廉価版メック運用のいろいろ

1.小隊の構成
廉価版バトルメック(以下Iメック)の小隊はIメック4機に加え、指揮車輌(ルールブック内の指揮車輌とは多少異なる)2台によって構成される。Iメックが標準で搭載しているセンサーは従来のものに比べて劣悪な性能しか持ち合わせていないため、戦闘時には指揮車輌からデータを受け取って射撃を行うのが望ましいからだ。
Iメックが正常に射撃を行うことのできる最大距離は180mまででしかなく、これは中口径レーザーの場合、遠距離射程での射撃は実質上不可能となる距離だ。モニター映像用のカメラは最大900mまで鮮明な映像を得ることができるが、搭載されているFCSはセンサーからの情報以外は取得しないため、射撃には役に立たない。
攻撃対象が脚の遅い車輌やIメックの場合は主に格闘戦で解決できるが、バトルメックやホバー車輌などが対象だった場合、短距離での射撃しか行うことができないのでは勝ち目がないといえる。そういった状況下においてIメックをサポートする役目を負うのが、指揮車輌である。指揮車輌に搭載されたセンサーが攻撃対象の情報を得ると、その情報はIメックに転送され、本来なら捕捉できない距離にいる攻撃対象にも通常通りの射撃を行うことが可能となる。



2.Iメックの装甲
一般的なIメックは、通常のバトルメックに採用されているハイブリッドアーマーでなく、コストパフォーマンスに優れるチョバムアーマーを採用している。
これは、Iメックの運用される辺境ではレーザー兵器が使用されることは少なく、バトルメックの装甲に用いられている整列結晶鋼を取り入れた装甲はあまり必要とはいえず、それどころか徒にコストを上げるだけで意味がないというところから来ている。
もし、レーザー兵器を使用する外敵が現れたときでもチョバムアーマーならば内部のパッケージを交換する、あるいは防弾鋼を整列結晶鋼と交換するだけで対応できるというのも理由のひとつだ。


3.Iメックのコンピュータシステム
Iメックに搭載されているコンピュータは、典型的なノイマン系コンピュータ。しかし、他で使用されるものとは構造が異なり、ハードウェアは大まかな機能ごとにモジュール単位で分割されている。これは、ハードウェアのメンテナンス及びバージョンアップを容易にするためである。
それに合わせソフトウェアは、全機種統一規格のOSを搭載し、それぞれのハードウェアに対応した個別プログラムをOSが統括するという構造になっている。ハード、ソフトともにバトルメックに搭載されている戦術演算用コンピュータ及び戦闘処理システムには遠く及ばない性能しか備えていないが、3026年現在の技術力ではハードウェアのほうがソフトウェアについていけないのが現状だ。
性能だけでなく、システムの起動にさえ手間がかかるのがIメックのコンピュータシステムの大きな欠点だ。電源ひとつでシステムが立ち上がるわけではなく、複雑と言うほどでもないものの、単純でもない手順を踏まなくてはならない。


4.Iメックの構造
Iメックの骨格は通常のバトルメックのそれとほぼ同等に設計されているが、バッテリーの積み替えを行うのを容易にするために胴体部と腕部に多少の差違が設けられている。
コックピット、あるいは整備点検用操作卓から排出の操作を行うと、ハッチ構造になっている背面部からレールに載せられたコンテナ型のバッテリーが排出される。
Iメック用のハンガーは充電されたバッテリーを2基用意しておくことができ、バッテリーが排出されると新しいバッテリーが搭載される仕組み。
また、各種の手持ち火器の使用を可能にするため、手首から先の機構がバトルメックに比べて精密になっており、格闘に用いるのには向かないのがネックとなっている。
そのため、Iメックの大半は何らかの格闘用の武器を標準装備している。代表的な武器として挙げられるものに、バトルメックも装備することがあるハチェットのほか、伸縮する特殊警棒、ごく限られた範囲に元素ビームを発生させるハードナックルなどがある。
また、オプション装備のリニアローダー機構を付加した場合、脚部の構造が大きく変わる。リニアローダー機構使用時には重心を低くし、バランスを取れる姿勢になるため、脚の関節がひとつ多く設け、できるだけ接地面積が大きくなるように変形できるよう設計される。強度には問題はないが、脚部のスペースをとられてしまうため他の装備を取り付けることができなくなってしまうのが欠点といえる。
Iメックは、可動式の複合カメラを頭部に装備することで外部の情報を取り入れており、カメラの可動半径を大きくすることで頭部全体の可動半径を小さくし、頸椎の強度をより高めている。代わりに仰角半径を大きく取り、対空攻撃を行う際の妨げにならないよう工夫が施されている。これらの構造は従来のメックよりも圧倒的に低い感知能力を補うためのもので、コストを低下させつつ従来のメックにできるだけ劣らないようにするためのものである。

 

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