1999年7月6日研修会

         講師:愛媛カウンセリング研究所所長 石川正一郎先生
               NHK文化センターの講師なども勤める。
          演題:「自分の言葉で伝える」        

 今までカウンセリングの話しででるのは「聴くこと」が重要であると言われていました。確かに、それはあっているのですが、今回は「伝える」ことに重点をおいてみたいと思います。最初にカウンセリングを覚えると「傾聴」(前傾姿勢で耳を傾けてきく)することによって、信頼関係を築いていく。ところが、傾聴というのは、聴くだけではなく、「あなたの話しを聴いてますよ」ということを相手に伝えるという働きもある。ただ、聴くというのは、集中しなければならない作業である。自分が聴かなければならないという意識を持っていないと、案外聴き逃すことが多い。

 カウンセリングは、「相手の行動・考え方をかえたいなぁ〜」と思って行う。しかし、必ず変えることができるわけではない。相手の意志・意識の問題である。カウンセリングは相手の可能性を発展させるために行うのである。カウンセリングの目的は「聴くこと」ではない。相互に関心・共感を呼び起こす必要がある。

 聴くだけではなく、「この人のために、今自分が何ができるか?」を考える。そうすることによって、その人のために指示・忠告・例示(=積極技法)が必要であるかどうかを判断しながら、必要ならば行う。

 「くり返し」・・・相手の言葉をリピートする。適切な「くり返し」を行うことによって、相手の心を開いていく。信頼関係をつくる手段である。信頼関係をつくるための技法として「くり返し」がある。「くり返し」には、「確認」の意味がある。確認によって、相談者は自分の言ったことを確認し、自分を見つめることができる。しかしながら、言葉だけを「くり返し」てもいけない。要点を把握して「繰り返す」ことが大事である。単なるオウム返しでは、相手の心には伝わらない。それでは、信頼関係は築かれないのである。

 個人のパーソナリティーが変わるときには、6つの条件がある。
   1、心理的にであったとき
   2、相談者が悩んでいる時
   3、カウンセラーが一致している時
   4、相手を無条件に受容しているとき
   5、カウンセラーが共感しているとき
   6、カウンセラーが考えていること・共感しているということを、相手に伝わっているとき

 「人間は、誰しも自分を分かって欲しいと思っている」ということを覚えておくことは大切である。

 「時間・場所の重要性」・・・会話を続けるのは大変な作業である。特に思春期の子供との対話を続けることは難しい。しかしながら、場所を共有することはそうでもない。場所を共有することによって、互いを意識し、信頼関係をつくるためのとっかかりとなる。

 「語る」「伝える」・・・動きがとれない子供(相談者が自分で伝えられない場合)には、積極的にカウンセラーから指示・忠告・助言などを行う。その中で、相手の言ったことを「要約」してやる。
 
 「対決」・・・悩みというのは、理想と現実が矛盾をしている状態である。その矛盾をはっきりと相手に示すことが「対決」である。この矛盾を提示することによって、相手は自分の矛盾点に気付くことになる。ただし、十分な信頼関係を築いてから行うのが効果的である。

 自分で伝えることは、間接的に伝えてはいけない。具体的に、直接的に伝える。間接的に伝えることによって、相手は言外の意味を考え、悩んでしまう。ただし、「あなたはダメだね〜」というような言い方ではなく、「ぼくは残念に思うよ」というような言い方にするほうがよい。また、メッセージは統一する。伝える内容が、毎回異なると悩んでしまう。

 カウンセリングをする人間は、自分に自信がなければならない。この自信によって、「聴く」「伝える」ということに心が伝えられる。しかし、自信というのは、自分の能力を肯定的にとらえ、その上で、ある程度までできる自分をよしとする気持ちが必要である。

 専門性・・・自分の仕事に誇りをもっているか?誇りをもつことによって、自信もついてくる。また、専門的な分野を人に伝える仕事は、その伝えるという手順の中に、カウンセリングの技法が多く含まれている。それと同時に、自分の問題点に気付くことが大切である。人間は不完全なものであるということを認識して、自分の不完全さに気付いた上で、自信をもつことが必要である。

 「受容」・・・相手を受容するということは、無条件に受け入れることではない。相手の違う部分については、きちんと自分の言葉で正していく必要がある。


(せいちゃんの感想)
 話を聞きながら、なんとなく自分は自分のままでいいんだなと安心した。この安心が自信につながればいいのかな?とも思う。そんな気持ちにさせられた。
 現在、すでに教育相談・カウンセリングが必要と思われる生徒が大勢います。各クラスに数名はいるのではないでしょうか?今後は、このような講演・勉強会をするとともに、教員間での実践を交流する場も必要な気がします。

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