲作戦の真の目的とPSのことを語った。宮殿をめざすというキリコに、ポタリアが同行を申し出る。彼はかつてともに同じクメンの未来を語り合ったカンジェルマンの裏切りが許せなかったのだ。傭兵としてイプシロンを狙うキデーラも行動をともにする。だが、契約を重視するクエント人のシャッコだけは、EX-10の本隊との合流を目指すのだった。
キリコたちは出発した。宮殿へ向かう途上、捜索のヘリも撃退したことで、彼らの裏切りはゴン・ヌーらの知るところとなった。味方の救援を受ける望みもないままに渓谷を進むキリコたち。またもビーラーゲリラの襲撃を受けるが、フィアナの能力のおかげで優位に戦闘を進めるのであった。
やがて、キリコたちはビーラーゲリラの砦である古城に到達する。格納庫に侵入したフィアナが内部から敵を攪乱し、そこにキリコらが突入する。キデーラとポタリアは、初めて見るPSの戦闘力に驚嘆した。だが、この戦闘はキリコたちに新たな情報をもたらした。敵は兵力の大部分を宮殿に集中させている。カンジェルマンの真意を読み切れず、キリコやポタリアは新たな疑惑を抱くが……。
第二十五話『潜入』
キリコによって濁流につき落とされたカン・ユーは、執念深く生きていた。ビーラーゲリラと遭遇し、もうこれまでかと思われた彼を救ったのはシャッコだった。帰還後、ゴン・ヌーにことの次第を報告するカン・ユー。ゴン・ヌーは、キリコらが宮殿に突破した混乱に本隊を進撃させようと考える。
決戦を前に、ビーラーゲリラの中に厭戦気分が流れ始めていた。上層部の作戦に不満を持つ者や、メルキアと和平を結んだ政府軍に勝ち目がないと考える者が大勢をしめていたのだ。同士たちのそんな姿に絶えられなくなったモニカは、カンジェルマンの考えを聞こうとその姿を求める。そして、カンジェルマンがボローとイプシロンに語る内戦の真実を聞いてしまうのだった。
カンジェルマンは、守旧派の人間ではなかった。むしろ、王族である自分が古き悪しきものを近くに集めて敗北することにより、クメンの新しい時代を築こうと考えていたのだ。
一方、ビーラーゲリラのトレーラーを強奪して宮殿に接近したキリコたちは、無事潜入に成功していた。だが、守備隊ATとの間に戦闘が始まってしまう。そんな中、ポタリアはカンジェルマンと対決するため、宮殿の奥に単身で向かい、モニカと再会するのであった。ポタリアの眼前で、モニカは敵と間違えた味方に撃たれてしまう。最後の息の下、カンジェルマンの考えをポタリアに聞かせるモニカ。ポタリアは怒りと悲しみに震える。
そして、ゴン・ヌーの部隊の進攻が始まった。
第二十六話『肉迫』
通信機に向かって話しかけ続けるココナ。バニラはついにカンジェルマン宮殿に総攻撃が開始されたことを告げた。
その言葉の通り、奥クメンは破壊と混乱の極みにあった。ヘリ部隊で制空権を得たゴン・ヌーは、カン・ユー隊を先鋒として降下させた。ここに至り、カンジェルマンは本宮殿を放棄して、離宮へ向かう。そのカンジェルマンの後を追うポタリア。
一方、専用ATストライクドッグを得たイプシロンもキリコとフィアナを求めて、出撃した。カン・ユー隊に襲いかかるイプシロン。激しい闘志に燃えるイプシロンの前に、シャッコもカン・ユーも機体を捨てて逃げ出すのが精一杯だった。
キリコたちも、カンジェルマンとともにいるであろうボローを求めて、離宮に向かう。しかし、一足先にポタリアはカンジェルマンの喉元に肉迫していた。裏切られた憎しみに燃えるポタリアは、バランシングでの決闘を挑む。戦いを受け入れたカンジェルマンは、ポタリアに語る。王族である自分こそ、古きものの象徴なのだと。あえてポタリアの槍を受けたカンジェルマンは、彼にクメンの未来を託して息絶えた。
先鋒部隊の全滅に続いて、ゴン・ヌーは本隊を投入した。混迷する状況の中、キリコはボローを離宮の地下に追いつめる。
第二十七話『暗転』
惑星メルキアの衛星軌道に定位する戦艦テルタイン。秘密結社の指導者であるキリィと、双子の科学者アロンとグランがその艦内からクメン内戦の終局を見守っていた……。
離宮の地下では、キリコがボローに詰問していた。PSを普通の人間に戻すことができるのか、と。だが、ボローの答えは否であった。そして、キリコのもとへイプシロンのATも到達した。キデーラがキリコしか見えていないイプシロンを背後から襲うが、逆襲にあってしまう。一対一の戦いを始めるキリコとイプシロン。
一方、ゴン・ヌーと密約をかわしたロッチナ率いるメルキア軍の大部隊も、カンジェルマン宮殿に近づきつつあった。バッテンタインからの指令を受けるロッチナ。メルキアとクメンの秘密会談の最終結論は、反乱軍のみならず、戦後のクメンに邪魔な傭兵部隊をも殲滅することであった。
離宮の地下でイプシロンはキリコに生身での対決を挑む。だが、二人を戦わせないため、フィアナがイプシロンを撃ってしまう。傷だらけの一同を拘束しようと現れたゴン・ヌー。しかし、そこへメルキア軍の攻撃が始まり、戦場は大混乱に陥る。
バニラ、シャッコ、ポタリアら仲間たちの助力を受け、キリコとフィアナは、宇宙に安息の場を求める…。
第二十八話『運命』
メルキア軍の基地で、激しい拷問を受けるキリコ。軍事機密である素体を強奪した秘密結社とつながっている疑いをかけられたのだ。隙を見て脱走したキリコであったが、その体内には、衛星監視用のビーコンが埋め込まれていた。半年を経てウドの街に流れ着いたキリコは、ジジリウムの採掘現場に潜り込む。だが、そこは武装暴走族ブーン・ファミリーの支配する地獄であった。またも脱走したキリコを、常に監視の目を光らせていた軍が助ける。
キリコは、このウドの街で意外な人物を発見した。秘密結社の幹部の一人、イスクイである。素体の謎を聞き出すため、キリコはイスクイに銃をつきつける。その案内で、キリコはついに素体と対面した。だが、素体奪還をめざすメルキア軍の進攻でウドの街は崩壊していく……。