Iメック設計ルール(第三版)
・はじめに
Iメックとは、廉価版メック(Inexpensive-MECH)の略称で、コストダウンを目的とした代替品使用によるバトルメックのこと。
熱核融合エンジンを搭載せず、蓄電池を搭載することで大幅なコストダウンを実現。
その反面、連続稼働時間の低下、武装に割ける重量の割合が縮小。
宇宙空間での活動も考慮に入れたバトルメックに対し、完全に生物が生存可能な環境下での行動を前提とした構造になっており、機体の気密性は低下しており、それに伴って生命維持装置を撤去。
下半身のみが耐水構造となっており、渡河などは可能だが、完全に水中に没するとコックピットや機関部に浸水、機能停止する恐れがある。
基本的に乗員の安全性・居住性を無視した設計となっており、緊急脱出装置を廃し、操縦席の軽量化・コストの低下を図った。
センサー、コンピュータ類は3025年現在でも量産可能な製品で、性能は低い。周囲の画像はCCDカメラを利用して得、操縦者はコックピットのディスプレイを通してそれを見る。
高価な神経反応システムを撤去し、通常のノイマン系コンピュータを処理・制御用ハードウェアとして搭載。
操縦系には、主に腕部を制御する一対の操縦桿と、腕部の細かな動作と火器の使用を制御するスイッチ、機動を制御する4つのフットペダル、マニピュレーターを制御するウォルドーなどが用いられ、これらの装置によって入力された命令が戦闘動作プログラムを呼び出し、機体を制御する仕組みになっている。 特に複雑な動作を行う場合はこれらの装置による入力にキーボードによる入力を組み合わせてデータベース内の特殊動作プログラムを呼び出し、メックを操作する。
このような仕組みのため、細かな動作を除けば、基本的に戦闘的な動作以外はほとんど不可能となっており、データベースにない動作パターンを可能にしたい場合はプログラムを作る必要が生じる。
熱源・環境・赤外線・動態などの各センサーの性能は従来のバトルメックに搭載されるもののおよそ25%の性能で、価格は従来の20%。
標準のIメックの索敵能力は以下の通り。
CCD
 夜間:37.5m 昼間:900m 夕方:112.5m 霧・雨:75m
センサー
 180m

注意:Iメックに搭載されるセンサーを使用していると、FCSに頼って射撃を行う場合は6ヘクス距離までしか射撃ができないので覚悟すべし。FCSを使用しないで射撃を行う場合のルールは後述。

マニピュレーターの規格統一により、Iメック専用火器を使用可能。火器のグリップとメックのマニピュレーターに取り付けられた端子により、火器に内蔵された専用の射撃プログラムをメックのコンピュータに転送。これにより、膨大な量の射撃プログラムをコンピュータに記憶させておく必要が無く、様々な火器を柔軟に使用可能。メックに搭載されたOSが異なっても、少々の不具合が生じるだけで、火器に互換性が全くないというわけでもない。


・設計のルール
通常のバトルメック設計ルールを使用。
機体中枢の重量は従来通りだが、整備・修理の簡略化を主眼においた構造になっており、左右腕部に2箇所ずつ、左右胴体部に2箇所ずつ装備欄を取る。また、脚部にリニアローダー機構を搭載するかどうかを選択し、搭載する場合は左右脚に2箇所ずつ装備欄を必要とする。
核融合エンジンの欄に蓄電池(バッテリー)を搭載し、重量は核融合エンジンの2倍。それ自体は発熱しないため、放熱器を内蔵していない。
頭部から生命維持装置、緊急脱出装置を撤去。操縦席の重量を1.5トンとして扱う。生命維持装置は搭載するという場合は2.5トン、従来と同様にするのであれば3トンとして扱う。
熱核融合炉を搭載していないため、従来の核融合エンジンからの排気を利用したジャンプジェットは使用できない。それに代わるジャンプジェットとして、エア・コンプレッサーを利用したジャンプジェットを使用する。装備欄は1基につき2、発熱は1MP移動するごとに1発生する。電力消費量は1MPのジャンプ移動につき20秒。装置の価格は従来の1.4倍。
戦闘動作プログラムは1〜2枚のコンピュータ・ディスクに収められており、プログラムの知識が有れば従来の動作プログラムにない一連の動作をプログラムすることが出来る。〈コンピュータ〉技能が高い者が作成したプログラムほど、その動作を実行した際の〈操縦=メック〉技能判定の目標値が低い。

・装甲のルール
Iメックはコスト削減の意味もあって、通常のハイブリッドアーマーではなくチョバムアーマーを使用する。
装甲点は従来のものと同じく1トンあたり16点だが、レーザー兵器による攻撃を受けた場合、ダメージは2倍として考える。詳細については別コラム「廉価版メック運用のいろいろ」を読んで欲しい。
なお、装甲板の価格は通常の装甲の35%。

・バッテリーのルール
バッテリーの管理を単純化するために容量の単位を時間として扱う。「バトルテック」の1ターンは10秒間とされており、Iメックが1ターン活動するごとにバッテリーの容量が10秒間消費される。これは特に行動しなくても、メックが稼働している状態ならば自動的に消費される。歩行、走行、Iメック専用火器による射撃、格闘攻撃はバッテリーを消耗しないが、ジャンプ移動、内蔵火器(従来の火器)の使用はバッテリーの消耗の対象となる。消耗量は別の項目でそれぞれ記述。
標準のバッテリーは以下の通り。
連続稼働時間:30分 耐用年数:5年 充電にかかる時間:300分


・熱発生・熱管理のルール
熱核融合エンジンを搭載しないIメックは移動の際に発熱しない。また、熱管理表のエンジン停止のチェックは考えなくてよい。


・通常火器(Iメック専用火器)使用のルール
Iメックは全ての機種においてマニピュレーター部分の規格が統一されており、共通した規格で生産された火器が使用できる。
全てのIメック専用火器はマニピュレーターで保持するという構造のため、戦闘中であっても容易に武装の換装が可能。機体に火器を標準装備した場合、バトルメックの場合と異なり内蔵するわけでなく、火器を機体に固定しておくための火器固定具が機体に付けられる。そうすることで、手以外の部位で火器を携行することができる。火器固定具がない機体は火器を手で持って運ぶ以外の手段を持たない。火器によっては予備弾倉が使用できるものも存在し、それらの予備弾倉は頭以外の部位ならばどこにでも装備できる。
また、戦闘中などの火器換装の際、それまで装備していた火器と新たに装備しようとする火器の重量が同じでない場合が考えられる。その場合、新たな武器の装備により総重量が元の重量より5トン未満ならば増えたとしても移動力に影響しない。5トン以上10トン未満の増加があった場合、移動力は一段階下がる。また、増加が10トン以上15トン未満に達すると2段階低下、それ以上の増加、あるいは機体重量の値を超えた場合で荷物を運搬した状態での移動が不可能、機体重量の倍を超えると移動が不可能になる。
例:重量45トン、移動力5/8/5のIメックが重量5トンの火器を破棄。45→40
  そして、重量7トンの火器を新たに装備。              40→47
  この場合、最終的な増加は47−45=2トンなので、移動力に影響はない。
  上記と同様のIメックが重量2トンの火器を破棄。          45→43
  そして、重量7トンの火器を新たに装備。              43→50
  この場合、最終的な増加は50−45=5トンなので、移動力が一段階低下して
      5/8/5 → 4/6/4
  となってしまう。


・内蔵火器(従来のメック用火器)使用のルール
内蔵火器を使用する場合、その電力を蓄電池から供給するため、連続稼働時間が短縮される。火器の使用によって消費する電力は時間単位で表され、また、蓄電池の電力を消費するのはレーザー・ビーム兵器に限る。ミサイル・機銃・滑空砲などは電力をほとんど必要としないため、運動用に回される蓄電池の電力ではなく、コックピットハッチの開閉や、電子機器のために搭載されている小さな予備蓄電池から電力を供給され、連続稼働時間には影響を与えない。
以下に、レーザー・ビーム兵器を使用した場合の消費稼働時間を表す(ただし、例外も存在する)。
ダメージ   消費時間
 1〜3     5秒
 4〜6    15秒
 7〜10   30秒
11〜15  120秒
16〜20  240秒


・FCSを使用しない射撃
FCSを使用しない場合、射撃を行うために使用される技能が〈砲術=メック〉ではなく、〈操縦=メック〉と〈個人戦闘=ライフル〉か〈個人戦闘=ピストル〉の平均値を使用する。これは、〈個人戦闘〉技能によって目視での照準を行い、〈操縦=メック〉で火器の向きを修正する必要があるからだ。


・移動に関するルール
Iメックは従来のバトルメックと同様、歩行、走行、ジャンプ、全力疾走の4つの移動方法を取ることができる(ジャンプ移動を行うにはジャンプジェットの装備が必要)。それに加え、選択ルールにより脚部に内蔵されたリニアローダー機構(金属製の回転体。電磁気によって高速回転させ、反発力と摩擦力を推進に利用する機構)を使用することにより高速移動が可能。移動力は走行時の2倍。ただし、この移動法では車輪駆動の車輌と同じ条件での移動となる。この移動法で移動した場合、自己の射撃にかかる修正は+3。敵の射撃にかかる修正は移動したヘクス数にかかる修正に+1したものとなる。


・事故に関するルール
Iメック専用火器を使用している場合、火器を保持している腕部に10点以上のダメージを受けると火器を取り落とす可能性が発生する。転倒チェックと同様、射撃フェイズと格闘フェイズのダメージは別にして処理する。腕部へ与えられたダメージがどのような兵器によって与えられたかによって取り落とすかどうかの〈操縦=メック〉技能判定の修正値が異なり、レーザー兵器によるダメージであった場合は±0、その他の火器によるダメージであった場合は+2、格闘攻撃によるダメージであった場合は+3する。
火器を取り落とした場合、火器はそのヘクス内に落ちる。同一ヘクス内にいるメックはその火器を拾うことができるが、拾ったターンは射撃も格闘もできない。


・格闘に関するルール
格闘攻撃の動作は標準で戦闘動作プログラムに登録されており、パンチ・キック・体当たり・飛び降りの四つの行動を取ることが出来る。しかし、パンチに関しては通常通りに使用はできない。Iメックの手は様々な武器を使用するために器用さを重視した設計になっており、格闘に用いるには不十分な耐久力しか持ち合わせておらず、1/2の確率で手は破壊される。
しかし、格闘による攻撃法は複雑なプログラムで構成されており、通常のバトルメックのものに比べ処理能力で劣るコンピュータは処理落ちを未然に防ぐために回路にディレイをかけて実行するため、幾分動作が遅くなる。そのため、攻撃の目標値は通常よりも1高くなる。


・E・エクスパンダー(選択ルール)
いわゆる増圧回路。Iメックはバッテリー駆動のため供給される電圧は一定だが、この装置を使うことで通常よりも高い電圧で電力を供給することが可能になる。全てのIメックにはこの装置が標準で装備されており、緊急時にはバッテリーに残った電力を過剰に送り、格闘攻撃力、機動性、内蔵レーザー・ビーム火器の威力が増大する。使用した場合バッテリー消費は4倍になるが、格闘時の攻撃力が1.5倍(端数繰り上げ、格闘兵器も同様)、移動力が2倍、内蔵レーザー・ビーム火器の威力が2倍(発熱も2倍)になる。


・ミサイル迎撃用内蔵ガンポッド(選択ルール)
ITメックに標準装備される、胴体中央部に内蔵された小型の可動バルカン砲。ミサイルの迎撃を目的としたもので、射程・破壊力ともに対メック用兵器としての役割を果たせるものではない。重量、装備欄などは機体中枢に含まれ、弾薬は30。正面から接近するミサイルを自動で迎撃する。その性能は低く、決して当てにできるほどのものではない。迎撃できるかどうかの判定はGMが行う。成功判定はGM裁量で。


・小物類(選択ルール)
完全に整備されたIメックは緊急時に備えて、いくつかの装備を内蔵している。装備の内容は以下の通り。
救急箱×1 工具キット×1 緊急用燃料電池×1(一基につき1分間行動可能)
エアタンク×2


・省電力モード(選択ルール)
電力消費を省電力モードに切り替えることで、取れる行動は制限されるものの通常よりも長い時間行動することができる。省電力モードに移行した場合、毎ターンの電力消費量が半分になり、移動方法が歩行以外使用できなくなる。射撃は通常火器のみが使用可能で、内蔵火器は一切使用できない。センサーの機能も一時的に縮小され、感知範囲が通常時の40%になり、射撃の目標値も1上昇する。さらに、オートバランサーの機能も低下し、通常であれば20点のダメージを受けた時点で発生する転倒チェックも10点のダメージを受けた時点で発生する。

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